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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
16/150

16、モルガン領の事情

すっかり遅くなってしまいました。。。

なのに短いです。とほほ

すっごく進まない_:(´ཀ`」 ∠):

 

 夜も明け切らぬ領都にある領主の城の薄暗い執務室で、伝令の早馬が(もたら)した報せを受け取ったのは、この領都の筆頭執務官であるコナー・ロス=ウォードだった。


 彼はまだ文官が出仕するよりかなり早い時間であるにも関わらず、昨晩から魔馬を中継地で替えながら夜通し駆けて来た伝令により、城近くの屋敷から急ぎ呼び出された。領主に取り次ぐべきか朝を待つか、判断するにも責任を伴う可能性がある為の人選ではあるが、些か連日の執務の疲れが残る。


 マルティエ帝国の国境沿いであるこのモルガン伯爵領は、所謂辺境伯として長い歴史の中で国防で名を挙げた武の地だった。他領に比べ、『龍の背骨』を含む龍の寝所の魔の大森林が一番大きく含有されている。

 つまり、龍の寝所の影響を良くも悪くも多大に受けている領地であり、豊かな森は恵だけではなく自然の猛威も多くある。故に聖獣の裔の血族が眷属を従えて小さな領地を纏め、魔物や魔獣にも対抗してきた歴史があった。

 だが、血族の血や魔力が少なくなってきた影響なのか、先代領主の統治終盤頃から魔獣が変質し始め、寮内の討伐が増え、遂に眷属の魔獣化が見られるようになった。厄介な事に、魔獣化した眷属は何故か傷付ける事が出来なかった。

 武勇に優れたモルガン領の領主一族も騎士も、領内の魔獣被害を抑える為苦慮する中、数年前先代が討伐の際に負傷したのを機に、この地の守護ともいわれる古き妖精と契約した現領主へ世代交代をした。

 それにより、多少眷属の魔獣化が落ち着いていたのだが、夏の終わり頃から再び眷属の魔獣化が報告されるようになり、以来ずっと領主一族も文官も騎士達も対処に奔走しているのが現状である。


 三日前にも、『龍の背骨』にある要塞付近での眷属の範疇と思われる魔獣目撃情報が挙がり、警邏隊を調査に向かわせた件で昨夜も遅くまで対策会議が執られていた。コナーは会議が終わってからも領城の自分の執務机で、各所への避難や物資の手配の指示系統を纏め、早朝の呼出しに応えるついでとばかり、夜半まで纏めていた許可を求める書類の束を持ち出して来ていた。


 この部屋の主人である領主ランドルフ・ガイ=モルガン伯爵が起き出すには、まだ一刻以上早い。

 昨夜も領城内の居住区域にある私室へ下がるのが遅かった領主を気遣い、コナーは伝令と直接会い報告と書類を受ける事にして、執務室から城門近くの詰所に足早に向かった。


 詰所の扉を開いたコナーの視界に、夜通し駆けて来たであろう革鎧と外套姿の警邏隊員の姿と、そのすぐ横に赤銅色のやや癖のある短髪の、辺境騎士団の団服姿の長身の青年が映る。早朝というには早過ぎる時間に詰所に訪れた壮年の文官に、彼はすぐに気付いて声をかけて来た。


「コナー!其方が来たのか!」

「ラドルファス様、本日は朝出でしたか」

「ああ、自室から詰所に出る前に、演習場で一頻り汗を流していたのだが、駆け込んでくる伝令が見えたのでな。急いで迎え入れ、水分を摂らせたところだ」

「騎士団長自ら、お手を煩わせて申し訳ございません。して、報告はもう受けられたのでしょうか?」

「いや、これからだ。共に聞き、兄上への奏上が火急か否か、其方に判断して欲しい」


 コナーは表情を引き締めて頷くと、身体を一息ついた伝令の兵士に向けた騎士団長のすぐ横に並ぶ。


「ご報告します!眷属に準ずる魔獣の調査中、第二警邏隊が戦闘になり交戦、負傷者が出て撤退を余儀なくされましたが、旅の魔術師に救われ、討伐後無事に帰還致しました!」

「!!」


 伝令が口頭で述べた内容と同じ書状も受け取ったコナーが、書面に目を通して愕然としている。ハウンドとはいえ、眷属の範疇に入るらしく、この領地では生息していない魔獣だった。その認識で間違いないらしく、書面には弱らせる事が精一杯で、有効打は無かったと記してある。

