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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
93/150

93、音に載せる名

少々短めです。


長々と書いてきましたが、一度区切りとして次話くらいで一章とさせて頂きます。

まだ新規キャラたちが暴れる前ではありますが、あまり時間を置かずに更新出来る様にしたいと思います( ´ ▽ ` )


 

 特殊なこの空間に閉じられた屋敷内にも関わらず、名付けの影響と思われる空気の揺れが起きた事に、レオナルドは少し考えを巡らせる様子を見せる。


「熟成期間の賜物、ってやつか」


 そんな風に呟きを溢したレオナルドは、腕の中で小さく首を傾げて見上げてくる幼い愛娘に向かって、たった今名付けた雛の『名前』が本来持っていたであろう高い素質と相まって龍種の始祖としての極めて強い個体名となった為、意味などを含めそのままカーターやルークらに告げるべきではないだろう、と説明をし始めた。


 曰く、強過ぎる祝福とは所謂呪いと同義なのだと語るレオナルドの青い瞳が、何処か遠くを見ていた気がして何となく、自分(ルーナエレン)にも本来であれば有る筈もない記憶の中に、苦い感情を見た為に口を噤んでしまう。


 ただ、そんな強過ぎる呪いと大差ないと評される名の名付けを、自分は込められた意味までその現場で見て識ってしまっている状態に、少しの疑問を持ちぽつりとその疑問が口から溢れ落ちてしまっていた。


「エレンは、それぜんぶ、しってて、いいの?」

「ん〜、寧ろエレン以外が、ちょっと危険」

『えええ?!』

「‥‥レオナルド?」


 レオナルドの答えにやや被る程の反応を示したメイヴィスの声は黙殺されたが、視界からやや外れた部屋の扉から直後に耳に届いた冷ややかな低音に対して、ルーナエレンは勢い良く声のした父の自室の方へ振り向くと、可愛らしいお口をぱかりと開けて固まる。


 どういった訳かたった今(アレンハワード)が声を発する迄、レオナルドもルーナエレンもこの場にアレンハワードが居る事に全く気が付かなかったのだ。


 レオナルドが此処からルーナエレンの元に転移し、そして彼女を連れて戻って来たとは言え、然程時間が経っている訳では無い。

 サリヴァン親娘どちらともに居室はこの二階のままであり、増築後も勿論部屋替えなどもしていないのだから、本来であれば此処に転移で戻った際に(アレンハワード)の所在を確認しなかったレオナルドの落ち度でしかない。


 そこではたと先程のレオナルドの発言の不穏さに気付き、ぎゅっと抱き締められていたレオナルドの腕から強引に脱出し、飛び付く様にアレンハワードに走り寄ったルーナエレンはそのまま父親の足に抱き付き、イヤイヤと首を左右に振りながら悲痛な声で必死に問いかける。


「エレンいがいきけん?!とうさまきけん?!」

「いや、だから!通名か、愛称で通せば多分!」

「‥‥多分?」

「ええと、ほら、アレンなら知識として知ってるだけなら‥‥多分、いや、きっと?平気だろ?口に出さなければ!」

「「‥‥‥」」


 無理矢理に言い切った雰囲気しかないレオナルドの言葉に、親娘はそっくりな、しかも微妙な表情を浮かべたまま無言の抗議とばかりにアイスブルーと淡紫の視線をじっとりと向ける。


「あ!オレこいつの名付けによる変化の確認も必要だから!ちょっとこいつと席外すな!」


 何も言わないまま視線も表情も軟化させない親娘から逃れる様に、暖炉の前のクッション群の中から雛を引っ掴むとひょいと再び転移を氏、姿を消してしまう。


 名付けによる元雛の体内外の変化や進化の揺らぎが、確かにこの屋敷の中でありながら見られたのも事実。


 様子見は必要だし養父とはいえ親として保護者を名乗ったのだから、様子を見守る為に暫く図書室中央の最上部、尖塔部分のエリアに元雛を連れて暫く籠るのだろう。


 まぁ実質、逃げただけとも言えるが。


 現場に居合わせた面子をきちんと確認して居なかったのは、言い逃れの出来ない失態。既にアレンハワードの記憶には留まってしまったのだし、居合わせなかったカーターとルークに伝える為に、一先ず通名を考える事にする。


