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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
12/150

12、『愛着』

11の解説担当レオナルドさんバージョンです。

タイトルにもあるように、第二の感情をはっきりと認識した為、少し浮かれてキャラが少し幼くなっています。


 オレの中に生まれた『執着』の感情が向けられる対象は、銀色を持つ彼女と、彼女の愛した魂を持って産まれた鷹の翼の裔との間に出来た。

 勿論本来は触れ合う事も出来ない程に次元が異なる存在だったろう。

 それでも、先祖返りだったり才能だったり運だったり。

 オレにも良く分からない何かが、働いたのは分かる。


 生き急いでいたのだろう。もう使われる事など無いと思われた古代の上位召喚魔法陣を、原始の時から長年研究していた一族でもあったし。

 もしも、呪いの影響などなく健常な身体を以って魔術を扱えていたならば、結果は違ったかも知れない。

 だが、発動させた魔術の反作用に身体が耐えきれず焼き切れ、制御を失った肉体は内部から裂けたようだ。

 更に制御不能になった魔力が、耐えきれず眼球を潰したのであろう事も、初めての出会いで分かった。


 元来気紛れな我らの中でも、銀色の彼女はそれが突出していたようにも思う。

 それでも、あの時見せた淡い暖かな色の感情。

 それを引き起こさせる存在。

 見届け、自分にも感情が芽生えた。


 あれからずっと見守り続けて。

 旅に同行し、地上のあらゆる感情に触れて。

 エレンの笑顔もアレンの笑顔も、心地良いと認識した。

 共にいて、笑う、怒る、泣く。

 他者にこの場を害されるのを、不快と感じる自分を認識した。


 外界からエレンを隠しつつ、アレンの呪いを解く鍵を探る日々。

 銀色の彼女はあの日、今にも消えそうだった命を、アレンを救った。

 それでも、呪いは解けていない。

 エレンを介して少しだけ弱めているのが分かる。

 アレンの魂と彼女の純粋な力と暖かな感情で出来た、小さな小さな始祖の源流。地上では、それこそ小さな小さな、女神の化身。


 オレの力の大半を封じながらも、側で見守り過ごす時間。

 軽口を叩き合う相手、向けられる何食わぬ表情。


 ああ、この心地よい場所が長く続けば良いと思う。


『愛着』


 この三年間の旅空の中で、オレは新たな感情を理解した。

 でも、まだそれを誰かに教える気持ちにはなれない。



 * * * * *



 使者に対面する前に打合せた話では、対話するのがアレンで、武力が必要になった場合はオレが相手をするというものだった。

 普段冷静で的確な動きが出来るアレンだが、まだ二十歳になったばかりだ。

 あの魔術大国の、銀を持つ一族の直系。

 ある程度の腹芸も身につけているだろうが、直系で研究肌なのだから、基本的に腹の探り合いや遠回しな囲い込みは嫌いで実は短気だ。

 それでもオレの本性が基本的に破壊で解決な事も理解してしまっているので、アレンは短気ながらも賢い頭で冷静に対処している。もちろん、オレもアレンも、愛娘であるエレンの為が原動力。

 なのでこの要塞に来てから一人寝をし、食事の時間も一緒に取れないアレンは。

 実はかなり機嫌が悪いと思われる。

 オレ達は空間魔法(おうち)がある。正直褒賞といわれても必要ない。

 アレンの事だ。既に別行動の間に遺跡については色々と見て回っているに違いない。

 何よりも、遺跡に詳しそうなドライアドにも恐れを抱かせている。

 遠くに離れる迄は、多少の解析なり研究なりは出来るだろう。


 会食が終わってお茶を飲みながらの歓談になった頃。

 アレンの機嫌がどんどん下がって来たのが分かる。

 この後の目的だのルートだの、観光だのの話になっている。一見愛想が良さそうに見える表情をしているのは予想に難くないが、あの背中は怒りが滲んでいる。

 あの正座の時の怒りを見てから、ほんの少しだけあの気配が苦手になった。


 褒賞を態々封蝋で家紋の付いた封筒で差し出して来た相手の執務官に、あーこれちょっとダメかもと感じる。

 はい、権力使っちゃうもんねーをきっと感知したよアレン。

 下手打ったね。

 アレンは正体バラしてややこしくならないよう、頑張ってたけど。

 本来呪いさえ無ければネヴァンの国王に次ぐ権力ある家だし、本人魔導師だし、この帝国の一領主の執務官にそんなのされたら、ねぇ?

