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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
85/150

85、雛への事情聴取

 

 その後程なくして、工房での事情聴取はルーナエレンの可愛らしい欠伸一つで解散となり、ルークと雛は相変わらず暖炉の前のクッション群に埋もれて眠り、ルーナエレンは今夜から自室で眠る事となった。


 寝かしつけを終えてから、再び工房で顔を突き合わせているのはアレンハワードとレオナルド、そしてカーターのみ。


 メイヴィスは工房の片隅で嬉々としてルーナエレンの為の女の子らしい植物由来の雑貨や小物などを、一人で静かに興奮しながら実験したり試作を幾つも量産しているので放置されている。


「モルガンの三男が起きた後の扱い、アレンはどうするつもりなんだ?」

「うーん、カーターさんの前で言うのもちょっと気が引けるけど。どうも今日の様子を聞くに、恐らくエレンが苦手だと感じるタイプの子息っぽい、よね‥‥」


 振られた話題に関しては、愛娘の人見知りの範囲に新たな発見をした部分を匂わせる。どうやら成人未成人関係なく、大きな声や勢いがあり過ぎる相手は、苦手な傾向にあるようだった。

 だがこれは、殆ど外界と接触なく自分達だけしか居ない環境で育児をして来た弊害なのか、それとも血筋による嫌悪感に近い心理なのかは今の所不明である。


「うむ。まぁ預かる必要がなければそれでいいが、万が一継承問題とかが出てきた時の場合も考えると、アレンとしても置き場所に困るだろ?放置はしないって約束しちまったし」

「かといって、他国の家門の継承だなんて、私達には預かり知らぬ話だよ。(ルディ)の能力や状況によって制限をかけたり隠したりは、私達も関わる事は可能だけれど、目醒めてからでないと、今からは何とも言えないし‥‥」


 そう言ってカーターに申し訳なさそうに視線を向け、少しだけ眉間を難しげに寄せたアレンハワードだったが、レオナルドは容赦なく更に問題を突っ込んでくる。

 ルディの意識が覚醒するのは、間も無くだという予感があるのだろう。


「オレが今回メルヴィンに命じた『上位種族との交流』がきちんと為されれば、時間はかかるものの様々な種族が魔力量を増やせる道が多少なりとも出来るだろ?それらの取り組みを、次世代に継がせる方法も正しく周知させたならば、とも思ったが、最悪の場合‥‥益々エレンの存在が危険に晒される事になるからなぁ。どうしたものか‥‥」

「魔力を自覚する女性は、ほぼ貴族階級だからね。より質の高い魔力に接触するような魔術式に多く触れるのは、まだちょっと無理があるだろうね」

「うーん。あの三男もオレまで関わった魔改造で、守護狼三体も混ぜちまってるから、どうしても本能で隠蔽した後のエレンにも惹かれるだろうな。気を逸らそうにも‥‥もっとこう、現地の女が自らの魔力量を増やす方法を、もっと貪欲に模索する方向へ、意識改革するってところからだよなぁ」

「学府の門戸が比較的開放されている祖国(ネヴァン)であっても、学問好きな女性は本当に希少だったから‥‥。何より今も、豊かな魔力を保有している貴族女性が絶対的に少ない所為で、結婚と出産にばかり重きを置かれてる情勢は変わっていないだろうし‥‥」


 故郷での過去を思い出したのか、アレンハワードの表情が途轍もなく暗い。


 何処の国とて魔力量の豊かな女性は特に生まれ難い上に、諸々の事情により成人まで無事に育つ確率も低い。故に高位貴族社会では結婚適齢期の女性不足が深刻だし、どちらかといえば女性優位な婚姻が多いのが現状だ。


 そして高位貴族の女性優位という事は、彼女達の()()が比較的通り易い結婚市場であり、身の丈以上の婚姻もしくは婚約を押し付けられた見目麗しい高位貴族令息側は、相手の魔力量の釣り合いが悪いのが主な原因で、婚約者として扱えないという不本意な悪循環が罷り通る。


 更に力量が高い血族は始祖の霊格が高ければそれだけ見目も麗しいのが災いして、相応しくない格下の令嬢まで爵位すら無視しがちな縁談が持ちかけられる。

 その悪循環を少しでも解消すべく、サリヴァン家が主導の元あらゆる認識阻害や隠蔽の魔術具や魔導具を、王家と連動して長年に渡り研究開発して、先々代くらいから祖国では特に継承問題が深刻だった上位家門には、秘密裏に魔導具を限定的に普及させていたのだが。


 既に家門の魔力を保有する資質のない血もちらほらと出て、その最たる被害に遭ったのがアレンハワードの世代でもあったのだ。


 思い出した過去のあんまりな状況に、アイスブルーの瞳がどんよりとして光が消え掛かっていたが、コホンとレオナルドが咳払いをして話を続ける。


「現状の認識阻害の魔道具程度じゃ、阻害した状態ですら、外でエレンがどうなるか分からない。早いとこ素材をきちんと揃えるか、エレンの身を護れる十分な実力のある盾を側に置く事を考えないとな」

