第二十三話~輿入れ~
お待たせ(?)しました、嫁入り話です。
冒頭で、嫁が判明します。
第二十三話~輿入れ~
葉桜の青も眩しいこの季節、織田家の居城である岐阜城の一室に一組の男女が居た。
男の方は岐阜城主であり、織田家当主の織田信長その人である。 そしてもう一人の女性はと言うと、此度六角家に輿入れする運びとなった織田信長の同腹妹に当たるお犬であった。
因みに彼女は、凡そ三年ほど前に先だって浅井家に嫁いだお市の妹でもある。
「さて犬。 輿入れだが、抜かりはないな」
「大丈夫でございます。 兄上」
「そうか」
「はい。 それにしても……」
そこで言葉を切ると、お犬は小さく笑みを浮かべる。 いきなり微笑を浮かべた妹に、織田信長は訝しげな顔をする。 その表情が面白かったのか、お犬はくすくすと笑い始めていた。
「何がそんなにおかしいのだ」
「ああ、申し訳ありません兄上。 その、奇妙な縁だと思い笑みがこぼれてしまいました」
「奇妙?」
「はい。 姉上は江北の浅井家、そして妹の私は江南の六角家。 そしてそのどちらも、兄上がお気に入りになられた方です」
彼女の言う通り、織田信長は浅井長政と義頼を気に入っている。 しかしそれまでは特段意識などしていなかったのだが、妹に言われて思わず納得してしまった。
「なるほど。 言われてみれば奇妙よの。 だが、これも何かの縁だと思っておけ。 実際、義頼が江南におらなんだら、お前を近江に輿入れさせる事など無かっただろう」
「そうなのですか。 ならば兄上、その場合はどちらに私を嫁がせるつもりだったのですか?」
「ん? その時の嫁ぎ先か……今となっては言っても詮無い事、お前が気にする事はない。 そんな事よりもそなたは、俺の妹として嫁ぎ先で恥じなければそれでいい」
「分かっております。 兄上」
「ああ! それと一つ、言い忘れていたわ。 犬の付け家老として、中川重政を近江にやる。 存分に使ってやるがいい」
「兄上。 使うのは私では無く、左衛門佐(六角義頼)様ではないのですか?」
「なるほど。 違い無い」
その後、どちらかとも無くこみ上げた笑みを浮かべるとこの同腹の兄妹は一しきり楽しげに笑いあう。 この様に和やかな雰囲気で、織田信長とお犬の岐阜における最後の夜は過ぎたのであった。
その一方でお犬を迎える事となる六角館だが、此方は猫の手も借りたい状態であった。
観音寺城がその様に忙しい理由は、数日後には到着する予定となっている花嫁たるお犬の一行を迎える為である。 ただ婚儀に関しては、経験のある六角承禎や、蒲生定秀と蒲生賢秀の親子。 他に馬淵建綱や進藤賢盛と言った経験者達が居るので特に問題などは起きていなかった。
実際、義頼の親代りを自負する六角承禎あたりは、妙に張り切っているぐらいである。 逆にその事が、変な失敗を生みはしないかと平井定武辺りに心配されたぐらいであった。
なお婚儀には、幾人かの来賓と呼べる様な者達も参加する事になっている。 その筆頭として名を上げるとすれば、細川藤孝や仁木義政であろう。 この二人は、大和国を脱出した後、近江国に移動した際に何かと世話になった義頼の婚儀と言う事で、足利義昭が己の名代として遣わしたのであった。
彼らが選ばれたのは、義頼と特に縁があるからである。 細川藤孝は近江国に居た頃、義頼と友誼を交わしている。 そしてもう一人の使者である仁木義政だが、彼は義頼と同じ六角宗家の血を引く者であるから十分に婚儀へ参加する資格を有している。 その様な彼らであれば、六角家現当主たる義頼の婚儀に参じても全く問題はないのであった。
「よくぞおいで下されました。 兵部大輔(細川藤孝)殿、五郎次郎(仁木義政)殿」
「御招きに預かりまかり越しました」
「然り」
「では、こちらへ」
