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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
66/150

66、繭の中 其の2

更新が遅くなり、申し訳ありませんでした。

リアルが立て込んで、執筆する余裕が持てず、こんな状況に_:(´ཀ`」 ∠):


皆様も、くれぐれもご自愛下さいませ。。。。。

 

 白い炎に灼かれ中心部から脆く崩れて行くドライアドの片割れだった残骸を、舞台を覆う様に周囲を囲んでいた「芽の様なもの」から少し成長した若木達がぎゅっと集まって来る。

 ルーナエレンの魔力が籠められていた影響なのか、アレンハワードの齎した炎が自身に移るも特に燃え落ちる様子もなく、どんどんと細い枝を網の様に互いに絡めて密集し、固く堅く固まって行く。


 そしてレオナルドがその炎を宿したままの巨大な塊を、守護狼に対処した時と同じ手法で更に圧縮しながら、空間に閉じ込めてしまう。

 そういえば、この塊は現在居る繭と規模こそ違うが酷似しており、同じドライアドを宿す菩提樹の種による仕様を感じずには居られないものだ。

 であれば、この塊を元にメイヴィスとやらを再生させる方法や素材等の算段を頭の中で捏ねながら、良い具合にアレンハワードとルーナエレンの魔力も含んだ事で、かなり勝手の良い出来上がりが期待出来ると踏んでいる。


 取り敢えずはこの空間の外殻とも云える舞台を覆う繭を、どうにか解除もしくは浄化してからで良い。


 そうして本来の『寝所』の場所に舞台と台座を戻し、御子とやらとドライアド(姉)の状態を確認の上持ち帰り、再生と孵化の為にじっくりと解析したり実験したら良いだろう。


「エレン、声は何か聞こえる?」

「ううん、なんていうか‥‥しずかなの」

「ふむ」


 似た考えに至ったであろうアレンハワードは、愛娘に周囲の黒霧の呪いの状況を確認すべく、彼女にのみ聴く事が出来る「声」について尋ね、その応えに若干の違和感を親娘共に持った様子だった。


 外殻の繭をどう解除するにしても、黒霧の呪いが周囲にどの様に作用するか計り知れない。だが前回の戦闘で体験した呪いの具現化は、どうやらあの「声」に呼応する依代の様な物質的な核が必要なのだと推測される。

 自分達は護符がある上にルーナエレンも側に居るので、この場で改めて黒く染めるよりも長年影響下に晒されていた存在の方が、より危険になるだろう。


 この空間に該当する核になり得る存在が何も無ければ、対応を後回しにしてもそんなに深刻な状況にはならない筈だと考えたレオナルドは、ドライアドの核の浄化に勤しんでいたルーナエレンのすぐ傍に控える、本来魔導ポシェットである筈のコニーにまずドライアドの塊を放り、キャッチする頃合いで御子の卵も投げ渡す。


 それぞれが警戒は解かないまま、徐々に撤収へ気持ちが移る中。


 相次いで投げ渡されたコニーは無表情ながらも、既に次の投球を受け取る為に急いでドライアドの塊をするんと収納へ収めるべくポケットに入れた。

 雪兎の可愛らしいベストのポケットの入り口とは明らかに大きさが合っていないが、常識を放置した様な仕様なので抵抗無く収まり、次いで大きな卵も受け取る体勢を取ったその時。


 一瞬にして薄く硬質な何かが幾重も幾重も割れる様な裂けるような、神経に直接障る大音響がその場を埋め尽くし、コニーは咄嗟に右後脚で高らかに何かを蹴り上げた。








 * * * * *







 舞台付近から愛娘が控えていた後方へ視線を向け、周囲の異変を注意深く探りながらそちらへ歩み寄っていたアレンハワードは、コニーに起こった状況とその背後で両手で耳を塞いで蹲るルーナエレンを視界に収めた途端、全速力で走り出した。


 最初の一歩で半分の距離を詰めた頃には、普段の愛らしい小さな声ではない悲痛な悲鳴が届く。


「いやあぁぁっ!!!」

「エレン!!!」


 勢いを殺さず身を竦めたままのルーナエレンをその腕に抱え上げ、呆けてしまっていたメルヴィンに向かって叫ぶ。


「カーターとルークの肉体の保護を!」

「そいつらを保護したら、お前毎地上に飛ばす!!」

『は、はいっ!』


 一気に反対側へと移動し、レオナルドもすぐさまメルヴィンに対応させた二人と本人を乱雑にこの空間から地上へと放り投げる。


「エレンは?!」

「駄目だ耳を塞いで混乱してる!」

「声か!」

「恐らく」


 普段ならば絶対にアレンハワードの声に反応を示さないだなんて有り得ないのに、いくら呼び掛けても小さな掌で両方の耳を必死に押え、ブルブルと震えて唇を噛み締めているだけのルーナエレンの様子に、二人の保護者は血の気が退いた顔で周囲に視線を巡らせる。


