116、第三課題
いやん遅刻常習犯_:(´ཀ`」 ∠):
遅くなりました!申し訳ありませんんん!!
義父との会話の中で告げられた第三の課題について、グランジエールは早速青ひよこに伝えるべく対面してへちゃりと地面に座っている当人へ、視線を下げた。
『ボクがちちうえから「かだい」をもらっているのはしっているよね?』
『はぃ、先程の核の書換えで少々ぼんやりしておりましたが、記憶しておりますピヨ』
小さなひよこが目の前で神妙な表情を浮かべ、こくりと頷いてから続く言葉を紡ぐ。
『ひとつめ、まりょくをつかわずたいりょくやきんりょくをつける。ふたつめ、キミとギデオンをしたがえる。みっつめ、こっきょうふきんのひのせいれいをつかまえる。いちとにはけいぞく、みっつめはこんしゅうのかだい』
『オッフ』
『ね、なかなかスパルタなんだ。きょうりょくしてよ。みっつめのこころあたり、あるんだよね?』
『‥‥‥他の火の精霊じゃ、ダメなんですピヨ?』
『うーん‥‥‥』
元来の青ひよこは大精霊ではあるが、彼等の感覚からすれば代替わりから数百年引き籠もりだったのみの、経験の浅い存在なのだろう。
明らかに心当たりがある様子から面識はあるようだが、避けたいといった本音が見て取れる。
だが、レオナルドの指令なので諦めてもらう他無い。
『ほかじゃ、ダメだとおもうなぁ』
義父の指定であり指令である火の精霊で無ければ、課題クリアは確実に認められないだろう。
そんな確信を持って、諦めろと意図を込める。
グランジエールの返事を聞いて、青ひよこはがくりと首を垂れる。
そんな反応を示すとは、どんな相手なのかもう少し詳しく聞き取りをするべきかと考え、黄昏ている青ひよこの様子に構わず興味津々で問い質す。
『そんなはんのうをするってことは、しっているあいてだとかんがえていいんだよね?』
『くぅ、そ、それは‥‥』
『あ、まって。ボクがみたほんには、とりと、ネズミと、モルガンにいたオオカミと、おおじかだっけ?きろくがあったきがする。ひのぞくせいのオオカミとおおじかいがいは、さほどつよくなかったってあったはずだから、おおじかがせいかい?』
俯いて黙り込んでしまった青ひよこを、困った様子で首を傾げて眺めていたグランジエールだったが、どうやら該当する精霊の正体は挙げ連ねた最後のものが正解らしく、しかも言い当てた後の態度から青ひよこと何かしらの因縁でもある気がする。
好き嫌い云々というより、只管に近付きたく無い相手といった雰囲気が見て取れるので、もう少しだけ釈明なり解説があるのかどうか待って居ようと黙って見守る。
大陸の南方の国とはいえ冬の海風は崖という場所柄、のんびりするにはあまり適していない。そろそろ、自慢の毛並みが潮風に煽られるのに飽きたら構わず出発してしまおうかとグランジエールが思い始めた頃。
青ひよこが観念したように、ぽつりぽつりと語り出した内容は、ちょっぴり塩っぱい思い出だった。
端的に要約してしまえば、青ひよこが代替わりした割とすぐの頃。
挨拶代わりにと舐めまわされ齧られたという。
そして好物の岩塩を舐めるが如く度々追いかけ回され、以来すっかり帝都の地下洞窟へ引き篭もりになった、今に至るという話。
『えっと?のろけかなにか?』
『いいいぃぃぃいえええぇぇえ???変態で迷惑な害獣だって、爺さまの記憶にもあったのですピヨおぉぉ!』
『え!?せんだいにも!?』
『すんげー脚が疾い変態鹿なんですピヨ!!嗅覚も!!』
『あれ?これってがいじゅうたいじなかだいだったっけ??』
『‥‥‥‥‥‥捕獲よりも食べちゃえ案件ですピヨ』
聞いた限りではちょっと危ない性質の鹿型精霊に感じたグランジエールは、従えるにしても捕獲後の対処は本人を見て話を聞いてから決める事にする。
決して面白そうだと思った訳では無いが、対面してしっかり見極めた上で取り込むにしろ従えるにしろ、危険が及ばないよう考えなければいけない。
