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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
二章
100/150

100、飛べないひよこ

 


 問題の魔虫発生の地域の特定は必要だろうが、火災の被害に遭ったドワーフの集落はまだギリギリでマルティエ(こっち)側だと思う事にした一行。


 今は先に治療を優先して事情聴取と火災現場の現場検証、そしてなるべく早いうちに魔虫の地域の特定調査と現状の確認について話し合う。


 まずは治療についてだが、すでに空間魔法(おうち)から無理矢理引っ張り出されたメイヴィスが、臨時で現場投入されている。本人のヤル気がやや低い気がするが、レオナルドが『やれ』と言い、その現場にグランジエールまで居る。


 これはもうきちんと、任務というか求められている状態まで意地でも患者を回復させると考えられる。


 後は現場検証をして原因を究明し、原因の辿ったルートや他に悪影響が出ていないかを調べなくてはならない。


「青ひよこ。お前は永い年月この土地に染みていった天地の恵と、古の龍の骸の魔力とが蓄積し混ざり合って産まれた、鉱石と水の性質をもつ者だ。本体の大半が今も変わらず『寝所』の恩恵を受けた龍脈に浸っているのだろう?受けた恩は返す。それが道理だよなぁ?」


 自分の来歴を明かされた上、グランジエールの存在に恩があろうと示唆される。

 それを鷹揚に伝える目の前の超常の存在の黒い獣の姿と良く似た、仔猫っぽくも白練色の毛艶の良い獣。


 骨髄反射と言える反応で青ひよこは、ビシィッと小さな翼で敬礼をする。


『もちろんでございますピヨ!迅速に調査を開始するのですピヨ!!』

「ああ、しっかりと励め。後は‥‥グランジエール、青ひよこ(こいつ)の管理はどうする?舎弟にするか?」


 舎弟にするかと聞かれて小首を傾げたグランジエールだが、自分の使用出来る属性を伸ばす意味なのか使役する為の存在の事なのか、判別が付かず返答に困っている様子だった。


『‥‥たべていいってことですか?』

『ピィっ!!!!!!!』

「‥‥腹を下す気がするが、食べたいのか?」

『いえ、とくには』


 ニヤニヤと嗤う義父に澄ました様に顎をあげてさらりと否定する辺り、青ひよこの反応が存外楽しかったのだろう。


「まぁ、もし庇護する予定が出来たなら、名付けてやれ。多少の面倒を押し付けるくらいには役立つだろう」

『わかりました』

「おいひよこ。分かっているだろうが、お前の直接の上司の()()はオレの義息子だ」

『ぴいぃぃぃぃっ!誠心誠意、お仕えするのですピヨおぉ!!』


 びしょびしょに泣き濡れる青いひよこを前に、更なる脅しという名の釘を嬉々として刺すレオナルドと、その傍らにちょこんとお座りするグランジエール。


 その様子をやや離れた背後から静かに治療に徹しつつ視界に納めたメイヴィスは、どうか御子が健やかに真っ直ぐに育ちますようにと、真剣に、それはそれは真剣に祈っていた。







 * * * * *






 ドワーフ達の治療にはどうしても時間が必要となる。

 故に、先に青ひよこはさらっと現場検証と、原因が入り込んだと思われるルートの確認任務に出る事になった。


 生来の姿は青水晶の大精霊である為、物理的な移動手段は大して問題は無いのだが、気分的な問題として目の前をテチテチと小さく短い足で走る青いひよこを見てグランジエールはレオナルドを見上げる。


『ちちうえ、ひよこって‥‥とべませんよね?』

「そうだな?」

『こう‥‥‥なんとなくですが、もうすこしとべるすがたにしませんか?』


 どんな経緯でひよこに固定したのか知らないが、今のひよこ姿にしたのが何となくレオナルドだと感じた義息子(グランジエール)は、暗にレオナルドならばひよこを更に変化させられるのではと聞いてくる。

 勿論、可能か不可能かで語れば問題なく可能なのだが、封印した姿であろうとあまり干渉をするのは良くないのだ。


 やるのであれば、もう実質グランジエールが支配するべき存在になってしまう。

 レオナルドはそれを承知でやるのか?と青い瞳で義息子の花緑青の瞳を見やる。


「出来るが、良いのか?こいつはまだまだひよっこだから、大きさも大したものにはなれないぞ?」

『そうですね、でもせめてとべるすがたがいいとおもうのです』

「そんなに飛ばせたいのか。この姿で壁走りとか、面白いのに」

『‥‥‥‥‥』


 一瞬想像したらしいグランジエールを目敏く見つめつつ、レオナルドは更に追い打ちをかける。


「まぁ、変形させられても大きさはほぼ同じ。ルリビタキまでだろう、お前が名付ければ恐らくそれになる」

『わかりました』


 応えつつ伝えられた鳥の種類や姿を、あの膨大な書架で得た知識と擦り合わせていく。確かに丸いフォルムで白い腹と青い羽根、そして腹横辺りの黄色の羽毛がポイントの小鳥だった筈。


