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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
146/150

146、対処其の1

今回少々レオナルドさんが非情で残酷です。

一部残酷なシーンの可能性があります。

申し訳ございませんm(_ _)m

 

「お前、こいつ知ってんのか」

『ん"ん"っ、失礼致しました。執着変態人魚は、フェイトリネア(あそこ)の負の性質とも言えるのです。これも変わり者で確か、猫を偏愛して幻獣まで手出ししてたかと』


 ほう、と勝手知ったるメルヴィンの領域でどっしりとした高級感溢れるソファーを顕現させ、腰を下ろして寛いだように長い足を組む。


 対面に立つ深緑の艶やかな髪の美女は取り繕った咳払いをもう一度した後、困ったように首を少し傾げて頬に白魚のような嫋やかな指を揃えて添える。


『世代的には三代ほど前の末だった筈ですけれど、アルブシエラの雪解けがあった年でしたかしら?』

「あー、あれか」

『ええ、五百年か六百年程前ですわね。そこで消息不明になったと記憶しておりました』

「ん?人魚なのに?」

『ええ‥‥人魚なのに』


 レオナルドは壊し再生を促す役割を担ってはいるが、壊した対象や命に対しての記憶や思い入れは全く持っていない。

 ただ今がひたすらにイレギュラーなだけであり、今後も恐らく同じだろう。


 一応ある程度の情報を把握しておかないと、後程アレンハワードやルーナエレンにバレてしまった時に言い訳が出来ないと考えて、当時や事情をある程度知っていそうなメルヴィンの元にやってきたのだ。


