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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
59/150

59、オリエンテーション


日中暑くなってきましたね!

 

切りどころがちょっと分からなくなってしまい、いつになく長くなりました_(:3 」∠)_


 

 結局この日カーターの為に作成された魔導具は、事前に言っていた素材よりも少々上質な素材に変更し、加えて蔓部分に追加した飾りの魔石に新たな魔術式を追加しておいたものと、魔道銀(ミスリル)を芯に加工した質の良いシンプルな指輪の二点。

 カーターの魔道具作成がある程度形になれば早い段階で外での旅程も同行する事になるので、温度調節機能と状態保存を付与した外套と使用権限は低いものの、収納と繋がる革の鞄とベルトというラインナップとなった。


 その他の消耗品扱いの魔道具は日用品や衣類に至るまで、コニーが追々要望を取り入れながら作成する事になっているし、部屋に用意された家具や寝具など諸々の備品はレオナルドからの再就職祝い的な扱いで、他の部屋と同様一括で揃えられる。


 そしてモノクルと指輪をカーターの見ている目の前で、魔術式の付与や定着、部品一つにも魔道具としての機能を次々に盛り込んで組み上げて見せた、規格外過ぎる旅の魔術師を自称するアレンハワードの知識と技量にまず現実を疑わずには居られなかったし、次いで極自然に裏庭の小川に居たという小さな水色の稚魚(種類不明)とてんとう虫を、図書室の工房に持ち込んで来たかと思えば、下級とはいえそれらを妖精に昇華させ、眩いばかりの満面の笑顔でそのまカータに紹介して来たルーナエレンにも、目眩を覚えずには居られなかった。


 トドメとして、二人のそれらを別段気にした様子も見せず、呼び寄せて本来奔放である彼らに何か言い含め、ある程度自分の手足の若く従順に扱う黒髪の少女も身震いする程恐ろしい。


 だが、魔術契約を交わした効力なのか、カーターにとってもはや彼等は身内であり仕える相手となっている。しかも彼等とは契約上の関係とはいえ、レオナルドと名乗った少女はともかく、サリヴァン親娘の善性は揺るぎないと確信出来る為、カーターは自分に課せられた魔道具作成に関する業務が無事に熟せるかという点のみが、唯一の不安だと感じずには居られなかった。


「全部を説明する時間が惜しいので、把握しておいた方が良い機能だけ口頭説明する。後でアレンから仕様書提出して貰うから、使い熟せるように頑張ってくれ」

「体調の変化にも慣れてきたら、きっと色々と実感して貰えると思うよ。隠し機能を追々把握して理解するのが、今の課題かな」


 二人にそう告げられてからモノクルの蔓を首に掛け、右手の中指に指輪を嵌めたカーターは、自分という存在が軽く内側から造り変えられていくような錯覚を覚える。


 だが、己の内部からの変化に茫然としているカーターに構う事無く語られる、レオナルドの言葉はうまく聞き取る事が出来なかったというのに、勝手に内容が頭に整理され残されていくではないか。


 それによれば、速記と速読、思考加速の効果が若干上がる補助の魔術がモノクルの枠、蔓部分に自身の森の属性を経由した軽い回復魔術、魔力循環の補助魔術、レンズ自体に魔力の可視化の補助魔術があるという。


 それらはある程度は大気中の魔素を自動的に利用し、慣れれば常時発動ではなく切り替えも可能だそうだ。


 ここまでの話で十二分にアレンハワードが類い稀なる魔術師で、魔道具どころか現在は失われている技術とも言える『魔導具』も、容易に創り出せる人物であると理解出来る。

 それに加えて少し確認しただけでも幻とも言われる希少な素材も、見た事もない高度な内容が記された教材も、『龍の寝所』であるこの空間の外よりも更に潤沢で、高密度の魔素的な環境も揃っている上、視界的にも神に近しい存在感の見目麗しく眩い人物しか存在していない。


