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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
137/150

137、下準備

あれ、また話が進まない病発症中・・・・?| ˙꒳˙)

 

 親子の絆を再認識したグランジエールは一時切り十分に甘えた後、レオナルドの腕の中で現状を思い出し顔を上げる。

 きっとこれを何かしらの課題にして来るのかも知れないと思い至りキリリと表情を改めると、自身を見る保護者二人の視線の生温かさに気付き、ぼっと毛を膨らませた。


 勢いよくギデオンに顔ごと向けて頬を緩めるレオナルドと、それをゆるく首を振って発言を止めるギデオン。


「ゴホンっ!えー、では義息子(グランジエール)のご期待通りに、課題をやろう。床に転がったこいつを使って、有翼を語るやつを釣り上げろ。捕獲に関しては、お前なら大丈夫だと思うが‥‥そうだな、難航したり問題が発生した場合は、速やかにパパを喚ぶ事」

「だが、こやつで大物が釣れるのかのう?」

「あー、そうだな‥‥‥」


 どれだけ眷属が存在しどれだけ影響力があるのか、そしてそれらの管理や扱いが判明していない以上、釣り餌として機能するかどうかも定かではないのだ。


 腕の中でもじもじしている義息子にじっと視線を向けたまま、レオナルドは考えを巡らせる。


「なぁ、ギデオン」

「若さまが認識阻害の範囲内であっても、少し威圧しただけでこれだからの。今、一瞬それを解除して印でもつけてやれば、興味にしろ不快感にしろ抱いて出てくるのではないかと儂は愚考するが‥‥」

「ふむ、悪くない。グランジエール、ちょっとやってみ?」


 提案をそのまま受け取りグランジエールに実行するよう指示を出したレオナルドは、パチンと指を鳴らして義息子が施した空間隔離をより強固にする。


 この超常の存在達に少し慣れてきた程度ギデオンでは呼吸が困難になる程の密度の空気感になり、慌ててグランジエールがギデオンの方へ飛び移る。


『ちちうえ!』

「ああ、わりい。これを口に含んで噛め」


 義息子の後を追って傍にやってきたレオナルドがぐいっと小指の爪の先程度の小さな塊をギデオンの口に押し付け、息苦しさに口を歪めていたギデオンは素直にそれを受け入れた。


