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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
112/150

112、男子、三日会わざれば

まだ「男子」にはなってないので、気持ちはって事です(笑)

 

 グランジエールが上階に向けて方向を示唆したのを確認したルーナエレンは、心得たとばかりにほんわりと笑みを浮かべてホール奥の円形の塔部分側面にある、螺旋状の大階段に向かって歩き出す。


 心地良い暖かさと重みを腕の中に感じながら、盤やタオルを片付けに下がっていたコニーがその手に軽食を持って背後から付いて来るのが見えて、昨日初めてグランジエールの『収納』にお届け物をしてから気になっていた事を、二階へと階段を昇りながら尋ねた。


「きのうね、レオナがおくってくれるって、おかしおねがいしたの。たべた?」


 アレンハワードもレオナルドもカーターもメイヴィスも、みんなみんなルーナエレンが作った料理やお菓子などを手放しに褒めたり喜んでくれる。

 自分で食べてもかなり上手に出来ていると自負はしているが、何せ周りがいつもベタ褒めなので外の食べ物や食事情に触れ始めたグランジエールの嗜好について、変化があっても何ら不思議ではない。


 若しくは、外での食事が思った以上に口にあっておらず、侘しい食生活になっていたらどうしよう、だとか。


 だが、こうして帰宅したグランジエールの体温や艶やかな毛並みに直接触れ、空間魔法(おうち)の外の世界でも問題なく過ごしている事が理解出来た。


 丸二週間、様々な場所へ赴いているらしいが、痩せたというより柔らかかった身体がほんの僅かばかり引き締まったかも知れないと感じる程度である。


 大人しく抱っこされたグランジエールはご機嫌な様子で喉をグルグルと鳴らし、再び柔らかい互いの頬を擦り寄せて言外に「食べたし美味しかった、嬉しかった」という感情を懸命に伝えているらしい。


 嬉しく好ましい類の素直な気持ちが伝わって、頬に感じるふわふわの柔らかな触れ合いが心地良くて、ルーナエレンはくすくすと小さく笑った。


 後ろに付き従っているコニーが運んでいる軽食の中には時間的にお菓子はない筈だが、きっと明日の出立まではゆっくり出来るだろう。

 グランジエールが気に入ったものを幾つか持たせてあげられるように、レオナルドやアレンハワードに相談してみるのも良いかも知れない。


 二階の共有スペースの暖炉の前、毛足の長いラグとクッションが沢山置かれた少し前までの定位置まで歩を進めると、そっとグランジエールを下す。


 グランジエールが旅立ってから送ってきたお土産だとか工芸品を飾る為、レオナルドによって以前より少し模様替えはしてあったものの、暖か空間とクッション群はそのままにしてあった。


 暖炉の前クッション群にルーナエレンがゆっくりと座ってとてとてとグランジエールが膝の上に乗り、コニーは二人のすぐ横のローテーブルにホットミルクを二人分と軽食、そして南部地域の植生についての図鑑を数冊そっと置いてやや離れた場所に控える。


 実の所今朝の帰宅に際して、レオナルドは喚び出されて即転移という素早い行動をとっていたので、外界の冷気に晒されたという事も特になく身体も全く冷えてはいなかったグランジエールだったのだが。


 最近の意識的な筋力強化の強化の成果の一つ、仔猫の姿ながら小さ目であればカップを持ち、飲み物を口にする事に成功をしていたので、この場で是非ともルーナエレンに褒めて貰いたい気持ちがコニーに伝わったようだ。


 ある意味謎のプライドではあるが、本来龍種で人型も取れる存在でもあるのだから、仔猫姿とはいえ好意を寄せる女の子の目の前で、皿に顔を突っ込んでの飲食に引っ掛かりを持っていたし、違和感を感じていない彼女がすっかりと自分をペット枠と定めてしまっては、この先少々やり難くなるのではないか、また義父が近いうちに要らない悪戯を仕掛けてこないとも言えない為、それはそれは頑張ったのだ。


 ただ、椅子に座っているわけではない為、意図的にルーナエレンの膝に上がって背中を向けて凭れ掛かり、彼女の小さめのカップより皿に小さなカップを『隔離』を使って手元に寄せ、そっと持ってこくこくと温めのミルクを飲み干し、伺う様に背後を見上げた。


