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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
30/150

30、黒に堕ちた先

今回はちょびっと短めです。


前回の更新で、当社比(違)で閲覧数が多くてびびり上がりました(//∇//)

同時に信じられないくらい嬉しくて、挙動不審になっちゃいました(笑)


これからも、ボチボチ頑張りますので、お付き合い頂けると幸いです٩( 'ω' )و



 急激な魔力の喪失と呪いの負荷で苦悶に表情を歪めながら、ぎこちない動きで上体を起こすアレンハワードを振り返らず、レオナは親娘と黒い陽炎に包まれた少年の間に立ち視線をそこから逸らさない。


「動けそうか?」

「なん、とか‥‥エレンを避難させたい」


 ちらりと一瞬苦しげな声音に視線をやり、すぐに前方に油断なく視線を戻したレオナはフンと鼻を鳴らす。


「無理だろ、今離したらアレン動けなくなるぞ」

「‥‥そんなに、か?」


 今度は前方から視線を切らず、レオナは明確に頷いた。迷っている時間は無いのだろう。

 アレンハワード単身でこの場を納められなければ、どの道レオナによる破壊により魔の森が無くなるだろうし、そうなれば命の多くと魔素の循環が失われるだけではなく、怨嗟もより色濃くなるに違いない。


 二人の会話に、ルーナエレンの小さな手に力が篭った。


「とうさま、エレンはなれない!」


 愛娘は震える声で、それでもはっきりとした意思の籠もった言葉を口にし、ぎゅっと抱き付いてくる。

 華奢で小さな身体から、アレンハワードに対する暖かな想いが淡い魔力に溶け込みながら立ち昇り、アレンハワードを包む光が強くなる。


 格段に身体が楽になる感覚に、ルーナエレンを抱き抱えたまま立ち上がり判断を下す。


「分かった。しっかり掴まって、恐かったら目を瞑っておいで。レオナ、あの男性をドライアドの処まで避難させて」


 ルーナエレンは告げられた事に肯定の意を伝えるように、より一層腕に力を入れ、レオナもコクリと頷いた。雷精もふよりと親娘のすぐ側を漂いながら、楽しそうにしている。


「ドライアドは、あの男性が目覚めて騒がないよう、森の力を行使してもらおうか」

『沈静効果の強いお薬でも精製する?』

「‥‥方法は任せよう」


 メルヴィンの深緑の瞳に一瞬浮かんだ喜色を無視して、動き出したレオナを目で追いながら考察する。


 黒い陽炎は未だに地面からじわじわと染み出し、横たわったままの少年を包んで黒い繭を大きくし続けているが、魔獣と戦っていた時のような怨嗟は強くなっていない。纏わり付かれている少年の意識が無い故の差異なのか、それとも心か精神の有り様によっても変化するのかも知れない。

 自分がアレに触れ体感した限りでは、己に蓄積された負の感情や体験の記憶を揺り動かされ、同時に著しく魔力を消費した覚えがあった。もしあの黒い陽炎を身に宿らせた場合、魔力の枯渇を通り越し、生命力まで消費し尽くした挙句が、あの魔獣に辿り着くのではないだろうか。


 そこまでの仮説を立てている間に、レオナは初老の男性をメルヴィンに引き渡し終わっている。


「レオナ、やっぱり消せない?」

「微塵切りにしろ摺り下しにしろ、浄化じゃないからな」

『ねえ!この男性(ひと)衰弱してるわよ?!』


 背後から掛かったメルヴィンの声音からは、若干の焦りが見てとれる。

 あれだけ黒い陽炎の塊の近くに居たのだ。影響を受けていても不思議はないし、そうなるとアレンハワードの先程の考察は正しいのだろう。


 一刻も早く、幼い少年から黒い陽炎を離さないと、命を落とすだけではなく、魂まで堕ちたその先はどうなるのか予想もつかない。

 引き離し、そして増殖を繰り返す前に少しずつでも浄化をしなければならない。


『俺ガ黒イノノ気ヲ引クゼ!』

「有難う‥‥くれぐれも、触れないように。吸収される可能性も高いし、呪いが濃くなる」


 幼い雷精は恐らくアレンハワードの雷から産まれた精霊。怨嗟の対象に近しい存在に違いない。ほぼ確実に気を引く事は出来るだろう。


 だが、同時にそれは吸収され、報復の対象となってあの陽炎の力となる事を意味する。まだ扱える力の強くない精霊だが、的確な感情表現や会話も出来て意思の疎通も取れるとなると、もしかするとこの先、影響力の強い大精霊となる可能性もある。

