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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
109/150

109、修行中の二人

 


 『収納』に関して容量と鮮度に若干の不安があるものの、レオナルドが適時取り出してくれるという嬉しい?ご褒美を貰ったので、入らなかったらその時に考えるという思考の元、青ひよことグランジエールは土地の固有植物や素材等の採取と採集に励み、ギデオン達に適度な時間的余裕を与えようとなった。


 あの手紙の粉雪付与を受けてから、心無しか腕輪と身体が重く感じるのは気のせいではないだろう。


 自ら修行と考え義父(レオナルド)にも賛同を得ているのだから、今まで無意識にて身体能力を魔力で補助していた部分を阻害する、何かしらの手を打たれた可能性があった。


 この変化があって、漠然と己の成長を目指すとしか考えていなかったのだと気付かされたグランジエールは、自分の「何」が未熟なのかを改めて考えてみる。

 自重は不必要だという事実ばかりに思考が偏っていたのかも知れない。


 勿論「武力」は基本的に問題ない。

 自身の質量はまだ雛と称される為、レオナルドやアレンハワードにこそ敵わないものの、一度出会った気性の荒いロックバードの嘴を抑え込んで地に捩じ伏せるくらいは出来た。体格差が一軒家VS納屋相当という、少々洒落にならない格差があったりしたが。


 だが恐らくは、その時も無意識下で身体能力を膨大な魔力で補った上で、その結果を成し得たのだろう。


 それらを考慮し、レオナルドが素体の筋力強化と今の肉体に合った身体の動かし方を含めた技術を意識させようとしたと予想出来た。


 意外と過保護な義父に、グランジエールはクスリと笑みを漏らす。


『どうされました?若さま』

『ううん、ボクいがいとちちうえにあいされてるなぁっておもって』

『さ、左様にございますピヨ‥‥?』


 答え難い言い方だったかとグランジエールは、狭い額に脂汗を滲ませしんなりした青ひよこに頷いて見せる。


『ほら、かだいのごうかくも、きじゅんをゆるくしてもらえたし。どうやらうでわに、まりょくせいぎょときんりょくきょうかのサポート、ふよしていただいたみたいだし』

『ええ?!いつの間にそんな‥‥』


 追加の付与に本気で気付いていなかったのか、青ひよこの語尾のピヨが無くなっている。

 その反応はある意味、グランジエールが弱体に気付かれず動けていたという事を指している。


『ボク、どうやらじゅんたくなまりょくでなんでもゴリおしできちゃってたみたい。でもちちうえがそのむいしきのまりょくのつかいかたを、コレをつかってそししてくれてるんだ』


 だから、地道な筋力トレーニングと魔力の意識的な操作をまずは身に付けないといけないね、などと気楽に語る。


 にこやかに語られる解説をごくりと唾を飲み込んで聞いていた青ひよこは、グランジエールの前脚に嵌った華奢な銀色の腕輪を恐々と視線を向けた。

 言われてみれば、何となく以前は見えなかった滲み出るような魔力が、腕輪から漏れている気がする。


『浄化』に『収納』に『魔力抑制』もしくは装備者に対する『魔力封じ』の効果を持つ腕輪となったと知らされ、青ひよこは頭の中に彼の超常の存在を思い浮かべようとして、即座に頭がちぎれるのではと思う程に首を横にブルブルと振る。


 想像しては駄目だという直感が背筋をゾワゾワと這い上がってその身を震え上がらせた訳だが、そんな考えが丸見えだったらしいグランジエールは再びクスリと笑った。


 その花緑青の大きくて丸い瞳は笑みに細められていたが、そこには嘲笑ではなく素直な感情が浮かんでいる。


 グランジエールは孵化前だったので知らないが、青ひよこは冗談半分で齧られ喰われかけた恐怖が染み付いているので、レオナルドに対する力量の差が嫌という程骨身に染みているのだ。


『だいじょうぶだよ。ちちうえはボクとりがいのいっちのうえで、おやこのきずなをむすんでるから。ちょっと‥‥きかくがいないたずらも、おすきなようだけどね』

『ピヨぉぉぉ‥‥‥』


 確かにグランジエールと一緒に動くようになってから、レオナルドからの圧が以前より微かに軟化しているのは事実だろう。


 青ひよこは、改めて若さまに忠誠を誓おうと心に刻む。

 だから、是非とも彼の御方からも庇護して下さいお願いします、と。







 * * * * *







 ドワーフ達と関わる前にグランジエールが巡ったモルガン領を含む北西や帝都は割愛するとして、今現在居るマルティエの南端から斜め東へ北上しながら東の端あたりを経由し、北の山脈中央部分の遺跡に戻るルートを取る事にした二人は、ウィカーエバニの集落で許可を得ていた貴重な木材の採取を終えて『収納』し、移動を開始する。