 そして見上げた先の澄んで煌めく紫水晶の大きな瞳は、更に大きく見開かれきらきらと輝きながらそれらの挙動を見守っていたらしい。

 心なしか、普段よりもまろい柔らかそうな頬の色が、色濃く染まっているように見える。


「えっ!すごい!」


 レオナルドで姿と行動は等しくない生き物?に慣れていると思っていたルーナエレンだが、グランジエールに対しては何処か自らが色々と介抱したりお世話を焼いたりしてきた経緯もあって、同枠だという意識が働いていなかった。

 勿論、種族の違いも大きい。


 ルーナエレンもアレンハワードも幾ら精霊や妖精や聖獣と縁が深く始祖が近かろうと、肉体的には純粋に人族であり、亜人とされる種族の様に幾つかの姿がある訳ではない。


 ネヴァンの王家や限られた高位貴族は言ってみれば、魂や精神の部分にて精霊や妖精、聖獣との縁を結ぶ術に長けていた為、未だに高い魔力保有量を誇っていられるのであって、血縁として本当に彼ら上位種と繋がっているという訳ではないのだ。


 その中で魂の記憶を脈々と継いでいるが故にサリヴァンが特殊であって、現在のネヴァンの王家の傍流についてはやや縁が薄れている様子があったのだが、それはアレンハワードが語る内容ではないので幼い愛娘は祖国の状況は知らないだろう。


 どちらにしても今回が初めての旅であり、家族以外の存在と接する事も初めての彼女には、ひたすらにびっくりと称賛と短期間の努力を感じて、手放しでグランジエールを称賛せずにはいられなかった。


 自分を見上げてくりんとした花緑青の瞳を向けてくるグランジエールから目が離せない。


「え、コニーもみて!すごいよね!わぁぁ」


 無意識にふわふわサラサラなお腹の毛をわしゃわしゃとしているうちに、コニーがグランジエールの可愛い前脚からカップを受け取ってテーブルに戻す。


「あ、じゃあサンドウィッチならもう、じぶんでたべちゃえる?」

「なぅ」

「ふわぁ、ほんと?すごい!」


 少しだけ擽ったそうな顔をした気がするが、それよりも髭のそよぎ方が如何にも自慢気で返事の鳴き声も自信満々で、自然と声を震わせて笑ってしまう。


「ふふっあはは!すごーい!かっこいいね!!」

「なうん!」


 記録魔導具上映会までは、グランジエールが送ってくれたお土産の植生たちをのんびりと図鑑で一緒に見ようと思っていたルーナエレンだったが、帰宅後に垣間見たグランジエールの逞しい成長の変化にすっかり意識を持って行かれてしまった。


 後ろから抱きしめた仔猫の身体を優しく持ち上げて、頬をくっつけて擦り擦りと柔らかさを堪能しながら笑いが治るまで暫くそのままでいたが、笑い声を聞きつけたのかレオナルドとアレンハワードが二階へと顔を出した。


「やあ、随分楽しそうな声が聞こえたね」

「パパにも教えろー!」


 普段から穏やかなアレンハワードの更なる柔らかな微笑みは心底愛娘の笑い声と嬉しそうな姿に上機嫌になっているのが手に取るように分かったものの、並んで現れたレオナルドに関しては明らかに混ぜろ!という意図が隠す気もないのか、その表情にも声音にも前面に出ている。


 両方の父の出現に二人は思わず視線を合わせ、ややあってふふっと息を溢すように笑い合う。


「あ!何それ!仲良さそうなの!」

「本当だね。ああ、軽食を摂ったら上映会にしようって伝えに来たんだ」

「ふふっ!みんなでここでたべるの?」

「良いのかい?」

「やった!こにたーん!オレらのも持ってきて〜!カーターさんのもだからな!」


 暖炉の暖かさだけではない、ほっこりした空間がそこにはあって。

 グランジエールは、泣きたくなる程暖かい小さな腕の中で、温かな眼差しの中で、もっと研鑽を積んで早く「家族」みんなと会話が出来る様になろうと決意を新たにした。





お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


ラストのほっこり空間、勿論「緑の女王」様は何処かで埋まってるので出てこれない&このシーン見逃しでございます!

レオナルドによる模様替え。。。。。

お約束!!

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