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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
69/150

69、密談(報連相)其の1

前半は保護者会議、後半は少し時間を遡ったピータン?視点の独白です。

 

 ここで言う処の保護者はつまり『雛』の、であり一応このマルティエと縁深()()()古の大妖精であり、メルヴィンの双子の姉にあたる存在を指している。


 根を共にしているメルヴィンの姿勢からは自らが根差す土地に愛着と忠誠に近いものを感じるが、ずっと地中にて存在してきた大半の年月を雛に傾けてきたであろう彼の大妖精は、一体何に一番重きを置いているのか。


 今は剥き出しの核のみとなっている状態なので、それも明確には分からない。


 ただ雛側の一連の状況を鑑みるに、かなりの信頼を持っているのは確かだろう。


「思っていたよりもエレンがね、雛の感情に思うものがあった様子なんだ‥‥」

「‥‥‥」


 場所を移動してから聞いた、ルーナエレン()離さないという部分に係るのがそれだと察し、レオナルドは少しだけ視線を落として考える。


 正直なところルーナエレンが雛を離さないというのは気に食わないのが本音ではあるが、箱庭の現状として我らが愛娘とほぼ似たような境遇であり近い存在たり得るのが、恐らくこの雛のみだと思われる。


 サリヴァンの短命は解消すべき課題だが、最悪アレンハワードとルーナエレンだけは『彼女』がどうにか拾い上げるだろうし、自分が何かしらの代償を払うのでも何ら問題は無い。


 ただ少しばかりこの時代の箱庭には、記憶に残るであろう関わりが幾つか生じてしまっている為、ルーナエレンが望み『彼女』が許容する限り、壊してしまわない程度で大なり小なり『小石』を投げ込んでやる事にしようと決意する。


 そんな事をつらつらと考え微かに頬を上げていると、不意に左頬が引っ張られる。


「レオナルド、エレンに見せられない表情になってる」

「おおっと」


 そう言えば、目の前の彼の機嫌も珍しく微妙とはいえ降下していたのを思い出し、レオナルドは摘まれていた頬が解放されてからコホンとわざとらしく咳払いをする。


 ほんの少し、黙ったままアレンハワードのアイスブルーの瞳を見上げる。


「で、お前はエレンの正真正銘実の父親で、今現実にちゃんと側に居て生きてて、存在してんだろ?」

「そう、だけど‥‥」


 じっとアイスブルーの目を見上げ、何かに耐えるように言い淀んだアレンハワードの次の言葉をしばらく待ってやる。

 だが、彼はレオナルドの促すような視線に気付いていても、思いを言葉に出す事を躊躇っている様子だった。


 軽く嘆息し、レオナルドはやれやれとばかりに語り掛ける。


「エレンはまだ幼いが、お前の娘なんだ。そこらの子供と一緒ではないしとても聡明な子だ」

「分かってる」

「何よりサリヴァンの特徴が濃いお前の娘なんだろ」

「‥‥‥分かってる」

「‥‥多分、ちょっと違うと思うぞ」

「?」


 きっとアレンハワードは片親であり自分が愛娘に対して母親について教えてやれない事が、今回の雛に対する同情と共感に思い至ったのだろう。

 それは未だに『彼女』を思い出せて居ないという彼自身の後ろめたさであり、もどかしさでもあるのだろう。


 また、自分がそう遠くない未来、ルーナエレンと死別する事実がある為に感じる焦燥であり、苦悩も多分にあるかも知れない。


 だがレオナルドは何となくではあるが、今回雛の感情を読み取ったルーナエレンが何を思ったのか、理解出来る気がしたのだ。


 きっと彼女は、父親に徐々に迫る死神の存在を感じていても表に出さず、精一杯今を大好きな父親との時間を全身で感じ大切にしている。

 小さな身体と頭脳でありながら、必死に手掛かりを探し出来る事を増やし、明るく振る舞っている。


 この先ずっと変わらず享受できる幸せではないと理解しているからこそ、とても大切に思っているそんな父親が、不意に全世界から存在を消されてしまったら。


 そう、感じた故に自分が眠っているにも関わらず、雛から手を離さないのだろう。


「はぁ‥‥まあいい。で?保護者の復旧だ」

「そうだね‥‥」

「お前が構わないのなら、オレに任せてくれていいんだぜ?」

「‥‥それは、平気なのかい?既に君の眷属が世界に存在してしまっては居るけど、増やすのは理に触れたりは」

「コニーを齧ってしまった雛は、いっその事オレの管理下に置く方がいいだろ。それにその乳母がわりなら、やっぱりメルヴィンとは少し権限を分けるべきだと考えるが?」

「‥‥‥」


 理に抵触しレオナルドに何かあった場合の事を言われているのは理解出来ているが、それでもルーナエレンの今後の環境を考えるとついついあれこれとしてしまうのだから仕方が無いだろう。


