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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
102/150

102、外部の異変

 


 義父(レオナルド)から外へ青ひよこを迎えに行ってやれと言われてから、凡そ先程まで居た拠点の上と思しきエリアに出た。


『龍の背骨』を山脈と捉えると、ここは所謂七合目から八合目辺りと言えるだろう。


 まだ実際の外界に触れ始めたグランジエールの知識は、あの広い図書室のものが大半なので、視界に広がる樹木の割合が常識の範囲内なのか特殊なのかは余りよく分からない。


 ただ、ここにやって来るまでは緑と枯れた色合いが樹木の種類によって違う事や、魔素豊かで恵多いマルティエであっても冬の比較的緑深い山肌という印象だったのが、明らかに違う色彩がポツリポツリと現れ始めていると気付いた。


 そして、その周辺は木々が立ち枯れかけている。その幹に蔓が絡み這い、薄紫や白の花がまるで彩りの少ない木々を飾るかの様に幾つも、やや控え目に咲いていた。


 その光景は神秘的であり、また季節感から浮いていて異常とも感じなくもない。

 意識を大地や木々に向けてみても、異変を訴えるような声もない。


 だが、無性に静けさが胸に迫った。

 他の地域ならばそこに住まう動物や鳥の声が聞こえなくても冬だと思えばそう不思議はないと思うところだが、マルティエの『龍の背骨』なのだ。気温も魔素も、恵まれている。


 脚を止めてそんな思考を巡らせていたグランジエールの元に、ポテポテと青ひよこがなかなか良い速度で走り寄ってくる。


『若さま〜〜〜〜!!っピヨぉ!?』


 反射的に、グランジエールが突進してくる青ひよこをパックリと咥えてしまったのは不可抗力、かも知れない。

 ちょっぴり齧ってしまったが、あまりにもブルブルと震えるので直様ペッと地面に転がしてやる。


『ひ、非常食に、しないで下さいですピヨぉ!ちょこっと残ってる殻が欠けちゃったのですピヨぉ!』

『ごめん、うごいてるからなんとなくかじっちゃった』

『ピヨ!?若さまの言葉、分かるのですピヨ!』

『あ‥‥‥』


 名付けをすれば会話は出来るようになるとレオナルドもグランジエールも想定していたが、齧った際若干甘噛みでも精神体(スピリチュアルボディ)に接触して、レオナルド経由の干渉もあってかパスが繋がってしまったらしい。


 事故といえば事故だが、まぁ時間の問題だろう。

 まだまだ修行という名の一人旅の途中なので、通訳も出来る存在の知られた侍従が出来た。幾ら義息に甘くても、頻繁にレオナルドを呼び出し長時間拘束するのも少々情けなさを感じていたのも事実。


 もう少し報告時に帰宅した際は、胸を張っていたいと思っているのだ。


『それで、そとのちょうさはどう?』

『それなのですピヨ!この先に小さい集落があったのですピヨ』

『じゅうにんは?』


 基本的にマルティエは亜人が集落単位で住んでいたので珍しい事ではないとは思うのだが、帝都でロートリンデンの氏族に話を聞いた感じでは、この周辺に集落の登録は残っていなかった筈だ。


『集落自体は割と最近まで住んでいた様な状態なのですピヨ。でも、見て廻ったものの住人の確認は出来なかったのですピヨ‥‥』

『それは、ほうきされたしゅうらくってコト?』

『その可能性が高いのですピヨ。ただ、植物の結界が微弱ながら残っている様子で、内部の状態が保存されている為いつ頃からその集落が放棄されているのか、判断が難しいのですピヨ‥‥』


 植物の結界といえば土属性の上位属性である森属性なので、その集落に関係していたのはほぼ間違いなくマルティエに属する住人と考えられる。

 その上で放棄した集落をどの程度の時間放置しているのか分からないが、未だ結界魔術を継続させているとなるとそれなりに魔術が得意な種族だった可能性がある。


 そこまで考えて、グランジエールはふと嫌な予感が胸に湧いてしまった。確認したくないがレオナルドに聞くのも少々怖い気がして、目の前にいる青ひよこについ、疑問をぶつけてしまった。


