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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
57/150

57、下拵え案件へ発展中


 少々遅刻してしまい、申し訳ありません_(:3 」∠)_


もう、進まなさ過ぎで本人も混乱中です。。。。



 

 そろそろ陽の三刻になろうかという、日差しにもまだ少しだけ緩んだ暖かさが感じられる午後の森。

 メルヴィンは死にそうな顔で冷え冷えとした雰囲気の中、まるで肌に無数の針を穿たれそこに微弱な電撃でも施されている様な、身を刺すピリピリとした苦痛に粟立つ感覚に必死で耐えていた。


 元よりメルヴィン自身、レオナルドやアレンハワードに良い印象を抱いて貰えていないというのに、不要なものまで連れて来てしまったのだ。


 今更過ぎた時間(とき)を悔いてもどうしようもないのだが、メルヴィンは考えずにはいられ無かった。


 何故此方に出向く際、己の契約者であるランドルフに強く否と言えなかったのか。

 強制的に置いてくる事を選択(えらば)なかったのか。

 何よりも、この(ラドルファス)はこんなにも、愚かだっただろうか?


 魔の森であり御子を守護する要でありながら、元より脳筋気味な種であるのはこの際認める。

 だが、しかし。しかしである。


 如何にモルガン家が魔術に造詣が深くないと言えども、ここまで相手の力量や能力へ辿り着くまでの工程、為人を見極める力など、この脳筋(ラドルファス)はそれらの能力を何処に置き忘れて来たのかと絶望するしかない。


 そして恐ろしい事に、種族的には身体能力も主に対する従順さも一応本物であるが故に、実兄である領主からも絶大な信頼を得て、実弟の謎の期待を後押しして同行を許してしまった契約者(ランドルフ)のこれまた謎な覚悟、つまり最悪ラドルファスが信念の下戻らなかったとしても不問にすると断じてしまったが故に、メルヴィン自身も最終的には首を縦に振ってしまったのだが。


 今、目の前のレオナルドを視認し、もう今自分が死んで詫びたい、というか死んで赦しを請いたい、と思考が現実逃避を始めていた。


 本当はメルヴィンとて解っているのだ。

 この大地を守護していた一柱である筈の自分の愚かさを棚に上げ、比較的強くとも庇護対象であるモルガン領の者達(ランドルフ達)の能力の低さを嘆く資格は自分には無い、と。


 それでも、だ。

 二日前の昼、軽く一撫でで(あし)らわれた記憶は、ラドルファスの中で都合良く無かった事になっているのだろうか。


 ラドルファスは、あの昼食会での謝罪も忘れ、再び勢いだけで目上であるメルヴィンが恭しい態度を取る相手であるレオナルドに、許しも得ずにルディの変化について称賛した後、どうすれば始祖(それ)に近付けるのか、そしてその力量はどれ程の物なのかと、ほぼその熱い想いを迸らせた言葉を吐いてしまった。


 言い方は悪いが、二日前にまず不快にさせた「囲ってやるよ、便宜図ってやるよ、ぼくちん(この国では)権力者だからね」的な印象を持たれた件の発言については、きちんと理解出来ていなかったらしい。

 更につい今しがた述べた弁も、悪意で意訳すれば「人工始祖もどきってどんだけ強いかワクワクすっぞ」となる危険が満載だった。


 そしてそれらの言葉の受け手が不幸な事に、何処までも黒いレオナルドなのだ。

 本気で危険が危ない処の話では無い。


 何故こんなにも底冷えする空気も読まずに突進する無駄な胆力があるのか、種族間違えてんじゃないか、奴は狼じゃなくて猪なんじゃないか。

 もう本気でメルヴィンは、泣きたい気持ちで一杯である。

 というか、内心ではもう頽れて咽び泣いていると言っても過言ではないだろう。


 だが、レオナルドはラドルファスの存在も言葉も一切合切無視をし、冷たい青い眼をメルヴィンに向けて顎をしゃくって見せる。


 すぐ様お使いを言い渡されていたブツを多めにレオナルドの足元に積み上げ、その一番上にカーターの移籍について一切の権利を放棄し、彼の後任や家族への配慮を辺境伯家が続く限り補償させる魔術契約書を、アレンハワード側の空欄のみ埋めれば発動する所まで整え終わった状態で、そっと載せてから楚々として離れた。


