2019年8月【ドキッ!? 真夏のバカンスイベント!】
夏イベント、九月に入る前の一コマ
おまけ扱いなのでメタ要素入ってます
今は八月、夏真っ盛り――も、終わろうかという時期。
当然、WoAでも夏のイベントはあったわけで――
「(」・ω・)」うぅぅぅぅぅ(/・ω・)/みぃぃぃぃ!」
現在、現界に用意された浜辺マップで、バカンスを楽しんでいる最中である。
集まったのは、いつものメンバー。
それに加えて、[ベリアル]、[アスモデウス]、[アシュタロス]。
そして、なぜか付いてきた[ブエル]。
第一位が七人と、なかなかに豪華な面子だった。
「[ダンタリオン]は《大図書館》で留守番か、勿体ないよなぁ」
「勿体ないの意味がよく分からないんだが……」
「いやぁ、夏イベントにギリギリ間に合ったよー。水着アバター!」
「さっきから騒がしいぞ、おい」
[ケルベロス]は普段とは異なった服装――
さっきの発言通り、白を基調とした水着アバターを身に着けていた。
……[ЯU㏍∀]さんから預かったマフラーをしたままで。
「どう? 似合ってる?」
「んー、あー……いいんじゃないか?」
夏の海を模したMAPだからだろう、太陽光が一際強い気がする。
海面や砂浜もそうだが、[ケルベロス]の水着姿がとても眩しく見えた。
なんだっけか、あのヒラヒラしてるの。
腰に巻き付けるタイプの水着――
確かパレオだとか、そんな名前だったような。
「……テコ入れか」
「テコ入れだな」
「テコ入れだねぇ」
「……テコ入れ!?」
水着回ってことだよ、言わせんな恥ずかしい。
というわけで、自分もイベント用に配布されていたアバターを装備していた。
初期状態のシンプルな海パンである。
――で。
「お前らは相変わらずその格好なのな」
「いいじゃないの、浜辺に白衣」
「そんなんだから、ヒロイン枠から外されちゃうんだよねぇ」
「なっ……!」
海に入らず、浜辺に用意された白テーブルに着いているのは――
自分と、[シトリー]と、[アスモデウス]。
[ベリアル]は優雅にビーチチェアに寝そべっている。
「夏と言えば! やっぱり俺だろ?」
「ガッツポーズしなくていいから」
「やめてくれ、暑苦しい」
相変わらずのアロハが、浜辺で映えていた。
このために生まれてきたようなオッサンだった。
「それにしても、はしゃいでるねぇ。ケロちゃん」
「まぁ、アバターが手に入るまでは我慢してたらしいし」
[アスモデウス]以外の女性陣――
[ブエル]、[ケルベロス]、[アシュタロス]の三人はビーチバレーに興じている。
「水着一つでも、結構性格が出るもんだな……」
[アシュタロス]は露出控えめの、無地のパーカーのような水着だった。
……呼び方は知らない。
水着に関しての知識なんて、パレオですらうろ覚えである。
「へぇー。ああいうのも嫌いじゃなさそうだねぇ。へぇー」
「その物言いは、一体なんなんだ……?」
[シトリー]が容赦なく噛みついてくる。
また、弄るためのネタにしようとしているのだろうか。
「それなら、もっと分かりやすい奴がいるだろ」
「だなぁ……」
――[ブエル]。
これ以上にないぐらいに浮いている。
浮き輪も合わさって、唯一無二の浮力だった。
恐らく、あれが今回の夏ガチャのコンプ特典なのだろう。
「あ、あれは流石のボクでもねぇ……」
……紺のスク水。
ご丁寧にも、胸の名前部分に[ぶえる]と表示されている。
あの[シトリー]でさえ、少し引くレベルの破壊力である。
「……あざといな」
「あぁ……あざとい」
なまじ中の人の年齢を知っているだけに――
とてもじゃないが、直視できなかった。
――――
事件が起きたのは、それから少ししてから。
「[ブエル]ちゃんのドキドキッサマーラーイブ!(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾♡」
