表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
18/150

18、契約妖精との対話

ゆけ!メルヴィン!(違


更新が何だかんだで週末土曜日の夜になってしまっております。

ゆっくりペースですが、頑張ります_(:3 」∠)_

 

『私の事は忘れて頂戴、愛していたわダーリン』


 目の前に居る美しい半透明の妖艶な美女は、美しい深緑色の瞳を潤ませながら、(たお)やかな指先を左右とも綺麗に揃え、艶やかな唇を抑え肩をふるふると揺らして訴えて来た。


「何の事だか、説明して貰っても宜しいか?メルヴィン?」


 精悍な顔立ちの、意志の強そうなはっきりとした眉を片方だけ器用に上げ、ランドルフは若草色の目を少しだけ(すが)めた。


『だって!無理なのよ!!ランディーったら、諦めてくれないんだもの!』

「だから、きちんと順を追って説明して貰わないと、理解出来ない事を諦めるも何も‥‥」

『もうダメだわ、私‥‥あの方に殺される‥‥‥』

「あの方‥‥?古の強き妖精である貴女に対して、そんな‥‥」


 何処か芝居掛かった嘆きの声を挙げるメルヴィンの通常運行な言動と、契約者であるランドルフの若干噛み合っていない会話に、誰も突っ込みを入れる者はいない。

 場所は陽の三刻になるよりかなり前に休憩に入った街の役場の上等な応接室で、人払いがされている。扉の外には護衛と従者が警護に当たっている筈だが、メルヴィンにより特殊な『人払い』が成されているし、自身の護衛も従者もメルヴィンとの契約は幼い頃から知っているので、この部屋の状態については特に騒ぎ立てる事もない。


 街に到着早々メルヴィンに呼びかけられ、この場所を用意した途端、契約妖精の第一声が冒頭のアレであった。


 さめざめと美しい涙を流すメルヴィンに、ふと違和感を覚える。


「その、前髪の色‥‥何が貴女にあったというのだ。まさか、その様な力を持った存在が?」

『これは、私が勝手に先走ってしまった戒めなの。私なんてあのまま、気紛れに消されてもおかしく無かったわ』

「そんな‥‥貴女の身に何かあったら、俺はどうしたらいいんだ!!」


 メルヴィンとランドルフの出会いは、先代当主に『龍の背骨』に連れて来られた幼いランドルフが、菩提樹の元にフラリと迷い込んだ際、退屈していたメルヴィンに構われた事が馴初めだった。原始の魔力を多く含む魂を持つ存在は、必然的にその容姿も美しいものだ。当然、この帝国内でも有数の力を持つ存在であるメルヴィンが、見目麗しいのも自然の摂理というもの。

 

 幼い少年ランドルフにとって、初恋のオネエさんであり、身の程も知らずに告白した過去もある。

 ランドルフは、勿論ドライアドであるメルヴィンは女性であると信じて疑わなかったし、メルヴィンもその勘違いを知りながらも何も知らせなかった。寧ろ満更でもないと思いつつ、微笑ましい少年を見守り、ある程度の戯れをもって慈しんでいた。


 メルヴィンをしっかりと視覚で認識出来る者も殆ど居なかった為、故意に性別をはぐらかすメルヴィンを正す存在も無い。当主となり現役の辺境伯となっても、メルヴィンは彼にとっての絶対的な美の存在だった。


『ああ、ランディー。そんな顔をしないで頂戴。今朝、私が言った事、忘れて欲しいの』

「貴女が今朝言った事?」

『そう、取り込もうだなんて愚かな事は考えてはダメ!世界が壊れてしまうわ』

「は!?」

『とにかく、私達みたいな存在は、物事の核心をそのまま地上に棲まうものに明かせないし、理解の範疇にないものを与えられないの。せめて、自ら足掻こうとしないと、助言も助力も満足に出来ない。それくらいに、世界と貴方達の絆は離れてしまっている』


 今朝言われた事から始まった契約妖精の言葉の意味が、今一噛み砕けず混乱し始めたランドルフに、深緑の瞳に涙を湛えたメルヴィンは年長者の慈しみに溢れた笑みを見せる。


『幸いにも、ランディーは思慮深さを持っているわ。でも物事を損得だけに捉われず、世界の声を感じ、聴きなさい』

「‥‥はい」

『良い子ね』


 具体的な話が全く見えてこないランドルフだが、この一連の寸劇に込められた警告を懸命に紐解き、まだ立ち去っていないメルヴィンに確認するべく考えを口にする。


「俺に世界の声を聴く事が出来るとは到底思えん‥‥メルヴィン、貴女に確認させて頂きたい。取り込むな、損得で見るなと仰せなのは、今回の魔術師殿の一行という認識で良いか?」

