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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
130/150

130、出立

今回は短めです。


 

 安息日明けの明の日早朝、レオナルドに連れられてグランジエールとギデオンは帝都地下の青水晶の群生地にいた。


 本来であれば今日から、水の国フェイトリネアとの国境を超えた先にある、比較的小さな集落の様子を見るはずではあるのだが、チェリー姐さんを連れて移動すると悪目立ちするのは避けられない。


 週末の帰省前にレオナルドが課した課題がクリア出来ていてれば、そのまま連れて歩いたとしても大して問題は無いのだが、達成ならずというのなら必要に応じての出し入れが可能になるよう『契約』を結ばさなくてはならない。


 そんな前置きを聞きつつ、ギデオンは何か思い当たる節があったらしい。

 ポンと両手を軽く合わせた。


「ああ、儂の爺様世代だったが、高低差のある水路や河川が多くて土地が狭い国に、面白がって手を貸して色々と造ったドワーフがおったな。確か、水力を利用したカラクリであの国の流通を今でも支えとる」

「そうそう。あそこは土地が少なくて道も狭い分、主な物流や人や物も、水路なんだ。そういう事情ででっかいのは通れないし嫌がられる」


 隅っこで週末別れた時より僅かばかり縮んだ気がするチェリー姐さんに、自然と皆の視線が集まる。


「森の終わりの最初の河が国境だ。更に北西に進むと小さな集落と大河、大小の中洲がそれぞれ町で、上流で高度が少しずつ上がる。一番上流の小さな中洲は禁域、次の中洲が王城、その次が水都と言われて一番大きい。そこからまた幾つか高度が下がって中規模の中洲がポツポツあるんだが‥‥その辺りは自分達で余裕があれば見て見るといい」

『ちちうえ、なかすにはやせいのケモノはいないのですか?』

「ん?海獣や水鳥、魚介くらいか?大河よりこっち側なら、熊も猪もいたか。あ!人魚やケルピーがいるぞ?」

「最後のはどっちも食べないからな?若さま」

『うん、なんとなくそれはわかる』


 義息子とギデオンのやり取りを笑って見ながら、レオナルドは追加の注意を促す。


「水の奴らは割と臆病で人見知りなのが多い。機嫌を損ねると粘着質で面倒臭くなるから、気をつけろよ?」

『え?ネンチャクシツ?』

「ああ。二年前、ちょっとアレンと買い付けに立ち寄った時にな」

『えええ?でも、こおりのまおうさま‥‥』

「被害に遭ったのはアイツじゃなくて、アレンに邪な思惑を持った豪商がな」

「‥‥‥儂らも、十分に気を付けよう」

「そうしてくれ」


 少し眉間に皺を寄せより厳つくなった強面のギデオンに相槌を打つと、レオナルドは空気を一新するようにパンっと軽やかに柏手を打って話を改める。


「今週の課題。一個目のグランジエールの魔力に頼らない身体強化は継続。二個目、固有の植生や有用なものや人をざっと調査。三個目は、自前の念話な」

『うぅ、がんばります‥‥』

「んむ。で、だ。ひよこは一体化してるからそのままでもいいが、鹿、どうするよ」


 視界の片隅でびくりと震えたチェリー姐さんは、この週末ですっかり別人(鹿?)なんでは?というくらいにおとなしくなってしまっている。

 本人からはまだ確認していないが、恐らくレオナルドが課した課題はあまり進展していない様子が見て取れる。


「もっと効率よく魔力の運用が出来てりゃ、自分の物質体(マテリアルボディ)の圧縮なんて訳ないと思うんだが、あんまり効率的な運用なんて概念自体無しで生きてきたんだな‥‥お前‥‥」