「ここは、神の隠れ家か楽園‥‥なのでしょうか‥‥」


 思わず溢れたカーターの呟きに、彼以外が何となくそれぞれ目を見合わせて苦笑いを浮かべてしまった。







 * * * * *





 宵の二刻を半分程過ぎた頃。


 所謂幼児の居る家庭の夕刻以降の日程と言えば、勿論夕食も入浴も就寝も早い幼児を優先しており、既に良い子(ルーナエレン)は夢の中。

 寝かし付けとしてレオナルドがまだ子供部屋に居る様だが、この邸内には魔導人形コニーを含めあらゆる魔道具が充実している事もあり、本当に使用人の一人も居ない暮らし振りにも関わらず、日常生活の中での雑事の必要は余りにも少なかった。


 その為自然と宛てがわれた自室ではなく、図書室の地階にある工房へアレンハワードもカーターも足を運んでおり、年齢的な外見は宛ら教師と生徒が逆転しているものの、授業の様相を呈している。


「もうカーターさんには隠す必要は無いので、改めて少し詳しく自己紹介をさせて貰います。もうお気付きかも知れませんが、私はネヴァンの王立魔術研究院を司る家門の直系です。我が血族はとある『呪い』で短命故に、いつしか産まれながらに記憶継承を得ております」


 それから、アレンハワードはなるべく客観的に自らの事を話し始めた。


 自国の王家よりも厳しく管理された血族で、魔力的な釣り合いも然る事ながら、正しく記憶継承や能力を持つ後継を得るには、限られた血筋しか成し得なかったのだという事。極端に言えば、それらに見合わない異性には、男女ともに欠片も興味を惹かれないし、無理をしたとしても子孫を残せない一族なのだと言う。


 そして詳細は省かれたが、どうにもならない身の危険が迫った為、無理矢理国を出奔し天山に逃れ研究に没頭して居たのだが、研究の仕上げ段階になって魔術式を暴発させる事故を起こしてしまい、一度死を経験したと思われると、なかなかに衝撃的な告白を穏やかな表情のまま告げられた。


 それを聞いたカーターは、思わずと言った風に話を遮ってしまう。


「お、お待ち下さい!サリヴァン様は、その、幾つの時のお話をされているのですか!」

「名で、アレンハワードで結構ですよ。ええと‥‥そう、確か実家を出たのが十四歳で、術式を暴発させたのは確か十五歳になったばかりだったと、思います」

「は?‥‥幾ら記憶継承ですか?その恩恵があり、実年齢よりも早熟な家系だとおっしゃられましても‥‥わたくしめには、到底理解致し兼ねるお話しでございます‥‥」

「あぁ、ちょっとというか、かなり色々と不回避の煩わしいあれこれが重なってしまって、つい」


 十四歳と言えばほぼどの国であっても成人手前の筈である。ついうっかりで、名実共に魔導王国の最高峰の知を誇ると国外にも広く知られる王立魔術研究院に関わる、未成年とはいえかなりの重要人物が家出どころか国から逃亡を図るなど、その衝撃たるや規格外にも程があるというものだ。


 どうやら彼は第一印象よりも少し幼く、若干無鉄砲な性質(たち)なのかも知れないと、カーターは己の新しい主となった美しい青年を見た。


 だが上手く二の句が継げないで薄い灰緑の眼を泳がせていたカーターに、苦微笑を浮かべてアレンハワードは更なる爆弾を落としてくる。


「薄らと私をずっと治療して献身してくれた存在があったのは、記憶しているんですけどね‥‥ああ、言い難いんですが、その存在が私の愛娘(ルーナエレン)の母親である女性なのです」

