95、閑話・観察日記帳
ルーナエレン視点の一人称です。
ひらがなと漢字がいつもと比率が異なりますが、知識があっても幼い(実年齢として追いついていない為)という表現のつもりです。
また、一人称が『エレン』なのは、彼女の中に蓄積されている記録や記憶が膨大であるという設定なので、彼女に限らずサリヴァン家あるあるとして、幼い頃の自我形成過程であるが故とさせて頂いています。
ほっぺに当たるふわふわふかふかが気持ちいい。
あぁ、コニーのお手手が、優しくエレンのほっぺをもにもにと押してくる。
もう朝だよって、教えてくれてる。
コニーのふわふわしたお手手が、段々とエレンのほっぺと同じ暖かさになって、そのままふわふわを抱っこしてお布団に潜りたくなってくるの。
そんなことを考えている間に、コニーのふわふわのお手手は離れて行った。
それでもお部屋の中で、顔を洗う準備とお着替えの用意をする気配を感じる。
父さまもレオナもカーターさんも、それからメイお姉さんも。
エレンに「もっと寝ていて良いよ」って、言ってくれるけど。
昨日の治療からエレンがグランジエールのごはん係になったから、献立も含めて日記帳をつけるんだもの。
そう思ったら、すっかりお布団でまぁるくなるより起きなくちゃって気持ちになってくる。
今までだって朝起きる時ちょっと勢いは必要だったけど、早起きは苦手じゃないから大丈夫。
コニーのふわふわは恋しいけど、お布団から顔を出す。
思い切ってベッドから降りて、コニーがタオルを持って待っているところで、顔を洗ってお着替えして。
身支度を終わらせて、待っててくれたコニーと手を繋いで、静かに部屋を出て一階に降りた。
途中の暖炉や厨房の竈門にいる小さいこ達と挨拶して、先に厨房にいた父さまとカーターさんにもおはようございますって挨拶すると、カーターさんがエレンの子供用作業台すぐ横の下の棚からボウルを取り出しながら、こっそりとうれしい事を教えてくれる。
「お嬢様、ご希望のお品の準備が整ったそうです。いつものポケットから、新しい筆記用具もセットでいつでも出し入れ可能との事ですよ」
うれしくて思わず大きな声を出してしまいそうになったけど、内緒ってお願いしたのはエレンだから。
うれしい声が向こうの棚からお皿を出している父さまに聞こえちゃうから、頑張ってお口を押さえてカーターさんに頷いて見せる。
でも、それでもやっぱりありがとうが言いたくて身体が勝手にむずむずしちゃったから、ちょっと屈んでいるカーターさんの耳元に内緒話の声の大きさで、ありがとうって伝えたら。
カーターさんの薄い灰色と緑色が混じったお目々が、なんだかイタズラっぽく細められてゆるりと微笑んでくれる。
はぁ、カーターさんのこういう雰囲気も、いいなぁ。
そうやってニコニコ笑い合ってたら、レオナも厨房にやって来た。
「おはよ〜、ってアイツ‥‥何やってんだ?」
「ああ、おはようレオナルド」
「おはようー」
「おはようございます」
挨拶の後でレオナが変な顔をして見た先には、窓際のハーブの寄せ植えの鉢植えしかない。
どうしたのかな?アイツって?
質問をされたらしき父さまも、ちょっと複雑そうに少し困った顔して、レオナと同じ方を見てる。
あれ?そう言えばメイお姉さん、気配はするけど姿が見えない?
レオナが言う、アイツって、メイお姉さん?
