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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
76/150

76、発芽

メリークリスマス!


小4の頃の長男が小2だった当時の次男に、我が家のサンタさん事情を暴露したという涙の告発事件があり、泣きながら悔しさを告発してくる事件(現在の長男6年・次男4年‥‥)が勃発し、慌ただしいクリスマスイブとなってしまいました。。。


本年最後の更新なのに、遅刻してしまって申し訳ありません_:(´ཀ`」 ∠):

 

 己の不遇を延々と恨みがましく垂れ流すメルヴィンを適当に遇らい、ポットに入った茶が冷めてしまったので温め直しが必要だろうかと考える程度の時が経過した頃の事。


 極微かな違和感に顔を上げたレオナルドに釣られるように、アレンハワードも()()に気付き、意識をこの空間魔法(おうち)の全域に薄く広く拡げて変化を探る。


 一呼吸もしない内に、この屋敷で認識されていなかった新たな魔力が発露したのか、ぽんっと空間を微かに震わせる芽吹きの気配が意識の端に触れた。


「‥‥これは」

「ちっ、日陰でも過剰だったか」


 突然、目の前の二人が揃って顔を屋敷の裏側へと向けて零した言葉は何が起きたのか理解している風で、メルヴィンは思わず口を噤み下手な言葉を発しないよう沈黙を保つ。


 様子を見に行くのか、二人が席を立ち東屋から移動をしようと動き出したその時の事。


 鼓膜と意識を同時に大音響で揺さぶる『歌声』が、まるで稲妻でも落ちたかの様に突然強制的に耳と脳を貫く。と、同時に不自然にその『歌声』は、突然前触れもなくブツリと途切れてしまう。


 メルヴィンはその不意打ちとも言えるダメージを与えた大音響に、思考が追いつかないまま片膝で立ち上がりかけたが、既に目の前に居た筈のレオナルドもアレンハワードも、そして影のように控えていたコニーすら、居なくなっていた事に慌てた。


 そして必死に二人の気配を探って追いかけ、彼等が向かったであろう裏庭へと急いで向かってみると、そこには可愛らしい執事風上衣を身に付けたもふもふの雪うさぎと若草色の髪の幼女が、戯れるように組み合って転がっているではないか。


「現実逃避をするな。ちゃんと現実を見ろ」


 冷たい表情で青い瞳も心無しか死んでいるレオナルドが、到着して一瞬で固まってしまったメルヴィンに冷ややかに言い捨てる。


「戯れてないだろ、どう見ても。挙動不審な警戒対象を、コニーが絶讃拘束中だろ?」

『だって‥‥‥これ、どう見てもロリb‥‥‥』

「はぁ‥‥じゃあ、()()がメイヴィスとかいう姉君なんだね」

「なんな訳?これ以上幼児増えた処で、うちは託児所じゃないんだが?」

『うぅぅぅ‥‥‥』


 レオナルドにしては珍しく、嫌味では無く反論の余地の無い直球の正論を真正面から容赦なくメルヴィンにぶつけており、アレンハワードも頭が痛いとばかりに、コニーに目の前で口と鼻を執拗に塞がれ、背後から関節技を決められている幼女に落胆を隠す気力も湧かない様子だ。


 育児に携わって貰う予定が全速力で逆走していく現実に、アレンハワードは両手で顔を覆い項垂れてしまう。


「エレン、ごめんね‥‥サリヴァン家が‥‥というより私個人が、ここまで女難で無ければ‥‥君にきちんとした乳母を用意出来た筈なのに‥‥」


 項垂れたまま独り言を呟くアレンハワードの様子が余りにも不憫で、彼の女難の理由の一端を識るレオナルドはつい、手助けしてやる事を決意する。


 だがそうだとしても先ずは、きちんと互いに初対面の遣り取りを飛ばしてはいけないだろう。

 この先長い付き合いになるかも知れない新人と、きちんとした信頼関係を結ばなければ正しい新人研修(しつけ)も効果が変わってくるに違いない。


「はぁ‥‥取り敢えず、子供達がお昼寝しているので、大きな声は禁止とします。場所を移しましょう」


 余程精神的に疲れたのか、やや投げやりながらも丁寧な言葉遣いで切り出したアレンハワードが、コニーに向かって目配せをすると、乱雑に荷物を抱えるように拘束した幼女をコニーが引き摺って移動を開始する。


 長い長い溜息を吐いて、アレンハワードも屋敷に向かって歩き始めた。









 * * * * *






 捕獲されたメルヴィンの姉こと幼女ドライアドは、コニーによって大きめのナプキンでガッチリと口を塞がれて一人掛けのソファーに座らされており、その正面の大きめの三人掛けソファーにレオナルドとアレンハワード、その背後にカーターとメルヴィンが控える形で改めて対面する。