でもあの義父が勧めたお膳立てなのだ。
もしも問題ありとなった場合でも、良いように処理してしまうのは目に見えている為、悲壮な顔をしているひよこ程気分は落ち込む事はない。
『さ、いこっか。ほら、ちちうえがしりゅうをへらしたらえいきょうがでるからって、かだいをこんしゅうにしていしたわけだし』
『はぃぃ‥‥‥』
力の抜けた返事を溢すもののへちゃっと地面に座り込んだままの青ひよこを咥えると、グランジエールは青ひよこの強い負の感情をレーダー代わりに方向を割だし、颯爽と走り出した。
* * * * *
それから小休憩を取りながら二刻程北西へ山脈を目指して駆けるうちに、標高も上がって身をすり抜ける空気の体感温度がそれなりに真冬のそれに感じられるようになった頃。
ギデオン達ドワーフが棲みついていた遺跡を超えた山頂をやり過ごし、山肌も緑が若干少なく感じられる。
ここまで殆ど口を開かなかった青ひよこだったが、ようやく諦めが着いたのか少しずつ先を案内したり逸話を口にしたりし始めた。
『奴は爺さまの時代晩年に産まれた火の精霊と記憶しておりますピヨ。棲み家はもう少し先、奴の故郷のカルデラ湖に似た小さな湖の辺りなのですピヨ。精霊達の噂では、そこを温泉にして一年中ふやけるまで浸かっているそうですピヨ』
『へぇ、おんせん?』
『ええ、腐っても火の精霊ですピヨ。そして天然温泉ではなく奴の属性による小さな湖の温泉化なので、腐った匂いはないのですピヨ』
若干忌々しげに「腐る」ワードを重ねてくる青ひよこの様子に、グランジエールは苦笑いを浮かべてしまう。
それでも個体の魔力のみで小さいとはいえ湖を温泉と化す火の精霊は、かなりの力量なのだろう。そして少しだが、レオナルドの温泉に対する何かしらの意図も何となく感じる。
もしかすると、サリヴァン家に温泉をご提案とか密かに考えているのかも知れない。
特殊で個性的な属性精霊の生態でもある。きっと資料としても、記録の魔導具の使用は必然だろう。
『若さまの中に、戻っていては‥‥ダメですピヨ?』
『え?これはこぶしでかたりあえってこと?』
『ああああぁぁ〜!会話ぁあぁ〜!!』
通訳して貰えるなら普通に対話を考えていたが、相手がもし実力主義であればその流れになる可能性は否めない。
元から少々賑やかな青ひよこではあるが、第三課題の話になってから特に感情が振り切れていて反応が一々面白過ぎる。
グランジエールとしてはどっちの流れでも、ちょっと楽しみに感じているのだが、無理強いして嫌がる対面をさせようと迄は思っていない。
なので、いきなり青ひよこをぶら下げて火の精霊の前に出るのではなく、やや離れた場所から姿や様子を一度確認してみる事にする。
少しでも不安を感じるようであれば、青ひよこは仕舞って対話可能なら対話、対話不可であれば威圧からの実力行使、捕獲か捕食かを現場で随時臨機応変に対応すると言う話で一旦纏まった。
『あともう少しで奴の支配領域に入りますピヨ』
『ほんとだ、わりとおおきなひのけはいがあるね。なるほど』
この山脈で少し火の属性を得ていたグランジエールだが、青ひよこが示す先にどっしりと存在感を醸し出している精霊の気配は、掌握出来たら一角の戦力になるだろうと分かるものだ。
あの義父が愉快そうに第三課題について語った様子も、納得出来る。
『いいよ、ボクのなかからでもキミがみえるなら、ひつようになるまではしまっておいてあげる』
『ひぃっ』
可愛らしいボーイソプラノな念話の声音に綺麗な微笑みを浮かべているのが何となく理解出来たものの、青ひよこはあざとい語尾ではなく喉がひきつれたような短い悲鳴を知らず溢してしまっていた。
お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و
幼気な少年を装う仔猫ちゃん。
でも龍種なんです。
そして登場する妖精や精霊さん、ほぼキワモノばかり_(:3 」∠)_
解せぬ。




