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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
96/150

96、閑話・第三の人生

今回はカーターさん視点です。

カーターさん声に出す一人称は「わたくしめ」

自分の中での一人称「私」となってます。


思ったより研究バカっていうか、向上心が高いカーターさん。

独学でも地頭が良かったのでそれなりに出来ていましたが、その道の憧れの権威みたいなアレンハワードに、あっちゅう間に惚れ込んでます。

 

 護符作成に携わった折の事だったので、殆ど此処にやって来て割とすぐだっただろうか。


 レオナルド様が地階の工房に私専用の作業机と棚を設けて下さったので、時間が許せばここでアレンハワード様からの課題、従来の認識阻害の魔術具の解析と素材の方向性や互換性を調べている。

 その課題こそがこれから私が最も関わるであろうメイン業務の準備に必須なので、それらを概ね理解出来たら次の段階に進めて頂けるというので、現在ようやく素材の方向性と互換性に着手出来た処まできた。


 もう少しこの土地特有の素材についてのレポートを纏める事が出来れば、晴れて次のステップであるアレンハワード様のご実家謹製の認識阻害の魔導具を拝見し、分解と解析、後に術式の解説をして頂くカリキュラムに進めるのだ。


 最先端の魔導王国であると此処マルティエ帝国まで響いて来る程、ネヴァン王国の魔術や魔道具は大陸南部諸国には無い発想と発展があるのだが、彼の国(ネヴァン)は意図的では無いにしても人や知識の移動が厳しい為に滅多に無く、故に()()()()()()や魔術に触れられる機会は非常に稀、というより実質皆無と言っていいものだった。


 それというのも大陸の南北で土地の高低差が激しく、更にその大陸北東部のオクリウェートと西部ネヴァンとの間には麓一体が影に覆われる程の広大で雲をも貫く程の標高を誇る天山グランアルブシエラと、それに連なる霊峰が壁を成し国境となっており、特にネヴァン王国へは風の強い加護を有するか、霊峰を越えられる程の強靭な翼を持つ聖獣に連なる者にしか物理的に国境を越えられないという事情がある。


 だが別にネヴァンの国境が不可侵で閉鎖されている訳では無く、極稀にネヴァン方面の麓から天山の清流に乗って南下する精霊であったり聖鳥や渡り鳥が齎す交流や、南の領土でも最西端草原の国カルトボルグの魔馬商隊経由で僅かに小規模な交易や外遊をする者が有るらしく、それらが西から『龍の寝所』由来の素材の宝庫であるマルティエに、それも唯一ネヴァン王国以外の諸国と国境を有するモルガン辺境伯領に入って来る機会があるのだ。


 そうして細々とではあるものの入ってくるネヴァン王国の情報や知識や魔道具から、彼の国(ネヴァン)は大陸随一の魔術大国であり、(まさ)しく魔術に関して最高峰であり最先端という話に偽りは無いといえるだけの知識の蓄積があると納得せざるを得ないもので。

 それらを管理統括しているという家門こそがアレンハワード様のご実家であり、同時に名実共に魔術や魔道具の研究者揃いの家門だと、私はここに来て初めて()った。


 そんな途方も無い賢者とも言える方から専門的に学ぶ機会を得られた上に、共に研究が出来る等、二度目の引退後の我が人生が望外の幸運にあると、あらゆる存在に自然と感謝を捧げたくなるのも無理からぬ事だと思われる。


 新しい技術や知識を得ながら、併せてモルガンと協定を結んだ商業ベースに流せる魔道具のリストアップ、それらの開発や量産化に向けてのコストダウンも含め、まだまだ仕事は山のようにある。


 魔道具界隈に革命と激震が走るに違いない。


 だが、それによる騒がしさが此方の主家に波及しない様調整するお役目も頂いているので、今後の人事や職人の育成もある程度斡旋出来る様に領内の人材について、既に私の跡を継いで侍従長職に就いた息子とも連絡が取れるよう、レオナルド様やアレンハワード様と相談をしなければいけない。


 関わる内容と規模のあまりの大きさに自然とモノクルの奥の眼が細まり、今の状況に笑みが溢れてしまう。


 マルティエ帝国特有の素材を生息地や採取地等の地域毎に分け、入手難易度も記憶にある全てを可能な限り纏め、せっせとレポートを仕上げていく。


「お前も大概変人だなぁ」


 神出鬼没なレオナルド様の声が、不意に頭上からかかる。

 階段を降りてくる音は聞こえなかった辺り、転移していらっしゃったのだろうか。


 砕けた口調で貶している訳ではないけれど、面白がる様なその声音に含まれる好意を感じ、自然と穏やかににこやかに返す。


「人生終盤に差し掛かったと、自覚ある我が身でございます。ですが、このような素晴らしい最先端の学びが得られる環境に身を置かせて頂けるなどと、今まで考えても見ませんでした。本当に、感謝しております」