「うぅぅ」


 彼女?の蹄にしろ立派な角にしろ、これでもかと高濃度の魔素と硬質な鉱物並の代物なので、さぞ物質体に全振りで能力を発揮しているのだろう。

 力と大きさこそ正義!とでもいうように。


 脳筋のようなアホの子を憐れまんばかりのレオナルドの視線を受けて、隅っこで巨体を震わせた黒目がちのチェリー姐さんの円なお目目から、ジョボジョボと涙が落ちている。


「仕方ねぇなぁ」


 ガシガシと頭を雑に掻いた後、レオナルドはツカツカとチェリー姐さんに歩み寄るとばちんっ!と良い音をさせてデコピンを喰らわせる。


「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」


 地下洞窟で悲鳴は流石に耐えたものの、脳震盪を起こしそうな程の衝撃が体内にも精神にも直接響き、大鹿はその場に蹲り悶えて痛みにのたうった。


「いいかグランジエール。今ちょっとだけこいつの軸を直接ズラして脳筋を少し封じてる。飲み込まず掌握だけ、こいつの存在そのものを覚えて、何処ででも召喚出来るようにするんだ。ひよこより、四割減ってとこか」

『たべずに、しょうあく。よんわりげん‥‥』

「行けそうか?」

『よんわりげん‥‥がんばるます』

「おっし。やってみろ」


 義親子の会話を黙ってギデオンは聞いているが、もう何を言っているのか分からない。

 今この場だけの指示で実行させる親も親だが、グランジエールも実行に不安はないのだろうか。


 一抹の不安を抱えつつも黙って見守っていると、グランジエールがトコトコと大鹿に近付き、ぴょいっとその背中に飛び乗った。


「ひっ」

『たべずによんわりげん、たべずによんわりげん‥‥』


 何度かぶつぶつと呪文のように呟いていたグランジエールは、背中で伸び上がって太めの、だが小さな前脚を大鹿の頭に乗せる。


 がぶっ!


「「あ」」


 実際ちょっとだけ嫌な予感をギデオンは覚えたものの敢えて成り行きを見ていたのだが。


 チェリー姐さんは、身体を硬直させたまま白目を剥いて立ったまま気絶してしまっていた。









 * * * * * 







 結局、無慈悲にレオナルドに叩き起こされたチェリー姐さんはどういう理屈か不可解ではあるが、無事にグランジエールに隷属していた。


 魔核を飲み込んだり何かを摂取した訳ではないので一体化はしないものの、主が喚ぶと土の属性のある場所であれば顕現出来るようになった。


 その状態を何度か確認してから、レオナルドが更に質量変化を外部から強制的にチェリー姐さんに施し、フェイトリネアでの同行は大河を渡る前までと取り決めた。


 それによって一つ何かを掴んだ様子のグランジエールは、意気揚々と出立の挨拶を義父であるレオナルドに告げた。


『ちちうえ!よいおてほんをありがとうございます!』

「うんうん、耳の変化とさっきのをちゃんと掴めば、もうイケる!」

『はい!!はげみます!』


 ちょっとだけ彼らの微笑ましい会話が、何となく下心が透け過ぎていて苦笑いをしてしまうギデオンだが、これが正しい男の子の成長と言えばそうなので賢明にもそれには触れない。


 そして相変わらず震えている縮んだ大鹿にも触れない。


「じゃあ、ギデオン。頼んだぞ」

「承った。では、また闇の日に」

「ああ、でも何かあったら遠慮せず鍵を使ってもいいし、呼べば良い」

「感謝する」


 荷物はグランジエールもギデオンも収納機能を持った魔導具があるが、偽装の為に重さのない見せかけの寝袋や毛布や鞄をチェリー姐さんの背中に載せ、ギデオン自身も背嚢を背負う。


『いってきます!』

「おう、行ってらっしゃい〜」


 青い目を細めて義息子の元気な挨拶に笑って返したレオナルドが、片腕を上げて無造作に払るう。


 その後のマルティエ帝都地下洞窟には、早朝の凛とした空気だけが残っていた。





お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


キリが良いので冬休み修行中なグランジエール君の旅の途中ながら、章を切り替えようかとも思います。

なので、二章は一旦ここで終了。

閑話をちょっと挟んだら、三章は水の国予定です。


それにしてもチェリー姐さん、本来火の属性なのに土での召喚枠。

おかしいなぁ。。。。_(:3 」∠)_

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