 そして似たような思考回路なアレンハワードも、それが理解出来てしまうが為に言葉にしないでは居られなかったのだ。


「このオレを心配するなんざ、アレンとエレンくらいだ」

「ふふ、光栄な事だね」

「さあて、戻ったらまずモケモケと話し合いが必要だな!」

「‥‥‥お手柔らかにね」






 * * * * *






 ボクが待ち望んでいた愛しい『君』との距離がもどかしく、根拠のない執着に迫る侵食して来ていた『黒』い何かとの攻防は、もうボクの陥落寸前といえる状態でありながらも辛うじて自我を保っている状態だった。


 そして愛しい存在を感じてから少しして、不意に大地に混じるようになった瑞々しく甘い魔力はボクだけでなく『黒』い何かにも多大な影響があるらしく、意識をしっかり保っていないと全部を乗っ取られてしまう様な衝動をボクに齎した。


 存在を近くに感じその芳しい甘やかな魔力を僅かでも感じる度に、朦朧としていた以前とは別で喰らい尽くしたいというあの感情は、既に『黒』の影響だと判断が出来た。


 壊してはいけない、守らなくてはいけない存在なのに、あんな倒錯した想いに駆られるなんて。


 既にボクを護っていた存在は、堕ちたながらも自らも殻に固く閉じ籠り、繭にボク毎閉じ籠って暴走と暴発を何とか抑え込んでいるのが分かる。


 ここできっと、ボクまで堕ちきってしまえばもう、愛しい存在は守れない。

 守れなければ、もうこんな世界を存続させる意味もない。

 破壊し尽くす『黒』に完全に染まって、ボクは恐らく全てを壊して回るのだろう。


 未だ見ぬ、外の世界の全てを。


 そんな事を想い、時間の感覚もない世界で必死に自我を保っていた時の事。

 ふと、急に全ての外界の感情や情報がぴたりと入って来なくなった。


 それは、今まで無意識ながらも必死で押し留めていた『黒』に対しても同様で、そこに存在はしているもののそれ以上にボクの中に侵食しようとする力だけが働いていないかの様な状態だった。


 時間と、空間を閉ざされた感覚といえばいいのだろうか。


 ただ、敵意は無い。そして、残念ながらボクではどうしようもない程の技術と能力での隔絶。


 変化を待つしか出来ないボクだけど、元より長い永い時間をひたすらに耐えてきたからこそ、変化のある今ほんの少し待つくらいは何でも無い事だ。


 ただ、慕わしい愛しい存在がすぐ近くに感じられたのに、それもこの圧倒的な力で隔絶されてしまったのが非常に悔しい。


 じっと息を潜め耳を澄まし気配の変化を探る。

 少しの変化も見逃さないつもりではいるのだが、ボクの力では隔離された世界は分からないままだった。


 やがて、慣れてきたボクは微かではあるが、隔離されているもののすぐ近くで何かしらの戦闘が始まったのだと理解する。


 ああ、きっと君がすぐ近くにいるに違いない。

 ボクが迎えに行く筈だったのに、情けない事この上ない。


 そう、まだこの時はちょっとした余裕があったのだと後になって思う。


 不意に辺りが静かになった気がしたが、ボクを幾重にも護っていた懐かしい草木の香りと音色が、ぶつりと途切れた。

 それと全く同時に、ボクの意識も不意に『黒』に飲み込まれてしまった。


 思っていた以上に、ボクはこの長い永い時間を共にした守護者に、心を預けていたのか。


 ああ、彼の愛しき君は、どんな味がするのだろうか。













お読み頂き、ありがとうございます٩( ᐛ )و


礼儀正しい腹黒ショタが好きっぽい筆者ですが、ちょっと情けないピータンに仕上がりそうでドキドキしてます。


次回レオナルドさんの教育的指導?

ああ、ルディ君もお寝坊さんで困っちゃう。


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