情報の仕入れ方
「……シューヤ」
「ん?」
飛行中、グランが話しかけてきた。
「あれは街ではないか?」
「……」
あれ、か。遠くに見える城壁や門。現代日本のような科学的要素はないが豊かそうな街並み。そして、中世ヨーロッパにありそうな豪華で巨大な城。
「そうだな。ホントにあって良かったな」
ホッとした。
「……あれだけ大きい街なら私達の欲しい情報も入手出来そうね」
フィネアが言って、確かにと思う。
「それで、結局情報を買うんですか? それとも奴隷を買うんですか?」
「……街の人に聞いたらダメなのか?」
情報を買うとか奴隷を買うとか、ちょっと違和感がある。
「ニセ情報を掴まされて罠にかけられることもあります。この世界のことを聞くような世間知らずはいいカモですから」
……それもそうか。
「情報屋ってのは?」
信用出来るんならそれでいいだろ。
「情報屋も情報屋で色々いますから。新しく迷宮が発見されたとしますね」
メティが説明をしてくれる。
「既に売った情報を売り、秘宝や財宝がない状態の迷宮を探索することになったりするそうです。……群れを出て人間のフリして冒険者になった親戚の話ですけど」
魔物でも人間のフリして出てくるヤツがいるんだな。
「……じゃあ、奴隷のメリットは?」
「奴隷だから、ちょっとやそっとじゃ裏切らないのよ。ちゃんと衣食住を整えてあげれば裏切らないわよ。それに、買う時にはお金がかかるけど、情報の正確さと戦闘面の役立ちと、女の奴隷だったらセックスも強要出来るからお得よ?」
「……」
とりあえず、見た目美人が堂々とセックスと言っている問題をツッコんでいいだろうか?
「何で情報が正確なんだ?」
一旦ツッコミを放置し、質問する。
「嘘ついたら罰則として処分されるからでしょ」
処分?
「……やたらと奴隷が納得いかないみたいだけど、もしかして奴隷制のない世界だった? ならしょうがないけど、処分ってのは殺すってことよ」
「……」
逆らわなければ問題ないのか。
「……ふぅ。じゃあそれでいこう。確実に情報を入手しないとな」
危険はなるべく避けたい。
「それで聞いときたいんだが」
「何ですか?」
ディメスが首を傾げる。
「奴隷って男と女、どっちがいいんだろうな」
「「「えっ?」」」
「ん?」
四人が驚いたような声を漏らす。
「女でしょ?」
「女の人、ですよね」
「女性です」
「女だろう」
全員女と答えた。
「どうしてだ?」
「ご主人様のような若い男は、同性愛でもなければ奴隷は女よ。だいたい、奴隷としては女の方が優遇されるのよ」
……何気に詳しいよな。
「読み書きと家事を学び、綺麗な服に普通の食事は与えられているから。女の奴隷は性奴隷や給仕係として貴族に売られたりするから教養があるのよ」
……フィネアって奴隷に詳しすぎないか?
「逆に男の奴隷は主に労働か戦闘にしか使わないから」
ああ、それだったら女の方がいいよな。
「……話中すまないが、そろそろ降りるぞ。このまま入るわけにもいかんだろう」
それもそうだな。
グランは近くにあった林に着地し、すぐに鷹に変化する。
「いてっ!」
いきなり消えたようなもんなので、俺は盛大に尻餅をつく。……他三人は綺麗に着地したが。
「大丈夫ですか、主?」
ディメスに手を差し伸べられて、俺は起き上がる。
「ああ、悪いな」
「いえ」
さてと。
「歩いて街に向かうか」
「……ご主人様」
「ん?」
歩きながら、フィネアが話しかけてきた。
「ご主人様の性欲が余りあるなら、私が相手になるわよ」
「っ!?」
いきなりのことに驚愕する。……飲み物があったら吹いてるところだった。
「……多分、大丈夫だ」
保証出来ないが、何らかの刺激がないなら、理性は保ってくれるだろう。
「私は元よりそのつもりですが」
「ディメス!?」
「私も、シューヤ様が望むなら……」
「メティ!?」
ディメスは無表情に淡々と、メティは羞恥で顔を赤くして言った。
「……」
俺はこの場で味方そうなグランを見る。
「いいな、シューヤ。俺も正妻と妾数人と暮らしていたからな」
……味方じゃなかった。さすが王の中の王。妾まで侍らせていましたか。
「……いや、別に」
青少年としては願ってもないことなのだが、長く付き合うであろう三人とすることになると、結構大変じゃないかなぁ、という後のことを考えてしまう。
「……そう? じゃあ、今夜三人で襲っちゃいましょうか」
「はあ!?」
「それで耐えられたらいいけど、耐えられなかったら奴隷の娘も夜のお供に加えるわよ」
「……」
さすがにまずい。この三人に迫られて理性が崩壊する気がするのは俺だけだろうか? ……ってか、そんなにもたない気がする。俺、あっちの世界じゃエロいことは程々に、だったから自信ないぞ。
ーーって、結構ヤル気満々かよ!?
「と、とりあえずいこうぜ」
数秒の思考の後、俺は誤魔化した。