 地脈を利用した移動は魔力を制限されている現在、力任せにせずなるべく細くゆっくりと絞るようにして魔力を紡ぎ、青ひよこの案内した素材やレア植物情報の在った場所のなるべく近くへ到達目標を定め、慎重に術を構築する努力をし、筋トレとして身体強化も魔術も使わず穴掘りしたり甘噛みしたり尻尾を振ったり頑張った。


 勿論レオナルドに貰ったアドバイスも活かして余剰な魔力がある時は、腕輪の『収納』の魔術を刻んだ辺りに薄布を巻くようなイメージで、柔らかく己の魔力を浸透させる。


 これは膨大な魔力量を誇るグランジエールには、眉間の皺が癖になってしまう程苦手な作業だった。


 幼子なのでそのうち感情を爆発させてしまうかもと懸念していた青ひよこだったが、意外にも不機嫌であろうと口をへの字に引結ぼうとも、グランジエールは魔力操作を頑張っている。


 南部での植生で穀物に近い背の高い植物と、甘い樹液目的の植物と、種を付ける際繊維を豊富に含む低木を手に入れて、珍しい鎧鼠を捕獲して送った後は徐々に北東に位置する砂漠地帯を超えた頃。


 そろそろグランジエールのストレスが振り切れるのでは、と青ひよこが不安になって来た日の『収納』に手を突っ込んでから。急にグランジエールの機嫌が上方修正どころか上限突破していた。


『若さま、どうなさったのですピヨ?嬉しそうですピヨ〜』

『きょうね、さしいれがはいっていたんだ!』

『おぉ?!それは若さまの大好きな、姫さまからの差し入れなのですピヨ?』

『たぶん!うすくいやしのまりょくがまざってキラキラしてみえるんだ』

『なんと!』


 普段から口調も態度も少し子供らしからぬ部分が多いグランジエールだが、今は限りなく年相応とも言えるような愛らしい笑顔に喜色を浮かべている。


 青ひよこは少し微笑ましい気持ちもあって、つい要らないツッコミを入れてしまった。


『うふふ〜若さまもそんなお顔するんですピヨね!是非一緒にお茶にして、ご相伴に預かりたいものですピヨ〜!!』

『ダメ』


 明るい声音は変化していないのに即答された拒絶の言葉に、思わず青ひよこの小さな喉がひゅっと鳴る。

 大分道連れとして馴染んで来たと自負していたものの、嘗て無い拒絶と不快が無言の圧としてひしひしと伝わってくる。


 冗談として受け流しを図るべきか、下手な言葉を連ねて更なる不興を買うか。

 自分では気付けなかったがこの時の青ひよこは必死で状況の回避に思考を巡らせ、視線も果てしなく泳ぎまくっていた。


 もういっそグランジエールのお口に一思いに飛び込んだら、等と考えに行き着きそうになった頃。


 一切動かなかった仔猫の顔が、僅かにホニャリと緩む。


『もう、しようがないなぁ。これでもとくべつだよ?カーターさんおてせいのショートブレッド』


 ついっと嘴の隙間に捩じ込まれた、明らかに青ひよこのお口のサイズより大きなスティック状の焼き菓子に、青ひよこの口内の水分という水分は、からっからに奪い尽くされる。


 恐怖のドン底から不意打ちの強制水分奪取というあっという間の流れに、意識が遠退くのを必死に留める。


 きっと二度目は無いのだと己に言い聞かせながら、青ひよこは何とか五体投地の体勢で意識を失ったのだった。









お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


久々に投稿予約で行けました!

ドキドキ


ひよこちゃんと若さまの力関係とかちょっとした地雷とか。

でもなかなかの凸凹コンビに出来たらいいなと思ってます。


マルティエの精霊や妖精の(サリヴァン家からの)序列

メイヴィス>青ひよこ>>>>メルヴィン

て感じかもです_(:3 」∠)_

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