98、プロローグ
長らく更新出来ず申し訳ございませんでした_:(´ཀ`」 ∠):
相変わらず、咄嗟にキャラが勝手にしてしまったり着地点が定まり切っていない、見切り発車ですが。
そろそろぼちぼちと頑張ります!
のんびりと、よろしくお願いします٩( ᐛ )و
若干湿気た岩壁を所々僅かに覆う光苔と、岩肌に少数ある不規則に露出した発光性の鉱物の仄かな光だけが、洞内に小さな足音を響かせる主の足元に薄らと影を浮かべている。
足裏から伝わってくる温度は北部の龍の背骨の只中の真冬にも関わらず何処か暖かく、ちらほらと外界へと産まれ出でる手前の火の小精霊の気配がある。それだけでもう、此処はじきにオクリウェートの領内になるのだと感じられた。
白練色の睫毛に縁取られた丸い花緑青色の瞳の奥、今は仄暗さで他者が居たなら判別出来なかったであろう、縦長に細くなった瞳孔がある。
この洞内をさらに先に進めば、面倒事に行き当たる予感があっての事だろう。
しっかりと受肉した今では地中で微睡んでいた頃のように、周囲からの魔素に乗った感情を感じたりは出来なくなったものの、代わりにとても勘が鋭くなった。
少しだけ陰鬱な気分になるものの、全ては何よりも大切な女の子を守護する力を得る為、と己の胸に飲み込む。
脚を止め数秒じっと薄暗い道の先を冷たく見遣っていたが、ぴくりと三角の耳を動かした後、動き出した。
* * * * *
幾らマルティエが大陸の南に位置し、冬であっても比較的温暖な環境とはいえ。この季節に旅をする物好きはそうそう居ないし、ましてや幼気な三歳の女児を連れて旅をするには、適していないと言える。
勿論規格外な保護者達が周囲を固めてあれやこれやと世話を焼くので、季節など本来関係なく苦労らしい苦労もさせる筈が無いのだが、大事な大事な愛娘を暖かな空間魔法の暖炉の前から連れ出したくないというのが本音であるのはお察しである。
と言う訳で、ルーナエレンを連れてマルティエから出立するのは、春の気配が風に漂い始める晩冬の月の初旬!と保護者全員が豪語した結果。
グランジエールはこっそりと義父であるレオナルドに相談の上、本来であれば自らの領域であったであろう土地を見て周りつつ貴重な素材なども採取する、箱庭での実体を意識しての修行を申し出て許された。
もっとも、師と環境、そして自身の資質にも恵まれ、あっという間に想定していた学習要領を軽く超えてクリアした為、実地訓練というか慣らしとして許可されたのだ。
本来の出立の時期より二ヶ月も早く、義父からの悪知恵を含んだ秘密の指令を携えてひっそりと力試しとばかりに単身動き出したグランジエールは、旅立つと直ぐにモルガン領を始点にざっくりと現状の情報を吸い上げ、要所だけを巡ると上位の精霊や妖精族の極一部にだけひっそりと顔見せを行った。
その際、以前レオナルドが辿ったルートを教えられていた為、非常にスムーズに事が運んだのは言わずもがな。
その中でマルティエの亜人種としての現時点での頂点であった、執政も担うエルフの氏族についてメルヴィンに聞き及んでいたグランジエールは、一先ず帝都に赴きその氏族と僅かばかり接触した上で義父直伝の威圧でお土産まで貰い、結果現状維持という名の君臨すれども統治せずの体制を継続させる事にする。
そして基本的にはそのエルフの氏族、ロートリンデンを名乗る者以外にもエルフの有力な氏族があと二つあり、彼等は久しく交流をしていないが一度所在確認と出来得るのであれば面通しの栄誉を与えて欲しいと乞われたので、気が向いたらと軽い気持ちで了承の意味を込めて頷いておいた。
元より長寿な種族の出生率が低いのは世の常だが、エルフとて新しく子供が産まれある一定の年齢になれば、帝都にて洗礼を受けるのは変わらない。
だというのに残りの二氏族、ウィカーエバニもヴァインウィステリアもここ六十年近くは誰一人として、洗礼を受けに帝都へ来ていないという。