「‥‥エルフは嫌だ」

「‥‥‥‥‥‥おぉぅ」


 一応その候補は考えていないとばかりに、アレンハワードの昏く澱んだ呟きに若干顔色を青くして黒髪の美しい青年は頷いてみせた。







 * * * * *





 深夜日付も変わった闇の二刻頃、レオナルドは二階の暖炉前で身を丸めて眠る仔狼と、幾つかのクッションを間に隔てて眠る雛の様子を静かに見ていた。 

 それに気付いたコニーが暖炉の橙色の炎の灯りの中、クリリとした紅い目をレオナルドに向けて首を可愛らしく傾げて見せる。


 けれどコニーはレオナルドの眷属。そこから動かず見守るのみで、お行儀良く共有スペースにあるソファーの隅に座っていた。


 長身で艶やかな黒髪の青年は、音を一切立てずに雛をやや無造作に掬い上げると、コニーの座ったソファーへ歩み寄りそのまま膝に雛を乗せて座り、興味本位で確認とばかりに雛へ眷属として静かな声で語りかける。


「こら愚息。お前だろ?寝坊助の三男にちょっかい出したの」

『!!』


 現場を見られた訳でも特別何かをした訳でも無かったので、こんな風に言い当てられるとは思っていなかったであろう驚愕が、レオナルドの頭の中に直接伝わってくる。


「まぁ、別に責めてる訳じゃない。ただ、お前が何処までエレンの為に出来るのか、覚悟があるならオレは傍観するだけだし」

『かくご‥‥?』

「そうだ。エレンが嫌だと思う事や傷付いてしまう事があれば、最終的にはオレが全てをまっさらにしてやる。だけど今のエレンは、新しい世界に興味深々だろ?そんなエレンを護る為には力だけでは足りないし、知恵も人脈も必要だ」

『‥‥ボクが、ねむっていたあいだのそとのきおくも、ひつよう?』

「ああ、知識は確かに武器にもなるな」

『ほんとう?』

「勿論。エレンと会話が成立し得る賢さは、必須だからな。その点お前なら、エレンの探究心も満たせる存在だし。そうだ!アレンは認識してるか?エレンの実の父親だ」

『‥‥アレン、ハワード?』

「そう!エレンの好みはアイツだからなぁ。穏やかで物腰柔らかで博識、オマケに魔力も強くて前衛後衛どっちも熟す女難持ちの研究家」

『え?たたかうのにけんきゅうか??』

「なー?面白いだろ?」


 雛の背中をもふもふと撫でながら、レオナルドは可笑しそうに頬を緩める。


「今日、いや昨日の夕方か。お前の治療薬を、メイヴィスが指導してエレンが作ったんだ。だから、今日の朝には、そろそろ普通に暮らす準備が整う事だろう。これ以上、エレンに負担かけるな」

『わかり、ました。ちちうえ』

「いい返事だ。褒美にエレンに薬をあーんして貰えるよう、アレンに許可を取ってやろう。じゃあな、おやすみ」


 レオナルドは雛の返事も待たず、ソファーから立ち上がると片手で雛を抱えたまま、クッションを少し整えてから下ろしてやる。


 雛はルークは信用出来ると何となく感じてはいたが、その肉体はどうも懐かしさを覚える『狼』である事が不思議な存在だと感じていた。

 他の人達の会話から察するに、自分が生まれる前からのこの土地の守護を担っていた守護狼の聖獣の末裔らしく、それならば自分の魔力に触れた場合に、何かしらの変化があるかも知れないと考えた故の出来事だった。


 そして雛の予想通りというべきか、ルークが守護狼の子供から隔離され本人の意識が刺激されて現れたというのが現状。


 意図的に引き起こした訳ではないが、大好きなルーナエレンが不必要な負の感情を抱いてしまったのは、ほんの少しだけ失敗したと思わなくもない。


 心の奥底で少しだけ、同じように可愛がられる仔狼を疎んじてしまったのも事実だったが、レオナルドに見透かされながらも許容された事に、雛は安堵した。


 何でも引き受ける。

 それを覚悟したならば、レオナルドは何も言わないどころか後押しをしてくれるようだ。


 雛は、今日からの自分の立ち回りを思い描いて、朝を待ち遠しく感じていた。






お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


もう少し早く、話が展開出来る能力があれば‥‥_:(´ཀ`」 ∠):

今回雛の本性がちょっとだけお顔を出しました。

レオナルドはニヤニヤしながら、アドバイスです。

だって、エレンにパパって言われたいからぁ!>\\\\٩( 'ω' )و ////←レオナルド


次回は、雛始動予定。

エレンにべったべた出来るよう、うまく立ち回る所存です。by雛


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