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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
65/150

65、繭の中 其の1

更新が遅れてしまい申し訳ございません(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)



 

 例えるならば繭の中は、ねっとりと泥濘(ぬかる)んだ不快な泥の底なし沼の様な、高濃度の異質で不快な魔素で満ちていた。

 きっと今回新たにルーナエレンが創り出した浄化の護符の働きが無ければ、レオナルドとコニー以外の者は多少の差はあれど無事では済まなかったに違いない。


 護符での浄化作用をその身に受けていても尚、メルヴィンは一呼吸毎に思考が暗く澱んでいく感覚に襲われ、無意識に身を震わせる。


 視界は黒い霧に覆われており、内部の状態は何かしらの認識阻害が働いているのか、ややゆっくりとした脈打つ鼓動音が不気味にも空気を伝って届く他は、この一瞬で得られる情報は無い。

 重く濁った質量の空気を吸う事すら躊躇う程に、只管に闇に染まっている。


 そんな状況で皆が動きを停める中、父親の腕の中でルーナエレンはぎゅっと硬く目を閉じ、意識的に自分の中の魔力を精一杯父やレオナルド達に纏わせる。

 そうして意識的にゆっくりと息を吐き出した後、一度アレンハワードの首にぎゅっと強く縋り付いてから腕を解き、するりと一人で地に足を着ける。


 不思議と会話は無くても、全員動きに躊躇いは見られなかった。

 地中深く隔絶された空間に夥しい数の稲光が空間を白く灼き、雷鳴が轟いた一瞬の後。

 その場にルーナエレンとコニーを置いて、一斉に地を蹴った。


 先制攻撃となった雷撃が捉え穿った何かは、本来の菩提樹の内部組織だったのだろう。生きたまま灼かれたのか、生木の焼ける様な匂いに微かに混じる甘い毒花の様な臭いを放ち、それが辺りに充満し始める。


 同時にずるずると重い何かを引摺る音と微振動が鼓膜と足裏に響くが、それがどちらかと言うと遠去かるものであると判断出来た為、ルークの雷撃とアレンハワードの氷柱の魔術が音の辿る僅か先を読み、瞬時に空間を切り裂いた。


 黒く濁った魔力と澱んだ空気が一瞬にして、殺意に染まる。

 まだ魔術を放った相手にしか意識は向かっておらず、凝った悪意が先頭に居たアレンハワードとルークへと集中した。


「だめぇっ!!」


 感じた事のない程の悪意と殺意がアレンハワードに向けられ、咄嗟にルーナエレンは叫んでしまう。

 それと同時に、以前メルヴィンに持たされた小袋に入った種に自分の魔力と願いを込めて、空中にばら撒いた。


 流れるような動きをコニーが見せて、放物線を描いてまだ空中に滞空していた複数の種を次々に蹴り飛ばし、繭の空間内の至る所で爆散させると幾分濁った空気が浄化されたのか、視界が随分と拓けたようだ。


