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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
77/150

77、姉弟喧嘩

明けましておめでとう御座います(๑>◡<๑)


本年も、よろしくお願いいたします〜♪


 

 一瞬何が起きたのか理解が追い付いていなかったメルヴィンだったが、眼前でへたり込んでいる幼女と化した片割れが項垂れているのは変わらないのに、彼女を包む様に立ち昇る不穏な魔力の高まりが増すばかりの状況に気付いて息を呑んだ。


 浄化が済んでいるからこそ核のみの姿から再生が叶い、自分が呼び出されたとばかり考えていたのだが、まさか再び姉の身に何か負のエネルギーが作用したのかと、じわりと冷や汗が背筋を伝う。


『め、メイヴィス?大丈夫なの?』

『‥‥‥‥‥‥あんた‥‥』

『え?!何‥‥?どうした、の‥‥?』


 若草色の艶やかな髪が、俯いている事によりメイヴィスの顔を覆い隠しており、どんな表情をしているのか計り知れない。ただ、その地の底から響くような怨念の籠った幼い声は、どこかメルヴィンに怯えの感情を呼び起こさせる。


 何よりも、姉が地中深くで痩せ細りながらも必死に直向きに御子を護っていた気の遠くなる程の永い永い時の間、自分が無為に好き勝手に過ごして来た代償という、己の自覚の無さを突き付けられたばかりである。

 不祥の身に心苦しい心当たりしか無い状況下で(メイヴィス)が何に怒っているのか、逆に見当が付かない現状に置かれているメルヴィンなので、未だ自分の頭が下に痛い程に引っ張られている現象については、全く考えが及んでいない。


 ぐるぐると一人焦るメルヴィンに構う事なく、姉を包んでいる不穏な魔力はどんどんと濃度を増し、実体はないもののメルヴィンの様な妖精種には物理的な効力を持つまでになって行く。


 そしてメルヴィンの髪を掴んでいた魔力の小枝が、力を込めて更にぐいと下に引っ張られたと同時に、がっと顔を上げ詰め寄って来た幼女の若草色の瞳が、激しい怒りの炎を内包しているのが見えた。


『その姿!!!わたくしの本来の成るべき姿を盗ってんじゃないわよ!!!!なんなのよそのダイナマイツはっ!!』

『表現古っ!わがままボディとkがふぅっ!!ギブ!!ギブぅぅ!!!』


 雄叫びと共に素早い動きでメイヴィスの小枝に深緑の髪を絡め取られ、そのまま自分の絡められた髪でぐるりと首を締め上げられたメルヴィンは、姉の怨念を鎮めるべく必死に絡め取られている自らの髪を伝達媒体とし、サリヴァン親娘とレオナルドに出逢ってからの記憶を共有させる。


 同時に、少しずつ現状の自分達の姿を近付けるべく預かっていた土地の魔力を譲渡しようとしたが、既に魔力的には飽和状態にあるのか、殆ど姉には魔力も渡らず幼女姿から変化はなかった。


 それでも、記憶の共有には成功した様子で、次第にメルヴィンを戒めていた拘束が緩み姉の様子を伺う事が出来たものの、彼女は今度は別の何かに激しく衝撃を受け落ち込んでいる様子で、再びその場に崩れ落ちる。


『おぉおぉおそろしぃ事企んでくれやがってえぇぇ‥‥』

『あ、ごめ‥‥』

『ほんっっとにアホなの!?格が違い過ぎる処か世界規模の自殺行為じゃないのよぉぉ!!!』

『ほ、ほんと、ごめ‥‥』

『おネエプレイなんてしてる場合じゃないのよ!!あんたの数々のやらかしのお陰で、わたくしの未だ見ぬ春が消えちゃったじゃないのぉぉぉ!!!』

『え、超ロリババアのその姿で何随分な野望を‥‥』

『好きで成長出来なかったんじゃないのよぉぉぉぉ!!!!!』


 魂からの悲痛な雄叫びを挙げた姉に、メルヴィンは一気に現実に引き戻される。

 やはりアレンハワードの側近くには、女性として認識される存在は許されないのだと。


『ええと、レオナルド様に相談してみて、あとちょっとだけ大きくなれたら儲けもんって事で‥‥』

『きいぃっ!あんた!!完全に他人事だと思ってんでしょ!!丸刈りにしてやりたい!!!』

『メイヴィス、落ち着いて!教育に良くないって思われたら私たち、さっくり処されちゃう!』

『誰のせいよ!!!わたくしの青春を返しなさいよ!!!ダイナマイツな胸も返してよ!!!返してヨォぉぉ!!』


 精神的にはもう十分成熟している自称熟女なのに、どうやら外界での経験値が圧倒的に足りておらず、植物が存在する限りそれを依代とする事が可能になる程の能力を得たにも関わらず、中途半端な幼児にまでしか外見が成長出来なかったというメイヴィスの事情を共有によって知ったメルヴィンは、血を吐かんばかりに泣き叫ぶ不憫な姉を自然と憐れみの眼差しで見下ろしていた。