『ええ、合っているわ』

「では‥‥このまま、お会いしないで戻るべきなのか?」

『巡り合わせであれば逢えるわ。でもランディーの世代では無いわね』

「やはり、それでは魔力を求めて『やめて頂戴!消されるわよ!』‥‥」


 強い声音で被るように言われた言葉の響きが、メルヴィンの深緑の瞳の奥の光が、契約をしているにも関わらずランドルフ以外の誰かを護る意思を垣間見せる。


『私だって、解らない事ばっかりなんだから、あんまり我儘言わないで頂戴!その上で説明しようにも言ったら最後、私だけでなくこの領地どころか国だって消えるわよ!底知れないんだから!!!』

「そんな、魔術師一人にそんな事が可能なのか‥‥」

『‥‥‥そうとも言えるし、ちょっと違うとも言えるし。きっとランディーの部下とラドルファス(レッド・ウルフ)は対面したでしょうから、言っても平気かしら?黒髪で青い瞳をした、魔術師殿と共にいる存在は特に、良い?特によ?絶対に怒らせてはダメ』


 普段は余裕たっぷりな態度の美女は、今は何処か怯えたように瞳を伏せ、腕を摩りながら強い口調でそう言い切る。


『私だって、ずっと見守ってきた貴方達とこの場所を、消したくなんてない。聖獣の眷属を魔獣に堕とす何かに対抗出来る術があるなら、示してあげたいし可能性があるなら手を貸してあげるわ。でも、恐らくだけど、この地ですらこんな異常が出て来たと言う事は、他の精霊や妖精の力が薄い地域は?彼らのような存在を、今失くしてしまったとしたら、この先は?嫌な予感がするの。絆は無理に一方的に結ぶものじゃない、知ってるでしょ?』


 レオナが聞いていたら、先刻まで絵本の罠に掛かっていたお前が何を言う!と、青筋を立てそうな内容を大真面目な顔で説教している訳だが、残念ながらランドルフは契約妖精で初恋の相手の、そんな残念な姿を知らない。


 想像をするだけではあるが、メルヴィンよりも上位の存在であり、古い時代にこの世から去った末の神ですら呼び捨てる存在は、態々最初の感情として代表される『執着』の話をする()の存在は。

 そして、そんな彼の存在と対等に接する事を許された人間と、『執着』を受ける少女。

 あの三人との関わり方次第では、滅びに向かって見えない砂時計の砂がサラサラと落ちるかの如く、ゆっくりと、しかし覆せない決定的な、静かな異変が積み重なり世界を覆うに違いない。


 魔素や魔力が希薄なり、神々の存在が薄れたこんな今の世に、あの三人が顕れ旅をする意味。

 幾度も滅びを繰り返してきた歴史と同じく、審判なのだろうか。


 魔力の枯渇する世界に、ぽつりと存在する珠玉。

 翻弄される未来なのか、原始の時のような幕開けがあるのか。


 銀の彩が意味する、この世界で最も愛されている女神の神意は。


 想像もつかない超越者の、あるか無いかも解らない思惑に、及ばぬながらも思考の海に深く潜っていたメルヴィンだったが、そこに心配そうな契約者の声が掛かる。


「メルヴィン?」


 その声に考察の深海から浮上し、視線を彼に向けた。


『とにかく、今は私が動いているから。あと、もし彼等と出逢う機会があったとしたら、腹芸なんてぜえったいにしないで、最上級の礼を以って接するのよ?態度が無礼だったり気に障ったりしたら、最初に言った様に、本当に私と別れて貰うから!!』

「‥‥肝に銘じておこう。でも、メルヴィン。俺の好意なんて、貴女は一度もまともに取り合ってくれない癖に、そんな言い種‥‥あんまりだ」

『‥‥‥ふふ』


 だって、良い女というのは。

 安売りなんてしないんだから。


 と、心の中でふふんと鼻を鳴らして呟いたメルヴィンだったのだが、何故か背筋を極寒の風がそろりと撫でた気がした。無意識に身震いをして、メルヴィンは背筋を伸ばす。


『じゃ、じゃあ私は依代に戻るから』


 それだけ言うと、するりと地面に溶け込むように、半透明の姿を消した。

 途端に会議室の空気が薄くなった様に、ランドルフの身体からも緊張感が自然と消える。


「さて、では次代を菩提樹に引き合わせる為、とでも考えるか‥‥」


 ぽつりとそう呟いて、ランドルフは会議室の扉を開け、護衛と従者を連れて役所を後にした。




やっとメルヴィンさんとランドルフさんを対話させる事が出来ました!

次回もメルヴィンさんを交えて、楽しく冒険出来たら良いなぁと考えております٩( ᐛ )و

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