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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
3/150

3,有翼と鷹の翼

ちょっと色々入れ過ぎてます。


シリアスに耐えられず、ぼちぼちキャラが勝手に掛け合いしはじめました٩( ᐛ )و

 魔の森を馬車がガタゴトと走る中、アレンハワードは差し障りのない話をしながら情報を集める事にした。


 すっかり陽が落ちて更には此処は魔の森の只中。

 この森が異常をきたしておらず、自然な生態系を保っているのであればルーナエレンの特異体質でどうとでもなる。

 だが、夕刻の愛娘の反応からは、ここも少し事情がありそうだ。


「ファング殿、私達は二日前にフェイトリネア側の関所を越えて、そのまま街道の近くを北東に進んでいました。そちらに、魔素を多く含んだ良い素材が揃うと話を聞いて」

「ああ、領都に向かわれていたのですね。徒士(かち)なら十日って、この辺りでは言いますよ。」


 僅かに鋭い印象の薄氷の目を瞬かせたアレンハワードの顔が、幾分幼く見えてアスコットも自然と表情を緩める。


「森に慣れていても、惑わされる事があるんです。慣れていない旅の方なら尚更。」

「何ですかそれ‥‥ニクスやバイコーンでも出るんですか‥‥。」


 思わずと言った風なうんざり顔と声音に、今度はアスコットが鳶色の目を瞬かせる。


 昨日、国境を越えた森の入り口で既に一度遭遇し、アレンハワードはバイコーンによる幻術に掛けられた。その折、幻術だと分かっているのにも関わらず、お年頃に成長したらしきルーナエレンに大嫌いと言われ、思わず攻撃の手を止めてしまったのだ。

 有り得ない程の、精神攻撃である。


 思い出したくない出来事なのに、この沈黙は肯定を意味している気がしてならない。


 暫し互いの間に流れる沈黙に耐えきれなくなったのは、アレンハワードの方だった。


「‥‥辺境騎士団がどうにかしてくれる筈です。ええ。きっと」


 場を占める空気が微妙になって来た頃、森の木々が疎らになり始める。

 それに気付いて暗いながらも周囲を観察していると低木が増え、馬車の車輪の音も何処か乾燥した硬質な物になっている気がする。


 そうしている間に視界のずっと先の闇に、篝火が揺らめいているのが見え、次第に近付いた闇に見えていた部分に気付くと、アレンハワードはゴクリと喉仏を上下させた。


「龍の背骨‥‥」

「まだ、国境が定まっていなかった頃の、オクリウェートのドワーフ達の遺跡を利用しています。」

「遺跡、成る程確かに。陽が昇ったら、少し見学させて頂きたいくらいです」


 自らを魔術師と名乗った青年は、研究家肌でもあるようだ。

 然も他国の出身でありながら、旅先の国の創世の逸話や価値ある遺跡にまで博識ときている。

 庶民出身の一介の旅の魔術師な筈はない。下手をすると、国際問題に発展する地位や職にあるかも知れない。


「失礼ながら、サリヴァン殿は国防や諜報に携わってはいらっしゃいませんよね?」


 研究欲に瞳を輝かせながら見学を申し出たアレンハワードに、苦笑いをしつつアスコットが念の為と言った体で軽く確認すると。


「あ、申し訳ありません。物心付いてからずっと研究ばかりだったので、現物を目の前にして興奮してしまいました。安心してください、今の私は娘以外に仕えません。何でしたら魔法誓約書も用意しますよ」


 ほんの少しはにかんだ表情に嘘はなく、アスコットは笑って首を横に振った。


「俺の方こそ、恩人を礼に招いておいて失礼しました。明日の内に我が主モルガン伯爵閣下に先触れを出します」


 岩壁の手前に巡らされた堀に、鉄製の門扉が重い音を立てて開くと同時、馬車の幅二つ分程ある跳ね橋が降りて来た。




  * * * *



 ドワーフの遺跡を利用したそれは、なかなかに広い要塞となっていた。

 武器の保存から手入れの為の竃や鍛冶場、厩も倉庫もと部屋数も多い。広い食堂や資料室に医務室、会議室と続き、最上階にはしっかりとした客室までもある。

 施設内をさらに奥に進むと、ぽっかりと大きく拓けた場所が演習場になっており、更にその背後は切り立った崖が(そび)え、白糸のような静かな滝と傍に水場があり、古びた四阿(あずまや)ととても立派な菩提樹の大木が立っていた。


 到着時には本気寝になっていたルーナエレンをレオナに任せ、アレンハワードはアスコットと留守番だったという第二警邏中隊副隊長と第一警邏中隊の隊長、副隊長に引き合わされ食事のもてなしを受ける。

 その場では約束通り詳しい詮索は受けなかったが、魔術での戦闘に関するアドバイスや効率のいい術式の配置などに関して、矢継ぎ早に質疑応答会になっていたのはご愛嬌である。


