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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
126/150

126、弟子入り希望

 

 至宝といわれたルーナエレンと対面したギデオンは、無事にサリヴァン家の保護者認定をクリアした。


 テラスでの軽食とお茶の時間を和気藹々と過ごした後、ルーナエレンとグランジエールはお昼寝タイムになり退場し、本番とばかりに保護者達は地階の工房へと移動する。


 工房に足を踏み入れた途端呆然とするギデオンの、深い深い感嘆の溜息がそこに響く。


「何だ、これは‥‥夢?職人にとって、まさに夢みたいな環境‥‥」

「どうよ、絶対気にいると思ってたぜオレは!」


 先程まで邸内の一階を中心に案内をしていたのだが、図書室と地階は特にギデオンの興味を大いに満たしたらしい。

 各種素材に見た事もない魔道具による作業環境の整い方、知らない便利な魔術式の数々。


 まだまだ若いモノには負けない体力も気力もあるが、もっと早くに出会いたかったと思わずにはいられない。


「ああそうだ、カーターにも作ったけど、ギデオンにも用意しないとアレン」

「ふふ、そうだね。ギデオンさん、普段使いする何か欲しい物とか、欲しかった技能や魔術はありますか?」


 アレンハワードに問われた内容にギデオンは頭に疑問符しか浮かばなかったが、正面二人のやや斜め後ろに控えていたカーターがにこりと微笑んで「僭越ながら‥‥」と主人二人に声をかける。


「もう少しだけ、ギデオン殿にも伝わるようご提案なさるべきかと」

「あれ?カーターさんにはどう説明したかな‥‥」

「カーターはほら、メルヴィンにヘッドハンティングさせたからさぁ」

「ああ、とても良い人選をして貰えて、すごく感謝してるよ」

「ふふ、光栄に存じます」


 既に一度退職した職場だったし第二の人生を送るにしても、途轍もなく優良な居場所を得たカーターは、ギデオンから見ても本当に実年齢以上に活力に満ち充実した日々を過ごしているであろう様子が見てとれる。


 会話に出てきたメルヴィンなる人物をギデオンは知らないが、確かカーターの自己紹介ではマルティエの狼獣人の傍系的な話し方だったと記憶している。


 獣人種は基本的に魔力保有量があまり高くなく、魔術の運用にも然程強くないのが一般的であり、魔術を行使可能な者でも身体強化や防御といった内部補正が主な適正であった筈だ。


 ギデオン達ドワーフ種は物質体(マテリアルボディ)にほぼ寄りがちではあるが妖精種に近い亜人なので、魔力保有量はエルフ族には及ばないが魔力を持つ人族の平均以上はあるだろう。


 後は、魔道具や魔術式を改良しながら彫金や鍛治に携わる者は、決まって魔力量が多かったし、ギデオンも例に漏れず職人仲間内でもダントツで魔力保有量が高い。


 そんなギデオンですらこの邸宅のある空間に連れて来られた瞬間、呼吸が困難になる程の魔素濃度にあてられたのだ。


 これが一種のセキュリティであり選別方法なのだろうと予想出来た。


 クリアする為の何かしらのアイテムを『鍵』として与えられ、この空間で暮らす事を許されるという話なのだと暫く黙考していたギデオンは思い当たり、レオナルドとアレンハワードを見る。


「儂は職人だが、この冬の間は若さまが外を廻るのに侍るだろう?道具も有難いが、儂自身の重量が色々と足を引っ張るのではと考えとる」

「‥‥‥賢い奴は大好物だぜ?流石オレの義息子の侍従だ」

「寧ろ彼を引き抜いて大丈夫なのかな?後々オクリウェートに何か言われたりしない?」

「恥ずかしながら、儂は研究を理由に祖国から隠遁してマルティエに密入国するような俗物よ。弟子達には頃合いを見て、死亡の届出をして貰う話はついておる」

「良いねぇ!こいつその内自力で自己進化に至りそうだ、アレンの血族みたいに」

「ちょっとレオナルド。急に変なこと突っ込んでこないでくれるかな。今は、鍵の話」

(わり)い悪い」


 それから彼らが『鍵』について前例の話を交えて語ったのは、カーターは狼の守護聖獣の末裔である領主一族の傍系の血筋であるが、魔道具作成を趣味としていて潜在的に魔力の保有量のキャパシティーが高かった事、故にレオナルドがマルティエの守護聖獣と縁の深い素材と魔石をカーターと紐付けて強化を促し、彼自身に強化と保護の魔術式で包んだ上、『鍵』となる魔導具で行使出来ると便利である属性や技能を付与しているという事だった。


