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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
147/150

147、対処其の2

遅刻です_:(´ཀ`」 ∠):

ごめんなさいいいorz

 

 メルヴィンの領域にてレオナルドが極一部の権能を発揮し、堕ちた元ケット・シーとその飼い主を纏めて握り潰した頃。


 アレンハワードは腕の中のグランジエールを優しく撫でて落ち着かせると、ギデオンたちを振り返った。


()()が小さいうちに、やるべき事を済ませよう。ギデオン、少し記憶を借りても良いかい?」

「儂の記憶、ですかい?」

「外の状況と、どのタイミングで襲撃があったのか、その辺りを人の感覚で確認したいんだ」


 そう言って少し微笑んだアレンハワードは「失礼」と断ってから、ギデオンの頭上をふわりと掌で滑らせるよう静かに動かす。


 その動作は何かを捲るような雰囲気があったものの、ギデオン本人には何をしているのか全く分からないし何かを感じることもなかった。


 少しだけ目を上に向け眉間に皺を寄せてしまっていたギデオンの額に、突如青ひよこがぺたっとくっつく。


『不安にならなくても大丈夫ぴよ、このお方の魔力操作は我ら最上位精霊よりもお上手ぴよ!』

「本当かい?自信に繋がるよ、ありがとう」

『お世辞じゃないですぴよ!魔力の表面の記憶を読むだなんて、我らには繊細過ぎてやろうと思ったこともないものですぴよ』


 青ひよこの賞賛に微かに苦笑いを浮かべ、アレンハワードはゆっくりと頷いて見せる。


「膨大な魔素と魔力量を誇る精神体が本質の君達だからね、大きな蛇口と一緒だから向かないんだよ」

『貴方様の方が、余程魔力をお持ちですぴよ』


 上機嫌の青ひよこの賛辞に背後で高速で頷き同意を示すチェリー姐さんがいたが、アレンハワードは少し憂いを帯びた微笑みで返すのみ。


「さて、ご協力ありがとうギデオン。ここからは外での作業だ、行くよ」

『はいですぴよ!』

『了解!』


 精霊達の元気な返事にふわりと微笑み、アレンハワードはギデオンの肩に優しく左手を置く。


「移動しよう。触れてないと連れていけないからね、荷物は揃っているかい?」

「ああ、咄嗟ではあったが纏めて収納しておいたでの」


 ギデオンの返事に了承を返し、アレンハワードがすいっと視線をやや虚空に動かす。


 ネヴァンの魔術や魔導技術に強いサリヴァンの直系と認識してはいるのだが、もう現状アレンハワードがしている事はギデオンには常識外だらけでしかない。

 純粋に素晴らしい能力を持った青年という認識よりも、もう人間離れした独特の存在だと勝手ながらに思ってしまっている。


 それは悲しいかな半分以上正解なのだが、それ故に呪いと言われる身の上である事までは理解出来ていなかった。


「今夜の記憶を把握したけれど、あの咄嗟の出来事でよく対応出来たものだと」

「いやぁ、あれはほんとに度肝を抜かれましたわい」


 不思議な程に絶対の信頼を勝手に持って、転移という人が成し得ない魔術を使うアレンハワードと気の置けない会話をしながら、ギデオンは船を離れることになった。


 その後、アレンハワードは青ひよこに小さな羽毛を3つばかり厚意で触媒として貰い受けると、それぞれにふぅっと息を吹きかけてから透明と黄色、薄緑の砂利粒を指先でそれぞれの羽毛に載せて一つずつ軽く指で押し潰す動作をする。


 すると、淡く羽毛が三色の砂利粒の色を纏って姿を現した。


「ほう!ここまで純度の高い属性魔石とは!いや、魔石よりも‥‥天然ですかな?!」

「どちらかと言えば、魔晶石というのかな。レオナルドの作った鉱床が出所だよ」

「なるほどなるほど、興味深いですわい」


 出所を聞かされた頃には、ギデオンの中ですっかり今夜の衝撃的な内容の印象は薄れてしまっていた。







 * * * * *






 後処理を粛々と和やかに行なったアレンハワードは、グランジエールとギデオンを一旦空間魔法(おうち)に送り届けてから精霊達を伴い、レナオルドの跡を追った。


 指定は受けていないものの、やり過ぎていたり人の世の理に疎い部分を補ったりを考えての事だ。


 都合のいい場所に移動したとして、レナオルドが使いそうな場所と人物?はすぐに連想した深緑の主。


 正直アレンハワード自身はあまりあの場所を好まないのだが、()()を利用するのが都合が良かろうといかにも考えそうな相手であると理解しているので、迷う事はなかった。


 ただ、あの場所と『風』は多少相性が悪いのか、転移すると雷鳴を伴ってしまうのが難点と言えるけれど、内部にであれば『外界』に影響はそこまでないだろうと考える。


 実際、メルヴィンの目の前でも雷鳴と共に転移した事があったはずと少しばかり前の出来事を思い起こしながら、メイヴィスとの絆から辿って『内部の領域』へ直接乗り込んだところ。


