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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
87/150

87、閑話・エイプリルフールSS

本日は先に87話として、エイプリルフールSSを入れており、88話が本編となり珍しく二話更新です。

一度時節ネタもやってみたくて・:*+.\(( °ω° ))/.:+


基本的にメイヴィスやルーク、ルディ、雛などは出ていません。

また、87話は本編と関係無いお話なので、読み飛ばして頂いても大丈夫です( ´ ▽ ` )b

 

 時刻はそろそろ宵の四刻(午後十時過ぎ)になろうかという頃。


 空間魔法(おうち)内のサリヴァン邸を改築後、日常的に図書室の地階の工房で大人達が魔道具等の学習会という名目の元、自然と集っているとある日常の一コマのことである。


 本日分の目処がついて寛いだ時間を過ごしていたが、翌日のちょっとした下準備にカーターが席を立ったのを皮切りに、解散となったので自然とレオナルドも工房から上階の図書室に出る。


 屋敷の住人が寝静まる迄の短い時間ではあるが、レオナルドはこの屋敷で一番高い尖塔になっている図書室の中央にある螺旋階段の最上部で、大きな天窓になった尖塔の屋根に程近い拡張された空間で、この空間魔法内に魔力を巡らせ刻一刻と成長をするように変化するサリヴァン親娘の為の一帯の状況を確認するのを日課にしていた。


 最近、ルーナエレンが外の世界を識った為か、彼女の感情と興味を吸収し呼応するかの様に色彩が豊かになって来ており、新たに精霊や妖精の卵や幼体を始めとし、動植物までもが豊かに過ごし始めている。


 ただ、まだこの屋敷の近くまでは近付ける個体は多くはない。だが、彼女の行動範囲や興味がもっと拡がれば、新たな学びにも刺激にもなる事だろうと考え、環境が育つままに静かに見守っている。


 広く浅く様々な状態を把握しつつ、今後彼女がどんな出逢いを果たすかによってこの地がどんな化学反応を起こすのか、それを想像しながらレオナルドが一人にやりと頬を緩めていると、背後からアレンハワードの気配が近付いて来るのを感じた。


「レオナルド、ご苦労様」

「おぅ、アレンか。お前もそろそろ休めよ」

「有難う。少し、いいかな」

「?」


 何処か物言いたげなアレンハワードの様子に、レオナルドはすいと軽く手を振り踊り場をあっという間にしっかりとしたロフト状の展望台に変え、寛げる様に自分用とアレンハワード用にソファーを創り出した。


 然も簡単にレオナルドがここで創造するのは何時もの事ながら、つい規格外振りに呆れて苦笑いが自然と浮かぶ。


「で?どうした?」


 アレンハワードの反応など気にしないレオナルドは、さっさと一つのソファーに身を沈めて相手に話を促す。


「うん、少しね。エレンが外に出る様になって、情緒が育ってきた証拠だとは思うんだけど」

「ああ、以前より感情の起伏のバリエーションが増えてきたなぁ」


 思い出し笑いなのか、レオナルドが若干だらしなく表情を緩ませるが、対するアレンハワードは何処か物憂げな雰囲気を漂わせている。


 その表情から、幾つか彼が考えている事が予想出来たのだろう。

 レオナルドは少し、自らの顎に手を当てソファーの背に身を沈ませる。


「あー、エレンは感情だけじゃなくて血縁というか血筋の記憶を感知出来るからなぁ。外でそれらを感知して、ここの環境がちょっとだけ普通じゃないって、じわじわ実感し始めているんだろうな」