「ありがとうエレン!」

「流石!エレンが正義だ!」

『オォォ、爆散シタ種、中央デ何カ締メテル』

『ええ?!ぇぇえ!!!早すぎない?!?!』


 空間の中央には石造りの舞台の様な円形の台座があり、その中心には黒く朽ちた花がある。

 異様な事にその茎は丸く太っていて、そこに楕円の何かを抱え込んでいる様な形状をしていて、花も茎も大人の背丈程もあった。


『メイヴィスの花?!いや、でも』

「じゃあ、御子とやらの卵はこの中か。護っていたが限界を超えてしまったのかもな」


 花は朽ちているし大きさも大きく元の姿は判別が難しい。

 だが、あの紫を帯びた黒の色合いは、森で見た記憶と重なる。


 自然と警戒が強くなるアレンハワードとレオナルドとルークに、他のメンバーも気を抜く事なく身構えた。


「先に依代にされそうなヤツ隔離しとくか」


 そう呟くと、レオナルドはさっさと何かを呑み込んで肥えた部分の茎をサクッと空間で他と隔離する。

 ゴロリと呑まれていた楕円がまろび出て、隔絶されている筈の茎と茎から黒が溢れ出す。


 耳を劈く悲鳴が響いた。








 * * * * *





 徐々にルーナエレンとコニーが爆散させた種から芽吹いた何かは、地を這うように舞台の台座に集まって行く。


 そこに轟いた悲鳴にほんの一瞬硬直状態になり動けなくなるが、レオナルドは勿論の事ルークとコニーと芽吹いた何かはほぼ影響が無かったのか既にフォローに動いている。

 するすると網のように舞台の周囲を上下左右で囲って行き、ルークが紫電で以って蠢こうとする根のようなものを牽制し押し留める。


 それでもまだ続く茎と茎を空間毎切り離された朽ちた花から迸る悲鳴に、ルーナエレンは咄嗟に心情を読み取りそれを前方のアレンハワード達に伝えるべく声を張る。


「そのおはな、みどりのひとの、おねえさん!ないてるの!」

『え!?嘘これメイヴィス?!』

「何だよお前双子とか言ってたくせに二卵性だろ」

『ええぇえ?!』


 片割れとか抜かしつつどこに自分の姉がいるのか判別出来なかったメルヴィンに、レオナルドが場違いな程の軽口を叩く。


「とられたってあわててる!おこってる!くろいのに、きもち、そまっちゃう!!」

「やっぱり茎に呑まれてたのが御子とやらなんだね」

「黒いのってアレか‥‥じゃあ、アレンもエレンも森の時と同じ感じで!」

「分かった」


 カーターはルーナエレンとコニーが居る後衛寄りで、半狂乱になった木の根が地面から襲い掛かる度に蹴り飛ばしたり、腕で軌道を逸らしたりして上手く躱している。

 自身に触れた瞬間に小さな範囲ながらも魔術を併用しているのか、カーターが触れた根はその部分が酷く細く乾き、脆くなって衝撃で簡単に崩れてしまう。


 カーターよりも少し前衛寄りで注意深く全てを観ていたレオナルドは、カーターの器用で状況判断に長けた魔術と戦闘能力に、思わず口の端をわずかに上げた。


「面白い、良いなそれ」

「ありがとう存じます」


 新しい属性はお家でなければ使えないと話していたが、彼は火と水の初級の魔術式を組合せて所謂「洗濯物を一瞬で乾かす生活魔道具」を参考に、接敵する瞬間に()()()()して使用しているようだ。


 長年侍従をやっていた彼だからこその機転であろうそれが、酷く愉快で心地良いとレオナルドは思う。


 前方ではアレンハワードとルークが、徐々に包囲網を狭められている朽ちた花だった存在と黒い靄を逃さぬよう、更に相手を牽制したり削ったりしている。


 レオナルドの予測では、メルヴィンよりも格の高い姉が、呪いに侵されながらもぎりぎりで御子を護っており、今現在の状況は御子を隔離した所為もあってドライアドが闇堕ち暴走一歩手前、守護狼の時とは違ってまだ「生きて」いる。

 ドライアドの魂とも言える魔核を保護した上で他を処分し、憑依してしまった部分は空間にぎゅっとしてルーナエレンがゆっくり漂白作業をしたら、乱暴ではあるが問題解決の筈なのだ。


 御子の状態の確認や状況次第では浄化も必要かも知れないが、今は引篭もり中らしいのでこれはこれで幸いである。


 恐らく、この読みはアレンハワードもかなり近い状態で把握しているだろう。


「おいメルヴィン!核は何処だ」

『っ!!』

「命令が必要か?早くしろ」

『く‥‥可視化、誘導します‥‥』


 既に契約を刻まれてしまっているにも関わらず、己だけではなく片割れの命をも晒す事に、メルヴィンは苦悶の表情を浮かべたが、自分の胸元に両手を押し当て体内から深く澄んだ拳大の深緑の蕾を浮かび上がらせた。


 そして、メルヴィンが両手でその蕾を掬う様に口元に持ち上げ、そっと艶やかな唇を寄せた時。


 朽ちた巨大な花の俯いた花弁の隙間から、ころりと若草色の蕾が零れ落ち、アレンハワードがルークの巻き起こす風に載ってそれを拾い上げ、ルーナエレンをカーターに一時的に任せたコニーがすかさず受け取り戻って行く。


 視界の端でルーナエレンがコニーから蕾を受け取り浄化を試す様子を確認してから、アレンハワードはすぐさま核を無くしてゆっくりと黒く崩れていく朽ちた花の成れの果てに向かって、白い炎を宿した剣を一息に突き立てた。







 


お読み頂き、ありがとうございます٩( 'ω' )و


次回やっとピータン発掘作業予定です_:(´ཀ`」 ∠):

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