家庭内自転車操業 / 恥知らず / 徒花の唄
〔家庭内自転車操業〕
祖父母は愛の高利貸し
父を相手取り
注いでやった愛情を
利息を付けて払えと脅す
父も愛の高利貸し
私を相手取り
取り上げられた以上の愛情を
貸した分と合わせ寄越せと脅す
私も愛の高利貸し
ただし
元手も商売相手も
残っちゃいやしない
私の代で廃業だ
幸か不幸かは知らんがね
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〔恥知らず〕
命の恥を
私は教わる
魂の恥を
友の君に教わる
何万時間
自棄の淵にあって
私は自分を見つめ
怒りを残し
君は命を見つめ
慈しみを手に取った
私が自ら憐れむ間
君は我欲と美徳を弛まずない交ぜ
孤独を包む毛布を編んだ
そうして
私の魂を温めた
同じ痛みを纏いながら
君はそれらで救いを編んだ
その心根の清らなこと
志の強かなこと
私はただ恥を教わるばかり
ああ
なんて楽しいのだろう
なんて心地良いのだろう
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〔徒花の唄〕
恋にしては歪
愛にしては虚ろ
去った人の影は種
私の内に巡らす根
吸わせたのは涙
そして露の願い
引き抜くにはあまりに
育ちすぎて
もう結ぶ実もなくなったなら
消せない思いを蕾に込めて
徒花開け 大きく開け
あの人の目に止まるよう
徒花開け きれいに開け
消えた明日を悔いるよう