「そう、なんだよね。実家は直系だと幼くしてほぼ片親になってる上に、私の記憶は何というか‥‥」

「あー‥‥うん、実家の事情はエレンも記憶を継いでいるから大丈夫だろうけど。問題はママンか」

「言い方」

「思い出す気配は?」

「‥‥‥‥‥」


 自分でも歯がゆい思いが強いのだろう。

 アレンハワードは、決して愛娘には見せないだろう少し哀しげな表情を滲ませている。


「正直、容姿は男女の違いや年齢の問題だろうが、色彩までも割としっかりとアレンの遺伝が良い仕事してるからなぁ、エレンって」

「あの混じる淡紫は、私の祖母の家系だと思う。紫水晶の瞳も、珍しいけれど由来は説明出来る範囲内だし」

「え、言える範囲内?」

「‥‥範囲外」

「あー」


 何処まで祖国の裏事情を把握しているのかははっきりと確認していないが、レオナルドならば恐らく裏の裏の裏事情まで精通しているに違いないので、素直に彼が言葉にしない為に範囲外だと告げる。


 ガシガシと頭を乱雑に掻いてレオナルドは低く唸る。


「まぁあれだ。オレもちょっとエレンの様子を見て、フォローが必要そうなら的外れじゃない程度の方便は考える。ただ、アレンにも少し手を借りるぜ?」

「無論、私に出来る事であれば」

「ああ、そんなに難しいこと頼むわけじゃないから」

「‥‥有難う、レオナルド」

「エレンの為だ、問題ない!さあ、そろそろお前も休め」

「‥‥そうだね、おやすみレオナルド」

「おやすみ」


 自らの能力の大半を封印してまで愛娘と自分に寄り添い、こうやって手間を惜しまず居てくれる本来超常の黒き獣の神のそんな言葉に。

 アレンハワードは、胸に暖かな灯りが宿るのを感じ、ふわりと微笑んで立ち上がり階下に静かに向かい始めた。


「ヨシ。こにた〜ん!」


 アレンハワードの後ろ姿が螺旋階段へと消えても暫く待ち、周囲の気配を探ってから眷属となったコニーを呼ぶ。

 テチテチと可愛らしい柔らかい足音が階段を登って来て、ひょっこりと尖塔のロフトへ顔を覗かせたコニーが可愛らしく小首を傾げてレオナルドを見上げてくる。


「お仕事の時間だぜこにたん!」


 良い笑顔を浮かべて悪戯っぽく呼び掛けると、何かを察知したコニーはすすすと近付いてきらりと紅玉のお目目を光らせる。


 漠然とした記憶の中から『それ』っぽい衣装の特徴を思い起こしながら、レオナルドはその脳内イメージを稀釈させながら、コニーへと伝達をする。


「こんな感じの衣装で、身体のラインはゆったりでぼかすから。んで、ちょっとした投影魔術を仕込んだ小物魔道具でだな‥‥」


 漠然とした計画を脳内イメージと共にコニーに共有させ、コニーが何処か薄っすらながらも愉悦を滲ませながら小さく頷いたのを合図に、大小二つの影はその場を後にした。





 翌日の朝。


 通常よりも幾分早くコニーに起こされたアレンハワードは、何故か自慢気に渡されたややゆったりとした中性的で若干ひらひらした印象を受ける上質な衣装を渡され、困惑していた。


「え?何これ‥‥私が着るの?今?」


 起き抜けに普段はアレンハワードの世話にやって来る事などないコニーがノックも無く気配も無く音も立てずやって来たかと思えば、どういう事か。


 必死に考えるも今日が何か特別だという情報は、脳内のスケジュールでも思い当たるものは無い。


 だというのに、何時に無く強引に着替えを強要されるアレンハワードは少し混乱していたが、コニーに関してはレオナルド程問題を起こす事は無いと思っているので渋々ながら従う事にした。


 衣装を受け取り着替えを始めると、今度は何処からか小さな魔道具を取り出し、収納と繋がっているポケットからブラシまで取り出してさっさと青銀の髪まで整え始める。


 何が待ち構えているのか不安になるも、貴族女性の身支度程の細やかさではないのでコニーのするままに任せていると、ブラシを仕舞って斜め後に回り込んだコニーが、片手の魔道具を一瞬だけ掲げたのが分かった。


「え?何?」


 本当に僅かの動きであっという間に魔道具をポケットに仕舞ったコニーが、アレンハワードの部屋のクローゼットから改めて普段の衣装を取り出し、遣り切った感を滲ませながら再び着替えを促される。