 まぁ、もう半分人間辞めてるけど本人覚えてないからなぁ。

 エレン不足なアレンが、これ以上大人しくニコニコしている筈がない。


 遂に胡散臭いと言外に言い放ったよ、分かった次オレの出番な訳ね。

 バトンタッチとばかりに互いの掌を叩く。

 小気味良い音がした途端、アレンの掌に猫っぽい肉球グローブが出てくる。

 オレが惨事を起こさない為の魔道具を渡された。

 瞬時に打ち合わせ通り耳と尻尾を(あらわ)にして身構えると、勝手にグローブもすっぽりと手に嵌る。

 おお、これきっとエレン可愛いって喜ぶやつだ。

 いい仕事するなアレン、ちょっと好感度上がったぞ。


 赤っぽい髪の騎士が少し遅れて構えるのが見えたし、撫でてこよう。


 相手が半歩前に踏み出し、剣の柄に利き手を添えたのを確認してから懐に躍り込む。

 猫パンチで浮き掛けた剣の柄を押し戻し、反対の猫パンチを騎士の顎を下から軽くお見舞いする。

 狼聖獣の血族っぽい硬さだが、今ので十分だった。

 膝が思わずといった具合に落ち掛けたので、するりと腕を取って背後に周り、そのまま膝カックンを喰らわせる。

 そのまま背中に跨った。

 オレの尻尾が勝手にぴたんぴたんと上下して、カウントを始めた。

 んー、辺境騎士団だよなコレ。国境警備穴だらけとかなってないよな?

 あ、でも魔物退治滞ってるのも納得という事か。

 そこまで一呼吸もない間の事だったけれど、さっきまで機嫌が悪かった筈のアレンハワードのため息混じりの声が聞こえた。


「‥‥‥レオナ、やりすぎだよ」

「えー‥‥」


 やりすぎって何だよ。

 そんな出来の悪い子見るような顔して、こめかみ押さえて目を伏せるなよ。

 撫でた程度だろこれ以上どうしろって言うんだよ。

 手を抜く加減だって、すごい難しいんだよこちとら破壊が本職なんだからちょっとくらい褒めろよ。

 って言ってやりたいけれど、言ったら正座なのは嫌だしな。

 アレンは見えてたと思うけど、一応解説だけ含めた言い訳をさせて貰おう。


「抜刀する前にちょこっと顎打ちして膝カックンしただけなのに、やりすぎゆーし」

「はは‥‥‥‥‥」


 あ、何このアレンの乾いた笑い方。

 不穏な事考えていそうだし、ちょっとこれ以上は黙っていた方が得策かも知れない。

 アレンの様子でエレンが何か察して冷たくしてくるのだけは無理。


 オレが大人しくしている間に、不穏なアレンの様子とオレと騎士の状態に、漸く現実に戻ったらしい執務官が、強張った顔をしている。

 額にはすごい脂汗浮かべて、声もちょっと上ずっていた。

 分かる。オレですらアレンの不機嫌怖いし。


「利害の一致で共に旅をしているだけなので、私には命令権も強制力もないんですが。いい子でしょう?」


 ため息を吐きながらアレンがオレを危ない奴呼ばわりしたけど、一応事前の打ち合わせ通り。

 でも何でだろう、悪意を感じる気がする。

 エレンが泣くような事は、絶対しないと誓う。本当に。


「もちろん、私の魔術もファング殿にはどんな物か理解頂いていると思います。我々を留め置くおつもりでしたら、褒賞など不要。今夜にでも立ちます」

「あ、‥‥そんな、我々は」

「どんな思惑であろうと、陰でこそこそされるのは好みません」


 ようやくオレに対する不機嫌が薄くなって、オレ達を懐柔しようと少しでも見せた執政官に感情が向いたようだ。

 目を固く瞑ってから、アレンが席を離れようとした時、オレの下の騎士がはっとして声を上げる。


「お待ち下さい!こちらの非礼は幾重にも謝罪させて頂きます!!どうか、お話だけでもっ」

「いいえ、謝罪は不要です」


 そうだな、多分アレンも気付いてる。

 執務官が表に立って交渉して来ていたが、身分や立場はこちらの騎士の方が上だ。

 魔力も気配も全く別物。

 領主一族、つまり狼の聖獣の血族の裔。

 交渉が下手なのかも知れないが、そういう騙し打ちみたいな所がきっとアレンは耐えられないのだろう。

 一礼をしたアレンは、あの封蝋の封筒をテーブルに残したまま、部屋を出て行ってしまった。

 オレも、騎士から降りてそのままその後を追う。


 ああ、エレンどうしてるだろう。

 寂しくて泣いてないと良いなぁ。


今後また新たな感情を発露し、認識していくうちにレオナルドの立ち位置やキャラが変化していくと思います。

登場人物がもう少し増えたら、また変化してくるかも。

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