表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
35/150

35、閑話・深くて暗い微睡み

一人称ボク、名前と性別はまだない٩( 'ω' )و


短めです。

 

 ボクは深い深い闇の中で、躰を丸めて眠る。


 原始(はじまり)の頃はとても暖かくてふわふわした場所に居て、まだ目は視えていなかったけれど、瞼の裏側に淡い光の何かを沢山感じていた。

 どうやらそれらは、ボクの周囲を取り囲む様にして、舞っていたようだ。


 ボクを『受肉』させる為、所謂生物的な親という存在は、既にこの世には居ないと理解していた。

 それでもボクは不思議と寂しさなんて微塵も感じなかった。


 だって、ボクを優しく包む爽やかな土と草花の香りや、本物は見たことも感じたこともないけれど、心がぽかぽかするような温かな陽だまりのような何かに、優しく護られて微睡んでいたから。


 そうしてゆっくり、暖かな何かを栄養として、ボクは永い間眠っていた。


 気の遠くなる様な時間の流れの中で、数多の生命の移ろいを感じ、また幾多の営みや感情がそこにあるのを感じる。

 まだ、目覚めてそれらの存在する外の世界に出る事は能わないけれど、全身に心地良く染み渡るように伝わってくる、ボクを育む栄養の一部として、それらの営みや感情もボクの内に蓄積されてゆく。


 だけれども。

 何時からだっただろう。


 どれぐらいの時と歴史が経ったのか、途方もない時の流れをもう覚えていないけれど、透明な水に一雫の汚れが落ち薄く広がっていくように、ボクの周囲は『黒』に侵食されていった。


 ボクは次第に息が出来なくなって、それでもそこから動ける程に成長出来ていなくて。そうして更に硬くなった殻に覆われ身を縮めたまま、徐々に減って行った栄養で、それでも何とか細々と存在を保ち続けた。


 ボクの栄養となる何かは、次第に薄く希薄になって行き、そこに黒い不快な何かが比率を濃くしながら混じっていく。


 それでも、それを摂取しなくてはもう生命を繋ぐ事は出来そうにない。


 僅かずつ、じわりじわりと澱が蓄積されていくように、長い年月をかけ、ボク自身を蝕んでゆく黒い何か。

 もしかしたら、ボクはこのまま君に出逢えないまま、朽ちていくのではないか。


 ボクが世界に存在し始めてから途方もない時が流れ、初めて感じた魂の引力。

 遥か上層に突如として顕れた、ボクにとって掛替えのない光の欠片。


 胸を締め付けるような焦りと、甘やかな期待。

 きっと君の為にボクは存在するんだ。


 早く、早く目覚めなければいけないのに。

 目覚めて君を迎えに行かなくてはならないのに。


 ボクに絡み付き、侵食してくる黒い何かが、ボクと君を遠ざけている。

 今まで感じた事のない、不快な気持ちまでが、ボクの心を蝕んでいく。


 このままでは、君は違う誰かに奪われてしまうのではないか。


 近頃、そんな考えに囚われる。


 不意に頭の奥が痺れるように、鈍い痛みに全身を支配される。

 途端に自分の鼓動が一際耳に大きく響く。

 ボク自身の鼓動だというのに、不快な音に感じていた。


 胸部がキシリと締め上げられたような気がするけれど。

 ずくりずくりと自らの鼓動に併せて、ボクの躰から何かが滲み出すのを感じ取るけれど。

 そんな事は、永劫とも感じる今の状態に膿んだボクには些事でしかなくて。


 それよりも、何よりも。


 ああ、早く君に逢いたい。

 逢って、君に触れたい。


 柔らかなその肉体をズタズタに引き裂いて、綺麗な血を啜って、暖かな内臓や肉を貪りたい。

 激しくこの身を苛む飢えを癒してくれる存在。


 愛しい、愛しい存在。


 ボクが壊れてしまう前に。

 誰かに君が壊されてしまう前に。

 ボクが堕ちてしまう前に。


 早くボクの耳に、君のその『声』を届けて。


 少し前から、君を感じるんだ。

 早く、ボクに会いに来て。

 ボクの核に染み込んだ黒い花の種。

 芽が出て蕾になり始めてる。


 手足が痺れるように冷える。

 呼吸をしている筈なのに、どんどんと息苦しくなってくる。

 ボクの存在を肯定し、傍で護ってくれている誰かの気配も、もう余り感じ取れない。






 ‥‥‥‥そろそろ、時間切れかも知れない。


 早く、愛しい、狂おしい程に愛しい君に、逢いたい。


 やがて来るであろう邂逅を想像し、知らずボクは唇の端に仄暗い笑みを載せていた。



お読み頂き、有難うございます!


うーん、大まかなあらすじは作っている筈なのですが、誰も筆者の思う通りに動かない謎_(:3 」∠)_


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