 だが、今はレオナルドの言った壁走りを期待して視線をやると、びくりと小さなひよこが身体を震わせ、ダッシュで洞内を走り去って行った。


 グランジエールにも悪ノリしている自覚はあるが、横に居るレオナルドが同じような表情をして走り去ったひよこを見ていたので気にしない事にした。


 暫くの間、文字通り隅から隅までを小さな身体で走り回っているひよこの姿を眺めていると、やや離れた拓けた場所で負傷したドワーフ達を治療していたメイヴィスから声が掛かる。


『レオナルド様、御子様』

「ん?どんな感じだ?」

『代表の方が、お話しされたいそうなのですが』

「ふむ、聞こうか。グランジエールも、来い」

『はい、ちちうえ』


 二人に声を掛けるためにこちらに来ていたメイヴィスに先導され、ドワーフ達が寝かされた場所へ近付く。その一番手前、上体を起こした濃い赤茶色の髪を複雑に編み込んだ、如何にもといった風貌のドワーフが居た。


 そして近付いた三人を赤銅色の眼で見ると、落ち着いた所作で首を垂れる。

 明らかに遜った態度から、どうやらある程度博識で思慮深い、立場のある者だと見て取れた。


 どちらかと言えば粗暴で偏屈なイメージの強いドワーフでありながら、不用意に言葉を掛けず頭を下げた上で、こちらの出方を待っている姿にレオナルドは機嫌が良さそうだ。


「命拾いしたな。とはいえこの惨状、良かったなとは言えないが‥‥」

『直答を許可いたしますか?』

「良いだろう。事情も知りたい」

『では。名乗って良いですよ』


 一連の遣り取りの後の許可を待って、ようやくドワーフは静かに話し始めた。


「儂はギデオン。此度は儂等ドワーフを救って下さった上に治療まで施して下さった事、感謝申し上げる」

「構わない。オレの義息子がここの惨状に気付いてな。その縁だ」


 ギデオンと名乗ったドワーフは、目の前に佇む威風堂々とした黒髪の美丈夫の尊大な言葉遣いと彼から醸し出される上位者の風格に、疎かな対応をしては危険だと感じ取った。

 同時に義息子と彼が言った対象が、小さいながらも存在感のある白練色の大型猫の子供であると理解し、素早く思考を巡らせる。


 花緑青の大きな瞳はとても理知的で、大人しくきちんと座ってこちらを見ている姿はただの獣であろう筈も無いのはお察しだ。


 そして過去からここ最近まででこの付近も含め、猫型の聖獣がドワーフ達の国オクリウェートで見られた事も記録も無い筈だと記憶を漁る。


 本来は『龍の寝所』に連なる『龍の背骨』などの険しい山脈は、自治権が少し曖昧な部分がある。

 国境は山脈を超えた部分という判断であり、山脈自体はどちらにしても地上を超えるのは物理的に不可能に近い。


 過去ドワーフが山脈の内部に坑道を張り巡らせ、遺跡なども多く作ったものの近年は余り住む者は居なかったのだが、ギデオン達は交易で入るマルティエからの素材の流通が細過ぎて、自ら素材を調達して早い作業の開始を目論んで山脈内の遺跡を辿り、この場所に勝手に居着いていたのだ。


 目の前の彼等がマルティエの上層部に限りなく近い存在の可能性が高いと考え、どう申し開きをすべきかと必死で考えを巡らせつつも、何処か諦念を持ってしまっても仕方のない事かも知れない。


 そうして覚悟を決めたギデオンは、下手に取り繕う事を諦めて前を向いた。




お読み頂き、有難うございます٩( 'ω' )و


今更ながら、外部へ武者修行に出た雛ちゃんですが喋れません!

レオナルドを度々呼び出してたら修行にならないので、舎弟を用意しなくてはならなくなりました_(:3 」∠)_


不憫枠なひよこさん。。。。

でもきっとパパに甘噛みされるよりマシな筈?


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