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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
136/150

136、対象の取り扱い

更新遅れました!申し訳ありませんんんん_:(´ཀ`」 ∠):

 


 部屋の外に諸々が漏れないような実力があるからこその威圧を図らずともしているグランジエールの横で、ギデオンは首に下げたゴーグルをノロノロと装着する。


 そしてチェリー姐さんに踏まれた状態の鑑定対象に視線を下げる。


 微妙に重苦しい空気感を察してか、奇妙な悲鳴をあげていた対象もきゅっと口を継ぐんで息を殺した様子だが、やがて聞こえたギデオンの重い溜息にびくりと身体を震わせた。


「若さまよ、まさかの『もどき』らしいぞ」


 そう言葉を溢したところで、対象からピリッとした空気が発せられる。

 だが、この場にいる面々にはそよ風ほどにも感じない程度。


「ぶ、ぶれいなるぞ!我は黒い尊きお方の眷属!しかも御方の夜叉孫なるぞ!」


 威勢は良いが、声がぶるぶる震えまくっている。

 その割には初っ端以外は噛むこともなく一息に言い放っている。


『けっかは?ギデオン』


 グランジエールに鑑定の結果を求められ、ゴーグルを外して眉間を摘んでぐりぐりと揉みほぐしたドワーフは、渋く低い声である意味対象の言葉を解説してやる。


「このナナシの猫がいう尊きお方とやらが、若さまが想像してた存在みたいだぞ?」

『クロっていうのがひっかかる。で?これはそのしゅぞくにがいとうしないってこと?』


 心なしか花緑青の眼がさらに細くなったと同時に空気が冷えたように感じたものの、きっと黒という単語が義父しか持たない、それこそ尊い色と理解しているからこその精神的な動きだろうと納得する。


「ああ、ケット・シーとは言えんな。かなり薄まっとるが‥‥ギリギリ混血、といったとこだろう」

「な!?」


 自らの誇りを貶されたように感じたのか、踏まれて床でへちゃげた猫はキッときつい視線をギデオンやグランジエールに向けたものの、自分に浴びせられている仔猫の視線の圧力の方が遥に強く鋭かった事に、途端に竦みあがってしまった。