――と、案の定[ブエル]が騒ぎ始めた頃。
この盛り上がりが目についたのか、天使が突然襲い掛かってきたのである。
「[ブエル]ちゃん、一旦ストップ! 敵をおびき寄せちゃってるから!」
「(´・ω・`)えー」
「ステージまで用意して騒いでりゃあ、流石に出てくるよなぁ」
「さっさと片付けちゃおうかっ!」
「雑魚ばっかりだねぇ。ボクでも倒せそうなレベルかも」
対して、こちらの面子は全員グループ一位である。
片付けるのにも、それほど時間を必要としなかった。
残った天使がいないことを確認して、一息つく。
「でも、どうしてこんなに……?」
やってきた天使は十二体。
いくら[ブエル]におびき寄せられたからと言っても――
偶然に集まって、襲い掛かってくるにしては多い数だ。
イベント用とはいえ、ここは戦闘可能エリア。
天使側の領地にも跨っており、さらには現界の他のマップと同じ扱いである。
戦闘の可能性も、十分にあったのは分かるが……。
「あー、あれだねぇ、原因は」
ほぼ対岸に位置する場所に――
こちらと同じような浜辺で、[ブエル]と似たことをしている集団がいた。
「んー? ステージの上にいる天使って誰?」
「あー、あれは……[ラミエル]だねぇ」
「[ラミエル]っていうと――」
「こっちの[ブエル]と同じ系統の天使でしょうか……?」
「[ラミエル]ちゃん……彼女こそ、私の永遠のライバル……!(๑•̀д•́๑)キリッ」
「ホントかよ……」
【ラミエル】――
[ブエル]と同様、《踊り》のエモーションで味方NPCを増やす天使である。
おおかた、向こうもここでスコア稼ぎに出ようとしたのだろう。
「客の取り合いになるから、乗り込んできたわけか……」
「それなら売られた喧嘩だ。いっそのこと、ど真ん中でやろうや。場所取りなら俺に任せろ!」
「[ベリアル]、こういうの好きそうだよねぇ」
「『火事と喧嘩は江戸の華!』とか言いそうだわね」
いの一番に駆けていく[ベリアル]。
いつの間にやら、他の悪魔たちも集まってきたようで――
すっかり大将気分だった。
もちろん、こちらが送る冷ややかな視線には気づかない様子。
「なんだろうね、この温度差……」
仕方ないので、後を付いて行こうとした自分達に――
突然声をかけてくる悪魔が。
「話は全部聞かせてもらったぁ!」
「……ん?」
背後に立っていたのは、ツンツンの赤髪をした女。
法被姿に鉢巻といった、チャキチャキの江戸っ子風女子である。
「また暑苦しそうなのが……」
「えーと……誰?」
「何を隠そう、アタシが[フォカロル]だ!」
「違う、そうじゃない」
そういうことを聞いてるんじゃない。
「[フォカロル]っていうと――」
ソロモン72柱では序列四十一位。
海に関係する悪魔だった気がする。
この辺りを縄張りに行動しているのだろうか。
「で、つまりどういうこと?」
「アタシも混ぜろって言ってんだよ!」
そう言うや否や、[ベリアル]の後を追うように突っ込んでいく。
「ちょっと!?」
「行っちゃったねぇ……」
「……まぁ、いいんじゃない? 一応、【フォカロル】内では一位らしいし」
――――
――瞬く間に袋叩きにされ、戻ってきた。
慌てて[ブエル]が、回復スキルで治療を行う。
「よっわ!」
「何しに来たんだお前……!」
「海の上ならまだ頑張れるのに……」
まな板の上の鯉よろしく、全く役に立たない第一位だった。
「仕方ない、いくぞ」
「あいあい。パッパと終わらせましょっか!」
そうして、戦闘の中心部へと飛び込んでいく。
……自分と[ケルベロス]の二人で。
いや、[アシュタロス]も来てはいるのだが――
「――頑張ってねぇ」
「私たちって、非戦闘職だからねー」
「ここから応援するから! ファイトー!✧.゜٩(๑>◡<๑)۶:.。♡」
あぁ、分かってたよ! ちくしょうめ!
