133、閑話・父達の語らい
更新遅刻で申し訳ありません_:(´ཀ`」 ∠):
この閑話でもって、二章終わりです。
ここまでお読み頂き有難うございます!
空間魔法の裏庭に当たる北東側と湯場付近の大改装および、ギデオンを歓待する意味合いも込めてレオナルドが特別に誂えた『採石場』。
大人達がお湯場の改装に熱中する間、子供達は先にその新装された『採石場』を少し探検して来た様子だった。
アレンハワード自身はまだその場所に直接足を運んだ事はない。
レオナルドが温室と同じ仕様にしていると確信している。
それでも繋げた先が危険や不都合があれば子供達を自由にさせないであろう事も事実なので、特に気にしていない。
特にルーナエレンに関しては結局あまり外界に触れる機会が与えられていない。
それがあっての仕様であると実父として理解しているし、もしも実害があるようであればあんなに簡単に立ち入る情報を与えていなかっただろう。
就寝時間をやや超過した状態で暖炉の前で眠ってしまった子供達をベッドに運んでやった後、アレンハワードとレオナルドはギデオンやカーターにも適時休むように声をかけ、連れ立って図書室の尖塔の最上階へ上がる。
今までも持っていた時間ではあったが、グランジエールが来てから週末の習慣となっており、今後の予想と取るべき行動や進路を話し合うのだ。
最上階まで螺旋階段を昇り切ると、互いに斜めになる一人掛けのソファーと三人掛けのソファーへ腰を下し、アレンハワードは軽く嘆息する。
「どうした、疲れているのか?」
「ああ、大丈夫」
「今日はエレンがずっとグランジエールにベッタリだからな。癒しが足りてないとかか?」
「はは、そうかも」
互いに軽口を叩きながら、笑い合う。
「何だかんだ言いつつ、商会も商品も形になってきたな」
「カーターさんの伝手が、予想以上に太かったお陰だよね」
「クク、モルガンから泣きつかれそうだよなぁ。本人は隠居だと言い切ってるが」
冬の引き篭もりの間、モルガン側に少しの利益を持たせてカーター不在の埋め合わせとする計画の実行として、遂に世に出してもあまり不都合のない程度の生活魔道具を幾つか出した。
勿論この空間魔法で使用しているものから数段グレードを下げ、使用している魔術式も複雑にした上で隠蔽してある為、簡単には複製も模倣もされないように手を打っている。
カーターの親族にほぼ平民で魔道具にも造形がある人物や技術を習得可能な知人に心当たりがあると聞いていて、彼らがこの二週間でかなり具体的な動きが可能になったと報告を受けたのだ。
「私たちでは、魔力が足りずに魔道具を使えないという事態に気付きもしなかったから、本当にカーターさんには感謝しかないよ」
「それな」
「その上、新しく魔道具作りに熱心に取り組んでくれているのがお孫さんだとか」
ニコニコと笑顔でカーターからの報告を思い出して語るアレンハワードは、ふと何かに気付いたのか一瞬で綺麗な顔を強張らせた。
「ちゃんと聞いてなかったんだけど、まさか例の双子のお嬢さんじゃないよね?そうじゃなくても、保護は必要かな?」
「ああ〜、どうだろ?後でカーターに要確認だな」
神妙な顔付きで頷き、ややあってから脱力してソファーの背凭れに背中を預けるアレンハワードの様子を、青い瞳が不思議そうに投げられる。
「なんだ、心配ならモルガンにやった氷狐のママンにちょっと目をかけてもらっときゃ、下手な護衛より安心ってもんだろ?大丈夫大丈夫」
「そうだね、簡単なものとはいえ魔道具の根本から扱うのなら、きっと携わった人達も少しずつ魔力の変化を感じるかも知れないし」
「若いやつなら、五年もすりゃかなり変わるだろうな」
「やっぱり?ネヴァン以外の魔道具って、魔術式がかなり適当なのが当たり前だったなんて盲点だったよ。これも私たちがあまり街や人が多い場所に逗留しないから、気付かなかったって事か」
そればかりは本当に仕方が無いのだ。
片や本当に神格を持つ存在だし片やネヴァンの魔導師である。
魔力の量や霊格など総じて高い二人は、その力量だけに容姿も世間一般の美醜を凌駕する。
上級の精霊や妖精よりも現世のアレンハワードの方が美しいくらいなので、持ち合わせている能力も自ずと知れるというものなのだ。
今ある認識阻害の魔導具は故郷の実家で誂えたものではあるが、アレンハワードの生母よりも強く先祖返りの素養が出たのが彼だった。
その生母が造った魔導具でありながら、認識阻害の効果は三割程度しか誤魔化せていない。
残りの七割の認識ですら、学園に属するようになった年齢で祖国に居られない状況に陥ってしまったのだ。
