第2話 ケイタイ・・・
「えっ?」
突然の申し出に驚いた私。とっさになんと返事をしていいかわからなかった。
「・・・あ、ぼくの言い方が悪かったです。実は、そのケイタイ料金滞納で、今使えないので・・・。だから、バイト先を探してたんだけど。やっぱり、カッコ悪いじゃないですか。なので、こちらから連絡しますので、あなたのケイタイ教えてもらえますか?」
ああ、そうなんだ・・・このときは納得して教えたものの、なぜお店の番号じゃなかったのか?後から、そんな疑問がわいてきた。
そんないきさつがあったものの、めでたく?!採用された彼は、意外にも働き者だった。
仕事の覚えもよく、何より人当たりの良さで、1ヵ月もするとオバサマ達のアイドルになった。
けれど、面接の一件があったせいか、妙になつかれてしまった私。戸惑いながらもどこか心地よさを感じていた・・・。
彼が来てから3ヵ月を過ぎた頃、創業祭の打ち合わせで仕事が深夜になってしまった。
いつもバスで通っていた私は、タクシーで帰ろうと思ったとき、バッグの中で携帯が鳴った。
「もしもし・・・」
「・・・真鍋さん?俺、カズヒロだけど・・・」
「あぁ・・・おつかれさま。どうしたの・・・?」
「仕事、遅かったんでしょ?送るから、そこで待ってて!」
「えっ?!」
返事をするまでもなく、1台のバイクが止まった。
「おつかれさまです・・・」
そう言いながらメットを渡された私。
「タクシー拾うのも大変だろうから・・・」
そう言って彼は、後ろの座席を指差した。
何だか彼の言うままに後ろに乗った瞬間、バイクは走り出した・・・。