更に聞けば、マルティエでは帝都にある聖堂の巨大な青水晶を通してしか洗礼名を授かれないが故に、不安視しているのだそうだ。
ウィカーエバニとヴァインウィステリアで最後の洗礼の記録は前者が五十六年前に一人、後者が七十八年前に一人のみ。それ以後は、どちらの氏族も何の音沙汰もないらしい。
魔力の保有量により寿命も変動はするが、どの氏族も平均で三百から四百年は生き生涯の前半に少ないながらも一人ないし二人程子供を持つ。
ロートリンデンの氏族も出生率が下がってはいるものの、大凡平均値に準じている範囲。
なので出来れば欠片程度でも良いので、道中で気に掛けて欲しい。というのがロートリンデン氏族の総意なのだそうだ。
正直グランジエールにとって毛の先程にも興味も利点も無いし、義父からエルフに対して良い印象のある話は聞けていないので心底どうでも良いのだが、万が一にも大切な女の子に何かしらの欠片の影響でもあれば煩わしい事この上ないので、ほんのちょっとだけ気に掛ける心積りで頷き帝都を後にした。
週に一度はレオナルドに報告に戻り、直接ルーナエレンに土産話が出来ないフラストレーションを糧に散々愛玩動物の様に触れ合ってから、再び出立する生活を送る。
一月もすれば順調にマルティエの上位種族という名の知己も増え、指示されていた素材も沢山手に入れられた。
南部の果ての辺境まで脚を伸ばした際に、件の氏族の一つであるウィカーエバニと出会し、義父召喚という力技で帝都で聞かされた話を伝え貢物も無事捥ぎ取った次第である。
そして、そこで有力情報としてヴァインウィステリアの七十八年前に洗礼を受けた人物のその後と、気になる後日談を聞いたのだが、その話を聞いたレオナルドが恐ろしく笑顔で一旦調査を請け負ってくれたので、グランジエールはもう一つの情報を追いかける事にしたのだ。
曰く、北の国境付近の何処かにある龍の背骨の古い遺跡は、カラクリという魔道具とはまた少し違った技巧を得意とするドワーフの里があったというもの。
知的好奇心が旺盛なサリヴァン親娘に対して格好の土産になる話なので、レオナルドの後押しを受けて喜び勇んで遺跡まで乗り込んだグランジエールだったのだが、ここで冒頭へと至る。
静かな洞内や足元の火の極小さな精霊たちの気配はそのままなのに、何やら首の後ろが微かにチリチリとする気がした。
(なんだろう、すこしだけくうきがうすい??)
この先には恐らく目当てのドワーフの里があるのだから、洞内といえど何かしら外部から十分な酸素を供給出来る機構は備えてある筈。
周囲への警戒も勿論怠らない様にしつつ、自然と足早に洞内を進む。
程なく歴史を感じさせるレリーフが細かに施された、しっかりと閉ざされた大きく立派な岩の扉が視界に入った。
(じょうたいいじのまじゅつ‥‥それからこっちのレリーフは、あれ?すこしだけ、おしたらくぼみができる?)
どうやら鍵となるカラクリの一種なのだろうと推測出来るが、扉の向こうに対して嫌な予感が一層強くなる。
無理に物理的に壊すという選択も危険に感じる上に、何の知識も無い状態で自分にカラクリがすぐ解けるとも思えない。
ここは土の属性が本来の自分の強みなのだ。出来ると信じて透過をイメージして岩扉へと、頭から飛び込む。
勿論、レオナルド直伝の空間魔法で自分自身を保護する事も忘れない。
グランジエールは思惑通りに分厚いであろう岩扉を擦り抜けると、丸く大きなその眼を見開く。
扉の先には小じんまりではあるが洞内とは思えない高い天井の広場があり、その周囲を小規模ながら集落が囲んでいる。
窯を備えた工房や倉庫らしき建屋、住居や井戸や共同調理場と思しき施設も見えたのだが。
その全てが、囂々と炎に包まれていた。
お読み頂き、有難うございます٩( ᐛ )و
執筆までにブランクが有り過ぎて、設定忘れや自分の中で曖昧な状況などが辻褄合ってない可能性があります。
申し訳ございません。
引き続き、拙作に気長にお付き合い下さる方に、本当に感謝です(๑╹ω╹๑ )




