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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
119/150

119、チャリオット

更新が遅くなりました。

申し訳ありません_:(´ཀ`」 ∠):



 

 やや(いとけな)い印象を受ける念話の声は穏やかそうで、話す内容は理知的な言葉選びで横柄な雰囲気は感じられない。


 だが、多少は自分の実力や魔力量、そして技量に自信があっただけに、大鹿の矜持はポッキリとやられていた。

 手も足も全く出ず、自慢の突進も角もあっさりと防がれた。


 食べられる事は無いと言い切っているので、自分のアピールポイントとして旅の脚となったり火の魔力の加護のようなものだろうか。


 後は、温泉を引く事と源泉を当てる事、作り出す事も一応可能なのは一応オクリウェートの土地柄で土属性も濃く持っているから可能な技能ではあるものの、他の火の精霊に出来るものは殆ど居ないので密かな自慢だったりもする。


 それらを相手の反応を見ながら、少しでも良い契約を結べるように説明した。


 お行儀良くお座りしてふんふんと相槌を打ちながらそれらを聞いてたグランジエールは、じっと大鹿の立派な角を観察していたのだが、その角が確かに火の属性ではなく土の属性であるらしいと納得しらしく、一呼吸を置いて感想を述べ始める。


『なるほど。きみのつの、たしかにまりょくでんどうりつがよさそうだね。つちぞくせいはおなじでも、ヒヅメとはまたべつのせいしつなのかな?』

「自慢の角だから。そんじょそこらの鉱石や鉱物よりも、含まれる魔力の質も量も段違いって、故郷のドワーフ達が崇めてたくらい!」

『へぇ?』


 早速遺跡に戻ったらギデオンに確認を取ろうと考えつつ、繰り返し貴重な素材を採取出来る手段として最低限の保護を大鹿は得た事になる。


 素材としての価値と、火の属性の強い加護、温泉に関しての幾つかの権能があり、そしてこの先グランジエールが姿を変じられるようになれば騎乗用としての可能性有りという思っていた以上の有用性が結果として示された。


『ボクとしては、なかなかきょうみぶかいプレゼンテーションだったよ。どんなかたちでのさいようがてきしているのか、おたがいしけんきかんをもうけたほうがいいかな?』

「え?‥‥それで良いのか、いや、その」


 大鹿の想像していたよりかなり緩い条件を仔猫から提案され、試験期間として従うにしても言葉遣いにも躊躇ってしまう。


『きみも、ボクをみきわめてくれていい。まぁ、ちちうえのしじだから、かいほうしてあげられないんだけどね』

「いや、その、配慮に‥‥感謝する」

『うん。ひとまず、きみのなまえをあずかろう』


 精霊に対して本来の名前を知られる事は、ある意味魂を縛られるに等しい。青ひよこに関しては年若く、まだ本来の名前を授かっていなかったが故の、核の遣り取りだったのだが、大鹿に関しては既に()()を持っているのが反応で分かってしまった。


 名前を預かるとグランジエールに言われた時、微かにその瞳を揺らしてしまっていたから。


 穏やかながらもはっきりと告げられ、大鹿はおずおずと静かにお座りしているグランジエールに近付き、ノロノロと頭を垂れて額を触れさせる。


 触れた額から告げられた本来の大鹿の名前を理解したグランジエールは、そこでより相手の本質を名前と共に識った上で、自分がレオナルドにして貰ったように意味を噛み砕く遣り方で呼び名を与えるべく暫し思考を巡らせる。


『つのにほのおをまとわせてかける‥‥チェリオット。じゃあ、チェリーねえさん、でどう?』


 返事をする前に、圧倒的な上位権限によって名前を縛られ絡め取られた感覚に襲われ、大鹿は鼓動が全力疾走を耐久時間ギリギリまで続けた後の様な有様で息も絶え絶えになってしまった。