義頼の案内で、二人は部屋に通された。
本来であれば婚儀の主賓となる義頼が出迎えなくても全く問題はないのだが、二人は幕臣である。 そしてなおかつ、細川藤孝は足利義昭の信頼が厚い男である。 その為、本来ならば主賓であり出迎える必要などない義頼自らが二人を出迎えたのであった。
その後、二人を部屋へ案内した義頼だが、前述した通り婚儀直前と言う事もあり何かと忙しい。 その為、軽く挨拶をしてから部屋を辞して廊下に出た義頼。 廊下に出てからふと空を見上げると、彼の視界に見事に晴れた空が入って来た。
するとなぜか、義頼の頭の中に間もなく観音寺城を訪れる予定の男の姿がよぎる。 その途端、思わず苦笑を漏らしつつも彼が独白していた。
「……まさか彼らが来るとは、思ってもみなかった。 確かに招待はした、また既に祝いの品も届いている。 だから来る筈はない、良くて遠藤辺りが代理の者として来るのだと思っていたんだが……」
その時、誰か近づいて来る気配を義頼は感じる。 そちらに視線を向けると、果たしてそこには頭を丸めた男が此方に向って来るところであった。
彼の名は、釣竿斎宗渭と言う。 今は剃髪してそう名乗っているが、剃髪前の名は三好政康と言った。 実は義頼の家臣となった時、彼は剃髪したのである。 その旨を三好政康が義頼へ告げた時、義頼は自身考えが取り越し苦労となった事に内心で安心した心持となっていた。
さて何故に義頼が取り越し苦労だったと安心したのか、それは【本圀寺の変】が終わって程なくの頃まで遡る事となる。 それは義頼が村井貞勝と島田秀満と共に、新たな室町御所建築を腐心していた時の事である。 ある夜に、今回の婚儀へ参列している仁木義政が義頼を尋ねて来たのだ。
元は同じ六角一族とはいえ、仁木義政は幕臣となる。 その為か義頼は、丁寧な対応で彼と対面した。
「お待たせしました」
「いや、お気になさるな。 事前に連絡もせずに、こちらが尋ねたのだから」
そう言ってから着座をすると、義頼は仁木義政に白湯を勧める。 彼は勧められた白湯を一口飲んで口を湿らすと、一呼吸置いてから此度の用向きを告げた。
それでも少しの間、逡巡している。 だが、やがて意を決したかの様に彼から告げられたその内容は、義頼にとっても正直に言って全くの想定外である。 と言うのも、足利義昭が今更になって織田信長が三好政康に下した処分が不服だと言っているのだ。
処断を下したその場で、ではなく今更になって不服だと告げられるとは夢にも思っていなかった義頼は思わず呆気にとられてしまう。 その為か、仁木義政を通した客間に何とも言えない空気が流れたが、一つ咳払いして気持ちを切り替えた義頼は彼に足利義昭が不服としている理由を尋ねていた。
もしかしたら納得できる理由があるのかもと言う一縷の望みから尋ねた事であったが、仁木義政から足利義昭が処分に不服を抱いている理由を聞いてその微かな希望も打ち砕かれる。 何と足利義昭は、三好政康が武家として今後手柄を立てるのが不服だからだと言うのだ。
はっきり言って、子供の我がままと大差ないその理由に義頼は再度呆気に取られてしまう。 すると仁木義政は、そんな義頼を尻目に早々に六角館から辞したのであった。
部屋に残された義頼はと言うと、呆気にとられたまま仁木義政を見送っている。 正直に言って、既に仁木義政の存在は彼の思考の外だったからだ。
足利義昭の気持ちを伝えられた義頼からしてみれば、「理不尽だ!」と声を大にして叫びたい心情となっている。 とは言え、主君である織田信長が担いでいる将軍となる足利義昭の意向を無視する訳にもいかなかった。
仕方なしに何か手が無いかと考え始めたが、一向に良い考えが思い付かない。 結局、京に居た頃には思いつかなかった義頼は、観音寺城に戻った後で本多正信の知恵を借りる事にした。
