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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
47/150

47、現状確認と試運転 其の1

土曜日の更新に間に合いませんでした_:(´ཀ`」 ∠):

申し訳ありませんm(_ _)m

 

 結局、その日はルディの調整の目処が立たぬまま、モルガン領側の情報統制にも猶予が必要との事情もあり、特に目立った動きはルーナエレンの雪うささん以外は見られなかった。


 だが、レオナルドの懸念と状況確認の為、ルーナエレンの夕食と入浴を済ませて就寝の準備を終えた宵一刻の鐘の後、寝かし付けを終える前。

 空間魔法(おうち)の一階リビングに強制的に召喚されたメルヴィンが、戦々恐々とした心持ちのまま直立不動で立っていた。


 色々と呼び出される理由が多過ぎである事と、この空間に入ってから感じた更に増えたであろう上位者の存在(プレッシャー)を、メルヴィンは肌が粟立つ感覚から察し、何処か所在なさげに視線を彷徨わせている。

 新たに加わった存在は、アレンハワードや親娘に寄り添うレオナルドとは違って、明らかにメルヴィンを品定めするかの様な冷たい気配を放っているが、こちらの視界にそれらしき存在が居ないのか、何処からその意思が届いているのか判別出来ずにいるのが落ち着けない。


 そんなメルヴィンの様子を見ながら、レオナルドは思わずといった風に口の端を持ち上げて微笑う。今の姿は、紺色の上品な膝丈エプロンドレスを身に着けた十歳位の少女の姿だが、相変わらず無意識に恐怖心を煽られる。


「さて、メルヴィン。ひとつ、確認したい」

『な、何でございましょう?』


 リビングに設置された三人掛けのゆったりとしたソファを勧められ、若干挙動不審ながらも浅く腰掛けたメルヴィンに、ローテーブル越しに対面して一人で座るレオナルドが口火を開く。


「ちょっとお前の言うところの御子?だっけ、その状況を確認しとこうと思ってな。それと、お前の片割れの状況も併せて知っといた方が良いみたいだし、直接よりも一応お前に聞いた方が良いだろ?」

『‥‥と、申しますと?』


 眼前の青い瞳が愉しそうに揺らめいているのがやはり不穏で、レオナルドの言葉の真意も今ひとつ上手く掴めなくて、メルヴィンはつい聞き返してしまう。


「いやあ、今日は昼からエレンの為に、アレンと張り切って魔導具作ってたんだがな。結果、どうやらオレの眷属が出来ちゃったみたいなんだ」

『ふぁっ?!』


 レオナルドの口から弾んだ調子で溢れてきた眷属という単語を聞いて、無意識に素っ頓狂な声が漏れる。


 『魔道具』ではなく『魔導具』を如何にも気軽に製作(作った)と言っていたのは、百歩譲って彼の氷の魔王様と目の前の存在であればその軽さなのかとまぁ何とか呑み込む事は出来、賢明にもスルーする事が出来たのだが、その後に続く言葉は無理だ。


 眷属を生み出すのは、目の前の出鱈目な存在が上位の種族である以上不思議ではないし、この空間に来てからずっと感じている、厳重な検閲でも受けているのではないかと思われる程の威圧感の正体はそれなのだと、明確な理由が得られてとても納得はしたのだが。


 問題はその威圧感を放つ存在が、今まで感じた事もない程、霊格が高いという事だ。

 これだけ格の違いを内包する存在を、己が生み出し眷属と口にするからには、今目の前に座すこの黒い獣の姿を持つ御方の正体は。


 記憶の片隅にあるような末裔(すえ)の神など軽く凌駕する存在を眷属だと気安く口にする、その真の正体は。


 予想はしていていも、言葉として音に乗せ魔素を経由しメルヴィンに届いた『意味』を、正しく理解し全身に畏れと恐れが襲いかかる。


「ああ、この箱庭では本来の力や諸々、太古の理によって封印されてるから、そこまで畏まる必要はないぞ?とは言え、お前の魂も一応オレが軽く縛った訳だし、ちょっとぶっちゃけとこうかと思ってな」


 そんな爆弾を投下して尚、「眷属よりは遥かに劣るが、玩具には丁度良いからな」と小声で零し、にやりと形の良い艶やかな唇を歪ませる。


 いきなりの爆弾投下でショック状態から脱する事が難しいのか、何の言葉も反応も出来ないメルヴィンに、レオナルドは一切構わず更に言葉を続ける。


「まぁ、そこまで恐れなくても、エレンに害が及ばないならオレは基本何もしないぞ?そこにアレンも含まれるのは、言うまでもないが」

『え、ええ、心得ております‥‥』


 レオナルドの表情ひとつにびくびくとしているメルヴィンの様子を愉しげに眺めてから、にんまりとしたまま徐にエプロンドレスのポケットに手を突っ込み、少女姿の拳二つ分程度のマフっとした小さな毛玉を取り出す。

 ポケットからそれが出された途端、さっきまでとは比べようも無い程の威圧感が、メルヴィンへと重くのしかかる。


 目を白黒させるドライアドの目の前で、レオナルドの掌からするりと床に降り立った毛玉は、みるみる体積を増し最終的にはレオナルドの一回り程小さな二足歩行の雪兎の姿を取った。