 それらをグランジエールの頭上からひたすらに存在感を消して見守っていた青ひよこが、唖然として微かな呟きを溢す。


『姐さんまでが名前ぇ‥‥‥』


 仮ではあったが、有り得ないことに本来の名前を上書きしてしまったらしい。


 週末に改めてパパ案件として、心のメモにそっと書き記したグランジエールだった。








 * * * * *







 三人がそれぞれ暫くフリーズから若干持ち直したのが、明の二刻半程。


 その頃にはグランジエールはお近付きの印にと、大鹿改めチェリー姐さんの温泉を勧められ、今現在風呂上がり状態だったりする。


 つい先日ギデオン達の蒸し風呂改革もレオナルドが興味津々になっていた事だし、きっとそれも含めて今回の人選?だったのでは無いかと若干疑っているのだが、いかんせん確実にルーナエレンも喜ぶ案件であるのが理解出来てしまうので、結果オーライといった所だろう。


 だがしかし、今後の義父の指示する先がどんな副次効果を持っているのか、何処まで狙っているのだろうと考えると、末恐ろしい気持ちが湧き上がる。


 カーターさんに少しだけ聞いた話では、要塞砦で一度領主サイドとの望んでもいない交渉でアレンハワードの地雷を踏み抜かれた事があり、その際に一度レオナルドがマルティエ全土の上位種族を脅して回った事があったという。


 その際に、恐らくだが近隣のある程度の精霊や妖精、聖獣などを把握済みなのだろう。


 湯上がりでそんな事を考えていると、チェリー姐さんが改めてしみじみとした声で話しかけてきた。


「それにしても若さまが今日来なかったら、擦れ違った可能性があったな」

『ん?どうして?すれちがう??』

「ああ、なんか急に地中の魔素が薄くなってな。ここの湖の温泉化を解く前に、朝風呂堪能してたんだ」

『なるほど?』


 レオナルドが急かしたのは、こういう事だったのだろう。

 きちんと指示に従って急いで出向いて良かったと、グランジエールは苦笑いを浮かべる。


 今は名前を把握する事でグランジエールとチェリー姐さんの主従関係(仮)が出来上がっているので、齧られる(おそわれる)としても制止してくれると信じている青ひよこは、湯上がりのふわふわ三割増状態で主の頭上に乗っかっている。


 魔素の話は恐らくだが、コニーとレオナルドが龍脈の支流を閉めたが故の変化だと思われる。

 下手人については試験期間が終わって正式に従える形を決めてから、青ひよこを添えて暴露するつもりなので、今はそこには触れないでおく。


『まにあってキミはふこうだったのか、こううんだったのか‥‥しゅうまつまでには、どんなかくごをしたのかおしえてほしいな』

「分かった」

『あとね、ボクまだねんわもしゅうとくできてないんだ。ちちうえからのかだいも、いくつかへいこうしてこなさないとだし』

「ふむ‥‥若さまは、まだ本当に幼いが‥‥」


 チェリー姐さんが少し言い淀むのにも構わず、グランジエールはあっけらかんと爆弾を投下する。


『うん、ふかしたのははんつきまえ。でもたまごのなかですうせんねん?くらいすごしてる』

「!?」


 朗らかな念話の声は冗談の様にも聞こえるが、マルティエの礎とも言える青水晶を飲み込み隷属している存在で、しかも『若さま』呼びで、卵と孵化と数千年とくれば。


 自ずとグランジエールがどういった存在なのか、国境を挟んで近隣を寝ぐらにしていた自分達にも分からない筈が無い。


 一瞬言葉に詰まったチェリー姐さんは、己の言葉遣いを改めねばならないかも知れないと思いながら更に彼?が父上と呼ぶ存在にも恐怖心を抱いた。


 思っていた以上に、自分がとんでもない環境に紛れ込んでしまったのでは無いかと。


 興味本位で故郷から南下し、ドワーフの古い遺跡と緑に恵まれた国境の山で気儘な暮らしと惹かれる青水晶達を愛でていたのだが、同胞とは掛け離れた境遇になってしまった。


 もう自分にどうこう出来る身の上では無くなったが、こうなってしまっては覚悟を決めようと、こっそりと主となる仔猫の頭上を盗み見る。


 幸にして、獲物のすぐ近くに堂々と居られるのだから。









お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


チェリー姐さん、精霊なので特に性別は縛られませんが一応雌っぽい精神と言いますか。

温泉好きで小節を回してお歌を歌う、大雑把でやや脳筋な感じでイメージしてます。


オネエ枠には弟がいてるので、裏返しっぽい感じ?

後はメイヴィスが「姐さん」までがお名前という事故によりぐぬぬってなってます。

自分も「メイお姉さん」と呼ばれたかった口なので(笑)

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