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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
56/150

56、閑話・見出した希望と愚かな願い


更新日も時間もダブルで遅刻してしまい大変申し訳ございませんでしたぁ!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) ブワァ!!


今回は慣れない上に人物の設定が自分の中でもしっかりと練れていないキャラの視点の一人称で、すっごい難産になってしまいました。

ホンマ精進せねば。。。。(吐血


という訳で、今回はモルガン辺境伯領騎士団長、ラドルファスさん視点です。


 

 私は、生まれて初めて転移という失われたに等しい魔術を体験し、昂る自分の鼓動を耳の奥で聞いていた。


 微かに眩暈の様な揺らぎを実感した頃には、既に私を包む空気や温度、空気の湿り気まで変化している。恐らく、要塞砦の最奥に在る清廉な水場に(おわ)す、兄上の契約妖精であるメルヴィン様の宿る大樹の根元から、離れた魔の森の只中へ転移されたのだと気付く。


 半ば条件反射の様に、今現在自分が立っている場所に視線を巡らせ、自慢の聴覚と嗅覚も総動員して私は周辺を把握しようと努め、そしてここが細いながらも魔の森に張り巡らされた細い街道にある野営の為の広場に似ている雰囲気である事に気付いた。

 だが、ここは街道には側してない様子だ。


 となれば、砦に所属している警邏隊が森深くに踏み入る為に簡易に整えられた野営の為の広場の一つだろうと推測される。

 ただ、その野営の広場からより南下した深い森の景色に、明らかに違和感と驚きを抱かずには居られなかった。

 其処は深い魔の森の中に在りながら、長い時間を経たであろう立派な木々の幹が広範囲に渡り、根元から切り裂かれていたり焼け落ちていたり、下草ですら根こそぎ大地ごと抉られた様な痕跡が広がっていたのだ。


 余りの異質な情景の広がりに、無意識に其処で起こったであろう状況を把握すべく、より慎重に観察してみる。


 まるで野営広場を護る為に敢えて距離を取ったかのような場所が、ぽっかりと大地の色を赤黒く痛ましい様を晒したまま拓けており、比較的その拓けた場所の外周に近い辺りの破壊の跡は未だ生々しい。

 恐らく、敬愛する実兄の契約妖精であるメルヴィン様が仰っていた、可愛い末の甥っ子ルディが巻き込まれてしまったという、戦いの現場なのだろうと想像がついた。


 だが一体どういった戦闘が繰り広げられれば、幹の表皮層が硬化し始めた様な森の翁と呼ぶに相応しい樹齢の木々を、粉砕したり焼き尽くしたり出来るというのだろうか。しかも、ある一定の範囲でぴたりとあらゆる暴虐の影響は消えていて、意図的に周辺への破壊を防いだようにも思える。


 その様に私は、思わず昨日の昼の事に思考を巡らせた。







 * * * * *





 昼餐後、急遽兄上用に設らえられた要塞砦施設内の最上階の部屋に呼ばれ、当領の中枢に深く関わる上層部に伝えるに先んじて、領主の一族として実弟として、先に私個人の耳に入れておきたい事があると言われた。

 そこで兄上が語った話は、俄には信じ難い、まるで神々の末裔がまだこの地に息付いていた時代や、それに次ぐ時代の伝承の様な話だった。


 本来自分達の一族が何を護る存在の末裔であるのか、近年何故眷属に近い魔獣が頻繁に出現しているのか。未だ目覚めていない古龍の御子や、永い歴史の中でこの地に根深く染み込んだ、怨嗟と黒い呪いと発生源。


 重い口調の兄上が語る国単位の重大な失伝に関する話の内容に、現在の事態とそれに関する理解が追いつかない。互いに図らずも暫く沈黙を保っていたが、兄上はそんな私を沈んだ表情のまま視線を手元に落とす事で、私の視線も誘導した。

 誘導された手元にあったのは、元侍従長のカーターがルディに用いていたという小型の魔道具であり、それを向かい合って座るテーブルにコトリと置いたので、思わず疑問を浮かべて私は顔を上げて兄上の様子を伺った。


「兄上、これは‥‥?」


 そして私の頭が先程までの話の内容に困惑の余り処理落ちをしている間にも、その魔道具をメルヴィン様が少しの改造をして記録の魔術を施されたと兄上がポツリと零した後、兄上と私の間にあるテーブルの幅程の空間に、昨朝に魔の森の只中であったという、激しい戦いの一部を見せられた。


