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行間2:カプセル泊

(天空都市群グングニル・中央島南西地区内陸部 カプセルホテル内)


 ふう。どうやら、一息つけたようだ。


 二十四時間営業は、こういうときに便利だな。


 例えば、意地悪な主治医に追い出されて、今夜の宿がないときとか。


 今夜の宿は、縦の長さ2m・半径0.7mほどの酸素カプセルの中だ。


 そこそこいいグレードのカプセルを選んだので、寝心地はまあまあいい。


 カプセル内は暖房で温かいし、付属の寝具もそこそこの肌触りだ。


 起き上がる高さはないが、寝転がって雑誌を読むくらいのスペースはある。


 この部屋(カプセル)には、雑誌も置いてあるので、いくらか読んでみるとしよう。眠くなるまでの暇つぶしに、丁度いいし。


 カプセル内の空間設計上、それほど雑誌はおけないらしく、部屋に備え付けの雑誌は二誌だけだ。


 えーと。一誌目が月間の新聞ダイジェスト。二誌目が、有名な週刊誌だ。


 とりあえず、月刊の方から読もう。無論、スポーツ面だけを。


 ……ふむふむ。どうやら、インペリアルリーグでは、この一カ月で順位の変動が無かったようだな。一位から七位まで、順位の変動はない。


 俺の代わりに七帝入りした、ランク七位の犀粉帝ギラドアは、ランク二位の紫呼帝モハドに、こてんぱんにされていた。こりゃ酷い。開始十分で、紫電の餌食になっている。七帝同士で一時間以内に決着がついたのは、かなり異例のことだそうだ。


 厳しい洗礼を受けたようだな、俺の後釜は。まあ、七帝入りして、いきなり『紫呼帝』は欲張りすぎだ。モハドは三頭政治時代の一角だ。繰り上がりで七帝になったばかりの奴にどうにかなる相手じゃない。


 地に足のついた対戦相手を、選ぶべきだったな。


 インペリアルリーグについて、これ以上めぼしい記事はない。


 どの七帝も、十一月の末くらいから、試合を控えている。きっと七選手とも、年末の祭典であるチャンピオンズゲームに集中したいのだろう。大舞台に向けて、それぞれ水面下で息を顰めているようだ。今は、一時の静かな休戦期間と言ったところだろう。


 その代わりに活発なのが、一つ格下のスーパーリーグだ。チャンピオンズゲームが開催されると、他のリーグは休場になるため、年末最後の攻防が、一足早く繰り広げられている。


 特に、この時期は二桁ランカー同士の試合が注目を浴びる。


 二桁――99位以上のランクを持つグラディエーターには、本格派がそろっている。ワイバーンタイプも多いし、見ごたえのある対戦も多い。中でも、一けたに迫る十番台の選手には、かなりの手錬がそろっている。


 そういう理由から、七帝が祭典に向けて小休止するこの時期、スーパーリーグは一番熱い。


 無論、俺が現在所属するノーマルプロも活発だが、やはりリーグが一段違うと、選手と試合の質が全く違う。


 インペリアルリーガーが円形闘技場に姿を見せないこの時期、観客がこの眼に出来る最高峰は、スーパーリーガーなのだ。


 というわけで、新聞記事でもスーパーリリーガー特集が組まれている。


 再起を誓うベテラン、全盛期を迎えた中堅どころ、伸び盛りの若手。


 色々な選手が特集されている。懐かしいな。確か俺も昔、こういうふうに記事になったんだっけ。


 ふうむ。特集されている選手の顔は、ほとんど知っている顔ばかりだ。俺がプロを引退して、四か月しかたっていないから、面子のめぼしい変化は起きていないのだろうか。だいたい、一度目の現役時代に名前を知っているか、対戦したことのある選手ばかりだ。


 いや待て。一人、知らない顔が取り上げられている。


 そいつの見出しはこうだ。


 『新しき台風の目:グレイ・ミリアムハートJr。今最も、七帝に近い男』


 そいつのふてぶてしい表情の顔写真とともに、紹介記事が載っている。


 『――父である元・名スーパーリーガー、グレイ・ミリアムハートSrの二世であるミリアムハートJrは、今最も勢いある若手の有望株である。あの冥海帝と氷息帝に迫る昇進速度で、アマチュアからプレミアプロまで、Jrは一気に駆け上がってきた。特徴的なのは、なによりその風を自由自在に操る能力で――以下略』


 なるほど。こいつは俺の一つ年下で、ここ四カ月で頭角を現してきた選手らしい。


 ワイバーンタイプのアニマ―ガスで、操るのは風。たぶん、風圧や真空波が武器なんだろう。


 かなりの女ったらしらしく、色々なモデルや女子アナを、とっかえひっかえしているらしい。


 現在のランクは11位。あと少しで、インペリアルリーグ入りだ。このままの成長速度ならば、最年少で七帝入りもあるかもしれない、と記事に書いてある。


 だが、残りの数段が、大変なのだ。これまでの階段とは比べ物にならない試練である。すんなりうまくいくかどうかで、こいつの真価が問われる。


 まあ、その問題は置いておくにしても。


 この若さでこのランクなら、大したものだ。少なくとも、俺と一番近い年代の、『スター選手』だろう。


 それを踏まえて、新聞でも猛プッシュされている。


 そのせいか、少し尊大な発言も目立つようだ。うーん。なんだか、昔の俺を思い出すな。というか、ヒール時代の俺より酷くないか。だいぶ気の強い奴みたいだな。


 プレイスタイルに関していうと、奴はタフな討ちあい型だ。派手な乱打が十八番らしい。


 ちなみに、俺は華麗な一撃離脱型。奴とは正反対の嗜好だ。ここは、相違点だろう。


 だが、共通点もある。


 なんと、主治医があの冥海帝クラウンなのだ。二カ月前ほどから、クラウンはこの若手のコーチ兼主治医をやっているらしい。それ以降、ミリアムハートJrの戦績は更に伸びている。


 もともとあったJrの才能が、クラウンの指導で開花したんだろう。これは、かなり手ごわそうだな。


 しかし、クラウンも、もの好きだな。こんな若手のコーチを引き受けるなんて。俺が頼んだときは断ったのに。


 きっと、このミリアムハートJrが、無理に頼みこんだんだろう。クラウンは優しい面があるから、きっと押しに負けたのだ。


 それにしても、このミリアムなんとかのふてぶてしい顔、好きになれないな。自分が一番強いって確信していて、しかもそれが一度も折られたことが無いのを、鼻にかけてる。


 ゴージャスな金髪もいけすかない。ふん。女受けする顔でも、変身後だと関係ないからな。


 いつか、こいつと対戦して、その鼻っ柱を折ってやりたいものだ。


 出る杭が打たれることを、先輩の俺がよーく教えてやろう。


 記事に乗っている不遜な表情のミリアムハートJrと暫く睨めっこして、新聞の月刊ダイジェストを、もとのラックに戻す。


 さて、次は週刊誌だ。


 なにか、めぼしい記事が無いか探してみたが、あまり興味のある記事はない。


 不倫や浮気、離婚騒動にそこまで興味はないのである。


 結局、大した情報はなかった。


 週刊誌をラックにしまうと、今日一日分の疲労に襲われる。

 

 明日も早いんだったな。


 そろそろ寝よう。


 おやすみ。


 


 


 


 


 





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