――とは言っても、向こうもそれほど数がいたわけでもなく。
[ベリアル]がまだ生きているレベルなのだから、敵の強さもたかが知れていた。
――――
そして、あらかた片付け終わったころに――
「――っ! [ミカエル]と[ガブリエル]!」
「げ、親玉級だ」
ここ最近はないものの、何度か戦闘もしたことがある。
戦闘能力で言えば、段違いに上の方にいるのは間違いなかった。
攻撃を仕掛けてくるようなら、いつでも反撃を取れるよう構えていたのだが――
向こうが襲い掛かってくる様子はない。
「……?」
「あんまり大騒ぎしてくれるから、僕らに呼び出しがかかってね」
「……ここで戦闘をするのもあまり乗り気じゃないし。とりあえずさぁ、これ以上戦いたいなら余所でやってくれない?」
見ると、向こうも水着アバターを装備していた。
……あっちもあっちでバカンス中か。
「――と言っても、既に終わった後なんだけど」
「そもそも、天使から仕掛けてきたんだしねぇ」
「だーかーら。ここはこれでチャラにしてやろうって言ってんのよ」
「こちらとしても、あまり被害を大きくしたくないからね。アルマゲドンの手前、そちらも同じなのではないかな?」
別のチャットで指示を出したのだろうか――
残っていた天使たちが、ぞろぞろと自分達の領地へと戻っていく。
「仕切り直しは九月の始めでどうかな。場所は闘技場エリアで」
「おお、いいぜ。やったろうじゃねぇか。今後のライブ場所剥奪戦だ」
売り言葉に買い言葉。
二つ返事で[ベリアル]が了承してしまう。
「あーあ、勝手に決めちゃっていいのかなぁ」
「いいんだよ、こういうのは勢いが肝心だろ」
「それじゃあ、[バアル=ゼブル]にもメッセージを送っておくよ」
「まぁ、[バアル=ゼブル]は断らないだろうねぇ」
この時点で、ほぼ確定したようなものだった。
闘技場エリアなんて、ただ殴り合いをするために用意されたような所である。
つまり、【グラシャ=ラボラス】向きの戦闘場所ではない。
「……俺は参加しないからな」
――――
「いやー、一時はどうなることかと思ったけどねー」
「お前らは見てただけだろうが……!」
[ミカエル]達と分かれた後。
元の場所へと戻ったのはいいのだが――
「あらら……? なんかこっちに来てない?」
「……この場は引かせる、としか言って無いもんねぇ」
「まさか……」
対岸側から、こちらへと向かってくる影――
一つや二つではない。
何隻もの船に乗って、こちら側へと天使が向かってくる。
「あの統一されたアバターはラミエル親衛隊か? どんだけかき集めてんだ」
「それでも私のファンの方が多いんだからー!щ(゜д゜щ)ゴラー!」
ここで競ってどうする。
――とはいえ、敵が迫って来ているのは事実。
海からなので、その幅も広く――
囲まれてしまえば、一網打尽にされる可能性もある。
少なくとも、そう思えるぐらいの数の差があった。
「うえぇ。疲れそう……」
[シトリー]が見た情報によると、ガチ勢とは程遠いらしい。
九月の戦いの頭数にすら入りそうもない面子、ということだった。
「あいつらを使って、すこしでも消耗させようって魂胆か?」
「別にボクたちが戦うって決まったわけでもないのにねぇ」
まぁ、アルマゲドンも目の前に控えていることもあるだろうけど……。
どちらにせよ、あまりいい結果になるとは思えない。
「で、どうするんだ? 正面からぶつかるのも面倒だぞ?」
「ここは、アタシに任せな。舞台が海の上なら、アタシの独擅場だ」
そう言って出てきたのは――
先の戦いの中、始終のびていた[フォカロル]である。
「お前らもそんなに踊りたきゃ、とっておきのステージを用意してやるよ!」
「≪Be scattered to this ocean with flower≫」
発動したのは、【フォカロル】の《奥義》スキル。
高く掲げた右腕に呼応するように、海流がうねりをあげ始めた。
それは次第に、力強さを増していく。
高く、早く。全てを飲み込むような嵐へと変わっていく。
「うわぉ……」
波と波がぶつかり合い、幾つも上がる水柱に――
浮かんでいる船にはもちろん、天使たちもダメージを受けていた。
局所的に起こされた嵐の中、船は海岸まで辿りつけるはずもなく。
乗っていた天使たちは殆ど海の藻屑、魚の餌である。
《奥義》が収まり、辛うじて体力が残っているのもいたが――
それはもはや、脅威とは程遠いものだった。
「火事と喧嘩は江戸の華! また何かあったら呼んでくれよな!」
「お、おう」
呼んでもないのに来たやつが何を言っているのか。
「まぁ、海の上で戦うことがあればまたよろしくねぇ」
「よく《大図書館》で駄弁ってるから! 遊びに来てね!」
夏のイベント、最後ともいえるバカンスで――
非常に個性的で、限定的な仲間ができた一日だった。