「残念だが、喋る猫?は儂もこの通り身近なものでな。飽きてはおらんが間に合っとる」


 肩をすくめおどけるように紡がれた言葉に、怯えた目を向けてくる猫だったが奮い立つようにもう一言、やや自棄っぱちな口調で声を上げる。


「愚弄するな下郎!!我は偉大なる有翼の黒様の一族!」

『だまれ』


 偶然なのか語りなのか、まだ真相は判らないものの。

 グランジエールはそれ以上、床に蹲い激昂する猫の言葉を許容出来なかった。


「はぁ、これは早々にお呼び出しせねばいかんか‥‥」


 ぐんと強まった威圧は本来自分にも負担になるはずのものだが、チェリー姐さんよりも絆が構築されているらしい。


 グランジエールの威圧に気絶してしまった猫を放置して、震えるチェリー姐さんに一旦運搬用貨物室の一角に許されているエリアへ戻るよう視線を送る。


 それに気付いた彼女の動きはとても早く。


 あっという間に隔絶された部屋には、ギデオンとグランジエールと猫のみが残された。







 * * * * *






 間を置かず呼び出されたレオナルドは優雅にベッドに腰掛けて、腕にグランジエールを抱っこし頭から背中にかけてゆっくりと宥めるように撫でていた。


「二日保ったなぁ、えらいえらい」

『‥‥‥ちちうえ、どこかにボクいがいのかぞくが?』


 暫く優しく慰めるように撫でていたレオナルドが、心細そうな義息子の声を聞いてキョトンとして手を止める。


「え、オレ家族なんてこの三年しか心当たりないが?」

『え?』

「え?」


 海のような青と花緑青の視線がしっかりと合った状態で、時間が止まる。


 思っていたよりもレオナルドと義理とはいえ家族で親子という関係は、グランジエールにとって重要になっていたらしい。


 レオナルドの端正な容貌が、みるみる間に緩んでいった。


「ギデオン聞いた?!可愛いんだがうちの息子!」

「そうですね」


 返事が平坦なのも構わずやや頬を染めたレオナルドに、話が進まない予感を持ったギデオンはとりあえずの事情を説明する事にする。


「そこの猫が、自分は有翼の黒様の眷属とか抜かした故、若さまがその状態にな」

「え、ヤキモチ?」

「そう、とも言うのかの?」


 返事に困るので、あんまりにもストレートに指摘してやらないで欲しい。


 濁しながらも微笑ましい状態なのは事実なので、それ以上は発言せず視線で床に転がっている気絶した猫を指す。


 その視線に誘導されたレオナルドが、仔猫を撫でる手を止めずに視線だけで床の相手をチラ見したがそれだけだ。


「オレと関係はないな!有翼で黒と言われてもそれが当て嵌まるのはオレだけだし、それ以外は紛い物」

「儂もそこまで他国の神話や逸話に詳しくはないが、まぁ左様ですな」

「だいたい、オレ有志に残り難い体質だから」


 体質どうこうではないだろうに、けろりとしてそう発言する本物の有翼の黒獅子さんは、義息子を撫でるだけでは飽き足らず持ち上げて照れ臭くて顔を背ける仔猫に無理やり頬擦りし始める。


「なんだよもう、可愛いやつだなぁ〜!エレンも超絶可愛いが、お前もメチャクチャ可愛いぞぉ!」

『う、ちちうえ、やめ‥‥』

「やめてやらないぃ〜!うりうりうりうり」


 いくら隔絶した空間で身内しか(対象の猫はまだ気絶中)いないとは言え、はっちゃけすぎだろうと苦笑いを浮かべるギデオンだったが、話が進まないため義息子を愛でるのに忙しいレオナルドに遠慮がちに話しかける。


「こやつがケット・シーの混血で話す能力や偵察能力があるのは確認済みじゃが、眷属と言っとった相手が何者なのか、何を吹聴しとるのかが問題での」

「それで本人に確認ということか」

「左様、万が一繋がりがあった場合はそれ相応の対処が要り用と思うて」


 そこまで告げてから、じっとレオナルドを見たが特に何も心当たりはなさそうだ。


「オレが猫に擬態して動いてたのは、全部うちの愛娘の為の行動だからな。無駄な配慮だったと今なら分かるが、嬰児相手に大きな姿だと警戒させると思ってたんだわ。それより以前のアレンの様子を見た時も、たまたま猫サイズになってた癖もあるんだ」

「ほぅ、そんな事がおありか」


 そこまで大人たちの会話を大人しくされるがままにして聞いていたグランジエールは、疑問を口にする。


『じゃあ、かぞくはボクだけ?』

「息子はお前だけだぞ?アレンもエレンも家族だが、ちょっと違うからな」

『ほんとう??』

「ああ、魔力的にももうきちんと家族だ」


 その言葉を聞いたグランジエールは、恥ずかしそうに甘えるように、ふわふわの頬をレオナルドの頬に擦り付ける。


「ふふふふふ、ギデオンよ」

「‥‥はっ!」


 緩み切った美丈夫のゆるい笑い声と呼びかけに、若干の空白をもって返事をしたのは不可抗力というものだろう。


「オレが赦す。オレの可愛い義息子を不安にさせた罰、しっかり与えさせていいぞ?」

「‥‥‥具体的には、如何する?」

「引き摺り出して、オレの前にもって来て良い」


 うわぁ、と思ってしまったのが表情に出てしまったが、咎められもせず。

 にこやかに公開処刑宣言をされた相手に哀れを感じずにはいられないギデオンだったが、幼いグランジエールを不安にさせた輩は自分にとっても不快な相手であるのは事実。


 少し考えてから、厳つい顔の口元を歪ませてニヤリと嗤う。


「方法は問わない、ですな?」

「おう、お主も悪よのぅ」


 不穏な会話が頭上で交わされているものの、今のグランジエールにとってはあまり耳に入ってこなかった。

 過保護な義父の意思の成せる技ではあったが、この後の釣りは箱庭への配慮は必要でも対象への配慮は然程必要ないと保証された上、家族で息子だと言われた喜びが望外だったのだ。


 今の喜びと温もりを精一杯享受して、この後頑張ろうと決意を新たにしたグランジエールだった。







お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


レオナルドさん、懐に入れた相手にはどんどん甘くなるの巻。

ギデオンさんと越後屋ごっこです(笑)

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