『このへんにさいてるこのつるのはなって、ふじっていうんだよね?』

『おお、若さまお詳しいですピヨね!その通りですピヨ』

『もりのぞくせいのけっかいを、ちょうじかんいじできるくらいのしゅぞくに、こころあたりは?』

『うーん、現在の獣人種は植物由来の妖精や精霊と契約している氏族はごく少数に限られてますピヨ。ですので独自で可能なのは、やはりエルフ‥‥な気がするのですピヨ』

『むぅ‥‥ちちうえにそうだんがひつよう‥‥』


 大好きなルーナエレンの父親が確か、エルフにかなりのトラウマがあるという話を聞いた気がしたグランジエールは、深入りはせず一度持ち帰るべき話だと判断を下す。


『しゅうらくは、ほかにも?』

『ここを中心に二、三程ですピヨ。でも、どれも同じく保存した上で放棄という状況ですピヨ』

『わかった。ばしょとかずをきちんとはあくして、ちちうえたちのところにもどろう』

『かしこまりましたピヨ!』







 * * * * *






 グランジエールを別行動にさせたレオナルドは、再度ギデオンからの聞き取り調査と回復中のドワーフ達の様子見をしていた。


 森の女王(メイヴィス)の本来の権能を使えば恐らくもっと早い回復が見込めるだろう事は明らかだが、ここで将来ルーナエレンの側付きにする予定の彼女の力を見せてしまうのは時期尚早だと思われる。


 ただ元々繊維や花や葉などが有用である菩提樹が本体であり、更には今や植物全般を束ねる力を手にしている存在である為、薬学関係に限って言えば、アレンハワードよりも能力が特化している可能性が高い。

 現在も嬉々として効能の組み合わせを手元で試している様子だ。


 先程までの考察で魔虫と火の魔素も関係した異常事態だった様なので、通気孔とそれに繋がる場所および、身体の不調が表れ始めた時期や場所の特定を早々に始める事とする。


「回復したとはいえ、念のためだ。この布巾で口を覆うように巻いとけ。布の外側の空気を遮るが風の魔術が呼吸を助けるから、変なもん吸い込まないで済む」

「おお?風の魔術付与の布巾とは!まさか魔導王国(ネヴァン)産という事か?ただの布への付与なのか?それとも素材自体が特殊なのか?」

「詮索は感心せんな」

「っ!‥‥‥つい癖が出た。申し訳ない‥‥」


 威圧という程でもないが、レオナルドは少しだけ低い声音で短く咎めるとギデオンは息を呑み、明らかに落胆を滲ませながらも謝罪を口にする。

 このやりとりからでも良く分かる。ギデオンというドワーフは、恐らくアレンハワードやカーターとも上手く付き合えるタイプの職人であり研究家肌の知識人だ。


 人材として確保するにはルーナエレンが怯えないという不可欠な条件もあるが、見た目はともかく良識も思慮も問題なさそうである。


 グランジエールには本来の自分の有利な土地であるこの周辺で、ある程度の箱庭内での()()()()をさせ、扱える属性の増強や経験による成長をさせて『念話』をサリヴァン親娘とも交わせる程度にはして置きたい。


 万が一にも愛娘に拒まれた場合は、グランジエールの外界でのサポートとして動かすでも良い。


 とは言え確実にアレンハワードとは馬が合うと感じるので、その万が一があったとしても慣れてしまえばすぐに馴染むだろう。


 ほんの少し気落ちしたまま渡された付近で口を覆い、準備をしているギデオンの様子を眺めた。


「さて、じゃあ念の為傷が残っている箇所が無いかチェックするぞ?外的要因がお前らの体調不良の理由だった場合、口や鼻を風で守っていても入り込んじまう」


 意外にも思える配慮のある発言の後、レオナルドがギデオンの額に向かって徐に右手を翳し、すぐに頷く。


「良し、問題無いな。体調不良になった者が共通して利用していた施設や、立ち入った場所に心当たりがあれば案内を頼む」

「そうだな‥‥あっちの、広場の向こうの三番高炉と飯炊小屋。井戸と蒸し風呂、燃料置き場‥‥そんなモノだったか」


 自らも体調不良に陥ったと話していたギデオンだったが、この集落の長らしく該当箇所を挙げてゆく。


「ふむ、屋根のある施設になっている場所を優先してくれ。後、それらの場所に共通する点はあるか?」

「蒸し風呂と炉だ。他は屋根があるだけだったり、簡単な囲いになってる程度だ。何しろ屋外といえど洞内だ。扉もあって他の場所と拠点は区切られておる」


 義息子に召喚()ばれて転移してきたレオナルドは、そういえばその扉を見ていなかったのだが、ギデオンの説明を聞きこの場所が既に一つの施設内なのだと納得する。

 案内されるがまま、二人は幾つもの高温の炉がある大きめの建屋へ歩を進めるが、何処からか微妙な振動と音が近付いて来る気がして、レオナルドは咄嗟に前を歩いていたギデオンの首根っこをガシッと捕まえた。





お読み頂き、ありがとうございます٩( 'ω' )و


3月15日のメンテから、投稿するのに色々と仕様が様変わりしていて厳しいです_:(´ཀ`」 ∠):

書き始めるステップが増えるのは、ちゅらいよぅ(/ _ ; )

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