 そこに浮かび上がったのは鮮明ではない小さな虚像ながらも、恐ろしく凶悪な悪意の具現と、それに相対する圧倒的な眩い魔術と物理の激突であり、またその戦闘の中で魔術師親子を超常の上位者の力が介入し助力をする姿が映しとられていた。


 私は激しい衝撃を受けた。


 先程伝えられた失伝してしまった諸々の話もそうだが、これ程までも自分の認識している世界と、今現在すぐそこで起こり水面下で始まっている大きな時代のうねりは、遥かに何もかもが隔離していたのかと。

 これが一般的な魔術師の力量とはかけ離れているであろう事は、大して魔術に対して造詣の深く無い私でも十分過ぎるほど理解出来る。

 恐らく彼らがその分野でも最高峰の一角に当たる者であるだろう事も、本能で解っている。


 愕然とした。


 これ程我が血族の能力が、映し出された彼等のそれと隔離し悖っているという現状、今まで種族適正だの属性だのと屁理屈を捏ね、苦手意識を前面に押し出して専ら魔術関連を疎かにして胡座をかいていたのに気付きもしていなかったのだから、何と恥ずかしい事か。

 もし今後があるならば、最早形振りなど構わず魔術や精霊や妖精とより積極的に、関わらなくては本当に先が無いという事実が身に染みる。


「‥‥では、益々一族の保有魔力量を、少しでも増強すべく」

「それについても、明確な助言を頂いたのだ」


 それであれば、より切実に一族の保有魔力量の底上げを願わずには居られないという思いのまま兄上に奏上したが、言い切るより早く被せてきた強く硬い兄の声に、私は続きの言葉を飲み込んだ。


 そうして兄上は少し声を落として「これはメルヴィン様を介して伝えられた、ネヴァンの有識者の見解らしい」と述べてから、魔力に関する遺伝の条件の一つは既に明確になっており、それは母体となる者の保有魔力量と伴侶となる者の保有魔力量の差が著しく大きい場合や、契約精霊や妖精などの加護を賜っている場合はそれらの相性も、遺伝に色濃く影響するのだと彼の魔導王国では研究結果として昨今知られ出したのだと聞いたのだそうだ。


 そう言われてしまえば先程魔道具で見せて頂いた情景からも、明らかにモルガンに留まらずマルティエ全土でも、保有魔力量が彼等と隔たっていない存在など、居ないと断言出来よう。


 それから私は兄上にルディの状態を聞き、幼い甥っ子ばかり不運に見舞われている現状に胸を痛め、最後に中枢に下ろすべき情報を兄上と幾つか相談して取り纏めてから退室をした。


 だがその夕刻の晩餐の席にも、昼餐と同様兄上の次男のバーナードは同席しているのにも関わらず、ルディが姿を現す事が無かった故に、私は気になって食後に席を立った兄上を追ってルディの状況を訪ねてみた。


 すると、私の言葉を受けた兄上の表情はかつて見た事が無い程に陰ったかと思うと、「ついてこい」と呟いて歩き出した。

 そして、兄上に案内されるがまま足を踏み入れた続きの間の大きな寝台には、呼吸をしているのか疑わしい状態の幼い甥っ子が横たわっていたのだが、眠っているだけだと言われた甥っ子の身の内から感じる理不尽な程の近寄り難さが理解出来ず、不躾にも取り乱して理由を問うてしまった。


 結果として兄上から打ち明けられた話の内容は、とても信じられるものでは無かった。

 幾らこの場所自体の歴史が古く、古代の精霊や妖精と縁が深いと言われていても、余りにも現実離れしていたのだから。


 我がモルガン家どころかこのマルティエ帝国の失われた史実や使命、今ルディがどうしてこの状態になっているのか、それらを踏まえて今後の兄の方針を伝えられた上で、己の行動方針を問われた。


 この時の私は、不運に見舞われたにも関わらずこれ以上ない恩恵を賜った実例を目の前にして、あろう事か傲慢で愚かな望みを抱いてしまっていたのだ。





お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ラドルファスさんはこの辺境領の種族的には優秀であり割と苦労なく順風満帆な人生?を送っており、脳筋でありながらもこの土地では珍しい火の魔術も武器と併せて使える武人ですが。

特に精霊や妖精さんと懇意にしているという程でもないので、畏敬の念はあるものの怖い存在である認識が甘い人です。

まぁ、身近にいるのがオネェですしね(違

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