「……と言う訳でな。 何か良い知恵は無い物か?」
京から六角館へと戻った義頼は、早速にでも本多正信を呼び出した。
その様な要件だとは夢にも思っていなかった為、呼ばれた本多正信も一瞬だけだが呆けた様な表情となってしまう。 しかし、彼は直ぐに取り繕うと暫く思案にふける。 やがて何かを思い付いた本多正信は、俯いていた頭を上げると真っ直ぐ義頼を見た。
「殿。 それでは下野守(三好政康)殿に、剃髪していただくというのは如何でしょうか」
「剃髪? 正信は、政康に仏門へ入らせろと言うのか」
「はい。 武士としてでは無く、僧体。 若しくは陣僧としてしまえば、実質的には兎も角として下野守殿は武士では無くなります」
「そうかっ! その手があったか!!」
ある程度歳を重ねた武士が剃髪する事は、さほど珍しくもない。 甲斐武田家当主の武田信玄や、越後上杉家当主の上杉謙信とて剃髪しているのだ。
だから三好政康が剃髪していたとしても、何ら不思議な事もない。 それに剃髪すれば法名を名乗るので、僧侶と言えない事もないのだ。
翌日になると義頼は、三好政康を呼び出して事情を話す。 その内容に、三好政康は驚きの表情をした。
と言うのも、彼もまた剃髪する気だったからである。 畿内を追われて以来、現状打破を目指してそれなりの用意を整えて本圀寺へと攻め寄せてみれば、考えもしなかった速さで逆撃して来た織田家の手の者に捕えられてしまったのである。 そんな彼なりの、けじめのつもりであった。
こうして奇妙な偶然ではあったが、期せずして思惑が一致した訳である。 此処に三好政康は釣竿斎宗渭、通称釣竿斎と名乗る様になったのであった。
さて話を戻して、その釣竿斎である。
彼は徐に義頼へ近づくと、片膝を突いて来客の旨を伝えた。 その客とは、浅井長政の一行である。 釣竿斎は、浅井長政の一行を客間へ通す様に指示した後で義頼の元へ急いだのだ。
そして義頼であるが、まさか先程空を見上げつつ独白した直後に現れるとは夢にも思っていない。 そんな最中に浅井家の一行が現れたとの連絡を受けたので、「噂をすれば影でもないだろうに」と彼は呟いていた。
そんな主の様子に、釣竿斎は訝しげな視線を向ける。 その視線に気付いた義頼は、そこで一つ咳払いをすると浅井家一行を通したと言う客間へ案内させる。 やがて彼らを通したと言う客間に到着すると、一声掛けてから義頼と釣竿斎は中に入る。 果たしてそこには、幾人かの者達が居た。
具体的に上げれば、先ず一行の長たる浅井長政である。 その他には磯野員昌と遠藤直経、そして護衛と思われる者達も居る。 その様な彼らに対して義頼は、彼らを笑顔で迎えたのであった。
ただ、弱冠だが作った様な笑顔であったが。
「備前守(浅井長政)殿、よくぞ参られました」
「御招きにより参上しました、左衛門佐殿」
「何の何の、歓迎致します。 お披露目までは、この部屋でご寛ぎください」
そこで義頼は出て行こうとして立ち上がったが、他でもない浅井長政に呼び止めらる。 眉を寄せながらも改めて座り直した義頼に対し、彼は先ず祝いの言葉を送った。
そんな浅井長政に一つ頭を下げて礼を表すと、今度こそ義頼は部屋から退出したのであった。
さて義頼が居なくなった訳だが、暫くは誰も動かない。 ある程度の時が経つと、ついに遠藤直経が動く。 すると、護衛として連れて来た者達に、部屋を調べさせる。 実はこの者達は、遠藤直経配下の忍びであった。
「弾正左衛門、どうだ?」
「はっ! 全く問題ありません」
「何っ!? そんな馬鹿な事があるか!!」
遠藤直経の下で忍び衆を纏めている霧穏弾正左衛門からの報告を聞いて、磯野員昌が目くじらを立てる。 すると磯野員昌は弾正左衛門に対して、より調べろと言い放った。
