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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
138/150

138、スタンプ

遅くなってしまいました_:(´ཀ`」 ∠):

申し訳ありませんんんm(_ _)m

 

 認識阻害の魔術は一般的ではない上、魔力の精密な操作や魔力的視覚を必要とする。


 現在の一般的な魔術士の魔力操作の技量では扱えない上、魔力的視覚を持つ者もほぼ居ないのが現状である。


 魔道王国と他国から認識されているネヴァンの魔術士ですらそれは例外ではない為、当然国の上層部の門外不出と言われるような魔導具が片手の数ほどしかないと言われている。


 その魔導具すら、その実サリヴァンの研究の産物であり二流以下の物であるのだが、ネヴァンの王侯貴族にはそれは知られていない事実であった。


 実状として二流の認識阻害の魔導具で、十分補える魔力量と容貌であったとも言えるのだが。


 ギデオンはそれらの魔導具の存在は識っていても、サリヴァンの存在を知らない。

 だが、この義親子に救われ仕えるようになってそれらの概要とサリヴァンの存在を識った。


 基本的にどの国においても王侯貴族や地位や能力が高い存在は、裔神であったり精霊や聖獣妖精などの流れを組んでおり、容姿も権能が強いほどにその源流に近い麗しさを持っている。

 隔世遺伝や先祖返りはあるものの、やはり血筋に混じる因子が強く影響を及ぼすのだ。


 よって、既に出会った状態が認識阻害の魔導具を使用したグランジエールだったが、それらを全て外した状態は彼らの自宅で見知っている。

 仔猫の姿であっても毛艶や花緑青のクリンとした大きな瞳の輝きは美しく、むしろ神々しさすら感じられた。


 だが、その空間には美の暴力とも言える成人男性が二人と、品の良い初老の紳士、極め付けが小さな女神とも言えそうな大層美しく愛らしい幼女が居た為、違和感を感じなかったのだ。


 他にも上位の妖精であろう年若い少女と、ひよこと大鹿も今までお目にかかったことのない美しさを湛えていたが、むしろ親娘と黒髪の美丈夫が群を抜いていた為あまり気にも留めなかったのかも知れない。


 その上、あの自宅というのが現世とは隔絶された空間だった。


 妖精の里とやらに迷い込んだらあんな感じなのか、否あそこがそれ以上の空間だったのだろうと思い直すギデオンは、グランジエールが認識阻害の魔術がかかった魔導具の機能を一部停止させると言われ、改めて溜息を吐く。


