139、パワーアップ
遅くなりました、申し訳ありませんm(_ _)m
短めです_(:3 」∠)_
元より修行も含めて、先行した旅路である。
既に魔力を抑えられ負荷状態であるにも関わらず、感覚のみで力技で乗り切ってしまっているグランジエールだが、レオナルドの言うパワーアップは少しばかり意味合いが違うらしい。
「いいか?オレは本来後継者も眷属もない。決して滅びないし変わらない存在だからだ」
ギデオンは詳しくないが、週末に帰還した際にでも夥しい蔵書の中を探索してみようと思えた。
自国の信仰は基本的に火の大精霊や大地の大精霊、そして技能の裔神としての始祖たちである。
「こにたんは、眷属だがほぼ魔導人形でありエレンのポシェットで、感情や魂は無い」
「は?」
本来主人やその上長が話しているのに声を出してしまうのはあってはならないことである。
だがレオナルドの口から語られる内容は、ギデオンには無意識的に突っ込まずにはいられない内容だった。
「疑問はわかるぞ?あいつ最近喋らないだけで、なんというか‥‥」
『たましいがないって、ほんとう?ちゃんとみた?』
「ん?アレンと一緒に相談しながら作ったが、そう、創ったはずだぞ?」
『ええ?じゃああれかな、かんきょうがそうしたっていうか』
二人の会話にギデオンはコニーの環境を改めて考える。
常に豊かで色鮮やかな魔素が満ちた住居で、そばにいるほぼ全ての存在が上位者やそれに次ぐ存在で。
仕事仲間とされるカーターや自分の技術もあっという間に出来るようになる。
力仕事が不得手というでもなく、細やかなことも難なく熟す。
ただ、言葉を発さないだけで何と無く全てに先回りし、手配をする熟練の執事のよう。
「待ってくれ、ただの、魔導人形?そんなわけは‥‥」
「嘘じゃないぞ?情報は膨大にアレンやオレのものを引き出せるようにしてあるし、記録をする能力を授けてあるだけだ。記憶という意味では感情は灯ってないはず」
『かんじょう‥‥‥』
義父の言った言葉に少し考えるも、自分が地中深くで初めてコニーを感じた際に垣間見た、強い意志。
あれは感情と呼べるものではないのかと、思う。
それに、あの強い意志はルーナエレンを守護する役割を与えられた者のそれだった。
辛いとか怖いとか、焦りとかは感じなかった。
ただただ、守護するという一念。
「でもまぁ原材料に、このオレの仮の姿の尻尾の先のすこーしだけ含まれている事と、おうち以上の質の魔素が大量に入ってたり、宝珠のカケラもあったからなぁ」
『あ、ゆきうさぎなのは、ちちうえの?』
「そそ。あの色オレの」
与えられた情報からは、確かに純粋な眷属というものではなさそうだが、質を落としていても自分の一部を含んでいるという事実。
義父の一部であるコニーの更に一部分を摂取したグランジエールは、結果的に義父と魔力の繋がりも得やすくなったという背景もある。
「オレが眷属で義理でも息子と認めているこの事実があれば十分ではある。もう少し育つまでは止めておこうと思っていたが、今後の展開としても幾つか有利になるように、面白くなるようにしとこうな」
「なんという不穏な響き‥‥」
もう少し育つまでは止めておこうという事は、まだまだレオナルドの考えるグランジエールの成長度は足りていないのだろう。
そう理解をしてほんの少し髭をしんなりさせた義息子に、レオナルドはクスクスと機嫌良さそうに笑って見せた。
「お前は想像以上に面白い。多少足りないくらいでも、根性で喰らい付いてオレの予想を超えるだろう?これからもパパをもっと楽しませてくれると、確信してるんだ」
グランジエールの小さな顎を指先で持ち上げて視線を合わせ、本当に愉しそうに幸せそうに、レオナルドは笑っている。
そのまま顎下をくすぐる様に指を動かし、思わず目を細めて喉を鳴らすグランジエールを見つめる青い瞳は限りなく優しい。
「これによって存在が変わるということは、オレの与えた名があるから無いと保証する。だが‥‥」
言葉の先が気になりつつも触れられる指先が心地良くて、グランジエールはうっとりとしながら義父の言葉を待つ。
「乗り越えられないと、うっかりもあるかもしれないからな?根性見せろよ?」
『うぁ"!あ"ぁ!!!』
「わ、若さま?!」
レオナルドの指先はグランジエールの喉元をくすぐっていた時と位置は変わらない。
だが、義父の腕の中で小さな身体を強張らせ、全身の毛を逆立てるようにした仔猫。
小さな前脚後ろ脚の指先まで開き、何かしら苦痛と戦っているかのようになる。
程なくして、異様な状態のままグランジエールは動かなくなり、だが身体の力は抜けていないのか固まったまま義父の腕の中だった。
まろい花緑青の瞳には何も映っていない。
「わ、若さまは、大丈夫なのか‥‥?」
迂闊に近寄る事も出来ず狼狽えるギデオンは、眉間に深い皺を刻んでレオナルドに問い掛ける。
どうしても声が尖ってしまうのは、短い時間ながらも一緒に旅をしてきたからなのか。
もちろんギデオンだってレオナルドが可愛がっている自分の義理の息子を害するだなんて思っていない。
だが、超常の存在というものはきっと、命の重さや儚さに関して、大雑把で理解に乏しいと感じずにはいられない。
そんなギデオンの声と態度に、問いかけられたレオナルド本人は至極機嫌良さそうに答える。
「全く大丈夫、とは言えんが‥‥試練だからな?簡単にオレを継ぐ事が出来るはずないじゃないか」
「!!」
継ぐというのが、何を意味するのか。
全てを理解するのは無理だったが、グランジエールの存在が言葉通りの息子であり後継者となる大前提の介入であり、パワーアップであることは理解出来た。
「何、心配するな。雛とはいえこいつはオレに愛されている。エレンの存在がある限り、変質はしても墜ちはしないし間違わない」
「そ、れは‥‥」
ルーナエレンの名前を出されて、ギデオンは苦い心の内をようやく落ち着けることが出来た。
間違いなく、最愛のあの幼い少女がこの世界に存在する限り、グランジエールは折れる事はないだろう。
「信じて待とうじゃないか」
「‥‥は、仰せのままに」
閉じられた世界で今、新しい力の試練が容赦なくグランジエールの身と心を襲っていた。
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どんなふうに変化するか、もしくは変化しないのか。
でもグランジエールはエレンちゃんを諦める気はさらさらありません。