 そして、与えられた客室に戻る際、少し施設内を散策していて冒頭の風景を発見したアレンハワードは、娘が気に入りそうな場所を見つけた嬉しさに頬を緩めながら、部屋に戻った。


 場所柄なのか、ここはとても魔力が扱いやすい。

 部屋に施したいつもより厳重な結界をスルリと解くと、室内に入り再び同じ結界を張り巡らせる。

 室内にはレオナもルーナエレンも見当たらない。

 机の上に置いてある、小さな銀の装飾が彫られた手鏡には、アレンハワードの自作魔術が掛かっていて。

 レオナとアレンハワード、ルーナエレンのみしか入れない、何もかもが揃った居住空間があるのだ。


 鏡を覗けば、ルーナエレンはふんわりした寝巻き姿で子供部屋のベッドで眠っているのが見える。


 アレンハワードは安心して、誰もいない部屋で独り話し始めた。


「ドライアドが居るみたいだよ、レオナルド」


 酷く優しげな声音でゆっくりと名前を告げると。

 誰もいないはずの部屋の椅子に、黒髪の少女が顕れた。


「へぇ、ここは心地いいと思ったら、随分と正常に魔力が廻っているんだな。ついでに、オレの事も思い出せたのか?」


 愛らしい少女の姿で声もそのまま少女らしいのに、話している内容がまるで別人の様だ。


「ちょっと調子は良くなってるよ。君がケットシーか有翼の黒獅子か、ここに来るまで確証が持てなかったけど」


 へぇ、と低い声で少女が笑う。


「耳を切る前に気付いたのは褒めてやるよ、で?何が聞きたいんだ」


 褒美だと言わんばかりに喉をくくっと鳴らした少女の態度に、アレンハワードも冷たく笑う。


「五年前の古代召喚魔法の実験。あれで呼び出されたのは君じゃない。なのにエレンと一緒にもう居たじゃないか。元から聖域などにずっと居たならともかく、まるでエレンと契約している様にも見える。鷹の翼の(すえ)で、古代召喚魔法並みの特異体質で、あの魔力量。それに魔力の制御補助や増幅の、無意識の影響もある。規格外過ぎる危険だ。」

「最後のは、魂の繋がりによる副産物だから、恐らくお前限定だろう」

「とにかく。まだ幼いけどあの子は女性だ。存在が公になれば魔力保有の血族を増やすにしろ、契約の為の召喚の道具にされるのなんて火を見るより明らかだ。そんな、意に沿わない暮らしを強いられる可能性が高い‥‥」


 次第に硬い表情になるアレンハワードの耳に、少女のため息が届いた。


「まあ、この三年外界で人に触れ合わず良くぞ育てたなオレたち。」

「‥‥そうだね」

「お前変態だろ。幾ら鷹の翼の裔とはいえ、エレンの為だけに有り得ない魔術捻り出すし」

「傍観者とか世界の管理者とか言われる次元の違う存在にそんな事言われる筋合いはない‥‥」


 半目になりながら、アレンハワードとレオナルドの視線がぶつかる。


「まぁ、最悪オレが何とかする。契約は干渉に値するからしていないが、オレの自我がエレンに執着しているからな。お前に何かあったら嫁に貰うから安心しろ」


 ひゅっと息を呑む。

 原始の時から世界の創造を見守って来た有翼の黒獅子に、そこまで言わせる我が娘。

 大真面目な話をしているというのに、飛んでもなく苦い気持ちになる。


「太古の理の不干渉だからな、オレの自我の執着がどこまで仕事するか。という訳で、旅の目的は変わらずお前の鷹の翼から続く短命の呪いの解呪の模索、すごく嫌だけどエレンの保護者を増やす、魔力の流れを戻す作業。この三つかな。ドライアドは、明日にでもエレンに寄って来そうだし」


 黒髪の少女は椅子から立ち上がると、両腕をあげてうーんと伸びをした。


「ところで」

「ん?」


 伸びをした後、膝丈のスカートをパッパと整えていた黒髪の少女に、アレンハワードは微妙な表情のまま。


「レオナルド、君って結局どっち‥‥」

「ああ。両性具有だから、どっちも?」


 にやりと笑って姿を揺らがせたかと思うと、妖艶に笑う黒髪のナイスバディな美女の姿を取る。

 が。

 沈黙が流れ、溜息が溢れる。


「無いね」

「ピクリとも来ないな」


 共に戦って来た保護者仲間でしかなかったようだ。



色んな事情を、暴露大会_(:3 」∠)_


子育て仲間的なアレンぱっぱとレオナルドさん。


この後、本編に出てくるか分からないですが、世界設定などもアップしようと思っています。


本日もお読み頂き、有難うございました!!

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