キョロキョロと微かにある気配を追ってみるけれど、たくさんあってよく分からない。
レオナは鉢植えにツカツカと近付いて行ったけど、父さまはエレンがちょっと混乱してるのが分かったのか、側まで来てくれて、エレンの前にドレッシングの材料とボウルとを一緒に揃えてくれる。
そしてヒョイっとエレンを抱き上げて、作業用の踏み台にそっとおろして乗せてくれた。
「エレンはまず、この材料を塩梅をみながら合わせて混ぜて、仕上げてくれるかい?これが出来たら、グランジエールの朝ごはん任務をお願いするね?」
「はぁい!」
お手伝いは慣れてるけど、ドレッシングを混ぜるのは力が必要だから、ちょっと意気込んでお返事する。
それに、朝ごはんにんむだって!
コニーが隣に来て袖を上手に上げてくれて、道具もどんどん揃えてくれる。
そうしてすっかりドレッシング作りに夢中になって、レオナがエレンの後ろで鉢植えを掴み、ハーブを毟っていたのも、くぐもった悲鳴っぽいものがあったのも、全く気付かなかった。
だから、ドレッシングが出来上がって、父さまが褒めてくれていた時。
レオナが葉っぱの無くなった鉢植えを持って、裏口から裏庭に出たのがちらりと見えたけど、まぁいっかって思っちゃった。
「今日の朝ごはんは、昨日のシチューの残りと川魚のムニエルにサラダ、蒸したお芋にしようと思ってるんだ。そういえば昨日のグランジエールは、結局何が食べられたのかな?」
「ええとね、ミルクとほぐしたとりさんのおにく、おひるが‥‥すりおろしたなしでしょ?パンがゆもたべたの。それからひのさんこくよりちょっとまえに、エレンのパンケーキをはんぶんくらいわけてあげて‥‥」
思い出しながら、観察日記帳にも書き込む内容だからと寝る前までのメニューを一生懸命思い出し、父さまに報告をする。
結局あげたものは全部、エレンの手からペロリと綺麗に食べちゃったから、まだ好き嫌いや苦手な食べ物は分からなかったなぁ。なんて思ってたら、父さまがうれしそうに、「その調子で色々試してみるんだよ」と優しく頭を撫でてくれる。
はぁ、絶妙な力加減に大きな掌の暖かさが心地良すぎて、心の中でため息が出ちゃう。
父さまにこんな風に撫で撫でして貰うの、好き。大好き。
抱っこしておでこにキスして貰うのも、大好き。
ぎゅっして貰った時に香る、父さまの匂いも伝わる熱も魔力も、エレンを呼んでくれる声もいろんな表情も。全部全部全部、本当に大大大好き。
アイスブルーの透き通ったお目々も、とっても綺麗。
父さまの本当のお目々の彩も、視た事があるから知ってるけど、淡くて透き通った若草色で、何だか不思議な気持ちになったなぁ。あの彩の父さまも、すごくすごく素敵だった。
でも、エレンがあの彩を知ってるのは、何となく言えない。
頭を優しく撫でられながら、そんなことを考えていたんだけど、視線を感じてそちらを見ればすごく微笑ましいと言わんばかりにニコニコしたカーターさんがいて。
恥ずかしさとうれしさで、心がポカポカしてきた。
ちょっと前までは父さまとレオナとエレンだけだったのに、今こうして当たり前に一緒に居られる人が側にいて、胸がきゅうってする。幸せと切ないって知識はあっても、こんな風になるって初めての体験!
カーターさんは。
穏やかで物静かで品のある佇まい、物知りでなんでも器用に組み合わせが出来ちゃうし、落ち着いた微笑みもちょっと父さまと雰囲気が似てる気がする。
もうずっと一緒にいるみたいに安心出来て、好き。
レオナは。
大人でも子供でも性別まで、いろんな姿になれちゃう不思議な存在だけど、エレンがもっと小さな頃からずっとずぅっと、エレンと父さまを絶対大事にしてくれている。
好きって言ったら多分大騒ぎしちゃうから、内緒だし絶対言わないけど、好き。
コニーは。
お話し出来ないのに不思議なくらい通じ合えるし、大抵の事を短時間でこなしてくれる。
何よりも全身ふわふわのふかふかで、うさちゃんのふわふわお手手なのに、とっても器用!
