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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
39/150

39、圧迫面接 其の2


いつもいつも更新が滞ってしまって申し訳ありません。

引き続き、まったり頑張って更新してゆく所存です_:(´ཀ`」 ∠):


 

 メルヴィンの長い溜息を合図にレオナルドが一つ咳払いをし、三対の瞳から注目が集まる。


「つまりだ、お前らがオレ達の役に立つ為こうやって、類稀なる機会を得たというこの奇跡の事実を、地べたに額を擦り付けて感謝すべきだという事だ。解るな?メルヴィン」

『仰せの通りにございます!!』


 骨髄反射の如きキレを見せた即答に、内心ひよこは「調教済み」と聞いた時の凍えた青い眼を思い出して身震いし、当の調教士(レオナルド)はドライアドの返答に短く「よし」と頷く。

 だが即座にその美しい造形をした口の端に酷薄な笑みを浮かべ、青の瞳に更に鋭い彩を滲ませた。


「そもそも短命の呪いを抜きに考えたとしても、この箱庭であの二人の血を取り込むなどと口に出来るレベルに達している存在なんぞ、現時点でオレくらいしか居ない訳だし」 

『そ、それは‥‥』


 冷たく低い響きを宿した美声が、メルヴィンとランドルフの霊格と魂をギリギリと締め上げる。


 ランドルフにしてみれば、そんな知識を得る機会すら無かったと言えるが、メルヴィンの立場は、別の話なのである。無知も罪であり、そもそもこの『龍の寝所』全域を緩くとはいえ管理する立場にある上位種族の一端なのだ。

 無知を齎した事実は怠慢であり、魔力的にも霊格的にも下位の存在と何処か侮り、結果杜撰な管理となったのも紛れもない事実。


 何も深く考えず、ましてや相手をきちんと見極めてもいなかったメルヴィンが、自らの契約者に対して素晴しい魔力量を保持する者が来たと彼の存在を口にした遣り取りも、詳細までは明かしていないが自白済みなのだ。

 事実箱庭には釣り合う相手が居ないというレオナルドの皮肉に満ちた言葉に、メルヴィンは何とも言えず返事に窮し、便りなさげな語尾を更に萎ませる。


「まぁ、どの道うちの箱入り姫は、これから徐々に外の世界に慣らして行く準備段階だ。だからこの先、どんな選択肢を選んだとしても、今のうちからなるべく『庭先』は整えてあげなくちゃって思うのは、年長者として当然だろ?」


 それはそれは愉しそうにうっそりと嗤い、その青い瞳を細めて何処か遠くを見ている。恐らくだが『庭先』とやらを想像しているようだ。


「さて、そろそろ刻限だ。特別に全員、招待するとしよう」


 レオナルドは独り満足気に椅子から立ち上がると、目前の三者を見下ろしたまま、優雅にパチンと長い指を鳴らしてみせた。







 * * * * *





 不安定な状態のルディを強制的に転移するよりは、自分と階層ごと空間を固定して他三名を連れ、レオナルドは菩提樹の若木の元に移動をしたのだが。


 レオナルドは何故か今、己が大事に庇護している二人の内の片割れを前に、自主的に正座をして俯いている。


 どうしてこうなったのか理解出来ないが、目の前の氷の魔王のご機嫌が、すこぶる悪いのだけは理解出来る。

 アイスブルーの瞳から発せられる冷気は、大陸北の天上岳に存在するという、永久凍土よりも吹き荒ぶブリザードよりも恐らく冷たいに違いない。


 ぴんと綺麗な姿勢での立ち姿で、優雅に腕組みをしたままこちらを睥睨するアレンハワードは、先程までの不調の所為かいつもより数段色白な顔色で、余計に人外めいた畏怖を抱かせる。


「レオナルド。君はどうしてそう口が軽いのかな?」

「うぐ‥‥すま、ない‥‥」


 レオナルドの詰まりながらの謝罪を受け、一呼吸置いてから変わらぬ威圧を放ちながらも氷の魔王はゆっくりと、噛んで含めるように言葉を続けた。


「何処かしらから私達の素性が知れるのは、確かに時間の問題かもしれない。けどね?それだけの為に君が直接広範囲に渡って魂を縛り上げる、それは理に反するとは思わないのかい?」

「‥‥‥‥‥」

「黙ってちゃ解らない」


 途端に更に低くなった氷の魔王の声音が、圧力を増す。


 直接話しかけられているのでは無いのに、レオナルドの背後でつられるように正座をする妖精族と平伏した現地辺境伯家の現当主、そして所在なさげに狼狽え身を竦ませた水色の小さなひよこ。