「ええぇ?何‥‥?」


 言葉を発さないコニーは意外にも表情豊かな部分があるが、酷く満足気で達成感に満ちている以外はアレンハワードには理解出来ない為、釈然としないのがどうにも気持ち悪い。


 だが、にこやかな雰囲気で着替えを促され非日常な雰囲気の衣装も脱いで良いのならと、改めて着替えと朝の身支度を整えたのだが、最初の衣装を回収したコニーはまさしく脱兎の如き素早さで退出し、良く分からないままその日は平和に過ぎて行った。


 更に翌日。


 朝食を終えたルーナエレンに付き添う様に食堂から出て行ったコニーが、表情はないものの妙に足取りが軽かった気がした。

 思い出してみれば、朝食時のレオナルドも不自然ではない程度のご機嫌だったかも知れない。


 そして、気になりつつもカーターの魔道具・魔術式講師などの日課に追われ、その違和感を追求しなかった自分を責めたい気持ちにアレンハワードが陥ったのは、その日の陽の三刻(午後三時頃)になったばかりの頃の事。


 カーターやコニーは今日は業務でお茶を共にしておらず、図書室の地階の工房の休憩スペースでお茶の準備をしているのはアレンハワードだけで、珍しくルーナエレンは先にソファーに深く座って手元の何かをひたすらに眺めているらしい。


 普段から破格に愛らしいしこの自宅に居る時の彼女は、自分を脅かす存在が無いと安心しきっているので常に明るい表情をしているのだが、今日はどういう訳か背後に小花が咲溢れるかの如き浮かれっぷりに見えた。


 ティーテーブルへ甘いミルクティーを愛娘に淹れ、ころりとした木の実のクッキーと一緒に出してやると、まろい柔らかそうな頬を綻ばせてへにゃりとした笑顔を浮かべる。


「とうさま、みてみて!」

「どうしたの?エレン」

「これ!!」

「‥‥‥‥」


 愛娘の超絶愛らしい笑顔にアレンハワードは完全に油断をしていた。


 小さく可愛らしいお手手で大事に大事に掲げ持っていた、見覚えのない魔道具。

 どうやらそれは姿絵の進化したような魔道具なのか、投影した何かしらの絵姿を立体的により写実的に薄っすらと幻影として小さく浮かび上がらせる物らしい。


 新しい魔道具に気を取られていたアレンハワードだったが、すぐにその投影されている『像』に気付き絶句する。


「もしかしたら、エレンの、かあさまかも。みてたら、すごくだいすきがね、いっぱいになるの」

「‥‥‥‥そう、なんだね。ごめんねエレン。父様が記憶を失くしていなければ、きちんと教えてあげられるのに」

「ううん!エレンへいきだから!」


 小さく可愛らしいお手手で幻影ごと魔道具をぎゅっと抱きしめて、全幅の信頼を以てアレンハワードへ身体を寄せてくる愛娘に、喉まで出かかっているレオナルドへの苦言と不満を必死で押し込め、腕の中に幼い我が子を閉じ込める。


 確かに、親だけれども。

 明言していないから、セーフと言えばそうかも知れないけれど。


 脳裏にショックと共に刻まれたルーナエレンの手の中に大事に握り込まれた魔道具の幻影。

 昨朝の謎の撮影会とはフォルムや髪の色合いを微調整した上で、絶妙にぼやかした姿で女性っぽさを演出してあったけれど。


 嬉しそうにしている愛娘にそれは自分だとネタバラシをするだなんて、到底出来ないアレンハワードは逃げてこの場に現れなかったレオナルドとコニーに対し、静かな怒りを激らせるのだった。




お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


本日はこの87話とは別に、普段通りの時間に本編として88話を更新させて頂きます。

よろしくお願いします!


取り敢えず、ママンの名乗りは明確じゃ無いので、レオナルドさんも大したペナルティーは喰らわないだろうという目測での悪戯です。


お仕置きは例の魔道具を幻影が追尾機能追加の上で等身大おネエのお色気ポーズを仕込んだ部屋で、二日間の謹慎&その間エレンと接見禁止が言い渡されたとかナントカ?

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