総じて祖国よりも魔力保有量の低い場所で、あまり目立つ事も出来ないししたくない彼からしてみればこの安全地帯からあまり出たくなくなるのも仕方ない事だろう。
そして愛娘に至っては、そんな自分を凌駕する力量に育つ確信がある。
何よりも、レオナルドの存在がそれを証明しているのだ。
「まぁ、引き続き売り出せて新しい職人さんに都合がつけば、随時商品開発や教育も増やせばいいし」
「カーターの話だけじゃなくて、ギデオンからも聞き取りすれば数も増やせそうだしな」
「いいね、商品の種類や数も様子を見ながら増やそうか」
明日の出立の先は北ではなく西になる。
その先で必要とされる可能性のある魔道具も、今週の頭のうちに会議を開いで決める事にした。
会話が一段落した間に、レオナルドが指をパチリと鳴らしてローテーブルに熟成された蒸留酒のボトルを出すと、苦笑いを浮かべたアレンハワードが席を立ち、背後に音もなく控えていたコニーから銀盆を受け取る。
綺麗なガラスの少し分厚めのカップを受け取るとローテーブルへと戻り、盆を置いてカップへ手をかざして丸く整形された大きめの氷を入れて席に戻った。
何も言わなくても息の合った遣り取りであっという間に飲み交わす準備が整うと、嬉しそうにレオナルドが琥珀色の蒸留酒を二つのカップに満たし、片方をアレンハワードに手渡した。
「ありがとう」
「いいってことよ」
視線を柔らかく交わし、カップを軽く打ち合ってから口をつけ、芳醇な香りを楽しむようにゆっくりと嚥下する。
「聞いてくれよ!もうグランジエール念話使えるのにエレンに対して仔猫ちゃん続けてるんだぜいじらしい!」
「ああ、あれだよね?青ひよこの」
「それ!自力じゃ無いから嫌だって、髭しおしおさせて言うんだぜ?!」
「へぇ、本当いじらしいね」
「だろ?!ちょっとだけ見取り稽古させちゃう覚悟をするくらい、悶えたぜぇ?」
目の前のレオナルドは興味の無い相手には極端に冷たいと言うのは良く知っているのだが、ここまでの反応はかなり気に入っているのだろうと理解る程だ。
アレンハワードはクスリと穏やかな笑みを浮かべると、もう一口カップに口をつける。
「そういえば、エレンが全然名前で呼ばないのも気付いていたかい?」
「え、何それ」
カップを手に青い瞳を瞬いて固まった話し相手をチラリと見遣って、アレンハワードは思わずローテーブルにカップを置いて口を片手で覆う。
あれだけベッタリと帰省している間は離れない二人なのに、名前を呼んでいないとは知らなかったらしい。
「ちゃんとエレンから聞いたわけじゃないからね、予想だけれど」
「何?聞きたい!」
ふふっと今度は声を漏らして笑った後、この上なく優しい微笑みを浮かべてアレンハワードは語った。
「グランジエールと同じなんじゃ無いかな?勝手に呼ぶのは、多分嫌だと思ったんだろうね?ほら、命名の時に君がちょっとやらかしちゃったし、名前呼びにとても慎重になってるみたい」
「おぉぉぉぉ‥‥、まじかぁ」
「ほら、メイヴィスに対しても‥‥ってあれは少し考えるとこが違ったかも知れないか」
「‥‥一緒にしないでやってくれ。同列にしたら途端にうちの義息子が哀れに感じる」
「ふふ、ごめんごめん」
けれど、この話を聞いたレオナルドは確実に浮かれた気分を味わった。
上下関係でもなく対等に存在を考えているからこそ、きちんと互いに名乗りあい呼び名を許し合うという「順序」を踏みたいとルーナエレンが思った可能性が高いのだと理解る。
「ええ〜そっかぁ、ふーん」
「すごいねレオナルド。そんな嬉しそうな表情しちゃって」
「ふふん!オレ、パパだからね!」
「ぷはっ!すっかり親バカ」
「褒め言葉です!!」
明日からまた一週間離れる幼子達の事を考えると、多少の不安はあるものの微笑ましさと順調に親密さを深めている様子に安堵の息が漏れてしまう。
アレンハワードとしてはこんなに早くに愛娘の相手となりそうな存在が現れた事に少々複雑な気持ちもあるが、ネヴァンであるからには必要な事だとの想いもある。
グランジエールとの仲次第では、今後来るであろう日に箱庭と言われるこの外界がどうなるか。
このまま順調に行けば良いと微笑みながらも、胸の奥がちくりと痛んだ気がした。
お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و
二章はもっと人が増えるかなぁと思ってたのですが実質二人だけ。
しかもちょっと鹿さん中途半端な感じになってしまいましたorz
三章の構想や執筆にもう少しお時間を頂きますが、のんびりお待ち頂けると幸いです!
引き続き、のんびりではありますが頑張りますので、よろしくお願いいたします(о´∀`о)




