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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
三章
135/150

135、捕獲

今回短めです_(:3 」∠)_

 

 ギデオンがグランジエール達と別れて客室に戻って一刻程度後のこと。


 扉のすぐ外からカリカリと控え目に扉を掻く音がする。

 のっそりと立ち上がって扉に近付くと、案の定グランジエールからの可愛い声の念話が頭に響く。


『ギデオンあけて〜、かえったよ』

「おう、承知した」


 返事を返し扉を開いてやると、小さな身体をするりと隙間から滑り込ませてくるグランジエールが居た。

 予想では例の赤目の猫も連行してくるのかと思ったが、戻ってきたのはグランジエールのみの様子。


 おや?と思ってギデオンが扉を閉めて客室の自分のエリアに戻ると、トコトコと仔猫も横を歩いてすぐ目の前のベッドへ飛び上がった。


 敢えて黙って様子を見ていたギデオンに、向かいのベッドで満足げに寝そべる仔猫は機嫌の良さそうな声を念話に乗せてくる。


『ちょっとね、チェリーねえさんががんばっちゃって』

「頑張っちゃって‥‥?」

『ひよこをエサにつってみたら、かんったんにつれてさ。ちょっとふおん?なこというもんだから、チェリーねえさんおこっちゃって』

「‥‥船で火はいかんぞ?」

『わかってるって!ただね、おでこにねえさんのヒヅメがクリティカルしちゃって』


 思わず頭痛と眩暈がする錯覚を覚えたギデオンが額を無骨な手で抑え、深呼吸の後に掠れた声で尋ねた。


「殺生はいかん‥‥」

『ちゃんとボクがちょうせつしたよ?はやわざで、あっておもったときにはあぶなかったけど』


 理解はしたくないが、チェリー姐さんからの一方的な執着を受ける青ひよこを標的が軽んじたのだろう。


 大鹿であったチェリー姐さんは縮小されても普通の鹿ではなく高位の物理体質な精霊らしいので、グランジエールが保護しなければ標的は確実に存在ごとかち割られている。


「危なかった‥‥?まぁ、仕方ないか。怒らせた相手が悪いの」

『ちょっとこらしめるためにホゴをせいしんにはうすめにしたらさ、おきなくてこまってんだ』

「なんじゃ、トラウマ植え付けるつもりでやったんじゃないのか」

『んー、まだボクそこまでじょうずにちょうせつできないし』


 主人の義父からの課題で魔力だけのゴリ押しは制御されているそうなので、今後に期待なのだろう。


 ただその力を向けられた相手はたまったことはないだろうけれど。


「どれ、正体が分かっておるのか?」

『ほんのちしきでこれかなってくらい?ボクのかんかくではしらないけど、ただのねこじゃないのはたしか』

「‥‥ほぅ?」


 彼らの会話をアレンハワードが聞いていたら、きっと渋い顔をしレオナルドは爆笑しただろうがここには幸いにも居ない。


 躊躇いがちにもやや間を置いて返事をしたギデオンに向い、グランジエールはベッドの上で軽く伸びとあくびを一つ、可愛いお口を開けて見せた後。

 ぴょいとギデオンに向かって飛び付いてきた。


 魔力で繋がった部分はまだ希薄だが、国境を越える前から度々(ひたい)同士をくっつけて簡単なイメージの伝達を試してきたギデオンとグランジエールは、細かい言葉よりも簡単な方法だとばかりにその技を定着させ始めていた。


『これ。たぶん』

「はぁ?!若さまよ、本気か?!」

『かくしんはないよ、だからギデオンもたしかめてよ』

「なんてこった‥‥‥」


 グランジエールの知識の中の書籍の情報を見せられ、いわゆる幻獣とも言われる妖精とは少し違う存在を示唆されたギデオンは、常識など遠くに放り投げていたつもりがまだまだ甘かったと考えを改める。


「御伽話か創作くらいしか、儂は知らんぞ‥‥見て分かるようなもんでもなかろうよ」

『そこはほら、おうちでつくったどうぐ』

「ああ、これで視ろと‥‥だがなぁ」


 おうちで大盛り上がりで作成された魔導具のゴーグルは、現在首にかかっている。

 確認が可能であれば興味も惹かれるのは事実なので、視るのはやぶさかではない。


 飛びついてきた時に受け止めた無骨なギデオンの手から、グランジエールはするりと離れて再びベッドへ着地した。


『じゃ、だすよ〜』

「おいおい、出すって‥‥変なものは食べてはいかんとあれほど」

『ちがうって』









 * * * * *







 万が一などがないのは理解しているが、不用意に他者に目撃されては後が面倒だとギデオンが説いた為、グランジエールは念を入れて空間の隔離を利用して遮音と隠蔽を同時に部屋に施した。


 相手に逃げられるとはギデオンも思っていないが、抵抗くらいはするかも知れない。


 万全の準備をした上で漸く顎髭を無骨な手で撫でながら、主人である仔猫に頷いて見せた。


 ベッドの上でちょこんとお座りしたグランジエールが腕輪が嵌まった前脚を振ると、床から淡い鱗粉のような光がふわりと舞い上がり、するりといつもよりやや小振りな姿のチェリー姐さんが顕れる。


 だがその口にはがっぷりと動物の胴を噛んで下げており、本人曰く可憐なお目目が据わっていた。


「ぶっ‥‥‥」


 思っていた登場シーンとは違っていたのか、ベッドの脇に立って待ち構えていたドワーフの吹き出す声が、自主規制によって強制的に塞がれたような音がする。


 チラリとグランジエールが花緑青のまぁるい瞳を横に向けると、ギデオンは顎髭を摩っていた手で口を塞ぎ、もう一方の手は腹を抱える形で若干肩が震えている様子だった。


 ひよこの所在はこの際触れない方が良さそうだ。


『チェリーねえさん、それちゃんといきてる?』


 困った風に髭をそよがせたグランジエールが憮然としたチェリー姐さんに声をかけると、不機嫌そうにわざとらしくぺっ!っと口に咥えていたものを床に落とす。


 なかなかに機嫌が悪そうだとギデオンは苦笑いを浮かべて主従のやり取りを見守る。


「ええ、()()()()()生きてるし」

『ありがと。じゃあ、おこすからすこしゆるくふんでおいてくれるかな?』


 氷点下の冷え冷えとした目で吐き出した動物を見下ろすチェリー姐さんにグランジエールが指示を出し、緩くというよりガッツリ標的の胴の尻尾の付け根あたりに蹄を下ろすのを確認する。


 可愛らしい眼を三日月のように細めたグランジエールが、軽く息を吸ってから命令する。


『そろそろおきてもらおうかな』

「ピャあぁああ?!」


 伝わる声音はとても愛らしいままであったのにも関わらず、心臓を鷲掴みにされるような支配を強要する様な、聞くものを支配する強者の貫禄を含んだそれに、標的とされた相手は無理やりに意識を引っ張り上げられたのだろう。


 奇妙な悲鳴じみた声をあげていた。






お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ギデオンがツッコミ役に定着しつつある今日この頃。。。

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