お裁縫や調理や細工物なんかの加工技術まで匠クラスに出来ちゃうほどの、エレンのスーパーポシェット。
ポシェットでお人形で感情が無いなんて、ちょっと未だに信じられないけど半分くらいレオナの作品だし、深く考えないで受け入れてる。大好きなうさぎさんなところも入れて、大好き。
ルークはレオナのお使いであまり側にいないけど、頑張り屋さんで甘えん坊なところが可愛らしいなって思う。
だから、有難うって伝えようと思ったんだけど、それを言ったら拗ねちゃうんだってレオナに教えて貰ったから、まだそれを伝えた事がない。
今やってる安定定着を目的とした憑依?というのも、調整が大変みたいだから、終わったら伝えたいなって思う。
メイお姉さんは、初めはいつもお側に!ってすごい勢いだったのに、たまに変な声で叫んではレオナかコニーに何処かに連れてかれちゃうの。
お薬や植物の専門家で、先生もしてくれるけどさっきみたいに、気配だけが近くにあって姿が見えない方が多い気がする。
すごいよね、凄腕の隠れん坊の達人っぽい!
やっと同じ女の子でこっそりうれしいなって思ってるんだけど、レオナや父さまがもう少し様子見が必要だって言うしカーターさんすら少し困った顔をしていたから、お互いに距離を見ながら接している感じ、なのかなぁ?
あ、でもメイお姉さんが来てから誰も用意していないにも関わらず、お家の中に沢山の鉢植えや花瓶が増えてとても緑化が進んでるのは割と好き。
お庭も管理してくれてて、今までよりすごく収穫量も品質も上がってるって、父さまも少し喜んでた。
グランジエールは、と考えてコニーとよく似た毛並みの今の姿とクッション(レオナ談)姿を思い出してしまう。
今の姿は大きいレオナの黒い猫の姿とちょっと似てる。白練色っていうオフホワイトな色合いに、背中は不思議な薄い灰色のまだら模様があって、お耳は大きな三角なのに手足が太くて大きいから、豹の赤ちゃんみたいって挿絵が綺麗な図鑑を思い出す。
コニーとちょっとふわふわふかふかは似てるけど、体温が感じられて毛質もコニーよりしっとりしてて、今の姿ではあまり抱っこしてないけど、実はちょっと一緒のお布団で寝たら、冬は暖かそうって思ってる。
でもこれは多分、誰にも言ったらダメなんだろうなって感じるから内緒。
綺麗な花緑青色のお目々は、昔の父さまの彩と今の彩を混ぜて少しだけ濃くした様だなって思えて。
すごく好きだなって感じるんだけど、これもやっぱり内緒にした方がいいんだろうなって思ってるから。
エレンの心の中だけに、しまっておくの。
「とうさま、ムニエルにしたおさかなってまだあまってるかな?」
「ああ、まだ沢山あるよ。どれくらい使うんだい?解凍してあげるよ」
「ありがと!ちょっとあぶってからおやさいとオシムギスープにしてみる」
そう言って、父さまと一緒に厨房から半地下の食料保存庫へ降りる。
ご飯を食べて、グランジエールの朝ごはんも終わったら、早速記念すべき観察日記帳の第一ページ目を開くの!
お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و
想像以上にぱぱ大好きなエレンちゃん。
完全にファザコンです!
レオナに対する的確な対応も、様々な好きに対する基準がぱぱだったり、レオナにうまく言いくるめられてるのとか‥‥。
ぱぱ以外ではコニたんの一人勝ち(笑)
ルークとかグランジエールとかもちょびっと不憫だったりします_(:3 」∠)_
んが!とりあえずぱぱ至上主義。
いつもはあまり語らないエレンちゃんが、何を思って何を感じているのかが少しでもお伝え出来ていたら嬉しいです。
次回は引き続き閑話で、カーターさん回かな。