 噛み砕くよりもほろりと溶けて拡がった爽やかな甘さが、息苦しさと鈍った思考力を途端に回復してくれる。


『ちちうえ??』

「えーっと、あれだ。思ったよりお前に染まってるから、ちょっとはエレンの成分も必要かと、だな?だから、そんなに睨むなって〜」


 義親子の会話に何やら不安が増してくるが、この二人とはまた違った芳醇な魔力が自分の中に巡ったのが理解出来たギデオンは、改めてもう一組の親娘を思い出す。


「これは、良いのか?その、儂なんぞが頂いてしまって」


 恐らく本人(ルーナエレン)の預かり知らぬ事象であろうに、と本能で察したものの今更戻す方法なんぞ自分では分からない為、一応確認とばかりにレオナルドに尋ねてしまう。

 確かにもう、レオナルドの密度の濃い気配や空間にも息苦しさは感じなくなっていた。


「事後承諾だが、エレンならきっと喜ぶはずだ!ほら、お前の彫金の技術を伝授すれば、絶対喜ぶし!!」

『ちちうえ?そもそも、なんでちちうえがこれを?』

「う‥‥‥」


 鋭い視線で見上げてくる花緑青のお目目が、いつになく冷ややかでどこかの氷の魔王を彷彿とさせる凄みを湛えている気がして。


 レオナルドは思わず呻き、ついと視線を逸らす。


 それらの遣り取りを見て、ギデオンは苦笑いを浮かべずにはいられなかった。








 * * * * *






 大元の下見と修行と人材確保の目的は変化なしだが、細かい個人的な課題は今回まだ出ていない。


 一週目は様子見もあって何も言っていなかったのもあるので、改めてレオナルドは一つ咳払いをして本題に移った。


「実際オレはそいつらを知らないんだわ」

「え、幻獣とはそれほどの??」


 その一言にギデオンが目を見張り、だがその言葉の裏を感じたグランジエールが補足を入れる。


『あれでしょ、ちちうえいままであんまりそとでなかったんでしょ』

「そうとも言う!」


 正確には有翼の黒獅子が箱庭に顕れる時は所謂『地均し』にあたる。

 壊す対象に興味もなく、経緯も存在も興味が無かった破壊の象徴。


 本人も言っていたが、歴史に残り難い存在なのだ。


 今現在が果てしなく例外であり数奇な巡り合わせが織り重なっているだけで、幻獣だろうが亜人だろうか裔神だろうが彼の意識の端にあるかないか程度なのが本来だ。


『おうちのとしょには、あったけど?』

「存在してるのは識ってるが、対面したり繋がりがあるわけじゃないんだって」


 巫山戯て以前アレンハワードにケット・シーかと疑ったと言われたが、そんな訳がないのは本人がよく理解している筈だ。


 サリヴァンの血筋はやたらとその手の存在を惹きつける。

 ルーナエレンはその最たる存在で、更に二代続いた先祖返りと『彼女』の愛娘である。


 あの家の蔵書ならば、世にはほぼ出ていない幻獣や妖精精霊もある程度精度の良い情報を持っている事だろう。


 そんな家系であっても、この原初の龍種は初出。

 早く物珍しい観察対象という存在意義が薄れるといいと感じながら、レオナルドは愛娘の青い日記帳を思い出した。


 中を見たことは無いが、自分が興味を持つとそっとカーターが出てきて遠ざけられてしまうのだ。

 盗み見たりしないのに。


 少々遠くを見ていたレオナルドに、足元に戻ってきたグランジエールが額を押し付けてくる。

 それを催促と受け取って抱き上げ、視線を合わせる。


「書籍にどうあったかは知らんが、個体差も大きい種族だ。知能も高い。隠密に長けてるとなると、あまりタチの良い連中ではないパターンも十分有り得る」

『はい』

「なので、チェリー姐さんよりも下の扱いと思っておけ?使えるようなら置いておくが、くれぐれもエレンやお前にとって欠片でも害になるようなら、滅しても構わん」

『え、ケット・シーをほんとのまぼろしにしちゃうの?』


 親子の物騒な会話に、思わずギデオンは呆然となってしまう。


「本当に滅してはならない場合は、関わりのある何者かが出てくる」

『なるほど』

「そこでだ。お前達に手を出させない為に、オレの存在をもう少しだけ息子であるお前にも与えてやろうと思う」

『え』


 コニーを部分的にとはいえ取り込んだグランジエールは、その後も少しずつレオナルドと眷属としての絆を重ねて来たが、魂や核の部分は本性のままだ。

 染まりやすい事も考慮していたのだが、他人だろうと他の超常の存在にだろうと害されたくは無いのがレオナルドの偽らざる本心。


 潜在的にルーナエレンやアレンハワードと見てきた今代の箱庭を、自分の手で均すのは嫌だと感じている部分もあるのだが、本人は気付かぬまま義息子が後継となり得るそれを決めてしまう。


 レオナルドはグランジエールの魂の精神体(スピリチュアルボディ)に、自分の因子を僅かに含ませる事にした。


「先に、転がってるやつにお前が印をつける」

『はい』

「で、それが出来たらお前をオレがパワーアップさせる」

「怖」


 少し背後で思わず漏れたであろう率直なギデオンの短い言葉に、揃って振り向いたがサッと視線を逸らされる。


 暫くそのまま沈黙が流れ、微妙な空気感になったもののギデオンも素知らぬ顔をして向こうを向いたままだった。


 そんな対応を、何故かレオナルドもグランジエールも小気味良く感じて徐々にではあるが笑い声が漏れる。


「ふっ、いいなギデオン!お前もう他人事じゃないぞ?オレも気に入ったしグランジエールもお前が好きみたいだ」

「なっ、こんなジジイに何を‥‥」

「長寿じゃんお前。末長く頼んだぜ?」

「‥‥そんな事まで見えておいでか。全く‥‥儂も、大概だわい」


 アレンハワードとはまた違った気安さをギデオンに感じたレオナルドにとって、この知識人なドワーフは護るべき対象の範囲にしっかりと固定されてしまった。


「じゃあ、まあよろしく頼むわ。グランジエール、認識阻害を外すぞ?」

『わかりました』


 身内になってしまえばこんなに心強く頼もしい存在はないのだが、ギデオンは未だ気を失って転がる猫に対し、どうしても憐憫の視線を向けるのを止められなかった。





お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ギデオンさんガッツリレオナルドさんに捕まる事件。

そして自分のためのおやつだったかも知れない、エレンの砂糖菓子(お薬)を図らずもギデオンに持ってかれてしまったグランジエール。

パパ逃げて(笑)

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