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呪われ魔導師と秘密の至宝  作者: 七縁ささみ
一章
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1,プロローグ

初投稿になります。

色々と拙い部分が多いかと思いますが、生暖かく見守って頂けると、幸いです。


短めですが、どうぞ。

 少女が物心ついた頃には、既に父と小さな黒猫との旅空の元にあった。

 産まれた国も母についても何も知らないし、その存在すら思いつきもしない程(いとけな)い。

 優れた力ある魔導師の父は、そんな愛娘を連れて諸国各地を巡りながらその地の有力者に助力をし、対価を得て生計を立ててきた。

 まだまだ幼い一人娘が居ようとも、決して一処に留まり続けない。側から見ればどんなにか歪な暮らしであろうとも、彼はその不安定な旅暮らしを辞めない。


 そんな日々の中、父が扱う高度な魔導技術や術式を当たり前に見て育った少女は、父程強力な魔術こそ行使出来ないが、顕現する事も世に稀な、高位の魔獣や精霊や霊獣などを惹きつけ、仲良くなる事が出来た。

 まだ少女の世界は本当に狭かった為、自身がどれだけ特異な体質なのか自覚はない。

 勿論、父親が敢えてそれを特異と教える事もなかったし、他人に知られないよう守護(まも)っていた故であったが。


 何処に行くにも二人一緒の旅暮らしは、互いにとってこれ以上なく幸せで。

 同時にそれはとても閉ざされた世界に変わりなくて。

 幼い愛娘が四つになる頃、二人だけの旅暮らしは終わりを告げる。




 * * * * *



 かつて末席の神や精霊を始祖に持つ国々が栄えた世界。

 そこにある国々はかつての主が去って悠久の時を経、純粋な魔法の力を薄くさせて来た。


 世界を満たす純然たる魔法の力は失われていったが、先祖返りや始祖の種族、地域にもより魔力を扱うに適した存在がまだ存在しており、技術や魔法の解析に関する学問の向上により、太古の魔力を持つ上位種族と契約や助力を得て、魔術を紡ぐようになった。


 現在、魔術を発動させる為の術式を組み立てたり、支援や攻撃の魔術が扱える存在は、世界の多種多様な人種のうちでも二割にも満たない。

 その中で魔術に長けた者は魔術師と呼ばれ、始祖に由来する属性以外にも、稀に後天的に習得した属性魔法を合わせて三属性以上を自由に扱える者を、尊敬と畏怖を込めて魔導師と呼んだ。


 近年では久方ぶりに北西の鷹の翼を持つ精霊王を始祖に持つネヴァン王国が、年若い魔導師を輩出していたが、彼が消息を絶ってから五度季節が巡り、次第に人々の記憶から彼の存在は遠退いていった。



 折しも同じ頃、ネヴァン王国より南東にある、大河を抱えた水の国フェイトリネアを超えたさらに東の大国。魔素の濃い森を擁したマルティエ帝国内の辺境の領内での事。


 アレンハワードは折悪く、森にてブラックハウンドの群れに追われる警邏隊(けいらたい)らしき一団を発見してしまった。

 魔素の多さゆえか、一般的な狼より魔物に近いグレーハウンドより、さらに上位の魔物のブラックハウンドの群れである。

 ハウンド全般にも言えるが、それらは集団で狩りをする特性を持ち、ブラックハウンドは更に爪や牙に毒素も含む危険な魔物である。

 幸いにもアレンハワードも旅の同行者達も、気配や魔素などの感知に敏感であり、陽が傾くより幾分早い時間に決めた野営地からも、まだ少し距離があった。このまま息を潜めていればやり過ごす事は可能であるが、助けないのも何とも目覚めが悪いし、血に呼び寄せられる新たな獣や魔物がいても堪らない。

 何より、腕の中にいる幼い愛娘が、アレンハワードの氷のような薄青の瞳を不安そうに覗き込む。


「分かっているよ、エレン。父様が助けに行くから。君はレオナと戻っていなさい」


 優しく少し低い声音で諭され、留守番を託された小さな黒猫が陽炎の様に揺らめくと少女の姿を取ったが、そのまま愛娘はアレンハワードの首に縋り付くとキュッと紫水晶の目を閉じた。

 離れないという意思表示を感じ取り、そのまま苦笑いして小さく柔らかい娘の身体を片腕で抱き抱えると、アレンハワードは娘に守護の陣を切ってから静かに風を纏って走り出した。


「ちのにおい、する」


 桜色の小さな唇から溢れた、震える声に一つ頷くと愛娘を抱き込む腕を少し強め、示唆された場所へ一気に距離を詰める。


「父様が良いと言うまで目を閉じてなさい」


 返事がわりに縋り付く腕に力を込め、愛娘はその愛らしい顔を男物の旅装の外套の首元に埋めた。


 同時に目標を見つけると、距離のあるうちに標的に今にも躍りかかろうとするブラックハウンド数匹を、無数の氷の槍で串刺しにし、一気に距離を詰めて空いた腕を無造作に振るう。


 襲われていた対象以外、瞬時に氷像に閉じ込めると、アレンハワードは無言で娘の頭を撫でる。

 応えるようにふるふると淡い薄紫かがった青銀の髪をふわふわさせ、ルーナエレンはより一層強く父親に縋り付く。

 その反応に、少し眉間に皺を刻んで。

 アレンハワードは振るった腕の拳を握り込んだ。

 途端、氷像が粉々に砕け散り、襲われていた警邏隊の誰一人として正しく状況を理解出来ないまま、一方的な討伐が終わった。


ゆっくりペースですが、頑張ります。

読んでいただき有難うございます!!!

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