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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
32/150

32、助命

朝晩冷えて来ましたね!


もう、鼻水が止まりません。2ヶ月も早いトナカイさんです_:(´ཀ`」 ∠):


『以前と同一では、無くなる‥‥?』


 告げられた内容は古の大妖精のメルヴィンにとっても、(にわ)かには信じられない。只でさえ、地上のあらゆる生き物は、自分達と違って酷く脆く、そして儚い存在だ。地上のそれらは一度喪われると、例え精霊や妖精でもおいそれと蘇らせる術はほぼ無いといって良い。


 今のルディの状態は、発達途上の魔力と体力の双方を削り過ぎたその後に、アレンハワードからの上質な魔力を大量に供給したが故に、辛うじてまだ魂が潰えてないだけと言える。


 そして、メルヴィンが(えにし)の強い土地の魔素をルディに纏わせてようやく、本当にその命の灯火が消えてしまう瞬間をほんの少しだけ先送りしているに過ぎないのだ。

 四年前の喪失に続き、再び末子(まっし)を失う己の契約者の存在が頭になければ、その労力も払わなかっただろう。


「お前の依頼の為だ。早く決めろ」

「うん、悪いけど手が足りないからね」

『そう、ね‥‥でも、どうやって?』


 先程までの戦況を(かんが)みても、レオナとメルヴィンは支援と援護程度、戦力としてはほぼアレンハワードのみ。このままではほんの僅かの想定外との遭遇一つでも、状況を崩される可能性が高い。


「その領主子息も守護狼の末裔なんだろう?命のない身体の質量と、親和性を含有する潰えそうな魂が揃っている。後は良く似た魂の残滓でもあれば‥‥」


 説明をしながら、次第に考え込み始めたアレンハワードは上着の裾を、ちょんちょんと引っ張る存在に思考を遮られる。

 自分の腕に抱かれてぴったりとくっついていた幼い愛娘が、大きな紫水晶の瞳で見上げていた。

 視線を合わせると、ルーナエレンは視線をドライアドの傍に横たわる少年のやや上空に向ける。


「エレン?」

「いるよ?ふたりいるの」

「え?」

「あのね、いまのエレンなら、たぶんできるの。ふたりが、はやくっていってるの」


 視線の先の何かをじっと見据え、黙り込む様子のルーナエレンの邪魔にならない様に、アレンハワードは視線でレオナに説明を求めるが、やや斜め下へと目を逸らされる。

 絶妙に三方それぞれの方向を向きながら皆違う方を見やる三人に、得も云われない空気が流れたが、それを新緑の美女が断ち切った。


『まさか‥‥そんな?意図的に、先祖返りみたいな状態にするって事?!』


 メルヴィンの悲鳴じみた言葉に、虚空を見つめていたルーナエレンがコクリと頷く。

 そして、今度はレオナへと身体の向きを変え、上目遣いで鈴を転がすような高く幼い声で語りかける。


「ええとね、レオナにも、てつだってもらわないと、できないの」

「喜んで!」


 どちらにせよこのまま喪うだけの存在ならば、確率が低くとも戦力が増える方が良いに決まっている。

 本来気紛れな上位の存在が恩寵を与えるのだから、事後承諾でも文句は言えない筈である。


『責任は私が持つわ‥‥だから、お願いします』


 メルヴィンの言葉を待って、ルーナエレンは静かにアレンハワードの腕から抜け出す。

 そしてレオナに向かって両手の掌を上にして、差し出した。


「レオナ、くろのいし、ちょうだい」

「一個ずつ?」


 こくりと頷くルーナエレンの手の上に、スカートのポケットに手を突っ込んで取り出した、元魔獣であった残滓を躊躇いがちに乗せる。すると自分の掌よりも大きな黒い石を両手に乗せたまま、下から温めるように銀色の魔力を篭めた。


 丸い石の内側の外周が銀色の揺らめきに覆われると、徐々に内部に捕らえられていた炭化したと思われる魔獣の本体がポロポロと崩れ始め、石の内部に存在していた全ての黒い固形が消えていく。

 それでも内部には半透明の黒い陽炎だったモノも凝っているのか、銀色の光の揺らめきと追いかけっこをするように、暫く水と油を混ぜた様に分離するように動いていた。

 陽炎の黒い色が一定の薄さになった時、ずわりと石を乗せているルーナエレンの両の掌に石の中の彩が吸い込まれ、その勢いに引っ張られるように、一つの淡い光が石の中に灯った。