 空間魔法を自在に操る主人の義父がいる限り大丈夫だが、主人の後にその義父が本来の姿になると言う。


 考えても仕方がないのは分かっているが、自分はどうなってしまうのかと少しだけ自慢の顎髭がしんなりした気がする。


 視線を下げてそんな事を考えていたのが伝わってしまったのだろう。


 レオナルドが少しだけ悪戯っ子のような彩を滲ませた眼でギデオンを見ていたが、不幸な事に彼はそれに気付けなかった。


 俯いていたのはほんの数瞬、パンと柏手(かしわで)を打つ音で視線を上げる。


 視線の先には、不敵で美しい笑みを浮かべたレオナルドが、グランジエールを抱いた上で形のいい両手を打ち合わせた姿勢で此方を見ていた。


「大丈夫だギデオン。お前にさっき与えたモノで、ある意味の耐性がついてるからな」

「いや、儂はまぁ‥‥そこまで心配はしておらんが」

「ふふ、そうか。じゃあ」


 可笑しそうに青い瞳を細めて笑うレオナルドが恭しく腕の中のグランジエールを持ち上げ、前脚に嵌った腕輪に口付けを落とす。


 すると、パキンと微かにだが何かが折れるような音がする。


『あっ!!ちちうえ!こわしたらボクおこるから!』

「え、壊してないって!ええ?壊してない、よな?!」


 急に慌て始めた義親子のやり取りを見ながら、ギデオンは再び溜息を漏らした。








 * * * * *







 一部世に知られているレオナルドの異名と同じく、小さいながらも破壊を齎した後。


 珍しく不機嫌なグランジエールが気絶して転がっている猫へと歩み寄り、対象の額に無造作に右前脚を打ち下ろす。


 所謂肉球パンチであるが、それを彼の気絶猫に施したのが存在感を増し増しにした仔猫姿の原始の龍種の雛。


 しかもその額にあるチェリー姐さんの硬質な蹄の跡がクリアに着いている部分を、綺麗にトレースしていた。

 狙い撃ちなのは、敢えてなのだろう。


 グランジエールの最愛に贈られた腕輪のメンテナンスの為、代替え品を与えられたものの不機嫌は果てしない。


 その不満とストレスを込め、力一杯の肉球スタンプを施した。


 あまりどういう効果があるとか、そういう部分は何も考えていないけれど、不機嫌さはフルスロットルに込められただろう。


 憮然としたグランジエールがレオナルドに振り返る。


 課題は結局、何かしらこの気絶した猫の背後を誘き出す要素を記すと言うものだったのだが、これなら上位者の不機嫌オーラが肉球スタンプから滲み出て見える。


 ある種の呪いに見えるほどの恐怖が、その周囲に齎される効果が得られたようだ。


「お前は本当に、感覚派だなぁ」

『‥‥ちちうえもでしょ?』

「あ、はい」


 少し前までデレていたというのに、義息子はすっかり臍を曲げてしまってレオナルドは少し眉根を寄せて困ったように笑うしかない。


 課題としては確実な再現性はないけれど、効果は抜群だと思われるのでクリアとする。


「では、次はコレを外へ放り出す。空間に属する魔術だが、初心者であるお前は認識した場所から始めるといい」

『てんい、っていうこと?』

「そうだ。最初はモノで、次は自分で、さらに複数で。段階を踏んで習得してみろ」


 二つ目の課題をぶっつけ本番で言い付けられ、グランジエールは不機嫌さを拭えないまま小さな額に変な跡を二つつけている猫の首の後ろに徐に噛みついた。


「若さま?!」

「ブフォ!」


 驚いて思わずといった風な呼びかけの声を発するギデオンと、吹き出したレオナルドを置き去りにして。


 グランジエールは体格さがある気絶した成猫を振りかぶり、ぶん回すように空中に投げ出した。


 乱心したのかと慌てるギデオンだったが、動く様子のないレオナルドと投げられた猫が部屋の壁にぶつかる前に、虚空に溶けるように猫の姿が掻き消える。


「おめでとう!放り出すの、一発で成功したな!流石オレの義息子!」

「えええええ」


 囃し立てるレオナルドの声に不機嫌さを背中に滲ませていたグランジエールが、わずかに髭をそよがせる。

 その様子を見逃さず、すぐさまその腕に掬い上げて抱きしめるとぐりぐりと頬擦りをしたり撫で回すレオナルド。


 どうやらグランジエールはこうやって甘やかされてスキンシップを取られるのが好きな様子。


 ギデオンは義親子のその様子から、少しずつこの二人の扱い方を覚え始めた。


 義息子に甘々な親バカになった有翼の黒獅子。

 片や利発ながらどこか力任せにさまざまなことを熟してしまう、天才肌の甘えん坊な仔猫。


 二人が再びラブラブな様子を見せ始めたので、ギデオンは敢えて質問で水を指す事にする。


「あー、若さまよ。あれ、どこにやった?」

『んえ?あ、ふねのそと、かな?』


 言われた内容にギョッとするが、普通の猫でもないしあの太々しさだ。

 しかも水上の船にいつの間にか現れたところを見ると、多少濡れるくらいは大丈夫な可能性もある。

 いや、そうであって欲しいというギデオンの希望かも知れない。


「心配するな、ギデオン」

「はぁ‥‥‥」

「ちゃんと野良のケルピーと戯れてるぜ」

「‥‥‥‥‥」


 不快な思いをさせられた相手ではあるが、命を無駄に散らすのは好きではない。

 戯れているという言葉の指す内容を考え始めたギデオンは、すぐにその先を考える事を諦めた。


「次は我が義息子のパワーアップだ」


 嬉しそうな黒髪の美丈夫の眩しい笑顔が、もう放り出された猫の事を思考の外に放り出しているのだから。








お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


引き続きパパ出張中(笑)

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