『仰る通り、人魚で水の属性を持っているにも関わらず、当時の『地均し』であっさりと』

「じゃあ、もう要らないのか?」

『‥‥‥一応、確認はした方が良いかとは存じますが、レオナルド様に対してそれは、ねぇ』

「なるほど?じゃあ何か文句言ってきたらお前が対処してくれるって事でいいのか?」

『‥‥‥全力で制止しますけど、処分までは致し兼ねます』

「ふむ、面倒だな。じゃあ今やるか」

『ええええええ』


 確かに致し兼ねると言った手前、そうなるとは考えたけれど本当に早い。

 展開についていけないであわあわと両手を小さく上下していたメルヴィンだったが、急にすんと真顔になる。


 そうだった。

 やらかした上位種族は自分だけじゃないという事実がこれなのだ。


 世界としては良くない流れではあるが、名実ともに一つの意思のもと自分達のような影響力の強い存在が従い、少しでも良い状態へと導けるのであれば。


 これは必要な事態なのだと、少々強引な思考を纏め上げる。


「あとな、こいつうちの可愛い義息をビビらせた」

『半殺しじゃ生ぬるいでしょうええやっちゃってくださいませどどんと!ババンと!!!』


 グランジエールの事も関わるのであれば、もうメルヴィンは止まらない止められない。


 ノンブレスで捲し立て、あっという間に乾いた茨の牢獄を作り上げギリギリと対象を締め上げ縛り上げてゆく。


 水属性の相手に対して効果抜群なのだろう、戒めが喰い込み水分という水分が搾り取られている様子が窺える。


 器用に顔の周りだけ隔絶した空間のままなのだろう、醜く干涸び皺が刻まれた(かんばせ)を歪め嗄れた呻き声を出しているにも関わらず、欠片もそれらが漏れ聞こえてこない。


 対象の命の雫を最後まで吸い取らんとする茨の戒めが、容赦なくその意思を遂行する寸前。


 突如茨の牢獄を水の膜が覆い隠した。


 それと同時に優雅にソファーに深く腰掛けていたレオナルドが、音もなく立ち上がり虚空を掴む。


『どうか、どうか平に、ご容赦、下さ‥‥い、ませ』

「くるのが遅えんだよ」


 底冷えのする青い瞳に怯えたように、顔面を掴まれた人魚が声を引き攣らせて赦しを乞うが、レオナルドは一向に配慮する気配を見せない。


 心底機嫌悪そうに、掴んだ相手を無造作にメルヴィンの足元へと投げ捨てた。








 * * * * *







 メルヴィンに正しく丸投げしたレオナルドは、再びソファーにどかりと腰を下ろして長い脚を組み、不機嫌を隠そうともしないまま冷たい無機質な視線を投げるだけ。

 遅いと詰ったあとは口も開かないつもりらしい。


 嘗て無い程の機嫌の悪さを肌で感じてメルヴィンも気が気ではない。

 とばっちりでさらに嫌われては堪らないと、改めて気合を入れる。


 内心超絶にビビり上がっているが、自分よりも酷い扱いを受ける者が目の前にいる為何とか体面を繕っているだけだったりするが、それは綺麗に隠し背筋を伸ばした。


 今にも泣き出しそうな怯えた様子の麗しい人魚の女王。

 フェイトリネアの地上を統べる方ではなく、真のあの地域を治めるもの。


 その相手を冷静に観察しつつ、ほんの少しだけ「勝った」と思ったものの敢えて心を沈め凍らせる。


 チラリとレオナルドを見やると鷹揚に頷きが返ってきたので、始めろという合図と受け取り、メルヴィンは顎を引いて静かに言葉を紡いだ。


『水の領域の女王で良いかしら?』

『‥‥はい、緑の女王陛下』


 一瞬レオナルドの生ぬるい視線を感じたが、気にしたり言い訳をするときっと後で酷い目に遭いそうな予感がしたので敢えて敬称に返事を返さず、メルヴィンは感情を殺して続ける事にする。


『霊峰からの大鉈の際、失われていた其方らの末が尊きお方に害をなした。この意味が分かるか』


 一段低くなったメルヴィンの声が語った内容に、びくりと身体を震わせる人魚の女王。

 必死に涙を堪えているが今にも潤んだ瞳からは大粒の真珠が溢れ落ちそうになっている。


『永く喪っていたも同然であろ?最後に其方へ筋を通しただけでも大恩情。否やはあるまい?』


 冷たく静かな声を浴びた人魚の女王は、震えながら茨の戒めに囚われたそれをじっと見つめ、震える唇をギュッと引き結ぶ。

 その瞳は何を思っているのかまでは窺えないが、複雑で多少の反発を抱いているのがありありと見える。


 メルヴィンに見抜かれる程度なのだ。

 レオナルドの勘気をこうむるのは当然。


「否と言ったところでそんなものに意味はない。早くやれ」

『はっ!申し訳ございません!』


 レオナルドが発した力のある言葉と声が容赦なく人魚の女王を床に叩き伏せ、メルヴィンは反射的にキビキビと反応して対処を始める。


 茨の戒めは灰色の猫もどき共々、人魚の末だったものを飲み込んで丸まり、さらに収縮してころりと床に転がった。


 本当に瞬きもしない間に、それが完了された。


 人魚の女王はひたすらに目の前の現象に身を強張らせ、震えることも赦されないと無意識に感じたのだろう、涙を溢す事もなかった。

 ただただ、信じられないだけだったのかも知れないが。


 だがレオナルドはそんな相手に興味もなく、メルヴィンに向かって顎をしゃくる。


 黙って意図を汲み取って転がった茨の球を拾い上げ、そっとレオナルドに捧げるように手渡す。


 その様子をのろのろと視線で追っていた人魚の女王が、縋るような気持ちで一挙一動を見守っていたのだが、そんな心情などお構いなしにレオナルドは茨の球を一息に握り潰してしまった。


『!!!』

『えええ、ちょっとは梃子摺って下さいませんと』

「うるせえよ、今じゃないだろその感想」


 雰囲気を出していたのにも関わらず、思わずのメルヴィンのツッコミについ反応を示してしまったレオナルド。


 どこまでも人魚の女王の感情は放置の様子だった。





 

お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


怖いながらもレオナルドが自分を害することは一応ないと、メルヴィンは思ってます。

一応双子の姉がルーナエレン付きになっていて、状況が筒抜けになりますからね(´・ω・`)


次回は対処其の2です。

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