更に「詳しく調べろ」と言葉を重ねる磯野員昌を尻目に、弾正左衛門以下浅井家の忍び衆は遠藤直経の顔を窺った。 頷き返す彼の仕草を見た後で、彼らは今一度調べ直す。 だがやはり、部屋からは何も出てはこなかった。
それでもまだ納得できない磯野員昌は、凄みを利かせつつ重ねて尋ねる。 しかし弾正左衛門は、顔色一つ変えずに同じ答えを繰り返す。 するとそこで、浅井長政が言葉を挟んだ。
「員昌、もうよかろう」
「しかし、殿! 確かに今は味方でしょうが、ここは敵地と言っても過言ではない観音寺城の麓にある六角氏の館なのですぞ!!」
警戒も露わに、磯野員昌が浅井長政へ言葉を返した。
最も、彼自身警戒はしていても六角家を恐れている訳ではない。 しかし、今は仕える主である浅井長政が同席している。 彼の身を守る為にも、慎重になっていたのだ。
「あの男が、義頼が必要もないのに暗殺などするか。 それどころか、暗殺の想定などをしているかどうか。 何であれ問題などないと、到着前にも言ったであろう」
しかし当の浅井長政が、今の状況に対して全く歯牙にも掛けていなかった。
幾度か戦場で相対した事で、彼は義頼と言う男を自然に計ってしまっていたからである。 その結果、味方であるうちは信用できるが、敵に回すと容赦しない面があると浅井長政は判断していた。
「しかしですなっ!」
「丹波守(磯野員昌)殿。 そこまで疑うと言う事は、即ち拙者の配下を信用しないと貴公はそう言いたいのですかな?」
事は、主君の身の危険に関わる事である。 磯野員昌は浅井長政に対して更に言い募ろうとしたが、その言葉を遮る形で口を挟む者が居た。 それは誰であろう、遠藤直経である。 その遠藤直経だが、少し不機嫌そうな表情をしている。 だが、怒っている様子は見受けられない。 恐らくは仲裁に入るつもりであろう事は、傍から見る分には理解出来た。
「あ、いや。 決してそう言う訳ではない。 しかしだな」
「ほら、直経の機嫌まで損ねてしまったではないか。 兎に角、直経の配下の弾正左衛門らが確りと調べたのだ。 これ以上議論しても、仕方無かろう。 この話は、これでしまいだ」
浅井長政はそう言うと、庭に面する障子を開ける。 そこには、蒼々と若葉が繁る見事な庭があった。 流石は名門六角家の庭であると、浅井長政は感心する。 その隣には、同じ様に感心する遠藤直経がたたずんでいた。
二人は庭を眺めつつ「野点でもしたくなるな」などと長閑に話している。 そんな二人を見た磯野員昌は、自分だけ警戒しているのが何だか馬鹿らしくなってきた。
どの道、これ以上はどう仕様もないのもまた事実である。 彼は「その時はその時! 何かあれば、必ずやお守りする!」と、内心で腹を括ったのだった。
その翌々日、いよいよ観音寺城に花嫁御寮が到着したのである。 一行を先導していたのは、蒲生定秀と山内一豊であった。 彼らは義頼の名代として岐阜にまで赴き、お犬を迎えたのである。
またお犬の同行者として、付け家老の中川重政の姿も見える。 彼は弟の津田盛月や木下雅楽助などと言った一族郎党を引き連れていた。
そんなお犬一行を、義頼は礼装姿で出迎える。 そこでお犬は、漸く義頼の顔を見た。 その顔は、微かに緊張している様にも見える。 そんな義頼の様子に、お犬は安心するのだった。
さてこの時代、武家の祝言は大体三日ほど掛かる。
初日と二日目には、式三献という儀式を行う。 これは夫婦で行われる物で、家族ですら立ち入る事を許されていなかった。 そして三日目にも式三献を行うが、初日と二日目とは違い花嫁はお色直しを行うのである。 此処で初めて花嫁は白装束を脱ぎ、色物の衣装に着替えるのだ。
それから、婿の家族に妻が挨拶を行うのである。 実の両親は既にない義頼であるから、お犬の挨拶は兄の六角承禎と兄弟同然の付き合いをする甥の大原義定が受けていた。