 同様にレオナからもう一つの黒い石を受け取り、結果的には似たような光が灯った石が二つ、ルーナエレンの手に残る。


「レオナ、そのオオカミさんをつつんで?」

「こう?」


 素早く最後に残っていた、一番巨躯な狼の魔獣の元へ移動したレオナが返事を返す。

 アレンハワードの戦いを見ていた彼女の指示する内容は、恐らく空間を密閉し、隔離した内包される存在を浄化し、融合させる素材として変換するというものだろう。

 密閉と隔離と、ついでにサービスとばかりに存在の質量はそのままに、密閉空間の縮尺の比率を少し弄る。


 この程度の干渉であれば、直接理に触れる心配もない。そして今ルーナエレンに扱える能力は、ほんの少し注いでしまった本来のレオナに影響を受けてはいるものの『彼女』由来のものだ。

 覚醒していないにしても、今現在期間限定とはいえ使える力なのだから、理からの反動は無いに等しい。

 万が一事の重大性を理解出来ない輩がいるならば、魔術誓約書を用意するだけだ。


 視界にあったとてもとても大きい氷漬けの狼が、あっと言う間に小さな掌サイズとなってレオナからルーナエレンへと手渡され、大きな紫水晶の瞳は思わず驚きに瞬いた。


「魔獣に堕ちる前は、聖獣でもあったようだからね。質量変換と顕現のコントロールを、代わりにエレンが願えばいい」


 背後からレオナの縮尺改造の所業について無視したまま、アレンハワードが助言をすると、少し困ったように眉尻を下げた愛娘はコクリと頷く。

 二つの石をレオナに預け、縮小された魔獣を封じた球体だけを手にドライアドの元へ向かう。勿論背後にレオナは付き従い、横たわる幼い少年の傍に膝をついた。


 そっと少年の淡く薄い黄色の前髪を退け、まろい額に小さな掌を乗せて黒い陽炎の影響を確認すると、ルーナエレンは傍のレオナをそっと見上げる。その大きな瞳は少し不安げだ。

 安心させるようにレオナは青い目を細めて微笑み、少年とドライアド、そしてアレンハワード親娘と自分以外からほんの少し魔の森の地面との次元をずらした。

 土地に染み込む怨嗟との双方からの干渉を防ぐ処置だったが、それに対して緊張したように身体を硬らせたのは、メルヴィンただ一人だ。


 不安げに見上げて来ていた紫水晶の瞳にあった不安の彩は、いつしか消えていた。


 小さな両手に縮小された狼の魔獣を浄化し、顕現した質量をそのまま魔素に返還し、絆を親和性のある少年へと繋げるように微かに上下する胸に乗せ、路を作る。彼の始祖でもある守護狼の質量は、獣性の亜人の上位が獣に変幻出来る資質があり、その変幻後の姿として一部を開放し、負荷がかかる質量は封印し凍結した質量として内包させる。


 次にレオナから手渡された二つの石に、ルーナエレンは更に自らの魔力を篭めるとそれぞれを掌の上で開放した。

 キラキラと光る銀色と淡い赤、そして同じく銀色と淡い山吹色が混じっている光がルーナエレンの目の前で混ざり合い。やがてすぅっと少年の胸に消えていく。


 しばらく待っていると、幼い少年のふっくらとした頬に、ようやく血の気が戻ってくる。


 膝をついて傍から緊張した面持ちで少年を見守っていたルーナエレンは、そこで大きく深い息を吐く。

 緊張がやや解けて、へにゃりと小さな身体が後ろに傾ぐが、それをいつの間にか背後に控えていたルークに受け止められる。


「丁度良い。ルーク、今だけその少年に同化して、定着と調整をしろ」


 一瞬、やや不満げな表情を浮かべたものの、レオナに上から告げられたルークは何か逆らえない雰囲気を感じ取ったのか、こくりと頷くとルーナエレンをレオナに預け、空気に溶けるようにさらりと消えた。


「さて、助命と下準備は完了だ」


 ニヤリと黒い笑みを綺麗な朱色の唇の端に載せて、レオナはメルヴィンに挑発的な視線を送った。



お読み頂き有難うございます!!


無口で甲斐甲斐しい親しみやすいお姉さんというイメージをエレンに持ってもらいたいレオナ。

でも、最近お外で見るレオナに違和感は無いようです。


次回は保護者会。

モルガン家を掌握すべく、荒ぶる予感。


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