「コニー、カーターさんとルークは今何処に?」

『あ、現在工房にて資料の片付けをカーター殿が、ルーク、殿は‥‥裏庭にいらっしゃるかと存じます』


 声を出せないコニーに代わって、メイヴィスが屋敷内の気配を探りながら遠慮がちに答えてくれた。


「有難う、じゃあ先にここで、通名だけでも考えてしまおうか」

「‥‥うん」


 微妙な空気感ではあるが、ここにいる皆は名付けの流れや話を全て聞いてしまっている。


 それでも通名として違和感が少ない範囲で考えるとすると、肉体的な親の話をレオナルドからある程度聞いていたアレンハワードが、積み重ねられた記憶と知識からそれらしい名前を組み合わせた。


「山神との関係も、歪みにならないだろうし‥‥グラン、グランジエール、は‥‥どうだろう?」

「グランジエール?」

「そう。通名として呼ばれて積み重なっても、間違いではないからね」

「じゃあ、グラン?エル?」

「ああ、後者だと、エレンともちょっと似ているね」

「!!」


 見上げてくる愛娘の紫水晶の瞳がキラキラと嬉しげな光を湛え、まろい頬を上気させているのが微笑ましくて、アレンハワードは彼女を抱き上げて目の高さを合わせて語りかける。

 この愛らしい幼い我が娘は、まだ歳の近い友という存在も愛称を呼べる相手も、身内以外は居た経験が無いのだから、初めての事柄や体験に全身で喜色を顕さずには居られないのだろう。


 アレンハワードは微笑ましい愛娘の様子に、思わずくすりと微かな笑みを溢した。


「愛称は、一応本人に確認しながら決めたら良いよ。さあ、カーターさんとルークにも伝えに行かないとだね」

「はぁい!」


 きゅっとアレンハワードの首に抱き付いて頬を擦り寄せる愛娘の元気な返事を聞きながら、コニーとメイヴィスを連れてゆっくりと階段に向かい歩き始める。


 逃げたレオナルドには、改めてしっかり目なお説教をしなければならないだろう。







 * * * * *




 そうして工房に居たカーターと裏庭に居たルークと合流した後、一階の談話室にて少し詳細は省きながら元雛の通名と今の姿について語り、意見を聞いた。


 通名は概ね問題無く、姿についてはまぁ非常識ではあるものの元より存在が非常識だと皆が内心で思っているし、更なる非常識が既に身内扱いなのだから、誰も苦言を呈する事は無かった。


「それにしても、わたくしめが資料の片付けに残っている間に、歴史がまた大きく動いていたのですねぇ」


 カーターは元よりこのマルティエの、しかも始祖に深く関わる『龍の寝所』の核を成す所領の領主の懐に限りなく近しい人物だった。


 実質この国の始祖が誕生しないまま永い時を経てやっと顕れたのだと、詳しく事情を語られなくても悟れるだけの体験を此処に来てからしているので、その声にも感慨深げな彩が滲んで聞こえる。


 自らも地中深くに随行し、開放に至るまでサリヴァン親娘とレオナルドやコニー、メルヴィンとも共に行動したのだから、それはそれはしみじみとした響きなのは仕方が無い事だろう。


 そんなカーターの側に立っていたコニーが、ぽむっと彼の肩に可愛らしい手を乗せ労わる仕草をしているのが、何とも微笑ましい。


『わたくし、今の主様は姫さまではありますが‥‥永らくお護りしてきた御子様ですから、本当に‥‥』

「メイヴィスさん‥‥」

「もうすぐ、直にお世話出来ますとも」

『ええ、ええ‥』


 そう声を詰まらせながら語るメイヴィスも、酷く嬉しそうに見える。


 今後の見通しとして、元雛こと仔猫さんの状態確認とルークによるルディの定着と安定の目処が立てば、この土地特有の素材や文献をもう一度洗い直し、研究や商業面を含んだ事後処理の確認を終えれば漸く移動となるだろう。


 それでも、ルディの状況次第ではまだまだ事後処理や起こり得る事象の対処が必要になるけれど、一歩前進には違いないのだ。


 新しい場所で新しい刺激を受けた愛娘(ルーナエレン)が、どの様に成長し何と出会うのか。


 楽しみでもあるけれど、正直なところ不安の方が大きいのは、サリヴァンとしては仕方が無いのかも知れない。






お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ルディの扱いや雛自身がまだ通名聞いてない点とか、綺麗な区切りではありませんが。。。

次話でその辺りを少し補足してから、閑話を挟んで二章へ移りたいと妄想しております。


ゆっくりとした更新ではございますが、引き続き拙作にお付き合い頂けると、狂喜乱舞して筆者が喜びます(笑)

よろしくお願い致しま〜す!!

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