 犠牲にしたくはないけれど、今のアレンハワードにはルーナエレンによる魔力増幅と浄化がなければ動けない程弱体している。選択肢など、無かった。


 アレンハワードの顔のすぐ前まで近付き話していた雷精に、そっと小さな手が伸びる。


「ちいさな、かみなりのせいれいさん」


 差し伸べられた小さな手に、惹き寄せられるように着地した雷精を、ルーナエレンは大事そうに両手で包み、胸元で抱きしめた。


「ありがとう、でもあぶないときは、ちゃんとにげてね?」


 目を見開いて顔を真っ赤にしながら、雷精はルーナエレンにこくこくと頷いて見せる。

 もしかしたら、ルーツが自然ではなく人為的な現象から産まれた為に、本来の感情が乏しい精霊とは異なり、始めから感情や知能がある程度育った状態で備わっているのかも知れない。

 そっと手の中から解放された幼い雷精は、ほんの少しぎこちない軌跡を残しながら、ゆっくりと慎重に少年の元に飛んで行った。


 その様子を見守っている僅かな間、アレンハワードは旅装の腰に着けた小さな皮袋から絹糸で編まれた組紐を二本取り出し、指先から細く魔力を光らせながら何かの術式を空に書き出す。

 対になる様な二つの術式を重ね合わせ、そこに先程の二本の組紐を潜らせるとすうっとそこに光が吸い込まれた。


 黙ったままその組紐を一本、ルーナエレンの手首に可愛く結んでやり、もう一本は手早く青銀の髪を束ねた部分に結んで見せる。


「これで、少しだけ手を離したとしても、エレンは私から離れないよ」

「すごい、ほんとにおちないの‥‥」


 緊張を解す様なアレンハワードの口調と微笑みに、そっと手を離して目を見張る愛娘の表情は、ほんの少しだけ強張りが解けたようだ。それでも、油断してしまわないようにぎゅっと抱きしめると、その意図が伝わったのか小さな手が再びアレンハワードの服を強く握る。


「さあ、そろそろだ」


 いつもよりやや低いレオナの声に二人は表情を引き締め、雷精の動きを真剣な眼差しで追った。


 その場の皆の視線を一身に集め、雷精は黒い陽炎に包まれた少年のすぐ上空まで来て誘うように、何度も上下に漂っている。

 そして予想通り、黒い陽炎はざわりと揺れ動くとまるで触手を伸ばすかの様に、雷精に向かって何度か向かっていくのだが、その度にすいと上に逃げられては戻るを何度か繰り返す。

 態と苛立たせるような動きに、始めは一つの触手が伸ばされただけだったのが、次第に複数が伸び上がる。それでも尚逃げられ上下だけではなく左右にも逃れる雷精に、次の瞬間ずわりと一気に少年を包んでいた黒い陽炎が離れ、一際大きな雷鳴と稲光が目を焼くと同時に予想以上の速さで雷精の居たであろう場所を四方八方から一色の黒が阻み一気に膨らんだ。


「レオナ!!」

「わかってる!」


 黒い陽炎が離れた幼い少年の容態をメルヴィンに診せる為に、レオナが素早く風を纏うと直接触れないように少年を包み、再び素早くメルヴィンの元に運び込む。

 その間にアレンハワードは手にした氷の剣に銀色の光を纏わせ、雷精を今にも飲み込もうとしている黒い陽炎を下段から斜め上へと一閃し、真っ二つに両断した。


 ルーナエレンの魔力も混じっている為か、氷の魔術と浄化の光が複合魔術の効果を持った様に、断ち切った部分は再び融合出来ない様子だ。切る度に魔力を吸われる感覚を覚えるが、吸収される量よりも浄化された部分の質量が勝っているのか、僅かながらも目に見えて陽炎は小さくなっている。

 霧散して逃げないように、レオナが離れた場所から空間を僅かに切り取るように無属性の壁を作り、徐々に黒い陽炎が小さくなって来た頃には、もう大人の膝上程度の高度しか保てていない状態になっている。


 後一息だと認識した途端、地面に逃げ込むような動きを見せたかと思うと、二つに分かれていた黒い陽炎は地を這うように氷塊へと吸い込まれて行く。


 そこに、ぽとりと落ちて来たのは、弱々しい小さな小さな光だった。



お読み頂き、有難うございます!


メルヴィンさんが有り得ないくらい薄くなりました!(コメディ的な意味合いで

そして、段々レオナが自分の中の女の子設定を無視しまくっているので、そろそろ姿も性別的に男性にしようと思ってますが、きっかけが登場するまではもう少しロリっ娘風の姿で粘ります。


次回は、ほんのちょっと暗い展開予定です_(:3 」∠)_

これが予定通りいかないんだよなぁ。。。。


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