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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
53/150

53、内定

大幅に更新の時間が遅刻してしまい申し訳ございませんでしたぁ!_:(´ཀ`」 ∠):

キリが悪いけれど、取り敢えず更新させて頂きます٩( ᐛ )و

 

 既にカーターの引き抜きはアレンハワードとレオナルドの心情的に確定であったし、ルーナエレンの性質としても彼を拒む事はほぼ無いと理解(わか)っていた顔合わせは無事に終わった。

 隣でごく自然な動きで跪き愛娘に恭しく自己紹介をするカーターを、アレンハワードは優しい眼差しで見つめる。


「これはこれは、素敵なご挨拶を頂きまして。わたくしめは、カーター=ベイリーと申します。どうぞ、カーターとお呼び下さいませ」

「えと、カーター、さん?」


 小声ながらも怯えのない声音でそう呟き、確かめるようにそろそろと父親を見上げる紫水晶の大きな瞳は、何処か期待に煌めいている様にも見える。


「エレンは、彼に一緒に居て貰いたい?」

「‥‥いいの?」

「勿論、エレンもちゃんと一緒に居て欲しいって言葉にしてお願いしないといけないけどね?」


 アレンハワードの少し悪戯な返答に一瞬輝かんばかりの笑顔を浮かべた幼い女の子は、カーターに向き直り期待に満ちた眼差しを向けるも、数瞬後には何故か何処となく物悲し気な憂いを帯びた表情になる。

 その表情の変化にカーターもアレンハワードも、瞬時に反応した。


「エレン?」


 俯きかけたルーナエレンをその腕に掬い上げ、大事に抱きしめてその表情を覗き込むと、彼女の大きな瞳は不安げに揺れて潤んでいる。

 こちらを見上げているカーターも、とても不安げな幼い女の子を気遣わしげに見ているのが分かる。


「言って?エレン」

「う‥‥あ、あのね」


 そこから躊躇いがちにポツリポツリと彼女の口から上がった言葉は、カーターには信じられない様な内容だった。


 曰く、カーターを必要とし、とても慕っている相手がものすごく沢山いるのが見える。

 そんな人を、この場所や相手から引き離してもいいのか解らないのだという内容だった。


 世間一般の普通の旅がどの様なものなのかルーナエレンも知らないし、父とレオナルドが居る自分はさして大変な旅をしている実感も事実も苦労もない。

 けれど、恐らく自分達は余りにその他の人達とは異なる存在だと思うので、そこにカーターが身を置くと言う事は違う苦労や認識の齟齬があるんじゃないか。


 自分自身は見えないから解らないが、ルーナエレンの瞳に見えるアレンハワードから感じる縁もレオナルドのものも、砦で出会った人達とは全く異なるものだったのだと。


 それを幼いながらも拙い言葉で、彼女は懸命に語った。


 まだ三つになったばかりの幼い愛娘の歳不相応な聡さに、アレンハワードは遠く離れた故郷の実家の血筋を確実に感じてしまう。


「でもエレン。周囲にいる者やその相手の気持ちも勿論大事だけれど、当の本人の希望を一番聞かなくちゃいけないんじゃないかな?今エレンが気にした部分は、ベイリー殿が判断する部分なんじゃないかな?」

「‥‥‥‥」

「彼は今、魔道具の作成に関してこの土地の領主様の依頼を受けてここに来てくれたんだ。まずはその依頼を無事に終えて、その時にもう一度、ベイリー殿とエレンの気持ちを確認しよう?」

「‥‥‥はい」

「ベイリー殿も、急な流れでこんな話になって申し訳ありません」

「いえ、過分なご配慮、痛み入ります」


 綺麗な眉山をやや下げて申し訳なさそうな表情のアレンハワードと、そのすぐ側の似たような表情を浮かべた彼の愛娘を見上げた後、促されて立ち上がりながらカーターは自然と柔らかな微笑みを浮かべていた。


「そろそろ邸に入りましょうか。色々とお話もありますし、まずは昼食にしましょう」







 * * * * *




 出された昼食は至ってシンプルな鳥と根菜のスープと香草を効かせたキッシュ、ころりと小ぶりな蒸した芋に炙ったチーズがとろりとかかった一皿で、食後はフレッシュハーブティーが供される。


 驚いた事に、それらの給仕は動くウサギの魔道人形が特に過不足もなく行なっていた。


 食事に使われているハーブや塩、チーズ等からも彼等の来歴は少なくともカーターの識る範囲にはない異国であるのは容易に想像が出来たが、コニーと呼ばれていた魔道人形の所作も能力も、既に旧時代の遺跡の出土品に稀にあるアーティファクトだと言われても不思議ではない存在に見える。


 少なくともマルティエ帝国にて高位貴族として魔道具やその素材を多く扱っているモルガン家でも、鍛治錬金や彫金加工技術や複雑な魔道具作成に長けた歴史を誇っている北のドワーフの国オクリウェートでも、恐らくここまでのものは無いと思われる。