 そんな反応を返す弟に再び怒りが収まらなくなったのか、互いの間には既に話し合いなどではなく殺伐とした一触即発とも言える雰囲気に包まれていたのだが、そんな双子の遣り取りを気配を消して静かに静観していたコニーが、容赦なくぶった斬る様に間に割り込み、若草と深緑の二つの頭にそれぞれ両手を乗せる事数秒間。


 不意に、二人の身体が力を無くして崩れ落ちる。


 肉体に依存している種族であれば、激しい貧血症状と魔力の欠乏といった処なのだが、それを半精神生命体とも言える大妖精二人に対して同時に行使してくる可愛い姿の上司に、一時休戦を心で誓い合ったメルヴィンとメイヴィスは、紛う事なく双子であった。


 きゅるんとした紅玉の可愛らしいお目目で二人を見下ろしながら、コニーは双子から吸い上げた魔力を凝縮して出来た黄色と乳白色のコロリとした小花の結晶を大量生産し、何食わぬ様子でレオナルドの方へと持って去って行った。







 * * * * *






 子供達のお昼寝の邪魔をさせない為だけに隔離し、空間を隔てて双子の愉快な遣り取りを観察していたレオナルドだったが、お疲れ気味のアレンハワードを気遣って音声は完全に遮断していた。


 とは言え、見ているだけで醜い言い争いをしているのは容易に想像出来てしまう有り様だったので、一旦ルーナエレン達の元に彼を避難させようかと考えていたのだが、本人がそれを固辞してその場に留まり、結局レオナルドと一緒に彼等を観察している。


「‥‥エレンの教育の一部を、本当に彼女に任せて大丈夫だろうか?」


 ポツリと零されたアレンハワードの不安は、客観的に見ても致し方ないと言えるだろう。


 だが、レオナルドが示唆していた通り彼女はメルヴィンとは既に別次元の大妖精として、高みに至っているというのは実物というか本人を実際に目にしたので頭では分かっている。

 そしてその通常であれば有り得ない変化は、どうやらルーナエレンが関わっていなければ齎される事は無かったというレオナルドの解説も、納得したし正しく理解出来た。


 だがそれであっても、目の前で繰り広げられているであろう双子の凸凹コンビの醜い争いが、どうにも最愛の我が娘を想う父親として、一抹の不安を抱かせてしまうのだ。


 そんなアレンハワードの不安げな呟きを受けて、レオナルドは一瞬きょとんと青い眼を瞬かせて少しだけ考えを巡らせる様子を見せたが、何でもないと言わんばかりにあっさりと返事を寄越す。


「ああ?面白いんじゃないかと思ってるが‥‥そうだな。万に一つでも、エレンに悪影響なんぞがあってはならないからな。ちょおっとオレから、直々に『()()』しといてやるよ」

「えぇ?何だか不穏な響きだね‥‥?」


 漸く、冷え込むような無表情から若干の苦微笑をその麗しい(かんばせ)に浮かべたアレンハワードが、双子の無音の遣り取り(コント)を見つつレオナルドとそんな会話をしていたのだが、コニーの介入によっていつの間にやら騒動は鎮静化されたようだ。


 可愛らしい雪うさぎ型魔導人形の介入直後に床へと崩れ落ちたドライアド二名を放置し、ひょこひょことこちらに歩み寄って来た当人(コニー)が大量の上質素材をレオナルドに差し出す。


 それらの素材を受け取った黒髪の美丈夫は、至極愉しげに口の端を上げて不敵に嗤った。


「流石コニー、良い仕事をしたな。くくっ‥‥これだけ絞っておけば、やらかす元気も暫くは無いだろ」


 ころころとした花の形をした高濃度の魔力の結晶体を掌で少し弄んでから、レオナルドはその場で待機していたコニーのポケットへザラザラと無造作にそれらを仕舞い、こちらにやって来たコニーと入れ替わる様に、動けない双子の元へゆっくりと歩み寄って行ったのだった。







 

お読み頂き、有難うございます٩( ᐛ )و


双子ってことで、メルヴィンに少し寄せると当初は歌のお姉さん的な立ち位置にさせる筈だった本物のドライアドが。

あら不思議!ロリババ○扱いに!?

恋愛要素が本気でお留守!?



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