 キュルンとした丸い紅玉の眼が、心なしか底冷えする程に冷ややかにメルヴィンを捉えている。


「そうそう、紹介しとくよ。オレの眷属、魔導ポシェットのコニたんだ」






 * * * * *





「全く、遊んでばかりで話がちっとも進んでないじゃないか」

「ええ?エレン肝入りの命名を賜ったうちの子を御目見したかったんだもん」

「もん、じゃないよ‥‥はぁ、ちゃんと過剰にならないように、レオナが制御きっちりしてよね」


 愛娘の寝かしつけを終え、リビングに合流してきたアレンハワードによって、ようやく思考が現実に帰還出来たメルヴィンだったが、先程までダダ漏れな威圧を放っていたうささんは何故かお茶と茶菓子を乗せたワゴンを押して、静かに三人に給仕してくれている。


「これは、通常業務?こんなの連れて外を旅出来ると思ってるのレオナ」

「あ?そうか、どうするかな。条件付け考えないとな」


 そういう問題じゃないと切実にツッコミを入れたいが、怖過ぎて出来ないメルヴィンは雪うささん型魔導具の差し出してくれたお茶を震える指を懸命に制御して静かに口に運びつつ、様子を伺う。


「取り敢えず、この空間魔法(おうち)ではこの状態も許可出来るけど、他者の目がどこにあるのか解らない場所は許可出来ない。学習出来るなら、他者の気配を探ったり罠や探索魔術の範囲内になっているか否かも自動で判別出来る魔術式を構築しとかないと」

「あ、術式はアレンが構築するのは構わないけど、刻むのはちょっと二人はやめといた方が良いかもな。幾ら薄〜く範囲に広く拡散させる魔力でも、特にこの土地では撒き餌のようなものだろ」


 それぞれがお茶に口をつけ、会話が途切れる。

 自然とコクリと喉が鳴り、メルヴィンは本題に話が切り替わるのだと不思議と理解した。


「メルヴィン、思っていたよりもお前等の御子とやらの状態は良くないとオレ達は考えている。お前の片割れとお前、今本当に意思の疎通は出来ているのか?繋がりは保たれているのか?」


 びくりと肩を震わせたメルヴィンが口を開くよりも早く、アレンハワードがレオナルドの言葉を引き継いだ。


「私もあまり詳しくは無い。本来循環させるべき要素というのかな、それらをエレンが頑張って解放しても、正しく巡っていかない様なんだ。恐らく、それらの一部は君達の御子を形造る為の、とても大切な栄養素でもある筈なのに、その、エレンに沢山集まってきてしまってね」

「気付いた時には既に結構な量エレンに属してしまったので、折角だから守護を含めて魔導具とした訳だ。オレの干渉も許容範囲内で入れたら、眷属化したって流れなんだけど‥‥孵化も確認出来てないわ土地を覆う呪いは割と深刻だわ、その呪いがアレンにも干渉するわでちょっと急いだ方が良さそうなんだわ」

『そ、そんな、でも』

「あと、お前の契約者の下三人?上の双子がここの呪いの具現化の走りに関わりがありそうだし、末っ子に至っては今も呪いの影響がありそうだ。産まれたてとはいえルークの様な高位の精霊を憑依させたのに、未だ魂と記憶の整理が安定しない。記憶部分を干渉させて可能な限り、呪いに干渉されにくい類の記憶を刺激させようとしているが、三人揃って六歳児だからな」


 今得た情報から、契約者(ランドルフ)の耳に届いてしまった場合の彼の苦悩と心労を慮ると、メルヴィンの胸に苦くドロリとした澱が澱む。

 確かに自身が治める地域の懸案として、眷属の魔獣化と御子の孵化についての相談をしたのは自分だが、こんなに根深くて深刻な事態だったとは予想だにしていなかったし、負の連鎖がここまで身近に根を張っていただなんて、全く考えてもいなかった。


『お願い‥‥します。どうか、せめて、御子様だけでも、ほんの少しのご助力を‥‥』


 永い永い時の中で静かに魔力を御子に分け与え慈しみ護っていた筈の片割れ、その緩慢な眠っているかの様な気配はいつから変化が見られなくなったのか。彼女は大妖精としての様々な活動を必要最低限にした半睡眠状態を保ち、己の役目を成しているのだろうと勝手に解釈していたが、きちんとそれを相手に確認し把握しようとしてこなかった。


 今まで安穏と気楽に過ごしてきた代償でもあるのだろう。

 そう自身を戒めて、メルヴィンは片割れや契約者への想いを胸の奥深くに仕舞い込み、切に御子への願いのみ、その口に乗せたのだった。




お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


うささんには性別はありません。

また、扱いについては第一形態は有能ポシェット癒し付き。第二形態はふわふわ従者時たま威圧付き。第三形態は破壊の守護者代理。

第三形態で、どんな闘い方が似合うか悩み中です(笑)

バトルダンス(物理格闘)もしくはバトルサイズ辺りかなぁ(_ _).。o○

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