 となれば水の国フェイトリネアと草原の国カルトボルグか、残るは魔導王国ネヴァンになるが、後者の国はいかんせん大陸の中心である天山グランアルブシエラとそれに連なる険し過ぎる自然の国境が、特に南に属する国々との国交を事実上不可能にしている。


 普通に考えれば天山を越える様な過酷な旅が、こんな幼子を連れて出来るとも思えないし、幼子が産まれる前ともなると身重な女性連れではもっと無理だろう。


 カーターは内心でそんな考えを徒然と巡らせながら、食後にお昼寝してしまうルーナエレンの浄化の魔術を実演と体感をする機会を早々に得ていた。


 と言うのも、カーター自身早い段階でメルヴィンに保護されたとはいえ、呪いに侵され黒い魔獣に堕ちた守護狼との戦いの際、その黒い陽炎の怨嗟に僅かでも晒されていた事実がある。

 彼の保護を担当していたメルヴィンは勿論、ルーナエレンと同等な浄化に該当するような何かしらの技術は持ち合わせていない。


 ドライアドとしての森と植物の知識や自己自浄作用を助ける香りや薬湯をもたらす事が出来たので、カーターの身柄を預かった際にはそれらで対処していたし、結果特に不都合や周りへの影響も出ていなかった。

 それは既に長年に渡って呪いに満ちているとは知らず、その地で適応し暮らしてきた所以であり、怨嗟に対して一種の耐性とも言えるものを獲得していたからでもある。


 それらを踏まえて、急務ではないにしろ呪いを得ているカーターへの浄化体験はモルガン領ではなくこの場所で行われるので問題ないと説明し、念のため少し効力を下げた浄化を様子を見つつ複数回試すという形で話が纏まり、つい先程記念すべき?第一回目の浄化を体験し、それを目の当たりにしたカーターは色んな意味で衝撃を受けていた。


 そして色々と衝動的に話し出したいのを懸命に堪えたカーターは、重い瞼でゆらゆらと船を漕ぎ出したルーナエレンに礼を伝えてまずは休んで貰う様に願い出る。

 もしかしたら客人として幼い女の子が自分を認識している場合、こちらからお昼寝を言い出さねば後で彼女が恥ずかしい思いをするかも知れない。

 そうすれば、きっと彼女の保護者達がどう思うのかすぐに予想が出来てしまう。


 むしろ自分ですら同様の反応をする自信がもう既にあるのだから、仕方ない。


 恥ずかしそうにおやすみなさいと手を振ったルーナエレンと付き従うように移動する魔導人形を見送って、しばらくは自分の身体に起きた浄化後の変化を自分なりに分析していたが、やがて黒髪の少女が入室してきた事により思考を切り顔をあげた。


「いやー、久しぶりの大改修、頑張っちゃったよ!って、あれ?エレンもう寝ちゃった?」

「お疲れ様レオナルド。うん、ごめんね。先にお昼を頂いてから浄化体験まで、何とか終わらせたところだよ」

「おお、じゃあもう定着してきてんじゃないかな?ええと、お前‥‥カーターだっけ。魔力どうよ」

「魔力、でございますか?」

「そ。お前の持ってる魔力」


 そうは言っても、守護狼の聖獣の末裔である獣人一族のモルガン家の場合、本家も分家筋ももとより保有魔力は高いのだが、魔術としてその魔力を運用する能力に関しては得意ではない場合が多い。

 何よりも武に偏った種族であり一族であるからか、身体強化や気配察知、後は防御に振り切ってしまっているのである。


 幸いにも魔道具を扱う為の魔力操作には、比較的魔道具が揃っている環境にある為慣れ親しんでいるのだが、自力での魔術に関する部分はかなり後進的であり不得手なのだ。


 そして例に漏れずカーター自身も、身体強化を用いた体術が得意であり、魔道具いじりが趣味で仕事面での実益も充分あったが故に、熱心に学んだり創意工夫をしていたに過ぎない。


 カーターは好々爺然とした柔和な表情に、器用にも困惑を僅かに滲ませてみせる。


「おおぅ、そうきたか。でもいいねぇ、戦う執事さんってやつ。エレンを守る手は、大歓迎だ!」

「そうだね、それには同意しかないけれど、まずは彼を部屋に案内するのが先だと思うよレオナルド」

「あ、そうだった。いいのが出来たんだぜ!あ、でも自分で好きに弄ってくれてもいいし、何か要望があればオレでもアレンでも、伝えてくれたらある程度なら期待に沿えると‥‥‥おい何笑ってんだよ‥‥」


 嬉々として可愛らしい少女の声で嬉しげに男言葉で語られる内容が、あまりにも可愛らしくてくすくすと笑ってしまったアレンハワードは、徐々に唇を尖らせ始めた少女姿のレオナルドにそれはそれは美しい笑顔を返していた。








 


お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


レオナルドさんは、ツンデレを学習した様です!(違う

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