 レオナルドとアレンハワードよりも、ここではルーナエレンが一番目に見えない悪意に敏感なのだ。

 それでも、彼女は今まで保護者二人の規格外の強さを知っている為、ここまで怯えた事は一度も無い。


 にも関わらずのこの状態、二人の警戒は否が応にも増さざるを得ない。


 視界に写る範囲の異変は、反対側の床にコニーの白い身体が力なく落ちていて、その近くに小さくて黒い何かが蠢いてるのが見える事だろう。


 硬質なものが軋むような不気味な音がゴキリバキリと響くと同時に、見えていた黒い物体は歪に身体を歪ませ膨張させ、更にコニーに向かって這いずっている。


 その周囲には、ルーナエレンの護符の効果範囲を無理矢理抉じ開けた様に、黒い霧が集まっていた。


「まずい、あいつって卵の中身か?!」

「どう見ても、何か吸収してる、よね?」

「くそ!コニー!!起きろ!!」


 レオナルドの焦りの含まれた声にびくりと白い身体を震わせたコニーは、立ち上がろうとして失敗し、再び床に転がってしまう。


「どうする?まだあいつ十分に動けないかも知れないが、オレの空間を食い破って孵化したぞ?!」

「コニーの右脚も恐らく食べたみたいだよね?」

「更に現在進行形で黒い呪いも吸ってるな」


 これでは外にルーナエレンを避難させる事も難しい。

 避難したところで、恐らくだが追ってくるだろう。


 未だ懸命に身を起こそうとしているコニーと黒い何かの距離は、もどかしい程ジリジリと縮まっている。


「ああ、徐々にあいつでかくなってるな‥‥コニー丸呑みサイズになる前に、どうにかしないと」


 思わずといった風に呟いたレオナルドの声が届いたのだろうか。

 腕の中の愛娘が、その時ピクリと身体を震わせ、ガバッと顔を上げて涙に濡れた大きな紫水晶の瞳をアレンハワードに合わせる。

 漸く意識を此方に向けられる様になったようだ。


「コニー、きて!」


 強くアレンハワードの外套を握り、振り返るようにコニーの方向へ身を捩り叫ぶと、ふるりとコニーの身体が震え、四つん這いになりつつヨタヨタと外周を辿って迫り来る存在を避ける様に此方に向かおうとした。

 その背後の黒い何者かは、身体の変形と纏わせた黒い霧とで動きが更に鈍っているのか、次第にコニーとの距離が離れ、一旦それ以上動く事を止めたようだ。


「オレの眷属になってても、エレンが一番とかオレ達そっくりすぎ?」

「ちょっとこの状況で、それ言う?」


 緊迫した状況なのは確かだが、レオナルドの一言によって少しだけ身体の強張りを親娘共々解く事が出来た。


 ゴシゴシと濡れた目元を柔らかな袖口で拭うと、ルーナエレンはポケットから空間魔法(おうち)の庭から持ってきた木の実を二つ、取り出して見せる。


「とうさま!これいっこ、こおらせて!」

「いいよ、一個だけ?」


 リクエストを受けてすぐに一つを凍らせてやると、今度はレオナルドの顔の前にそれを差し出す。


「レオナ、これフーフーして!」

「ええ?いいけど。どっちも?魔力付き?」

「うん。おねがい」


 差し出された掌の上の木の実に、平等に魔力を込めてフーッと息を吹き掛けてやると、キラキラと魔力を帯びた二種類の木の実が出来あがる。


 更に彼女はポケットから追加でメルヴィンから搾取されていた花の結晶を取り出し、二つの木の実と結晶を纏めてぎゅっと白っぽい魔力を注いで見せた。


「レオナ!これぎゅっとちいさくとじこめて!」

「おお?」


 言われるままに質量を圧縮して三つを彼女の片手に握れる程度の塊にしてやると、自分で父親から降りて自力で立つと、彼女は勢いよく走り出した。


「あ、ちょっと!」

「エレン?!」


 余りにも普段から想像出来ない速さで走り出した為、アレンハワードもレオナルドもあっけに取られて初動が遅れてしまった。


 そして想像通り、可愛らしい足が縺れてスッテーンと転んでしまう。


「あああエレン!!!」

「怪我してないか?!」


 飛び出した保護者二人に気付いてはいるが、優先順位はそちらではないとばかりに、ルーナエレンは顔を上げ、視線の先のコニーに向かって在らん限りの声を上げた。


「コニー!!けって!!」


 転んでしまった衝撃と反動で、小さな掌から転がり落ちて転がった塊とコニーとの距離は、それなりにまだ存在したが、ルーナエレンの必死な声に励まされるように、コニーは先程までの弱々しさが嘘のような、華麗な蹴りを左脚で決めてみせた。











 

腐ってやがる。



って言ってみたかっただけです(照


お読み頂き、有難うございます٩( ᐛ )و


比較的、エレンちゃんが急に自由に動き出すので、ママンお話考えるの大変です。


そして徐々にブックマークして下さる奇特で優しいお方が増えてきていて、大変嬉しく思っている今日この頃です。

とっても励みになっております!有難うございますぅぅぅぅ_:(´ཀ`」 ∠):


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