「え‥‥?」


 アレンハワードの来歴に思考が追い付か無いままでも、必死に話の内容を飲み込もうとしていたカーターは、その何処か曖昧な口振りに再び固まらずには居られなかった。


「先程もお話ししましたが私の血族の先祖返りとは、限りなくこの世界の上位種族と言える妖精や精霊に、魔力的な諸々の因子が‥‥限界まで近い存在なのです」


 つまり、管理された彼の血族の婚姻は、祖国で該当する相手以外ではほぼ後継が望めない。だが彼は、死に瀕し記憶が曖昧な間に、娘を儲けていた。

 だがルーナエレンの容姿は、恐らく誰が目にしたとしてもアレンハワードの血縁だと、口を揃えるであろうものだ。


「レオナルドとは、記憶がはっきりした際に既にエレンの世話を一緒にしていたのですが‥‥貴方は彼がどんな存在だと思われますか?」

「レオナルド様ですか。‥‥緑の女王や、諸々の言動やお力の一旦を拝見した限りでの推測になりますが、名のある古代の大妖精や聖獣のお一柱(ひとり)なのでは、と」

「うん、大体そんな認識で大丈夫です。取り敢えず彼は超常の存在であるが故に、この世界では本来の力を振るう事を良しとされないそうなので‥‥言うなれば、今は力の大半を封印された状態だそうです」

「はぁ、封印‥‥ですか?」


 片手で軽くメルヴィンを翻弄し搾り上げたり、極短時間にこの空間や邸を好きに弄ってしまうというのに、それですら力の大半を封印されているとは。

 思わず間抜けな声が漏れたが、それを肯定と取ったのかアレンハワードは言葉を続ける。


「レオナルドは幸い、エレンを私と共に親目線でとても溺愛してくれています。ですので、限りなく助力を惜しまず居てくれますが、それでも出来ない事も多いのです」

「封印されているから、という判断で良いのですか?」

「そう、ですね。少し話が逸れてしまいましたが、エレンはレオナルドが間違いなく私の血の繋がった実の娘であると断言していますし、記憶がないとはいえ、私自身もエレンが実の娘であり唯一であると、確固たる自覚があります」


 目の前でゆっくりと頷く事で、彼は更に続ける。


「確証はないのですが、ルーナエレンは一族特有の記憶継承も発現している、間違いなく我が血族で私の娘で有り、そして呪いを発現せず一族の最上の状態と言える存在だと感じるのです。現に、上位の精霊や妖精を自然と惹き寄せ従え、『魔術』ではなく無意識の『魔法』を意図せず使うのです」


 貴方も浄化を体験したでしょうと言われ、カーターの喉は無意識に上下しコクリと唾を嚥下する。


「ですので、時間が無い中で貴方に求められる魔道具に刻む魔術式というのは、エレンの無意識の魔法を解析し、その上で適応出来る属性を絞りながら浄化に近い効果を持たせないといけないので‥‥かなり難易度は高くて」


 求められている難易度の高さに、カーターの意識が一瞬飛びそうになるが、長年責任ある立場に居た弊害と言うべきだろうか、ぐっと膝に乗せた拳を握りしめて意識を保つ。


「レオナルドが出来る範囲で反則手前まで手を貸してくれると約束してますし、私も途中まで簡素化した術式は起しています。どこをどの程度省略して、土や森の属性との作用を抑え浄化を発動させる事が出来るか、最短で検証し完成させなければいけません」

「な、なるほど」


 求められた仕事の難易度は、カーターの今までの人生でも類を見ない程難解であり、今後密に関わる人物達の事情の複雑さもとても理解が追いつかない。

 だが、魔術契約を結ばなければならなかった理由は、十二分に理解出来てしまった。


 目の前の作業机に幾つも描き綴られた魔術式の素案の束と、強い属性を持つ複数の素材や今まで(アレンハワード)が造ったであろう魔術具や魔道具の簡単な仕様書の幾つかの綴りを、所狭しと並べていく青銀の髪をした美しい青年は、先程まで雰囲気が重くなってしまうような話をしていたというのに、すっかりアイスブルーの瞳をキラキラと輝かせている。


 その瞳の輝きが、何処となく微笑ましく感じてしまったカーターは、敢えてその感情を胸の奥に仕舞い込んでから軽く嘆息する。

 年齢を感じさせる皺の刻まれた口の端から、自然と柔らかな笑みと声が溢れた。


「御指導、宜しくお願い致します」





お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


相変わらずサブタイトル付けるのが本当に苦手で、それだけで更新遅れそうになる情けない筆者です(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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