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#2

「さて……君には謝らなくてはいけないないらしいな」


 俺は拷問部屋から出された。

 体の大きな魔族の男性、名前はダルフと言うらしい。

 ダルフは俺を外まで連れて行ってくれた。


「すまなかった……今は皆気が立っていてな……許してやってくれ」


「は、はぁ……」


 俺はようやく外を見る事が出来、ここがどこなのかを把握する事が出来ると思った。

 

「なんだこれ……」


 俺は外に出て驚いた。

 俺が捕らわれていたのは、大きなお城の中だった。

 階段を上ることが多かったことから、俺は地下に閉じ込められていたことがわかる。

 俺はダルフさんに連れてられて、城のかなり上の方までやってきた。


「ここは魔王城、そして魔族の街だ」


 城の周りには街があり、街の外周には大きな壁と堀があった。


「マジかよ……」


「驚いたか? まぁ無理も無い……私も人間をここに連れて来るのは初めてだ」


「は、はぁ……」


「ん? 安心すると良い、君を殺そうとは思わない。しっかり元居た場所に送り届けると約束しよう」


「それはどうも……でも、あの……俺は……」


「ん? どうした?」


 俺はダルフさんに事情を話した。

 するとダルフさんは……。


「ふむ……記憶喪失では無いようだな……もしかして、記憶改変か? 何者かに別な記憶を……」


「いや、違いますって! だから、俺は別な世界から……」


「うむ、まだ混乱しているらしいな……しばらく我が家で休むと良い。記憶が戻ったら元居た場所に連れて行こう」


「いや、俺の話聞いて!?」


 そんな感じで俺はダルフさんのところに魔族として厄介になることになってしまった。


「なんでこうなった……」


 俺はそんな事をつぶやきながら、ダルフさんに着替えをするように言われ、服を着替えた。

 俺の格好は目立つらしい。

 魔族と同じ服を身に纏い、俺はダルフさんに連れられて城の外の街に出た。


「アーリス様はあれでもお優しい方なんだ……今回はまぁ……少しタイミングが悪かった」


「タイミング?」


「あぁ……君が居た戦場でな……人間達から我々魔族は奇襲を受け、大ダメージを受けた……」


「なるほど……」


「そのとき……アーリス様の部下が多数……命を落としてな……それでアーリス様は気が立っているんだ」


「そうだったんですか……」


 まぁ、気持ちはわかるが……何もしてない一般人まで殺そうとするのはどうかと思う……。


「君はここに居る間、魔族として生活するんだ……この街には魔族しか居ないから、混乱が起きてしまう」


「はい」


「……すまないな……迷惑を掛けて……」


「あ、いやそんな事は……あの……色々聞きたいことが有るんですけど良いですか?」


「あぁ、それは家で妻に聞くと良い……私は君を送った後、城で次の作戦の準備がある」


「わ、わかりました」


 この人結婚してるんだ……。

 俺がそんな事を思っていると、ダルフさんの家に到着していた。

 

「レヴィー、帰ったぞ」


「あら、貴方。今日は随分早いのね」


「いや、これからまた城に行かねばならん……それよりもこの子を頼みたい」


「あら? お客様?」


 ダルフさんの奧さんは金髪の色白な女性だった。

 しかし、この人も魔族なのだろう。

 尻尾が生えていた。

 ダルフさんは事情を奧さんに説明してくれた。


「まぁ、それは災難だったわね。安心して、記憶が戻るまでここに居て良いからね」


「あ、ありがとうございます」


 美人な奧さんに俺は少し緊張してしまう。

 ダルフさんは奧さんに大体の説明を済ませると、家を出て城に戻ってしまった。

 俺はダルフさんの奧さんにこの世界の事を色々聞いた。


「魔族と人間族の戦争はもう100年以上も続いているわ、最近は大きな衝突はないけど、小さな衝突が度々あるくらいね」


「なるほど……」


「あと、この人間さんは……私たち魔族を毛嫌いしている人が多いみたいね……人間からすると私たちって気味が悪いみたい……」


「………」


 寂しそうにそう言うレヴィーさん。

 なんだか複雑な気分だ。

 俺もアーリスを見たときはその異様な容姿に驚いてしまった。

 正直角が生えているというだけで、気味が悪いとも思った。

 しかし、話してみて思ったが……この人達は人間と変わらない。


「この部屋は空き部屋だから、自由に使って」


「すみません。ありがとうございます」


「あ、そう言えばお腹減ってないかしら! 私料理が得意なの!」


 そう言ってレヴィーさんはキッチンに向かった。

 魔族も食事をするのか……内臓とか生き血とか出てこないよな?

 俺はそんな事を考えながら、案内された部屋のベッドに寝っ転がる。

 

「はぁ……まぁ、牢屋は抜け出せたけど……」


 俺はダルフさんと家に向かった時の事を思い出す。

 手が四本有る魔族、空を飛んでいる魔族、四足歩行の魔族。

 本当にこの町に人間は居ないらしい。

 こんなところに俺が居ても良いのだろうか?

 バレたら大変な事になるよな?

 

「はぁ……これからどうなるんだか……」


 俺はふとスマホを取り出して、写真フォルダーに入っている家族や友達の写真を見る。


「……親父……お袋……」


 早く元の世界に帰りたい。

 そう思う俺だが、帰る方法なんかわからない。

 




「こ、これは……」


「どうかしら? 頑張ってみたんだけど……」


 俺は今、レヴィーさんのつくってくれた食事を目の前にしていた。

 俺が予想していた魔族の食事とは、大きくかけ離れたその見かけに俺は安堵した。

 問題は味だが……。  

 俺はスプーンを手に取り、スープをすくって口に入れる。


「ど、どうかしら?」


「……う、うまいっす!」


「そ、そう!? 良かったわぁ~、人間さんに料理なんて出したことなんて無いから……」


「いや、本当に美味しいです!」


 味も普通だった。

 俺は空腹だったこともあり、レヴィーさんの料理を夢中で口の中に入れた。


「うふふ、慌てなくてもいっぱいあるわよ」


 嬉しそうに笑うレヴィーさん。

 俺はレヴィーさんが出してくれた食事を綺麗に平らげた。


「ご、ご馳走様でした……もう食えない」


「うふふ、美味しそうに食べるのね」


 レヴィーさんは俺の前からお皿を下げて、食器を洗い始めた。


「あの……なんで戦争してる相手に……こんなに良くしてくれるんですか?」


 俺の率直な疑問だった。

 そんな俺の質問にレヴィーさんは笑顔で答えた。


「困ってる人にはやさしくするものでしょ? それは魔族でも人間でも関係無いわ」


「………」


 この世界の人たちは、俺の世界の人間よりも優しいのかもしれない。

 そんな事を俺は思ってしまった。

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