勇者はドヤりたい
ドッカーーーーンッ!
パラパラと砕けた石が落ちてくる。
俺は今、超強い魔族を倒した。
街に帰ったらどれだけの名声が手に入るだろう。
想像するだけでニヤついてしまう。
「さぁ、みんな!俺を讃えろ!!」
大声を出しながら、街の冒険者ギルドのドアを勢いよく開ける。
「、、、。」
ギルドは静寂に包まれる。
無理もない。
あの王国騎士団長でも倒せなかった相手を倒したんだからな!
「あの…」
ギルドの受付嬢が声をかけてくる。
うつむいてる。照れてるのか?
かわいいやつめ!
「あまり大きい声を出されますと、ほかの冒険者の方に迷惑がかかるのでお静かにお願いいします。」
、、、つら。
時は遡ること数時間前
彼が倒した音に驚いた冒険者達が音の方向に向かうと。
そこに居たのは倒された魔族の前に立つ魔王だった。
つまり、野次馬冒険者の目にはこう映っていたのだ。
魔族「この俺に逆らうとどうなるか、分かったか?」
まぁ、実際には魔族のくそ強い幹部が倒されたという情報を聞き驚いた魔王が様子を見に来ただけなのだが。
結果として、魔王の残虐な行動への恐怖心だけがギルドへと伝わってきたのである。
白い目で見られながらも、俺はギルドで俺のしたことを熱弁した。
が、白い目はきつくなる一方。
しまいには
「はいはい、すごいすごい。」
と、適当にあしらわれ屈強な冒険者達に追い出された。
俺は神からの使者で最強の勇者だぞ!
鎧も武器もなしで魔族を倒したというのになぜ認められない!!
彼はまだ気づいていない。
鎧も剣も持たず。
冒険者の登録もせず。
いきなり知らんやつがギルドに入ってきて
「俺は最強の勇者だ!」
と言って来るのはただのヤベー奴でしかないという事に。