 再びアイスブルーの瞳が自然とスゥっと細くなるのをアレンハワードは自覚した。


「え?あ、おう、早かったな!」


 雷鳴と共に氷の麗しい魔王の登場となった。


 先刻船に有無を言わせず連行された時も酷い惨状だったが、今も大概惨状と言っても良いかも知れない。


 尊大に自前であろう豪華なソファーに踏ん反り返るレオナルドと、少しだけ離れた脇に相変わらずのメリハリボディのメルヴィン、足元の萎れ打ち拉がれた怯えた人魚。

 さらには霧散したばかりであろう濃い魔素と水の気配と混じる緑の匂い。

 薄っすらと微かに混じる血のような錆びた鉄の匂いもある。


「ちょっと生臭いんだけど。説明」

「かしこまりいい!」


 メルヴィンは見たことのある光景でも、恐怖の対象が反射のように突如雷鳴と現れた美しい氷の化身のような相手に従うという異様な光景を目の当たりにし、人魚の女王は溢れんばかりに薄い膜が張ったような瞳を大きく見開いた。


 状況が瞬く間に激変し続け最悪へと向かっていたと認識してはいるけれど、それ以上に酷い事が起きるかも知れないと無意識に凍りつくしか出来ないでいる。


 だが言葉を交わすでもなくレオナルドに氷の化身が歩み寄ると、つと人差し指を黒髪の美丈夫の額に触れさせるだけだった。


「メルヴィン、すまなかったね。持ち帰りを禁止したのは私だから、これらは引き取るよ」

「え、オレのこと?」

「そうだね、君と残滓?フェイトリネアの‥‥」


 緑の女王に向かっても構えることなく上位として振る舞う美しい青年は、温度のないアイスブルーの瞳で人魚の女王をチラリと見て言葉を止める。


「発言は赦していない。管理の範囲が大きいのはまぁ理解するが、力ある者の影響力を放置するな」

「‥‥君が言うんだ?」

「お説教後でって言ったじゃん!」


 思わずといった大きくなった反論の声に、メルヴィンと氷の美青年は少しだけ肩を竦めて見せ、何も言わずに静観の姿勢を取った。

 具体的にはアレンハワードがレオナルドの豪華なソファーの横へ立ち、メルヴィンは恭しく少しだけ顔を俯かせた事でレオナルドの発言の続きを促す形になる。


 明らかに取り繕えていないのに、それに触れることすら出来ない精神状態の人魚の女王の様子に気付きはしたが、アレンハワードにもメルヴィンにも彼女を慮る理由はないので見守るのみだった。


「お前に求めるのは一つ。オレたちの愛し子が今後この地で活動をするだろう。その際の手出しや厄介事は万死に値すると覚えておけ」

「万死?」


 思わず漏れたであろうアレンハワードの言葉にぐりんっと首を巡らせ見上げてくる青い瞳に、スッと逸らされるアイスブルーの瞳。


 メルヴィンも極力無の境地を維持しようと鋭意努力中の中、極限状態の人魚の女王だけが現実離れした恐怖に震えている。


 一種のコミカルな遣り取りにすら気付けないのだと理解したアレンハワードが、軽く息を吐いてからレオナルドの咎めるような視線を改めて受け止め、形の良い眉を少しだけ下げる。


「今詳しく色々言っても、きっと彼女には響かないし理解していないよ」

「え、そうなのか?」


 びっくりした様子でレオナルドがメルヴィンを振り仰げば、同意とばかりにこくこくと高速で頷いている。


 それらを受けてレオナルドは嫌そうな表情を隠すこともなく頭をガリガリと掻き、盛大な溜息を吐いた。


「しゃーねーな、でも何かあってみろ?次はお前を消すぞ?」

「言い方」

「じゃあ何て言えばいいんだよ?」


 何時もであれば割と冷静に最適な解を用意出来る応用力があるレオナルドのそんな苛立った姿に、アレンハワードは恐らくグランジエールへの愛情と保護欲からくる慣れない思考回路になっているのだと理解して、ふっと柔らかな笑みを浮かべてしまう。


「貴女の大切なモノの残滓は私がお預かりしよう。けして粗雑にはしないと約束するよ」

『!!』

「ただ、彼の忠告と今回何があったのかだけは、きちんと理解した方がいい」


 それだけ静かな声で言うと、アレンハワードは風で空間の中の()()()何かの残滓を全て集め、翡翠のような小さな珠を作り出した。


 そして哀しそうに、怯えながらもアレンハワードの手の中の珠を喰い入るように見つめる人魚の女王を見てから、レオナルドに視線を向ける。


 それを合図に、レオナルドは人魚の女王を元の場所に放り出した。









お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


レオナルドさんだけだとちょっと危ない気がしたので、現場監督出張りました。

お父さんの見本としての指導???


次回、対処其の3です。

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