 其れ等を黙って確認した後、漸くレオナルドはメルヴィンの後ろに視線をやる。


「ルーク、どうした」

『メルヴィンノ本体モ砦モ、落チ着カナイ。姫ニ会イタイ』

「ふぅん。それは、失敗してるって事か?」

『剥離ハシテナイ。冬眠?』

「おいおい、冬籠りするにしたってちょっと早いだろ」


 大体、大陸の南部に当たるこの比較的穏やかな地域で、それでも冬眠せねばならない種族って、どうなんだ?とばかりに、ふんっと鼻で嗤って愛らしい少女らしからぬ尊大な態度を取り、更にレオナルドは態とらしく顎を摩った。


「メルヴィン」

『はい、何でございましょう』


 前置きもなく名を呼ばわった声が想像よりも柔らかいもので、逆にその内側に秘められた凍えた何かの質量が伺えてしまう。


「お前誰の赦しを得てオレ達の前に頭の足らない獣風情を連れて来た」

『ぐっ‥‥申し、訳‥‥ございま、せん‥‥』


 少女は胸元で腕を組んだまま動いていないにも関わらず、メルヴィンは途轍も無い重量の何かに圧し潰されるかの様に身を震わせて膝を折り、それでも苦しげな声で失礼にならない様丁寧な言葉で切れ切れに謝罪を口にした下りで、漸くラドルファスはどんな相手に自分達が相対していたのか理解をし始めた様子で、一瞬で身を震わせ顔色を青褪めさせた。


「いいぜぇ?お前のダーリンとやらが、可愛い可愛い実弟の処遇をどうするのか、一応聞いといてやるくらいは、オレも()()()()()からなぁ」


 短い付き合いでも、レオナルドのこの言葉は偽りであるとメルヴィンでも理解出来てしまう。

 機嫌はすこぶる悪く、低空飛行状態と言わざるを得ない。


「何だっけ?自分達の始祖に近しい存在になった甥っ子の力量が知りたいんだっけ」

『かはっ‥‥当主としての、判断‥‥ではあり得ない、かも知れませんが‥‥』

「言ってみろ」


 負荷を一時的に軽くして貰ったらしきメルヴィンが、膝を付き荒い息を吐きながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


『無断でこの先に予想されている戦闘に、いきなり闖入されるよりかは、想像や推測ではなく納得した上でその時を迎えさせたい、と』

「はっ!負担を全て此方に放り投げといて、どいつもこいつも何様のつもりだ。己の手に余る物を押し付けられたにも関わらず、結局お前達しか得るものなんて無いだろが!」

『返す返す、謝罪しかお返しする事能わぬ我ら、誠に恥じ入るばかりにございます‥‥』


 真実恥じ入るしかない所業は、メルヴィン自身もなのだからだろう。ついに震えながら深緑の麗人は涙を零す。


 それを興味の欠片も浮かばない青い瞳に映し、レオナルドは再び態とらしくメルヴィンに向かって顎をしゃくった。


「ルーク、今の姿のままその身体の叔父さんとやらをぶちのめせ。場所は整えてやる。後、うちのお姫様はその叔父さんみたいなの、すこぶる苦手だって知ってるか?」


 ニヤァっと黒い笑みをその口に履いて、レオナルドはルディに憑依したルークに向かって呼びかける。

 最後に付け加えられた情報によって、無駄に殺意が倍増した雷精の()()()にメルヴィンは喉の奥でヒィっと悲鳴を上げる。


「レッスン料は、そうだなぁ。メルヴィン、お前の五百年分の花を凝縮した結晶を貰おうか」


 是とも非とも返す前に、すいっと左手の掌をメルヴィンに向けて出したレオナルドは、瞬く間に反対の右の掌の上に煮詰めたような黄色味のコロリとした花を三つ程、乗せていた。


 ごっそりと己の花を結ぶ力を抜き取られ、両手を地について息も絶え絶えになっているメルヴィンに、何の感情の彩も載せないまま一瞥をくれると、レオナルドは踵を返す。


「ルーク、お前も加減をこの機会に学んでおけ。オレの領域内でなら、そう簡単にお前の身体の叔父さんもくたばれない。‥‥それからメルヴィン、猶予はお前が見極めろ」


 それは恐らくラドルファスの限界を見極めろという意味合いと、呪いに侵された片割れと御子の限界を見極めろ、というどちらともの意味なのだろう。


『かし‥‥こまり、ました‥‥』


 力が入らない己を叱咤して震えながらようやっとそう言葉にしたが、もう其処には黒髪の少女も自分が持ってきた素材も無くなっており、背後で雷雲が低い雷鳴を轟かせる音だけが聞こえてきた。







お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ワクワクすっぞ方面はすっ飛ばして、さっさとパパン達と魔道具(魔導具)作りに入りたい今日この頃です(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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