 既に幼女とコニーの絵面が相当精神的に厳しいものがあった様で、アレンハワードは普段の穏やかな雰囲気も霧散しており表情が消えている。


 従って、必然的にレオナルドが司会進行役を担う事にしたようだ。


「まず、最初に有害な超音波を発した為拘束するに至った。己の立場を理解しろ」


 綺麗な姿勢で氷の魔王の彫像と化して座っているアレンハワードに代わり、その横で尊大な態度で踏ん反り返りつつ長い脚を組み、目の前の幼女を底冷えするような青い瞳で睥睨するレオナルドは、生来から持ち合わせる威圧を隠す事なく対象にだけぶつけつつ言い放つ。


「お前は何処まで記憶を有している?光を与えられ、朽ちた姿からすっかり造りまで変わっている様子だが、何故お前程度の存在がその様な過剰な恩寵を受けられたか、認識はあるか?」


 問い掛けながらも返答出来ないのは最初から解っている高圧的な言葉から、背後に居ながらもメルヴィンは永い間対面が叶わなかった片割れを助ける術を、自分が何一つ持っていないのだと思い知らされる。


 ただ只管に、姉がこれ以上失態を侵さず与えられた職務に無事就ける事を願うしかない。


 あんなに銀の雫の姫君のお側に侍りたいと切望していた自分だが、正直レオナルドのここまでの厳しい態度に本能的な畏怖を抱かずには居られないのか、完全に腰が引けてしまった。

 恐らく自分はレオナルドとアレンハワードと『同性』だと知られているから、普段の雑ながらも気安い関係を持つ事が赦されているのだ。そして、彼等の愛娘が持っていた御守り(ほん)に一度危険だと判じられた事があるからこそ、彼等の愛娘(ルーナエレン)の側には近付けない対処だけは厳しく管理されるものの、それだけで済まされているのだと理解する。


 そんな自分の処遇と姉の立場を比較して推測したメルヴィンは、レオナルドとアレンハワードの態度から、彼等にとっての『異性』として、保護者の大人枠にぎりぎり入れたくないと考えているであろう相手の存在に思い至り、身を震わせた。


 対面するのは初めてながらも変わり果てた片割れは、明らかにこの目の前の彼等の干渉は微弱であり、それよりも別次元で高次元の干渉が遥かに色濃い気配がしてならない。


 向けられた威圧にガクガクと小さな身を震わせて、再び萎びてしまう程の滂沱の涙を流す片割れの姿を見ながら、メルヴィンは自分の推測が恐ろしくなり、敢えてその思考を閉ざして現実に集中する事にする。


「この屋敷や空間で何よりも一番重要で護られねばならないのは、たった一人の幼い女の子だ。此処に立ち入る事を赦された者全てが、彼女の為にあると言っても過言ではない。数千年も眠りこけていたお前達よりもあの子の存在の方が、『箱庭』にとって最後の機会だ」


 その彼女の養育の一端を担う事が与えられた栄誉であり、お前達の御子を助ける対価でもあると、レオナルドは冷たい声音で付け加えると、態とらしくゆっくりと頭をやや斜め後ろに控えるメルヴィンへ傾け口の端を上げた。


「片割れ同士でどれだけ通じ合っているのかは知らないが、お前はその弟の勝手なやらかしで、オレ達の助力と引き換えに売られた様なものだ。今更不当な解雇はしないが、二人でじっくり話をして納得したら呼べ」


 レオナルドがそれだけ言い終えると立ち上がり、コニーに視線を送ってからパチンと指を鳴らす。


 メルヴィンはレオナルドとアレンハワードの背後に控えていた筈が、音を認識した瞬間にレオナルドの『隔離空間』に片割れごと閉じ込められた。

 咄嗟に双子の大妖精は反応出来ず身を固くしてしまったが、コニーが姉メイヴィスの口と身体の拘束をするりと取ってから気配を完全に消した一連の動きの後、漸く我を取り戻す。


 呆然としていたのは、メルヴィンだけではなくメイヴィスもだったのだが、突如自分の身に起きた拘束と解放に理解が至ったのか、ずるりと床にへたり込んでしまう。


『メイヴィス!!』


 思わず姉の側に駆け寄り、膝を着いて彼女の様子を伺うように項垂れているのを心配気に覗き込んだのだが、突如頭が下に引っ張られた痛みに驚き深緑の眼を大きく見開いた。







本年中は、拙作をお読み頂き本当に有難うございます٩( ᐛ )و


来年も、ぼちぼちと執筆をしていく所存です♪

来年も、よろしくお願い致しま〜す!


そしてクリスマスイブに投稿するのに、そんな成分皆無すぎ_(:3 」∠)_



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