「安心しろ、エレンがすっかり大人になるまで、お前の人生終盤にも隠居もさせる気無ぇから」

「はは、‥‥これはこれは。心して、お務めさせて頂きませんと、でございますね」


 互いに視線を合わせ、ニヤリと笑い合う。


 前の主人であるモルガン辺境伯御当主様は、勿論ある程度の政治もなさる方だが根本からの武官である。


 勿論高位貴族の御当主であり代々辺境の警備とは別に、守護狼の聖獣という種族的な特徴もあり集団を統べる能力に長けており、故に帝都より北から西の国境という広大な範囲の守備を受け持つ元帥のお一人でも有らせられる。


 狼というのは家族を大事にし内部の序列も非常に厳しい特徴があり、身内の生活を守る実直な気質なのだが、娯楽や商業といった部分には以前の主家はやや考えが及ばない事がしばし見られたのだ。


 よって昔からモルガンの領地には亜人としては血が薄い者だったり、外部から流入してきた草食系の亜人がそれらの役割を担って根付いてきた訳だが、どちらかといえば素材の出荷や運輸が主な産業となっているので、今後の流行や金の流れがどの様に様変わりするのか、帳面上で確認だけしていた頃よりも直接関わって行けるこの身の上、年甲斐も無く気分が高揚するのは、致し方ないと言わざるを得ない。


 研究欲と商業と人材育成の大規模な変化を想像していたのが見透かされていたのか、レオナルド様は非常に満足気なお顔をされ、私の手元にある完成間近なレポートを覗き見ている。


「お前の意欲と能力は買っているからな。だが、無理はしないで上手く下を育てて使えよ?もうエレンはカーターの事も大事な家族だって思ってるからな」

「‥‥勿体無いお言葉です。肝に銘じ、精進致します」

「うむ。必要なモノも人手も、この空間に招いたり技術提供や研修が必要な場合は、最終面接は勿論オレ達が請け負うが、双子フィルターにでも掛けてモルガン内で賄わせろよ?少しは飴も無いと、メイヴィスを取り上げメルヴィンを縛り、青水晶をひよこにしたオレが悪役になっちまうし」


 態とらしく肩を竦めて大仰に悪態を吐いてみせるレオナルド様だが、此方から要望を出し易く敢えての物言いなのだと、もう理解している。

 不器用な優しさを見せてくれるレオナルド様に、早速モルガン側と連携を取る為に相手を厳選した上で連絡を相互間で取れる手段があるか、尋ねる。


「あー、連絡自体は双子は使わず?」

「ええ、出来るのであれば、わたくしめの息子が侍従長職を継いでおります故、そちらと」

「ふむ。あ、それって領主に奏上前段階で連絡取り合いたいって事だよな?」

「はい、なるべくならその方が宜しいかと。お恥ずかしい話ではありますが、ランドルフ様は少々ご家族に甘くていらっしゃいます故」

「むぅ‥‥カーターの息子はどんな奴なんだ?」

「やや融通の利かない部分もございますが‥‥割に実直な性質で責任感もあり、物事を冷静に判断する事が出来る、自慢の息子にございます」


 生真面目だった、今は亡き妻の気質を色濃く受け継いだ一人息子を、無意識の内に胸を張ってレオナルド様に自慢してしまった。


 だが今後商業や人材の確保だけでなく、素材の入手に領主一族や地元の狩りに慣れた狩人や冒険者等とも連携が取れた方が、長いこの先も安定した領地経営及び商業文化の発展、生活水準も上がるに違いないのだ。


 それらを許して下さるこの屋敷の方々の懐の深さが、本当にそれなりに人生を渡ってきた私の胸に、尚更沁みる。


 この私の第三の人生、まだまだ始まったばかり。

 あいも変わらずこちらを何処か悪戯な眼で見る青い瞳を正面から見返して、私はにっこりと微笑んで見せる。


「あとは、そうですね。これだけ便宜を図ってやるのですから、エレンお嬢様の為の商会の立ち上げ手続きなどの庶務も、息子にさせてしまいましょうか」

「お、良いねぇ!商会名とかも決めなくちゃだな!」


 先程までの腹黒い笑みを一転、レオナルド様は心底楽しいと言わんばかりの表情を浮かべられ、それはそれは麗しく微笑まれた。



 

お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


妄想としては商会主としてルディを据え(傀儡)、オーナーはエレンとかってやりそうですね_(:3 」∠)_

それにしても、ルーク(ルディ)の空気感よ。。。。不憫!


次回はその不憫っこルディについて、かな?

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