 膠着状態から、突如現れた旅の魔術師が、氷の魔術であっという間に討伐して見せた旨が、書面の最後に書かれていた。

 すぐ様横に並ぶ騎士団長であるラドルファスにも、報告書を渡す。


「第二警邏隊のファング小隊長が、その方を要塞にてお引き留めしております」

「おお、でかした」

「すぐに使者を立てねば。ランドルフ兄上へ至急報告を回せ!コナー、兄上のお耳に入り次第、許可と共に使者として向かうぞ!」

「は!」


 眷属の魔獣化の報告が挙がるようになってから今まで、報告件数自体は数える程しか無かった。それでも討伐が不可能であり、辛うじて弱体化した状態で捕獲する事しか出来なかった現状が、打開出来る前例が手に入ったのだ。

 何としても事態の解決に向け、その旅の魔術師とやらに協力を取り付けねば。


 コナーは逸る気持ちを抑えながら、最速で夜明け前の領主の私室へ取り次ぎを出し、報告すると許可をもぎ取って厩でラドルファスと合流し、即座に『龍の背骨』を目指して出立した。




 * * * * *


 魔道具を多用し、強度を補強しながらも軽量化の補助を付け、魔馬を四頭で走る特別性の黒塗りの馬車が早朝にも関わらず、魔の大森林を西北西へ続く道を走る。石畳で舗装されているような立派な道ではないが、森の中でありながら下草もなく踏み固められ樹も程よく間引かれたものだ。


 今朝は兼ねてより領内で頭を悩ませていた事案で、夜明け前にも関わらず報告があった。

 信頼出来る筆頭執政官と領主の実弟である辺境騎士団長が、事態の確認と対処の為使者として現地へ向かっているのだが、そのすぐ後。

 領主であるランドルフの元に、契約妖精のメルヴィンが突如姿を顕した。

 いつになく興奮気味に、緑色の瞳を潤ませて頬まで染めている。ランドルフも先程の報告で目が覚めていたのだが、突如顕れたメルヴィンの常ならぬ様子に息を呑んだ。


『聞いて頂戴ダーリン!凄い魔力を持った人が現れたわ!大きくて綺麗で、引き寄せられずには居られない!』


 その言葉に咄嗟に先程聞いた報告を思い出したランドルフは、己の契約妖精へ問うた。


「もしかして、昨日の夕刻にあったという討伐に助力してくれたという、魔術師殿か?」

『そう!それ!でもそれだけじゃないの!私依代に居るのに、すっごい感じるの。ああ、早く見つけて欲しいわ!一つは何だか言い知れない鋭利な感覚があるけれど、後の二人は凄く綺麗で強くて大きいの!』

「一人ではなかったのか‥‥三人?」

『ええ、そう三人ね。でも、一人は辞めておいた方がいいわ!怖すぎるから』


 古の妖精で、この周辺の妖精の取り纏めのような存在のメルヴィンが、ここまでうっとりと魔力が強い等と話す相手は滅多にいない。この領都の私室まで興奮して報告する程の相手など、稀どころか初めてだ。

 魔力の多さは、ある程度血筋で受け継がれる傾向がある。それが全てではないにしても、今のこの世界であれば、膨大な魔力量を誇る存在は貴重でしかない。


「参考までに、歳の合いそうなのは?」


 ランドルフは、領地を預かる領主として親として、血を取り込むべく自然と考えを巡らせる。


『ルディね、ギリギリでバーナードはアウト気味かしら』

「十二のバーナードでギリギリというと、本当に幼い少女なのか」


 三人居るうちの息子達のうち、該当したのは次男と三男。決断は早かった。


「二人を連れてすぐにそちらに向かう!」

『来るのはいいけど、私は手助け出来なさそうよ?凄い引力なんだもの。それじゃ、私はもう戻るから、じゃあね』


 言うだけ言うと、メルヴィンは話せた事が満足に繋がったのか、顕れた時と同様に忽然と姿を消してしまった。





メルヴィンさんと領主様の痴話喧嘩(違)までいけませんでした。

次こそは〜

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