 先程までメルヴィンの居住空間で繰り広げられていた圧迫面接より恐ろしいもの等ないと思っていたのに。

 蓋を開けてみれば、それ以上に恐ろしい圧に肌を差し貫かれているようで、そろそろ背後のメンツは白目を剥いて半ば魂魄が離脱しかかっている。


「だって、淘汰したらエレンが笑わなくなるって、お前が言ったんじゃないか‥‥」

「当たり前だよ。それは君だって納得した話だった筈」

「でも、お前に何かあったらそれこそエレンは笑わなくなるだろ」


 普段の何者に対しても尊大な態度はなりを潜め、俯いて少し硬い声で呟くレオナルドに対し、ようやくアレンハワードはダダ漏れな威圧を解いてその美麗な眉尻を少し下げた。


「‥‥それを言うなら、君に何かあってもエレンは笑えなくなると思うけど」


 暗に理に触れる行動を取った事で離れなくてはならなくなった場合、レオナに心を許しているルーナエレンはきっと深く悲しむ筈だと告げてやると、どこか強ばった表情をしていた黒髪の青年は、花の蕾が綻ぶようにふわりと造形の美しい唇に笑みを浮かべる。


 それを目にしてしまえば、もうアレンハワードはこれ以上、この地の有力者の筆頭ばかりを強制的に縛り付けた件に関して、レオナルドに小言を口にする事が出来なくなってしまう。

 軽く呼吸を整えるように息を吐くと、仕方ないと言わんばかり微苦笑を浮かべ、アレンハワードは保護者仲間に声をかける。


「君が階層ごと固定して転移で一纏めにして持ってきたから、うちのお姫様がびっくりしてる。自分でちゃんと説明して、お叱りを大人しく受けておいで」

「へ?」

「そちらの最上階部分が、こちらの最下層付近に掠ってね。空間が極々僅かに揺らいでしまって。ほら、我らの愛娘はとても繊細で優秀だから、異変を察知したんだ。それで、私が様子を見に外に出たんだよ」

「‥‥‥行ってくる」


 先程までの覇気に溢れていた黒髪の青年の肩は心無しか下がり、一瞬で艶やかな黒い毛並みの獣に転変すると、するりと虚空に溶けていく。


 ほんの僅かな間になされたレオナルドの動きを見送ってから、分厚い氷の壁の如き威圧をすっかり解いたアレンハワードは、空間に拘束されたままでその場に残された三者に視線を向け、微かに申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。


「さて、メルヴィンの他は初めまして、と言いたいところですが‥‥些か口が滑らかな身内が色々と明かしているようですから、自己紹介は省かせて頂きます」


 極々薄い微笑みを浮かべるも、アイスブルーの凍った瞳は明らかに付け入る隙を与える気がないのが理解出来る様な、見事な上流階級出身と解る仮面を履いている。ネヴァンの始祖の直系でしかも先祖返り、神々しい程の容貌を持つとなれば、当然相当の魔力も霊格も高い存在であるのはこのマルティエ帝国内でも周知の事実。

 何よりも、帝国内で随一の魔力と美貌を誇る種族(エルフ)よりも、そしてこの『龍の寝所』を守護してきたランドルフの守護妖精でもあるメルヴィンと対比したとしても、能力及び美しさすら、幾重にも優れているという相手なのだ。


 丁寧な口調ながらも阿る様子が微塵も感じられない態度を保っている青銀の彩を持つ美しい青年を前にして、ランドルフは改めて己の立場の悪さを痛感する。

 出来る事ならば二、三日程前に時間を巻き戻し、その上で己の行動を殴り飛ばしてでも全力で改めたいと、切に思う程には心中穏やかではない。


 だが、不幸にもレオナルドに施された、階層を隔てられたまま空間を一部固定という状態は解除されておらず、謝罪も弁明も、ましてや恭順の礼すらも執れない。そう内心己の立場が置かれた状況の不味さに、もどかしさと焦燥に愕然としている間に、耳に心地良く通る透明感のあるやや低い美声が届く。


「先日そちらのドライアドから、この地に古くからあるという懸案について、説明の上、相談を受けました。本来であれば、その地に住まう者や所縁の深い氏族の手で解決するべき問題でしたが、私達の旅の指標に関わる可能性が見えたので、助力に関してはお引き受けました。あくまでも私達は助力のみですので、解決への方針やその後の対処や根回し等、そこは当然関わる気はありません。くれぐれも、ご理解頂けますよう」


 そこで一度言葉を切ると、アレンハワードはその双眸をメルヴィンに向ける。


「それで、当主殿には、何処まで話が通っているのかな?」

『私からは、この地の御子との関係と守護の役目、そして当地の呪いなどの失伝について、話しました』

「それから?」


 言外に「それだけか?」と含ませながら、やや温度の下がった空気を纏ったアレンハワードに、メルヴィンは冷や汗をかきつつも慌てて補足を述べる。


『真実を識った上で当事者として関わる覚悟を問い、頂いた今朝までの記録もある程度確認させております。後は、その‥‥獅子様?の話の流れで、私を含めて大それた想いも既にございません!』


 やや早口で語られた内容に、アレンハワードは僅かに口元を緩め、冷え冷えとしていた空気を困った様に笑う事で幾分か和らぎ始める。


「ああ、うん。そこは信じているよ。あんな強烈な存在に魂まで縛られてしまったのだものね」


 若干同情めいた口調で言われた内容は酷い物だが、重苦しく凍えた空気に満ち満ちていた当初より、かなり場の雰囲気は柔らかくなっていた。



お読み頂き、ありがとうございます٩( 'ω' )و


ふと今更ながら、ラブコメ要素の欠乏に気づいてしまいました。。。。

神隠し!!!

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