 ギデオンは根っからの職人でありドワーフである。


「弟子にして下さい」


 工房の案内をしながら話していた顔面偏差値が天元突破の美青年たちに、ギデオンは躊躇う事なく即座に土下座を披露していた。








 * * * * *






 ギデオンに渡す為の『鍵』作成に関して、本人の一番の願いは重量についてという話だったので、補助に使う素材にはグランジエールの扱う重力の魔術特性をスイッチ式に発動出来る術式を組む流れになったのだが、まずはアレンハワードが重力を操る魔術式を分析して、調整と再構築するのは決定している。


 他の欲しい属性についてはルーナエレン達がお昼寝から起きてから、一度可能性の部分も含めて保有する魔力を視て確認した上で、改めて本人に希望を聞く方向で話は決まった。


 ただ、帰省した間はなるべくグランジエールがルーナエレンと過ごしたい雰囲気を滲ませているので、確認後の作業や作成はほぼ大人だけで行う事になる。


「えっと、ギデオンさんのまわり、つちとひ、つちのいろが‥‥じめんのいろより、きんぞくみたいなかんじがするの」

「他の可能性は?何か視える?」

「ううん、ほんとうはつちだけだったみたいだけど、ひのちっちゃいこがね、ギデオンさんのことがだいすきなんだって」

「おお、火の属性は精霊の好意かぁ」

「うん、そうみたい」


 おやつタイムに皆んなで工房に集まった際、グランジエールを抱っこしたままのルーナエレンに魔力の属性の確認視をお願いした所で、何を作成し組み込むかの話し合いになる。


「正直水に関しても魔道具があれば事足りるし、何にするよ。てか、ギデオン獲物は何が得意なんだ?」

「儂は鎚しか持たん主義でな‥‥歳を取るとどうにも融通が効かん。すまんが‥‥」

「武器になる(ハンマー)系の打撃武器には携わった経験が無いな‥‥彫金や鍛治に使う道具をお持ちであれば、見せて頂いても?」

「ああ、若ぎみに持って貰っとる」


 幼子二人もきちんと大人達の会話を聞いて、ささっと預かっているという道具達を休憩スペースのローテーブルに指定された品を乗せる。


 彫金や細工物、鍛治に携わるプロ中のプロであるギデオンの使う道具に皆、興味津々でテーブルの上に視線を向け、持ち主が一つ一つ解説をするのを聞きながら見守るのだが、道具自体はとても質が良いし手入れもしっかりと行き届いたものなので、新調する必要は全くない。


 また使い慣れたものに新しく何かしらの付与をした場合、使い勝手が変わってしまうのはあまり歓迎出来ないのでこれもしない方向で話が進んでいく。


「うーん、提案としては戦鎚(ウォーハンマー)は旅に不向きな部分があるから、魔導具化した外部魔力の補助付きの『柄』を作るとか」

「いっそ腕輪とかか?」

「じゃあ、じゃあ、さしいれようのうでわ、エレンがつくるの!」

「待ってエレンうちの可愛い義息子が泣きそうになってるから!!」

「え?ダメ?」


 勢い込んで挙手をして、グランジエールにも作ったカフスリングの応用を頑張ってみようと思ったルーナエレンだったのだが、すぐさまレオナルドが待ったをかける。


 その理由として告げられた当のグランジエールに皆の視線が集まると、確かに可愛らしいまろいお口がぎゅっとなって、心なしかお耳が後に下がっている気がする。


 結局ギデオンに渡す『鍵』は一旦保留にし、戦鎚の柄と、自宅の収納と繋がる腕輪(制限有りの簡易収納付き)を候補にし、本職を交えて武器の魔導具化の可能性を探ろうと盛り上がる大人達と、それとは対照的に何処となくしょんぼりとしたグランジエールにピッタリとくっつかれたルーナエレンは別行動となった。


 二階へと移動しようと席を立ったルーナエレンに、レオナルドがこっそり耳元で囁く。


「目一杯構ってやって?エレンと過ごす週末を心の支えにして、頑張ってるみたいだから」


 こっそりと耳打ちされたものの、耳の良いグランジエールには勿論聞こえている。

 益々固くお口を引き結んでしまった腕の中の仔猫を見て、レオナルドとルーナエレンはクスリと笑い合った。







お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


盛り上がるおうちチーム、延びる滞在期間。

きっとチェリー姐さんは何も知らず、必死こいてレオナルドの課題を熟しています。

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