君との一人言
今年は仕事のせいで実家に帰ってくるのが遅くなってしまった。
俺の実家は周りは山に囲まれており、田園風景が広がっている田舎なのだ。
「ただいま」
「あら、おかえり。今年は遅いから来ないのかと思ってたのよ」
「仕事が忙しかったからなぁ。でもほら、帰ってこないとあいつが怒るかもしれないし」
「もうカンカンに怒ってるかもしれないね」
「ヤバイよそれ…まだ時間あるし、ちょっと行ってくるよ」
「いってらっしゃい、気をつけるんだよ」
俺はおみやげに買ってきたお菓子と、花束を持ってあいつとの待ち合わせ場所である子どもの頃によく遊んだ神社に向かった。
はぁ…はぁ…
しかしこの石段こんなに長かったか?よくこんなところを疲れもせずに毎日登ってたな…
(あっ!やっときた!)
「ふぅ…キツかった」
(もぉー遅いよ!今年は来ないのかと思ったじゃん!)
「ごめんな、仕事が忙しくて」
(ふぅ~ん、社会人は大変なんだね)
「まぁ、でも俺は元気にやってるから」
(それなら良いけど)
「毎日疲れるけど給料もそこそこいいし…あっ、そうだ」
(?)
「お前どんな花好きだったか知らないけど、どうかな?」
(うわぁ!びっくりした~ 綺麗な花束だね!)
「あとお前の好きそうなお菓子」
(えっ!お菓子も!!)
「これ、俺の金で買ったんだぞ」
(ありがとう~)
「…しっかし、変わらないなぁここは」
(うん)
「子どもの頃さ、ここの神社で遊んでたらじいさんに、こんなところで騒ぐなって怒られて…」
(あぁ、そんなこともあったね~)
「でも、お前がまた行くって言い張って、また怒られて…」
(アハハハ、そうだったかな~)
「子どもの頃のこと思い出すと泣けてくるなぁ…」
(………)
「こんな話してたら会いたくなってきたよ…」
(…せめて話だけでもできたらいいのに)
「まだ、お前が死んだこと信じられないよ…」
(私だって突然でびっくりしたよ)
「そうだよな、お前が一番信じられないよな」
(うん…)
「ふぅ~、ここで泣いてたらお前に怒られるな!」
(私はそんなに怒りっぽくないもん!)
「っと、じゃあそろそろ行くわ。また会いに来るからな!」
俺はそう言ってあいつのお墓に手を合わせた。
(…うん…待ってるよ)