「織田弾正忠信長が妹、犬にございます。 末永くお引き回しのほど、お願い申しあげます」
「六角左衛門佐義頼が兄、六角承禎にござる。 此方こそ」
「六角承禎が二男、大原中務大輔義定にござる。 父同様、お願い致します。 義姉上」
家族への披露と挨拶が終わると、次は祝いの為に訪れた来賓や家臣に対するお披露目である。 姉で、かつ扶桑一とも言われたお市の方に勝るとも劣らないお犬の美しさは、皆から感嘆の息が漏れるぐらいであったと言う。
その席で義頼は、細川藤孝や仁木義政。 それから元六角家臣や現在己の家臣となっている者達などから、酒を勧められる。 その中には当然だが浅井長政もおり、彼からも祝いの酒を受けていた。
この二人は今日から、義理の兄弟になる。 その事もあってか、義頼と浅井長政の間に堅い印象は感じられない。 むしろ六角家と浅井家で起きた今までの関係がある事からか、一部の者達からの目に微妙な物があると感じられていた。
とは言え、祝いの席である事に間違いはない。 浅井家臣である遠藤直経や磯野員昌からも、義頼とお犬の二人に対して祝い酒と祝いの言上は述べられていた。
やがて時も過ぎ祝いの宴もお開きとなると、いよいよ初夜である。 静かに寝室へと移動した二人であったが、直ぐに部屋に敷かれた布団には入らず布団の上に座っていた。
明かりも消されて、部屋の中には障子越しの月明かりが差し込んでいる。 その様な部屋の布団の上で、義頼とお犬はただ黙って見つめ合っている。 そこには別段、険悪な雰囲気はなかった。
「……お犬」
「は、はい」
やがて義頼が声を掛けるが、緊張しているらしくお犬の声は少し裏返っていた。
最も、緊張しているのは義頼も同じである。 しかし、このお犬の態度のお陰で義頼の肩から力が抜けた気がした。
義頼は小さく微笑むと、ゆっくりとお犬に近づく。 相手の手が取れる距離まで近づくと、優しく手を取りながら柔らかな視線を向けた。
「兄上や義定の言葉ではないが、これから宜しく頼むぞ」
包みこむ様に優しく握られた手と、柔らかく温かな目にお犬を襲っていた緊張も少しはほぐれる。 するとお犬は、可憐な笑みを浮かべると義頼へ言葉を返していた。
「はい、あなた。 此方こそ、いく久しくお願い申し上げます」
「む、あなたか……何か照れるな」
お犬からあなたと呼ばれた義頼は、自分で言った通り照れから後頭部を掻く。 そんな義頼の仕草を見て、お犬は笑みを浮かべていた。
「そこは慣れて下さいませ」
「……それもそうだな」
少し間を置いてから答えた義頼は、一度目を瞑った
それから意を決したかの様に、お犬の手を包んでいた自分の手を今度はお犬の肩に回す。 暫くの間、じっと見つめ合った二人であったが、やがて申し合わせたかの様に布団の上に倒れ込んだ。
その後、庭に咲く牡丹の花が一輪、静かに散るのであった…………
というわけで、クイズの答えはお犬の方です。(笑)
一応、根拠を述べておきます。
諸説あるお犬の婚姻時期ですが、その一つに信長が上洛した年(1568年)に
輿入れをしたというのがあります。
ならば、一年ぐらいずれても誤差範囲だなとお犬の方を義頼の嫁としました。
なお、史実の佐治信方に嫁いだ時に「信方もお犬も十六歳前後であった」とあります。
十六歳より前というのは織田信秀が亡くなった年を考えればありえないので、生まれた年は1550年か1551年。 もしくは、信秀が亡くなる寸前にはらんだ1552年生まれとなります。
なのでお犬の方は1551年生まれとし、1547年誕生説が有力なお市の方の妹としました。
これが確定ではないので、この話ではこういう設定であると思ってください。
ご一読いただき、ありがとうございました。




